国鉄色最後の秋。米坂線撮影ツアー。

2008,11/6
 さて仕事が終わった。
先月末の夏休み第二弾の4連休は、結局どこも行けずじまいだった。正確に言うと予定してた新潟の天候が思わしくなかったのと、9月からの度重なる遠征による遊びすぎの罪悪感から、どうしても米坂線に向かうことが出来ず、結局4連休を自宅で過ごすという見事なニートっぷりをさらしてしまった。キハ120投入により国鉄型最後の紅葉も見れずじまいか・・と半ば諦めかけていたが、休みが終わってしまうと不思議な事に米坂線のダイアグラムや下越地方の地図を見るなどしているうちに、いてもたってもいられなくなり、急遽1日の休みで米坂線撮影ツアーを企てた。
 深夜1時出発。明日の運用は国52の2両が朝の置賜盆地にて通勤通学運用のA5、A6運用のためかなり熱い。朝の10時までに米沢界隈で52だけでも2往復半見ることが出来る。よって東北道で福島から米沢方面へ走り米坂入りすることにした。米沢に到着するとすでに一番列車は動き出す時間。いつものように徹夜で走ってきたため、撮影場所を探すのも面倒くさくなり、駅前の紅葉のケヤキと自転車が迎える西米沢で一発目を撮ることにした。



周辺に高校が2校あるため、列車でやって来た学生は駅前に停めたマイチャリでガッコウに向かう。
2008,11/6   米坂線   西米沢   EOS5D  24-105mm


 今撮った1142Dが米沢に到着するとすぐに1125Dが出発するがそれも国鉄色キハ52。時間がない。西米沢から車を走らせること約5分。鬼面川を遠望する鉄橋に着いた。ようやく昇った朝日が山肌を照らし始めると、木々の色づき加減が分かってきた。まだ平地であるこの置賜盆地ではピークはまだ早い。しかし午後の撮影予定地である宇津峠以北の山間ではかなりの紅葉が期待できる。紅葉と国鉄色。そう考えれば徹夜移動の眠さも吹っ飛び、撮影地と運転時刻、それに本日の運用が三つ巴になり、「オレナビ」が最高の行動ルートを検索し始める。次に狙うは荻野付近!




静かな静かな里の秋。一風吹く毎に木の葉が舞う。
2008,11/6   米坂線   西米沢〜成島   EOS5D  100-400m

 荻野に向かう途中、左後方に昨日冠雪した飯豊山(いいでさん)が姿を見せていることに気付いた。置賜盆地から飯豊山を見るのは初めてだったかも知れない。飯豊山・・。それはピークへのアプローチは時間と労力を要するがため、重装備のアルピニストしか受け入れないという恐れ多き山。春には残雪の形でその年の豊凶を占ったとされる信仰の山である。その飯豊山が間近に迫って見える。おぉ〜これは国鉄色を絡めて撮らない手は無い。荻野の跨線橋に到着すると、すでに数名のテツが待っていた。


里は秋でも山は冬。椿で折り返してきた1124D。
2008,11/6   米坂線   萩生〜今泉   EOS5D  100-400mm

 この1124Dは今泉で山鉄の接続待ちで12分停車があるため、それを利用してさっき目をつけておいた犬川の飯豊山バックのサイドに陣を移すべく、車に乗り込みすぐ移動。充分に間に合ったものの、構図、タイミングでヘマをしてしまったため、今行った続行40分後の1126Dで再び同じアングルで挑戦した。



1126Dが軽やかに通過して行った。
2008,11/6   米坂線   犬川〜羽前小松   EOS5D  100-400mm

 今撮った1126Dは米沢で3時間待機してから、昼過ぎの1131Dで新潟県側の坂町に向かう。それまで少し昼寝をしようと手の子の林道に車を止め、窓を少し開けてシートを倒した。空気は冷たいが日差しがヤバイくらいに気持ちいい。2時間ほどして目が覚めると、自分の体から日向に干した布団の匂いがした。今昼寝した地点から少し移動して午後の撮影を開始した。



午後の一発目。今夏は中途半端な暑さだったため、今年の紅葉はイマイチという評判。
2008,11/6   米坂線   手ノ子〜羽前沼沢   EOS5D  24-105mm

 さて、昼寝もしたことだしこの1131Dでも追っかけようか。米坂線は駅間も長いことから追っかけは難しそうに思えるが、実は並走する国道113号線の流れがそれ以上に速く、また冬季の雪害遅延の対策かダイヤはかなりのんびりしたもので、意外に余裕で追っかけられることは過去に何度も実証済みである。ではでは・・機材を撤収して車に乗り込み、峠越え。トンネルを抜けると思わず「おぉ〜山が、山が燃えちょる!」と叫びそうになった。紅葉は恐らくピークと思われるほどに錦秋に光輝いていた。途中国道の片側交互通行に行く手を阻まれ焦ったが、通過3分前に渓谷を渡るコンクリアーチ橋に間に合った。ここでも山が燃えちょった。



錦秋。間もなく深い雪に閉ざされる渓谷が今年最後の輝きを放つ。
2008,11/6   米坂線   羽前沼沢〜伊佐領   EOS5D  24-105mm


 このアーチ橋の後も追っかけを続けたが、さらに2回の交互通行でついに列車に遅れを取り、諦めざるを得なかった。朝から散々撮り回した国鉄色キハ52を見送り、今度は新津運輸区のもう一つの主役、国鉄急行色キハ58が坂町方からやって来る。よくよく考えれば今見送った52とやって来る58は越後金丸で交換する。また52はこの先、小国で10分以上の停車だから追い抜いて越後金丸で交換も撮れると分かると、自然にアクセルを踏み込んでいた。



重厚な国鉄色同士の離合。
2008,11/6   米坂線   越後金丸   EOS5D  24-105mm


 午後になり雲も多くなってきたので今年5月の悪夢を思い出し、この交換を撮ったら帰ろうかとも思っていたが、一旦急行色を見てしまうと消えかけの写欲に火がついてしまった。この急行色58も追っかけする。今来た道を延々引き換えして米沢方に向かうことにした。






後追いもなんのその。黄金の峠道を登る急行色。
2008,11/6   米坂線   羽前沼沢〜伊佐領   EOS5D  24-105mm



また峠を越えて米沢側に来てしまった。手ノ子の大築堤。
2008,11/6   米坂線   手ノ子〜羽前沼沢   EOS5D  24-105mm



山鉄の接続駅。昔ながらの佇まいを残す今泉を出発。
2008,11/6   米坂線   今泉   EOS5D  100-400mm


 始めは追っかける気もなかったこの58も計3発頂戴してしまった。山間部では渓谷沿いを走る米坂線は、この時期になってしまうと14時を過ぎると山に翳ってしまうため、ポイントが限られてくることは分かっていたが大いに満足した。本日最後の決めは、今行った58の折り返しを黄昏の風情で撮ってみたいと思う。米沢で折り返して、ここにまた戻ってくるのは1時間ちょっとあったので、荒砥市内でラーメンを食ってから、犬川付近で待つことにしよう。陽は完全に山に没してしまうけれど、輝き始めたを半月をアクセントにできる踏切で今回の旅、最後のシャッターを切った。



月が見守る中1133Dが犬川出発。陽が落ちると急激に寒くなってきた。
2008,11/6   米坂線   犬川   EOS5D  24-105mm