最後の客車JT サロンカーなにわ網干訓練を頂きに・・・?

2024.4/15

 ある日の仕事の昼休み。スマホを見ながら下品にメシを喰っていると、あさって、DD51牽引によるサロンカーなにわの網干訓練がなされるとの情報を得た。以前からその存在は知っていたもののそこまで詳しくなく、普段は12系で行うところを、たまに「なにわ」が使われることくらいしか知らなかった。改めて行程とか運行時刻を確認すると、遠いということ以外はそこまでハードルは高くないと判断。ちょうどその日は休みであったため、最後の客車JTとDD51を頂きに近畿地方に向かうことにした。気になる天気は・・・「曇り時々雨」。下り上りともに太陽を背にして往復する列車でもあるので、曇りはいいが雨だけは勘弁だ。

 ということで準備万端、臨戦態勢で向かうのではなくて、失敗しても、もしくはウヤになってもいいくらいの心意気で、ゆるく現地に向かうことにした。なので自家用車や新幹線などの選択は最初からなく、夜行バスでお気軽にお出かけしていきたい。前日。サイト上で数ある夜行バスの中から最も安い5000円の路線をチョイス。いわゆるツアーバスってやつで,、この齢になって人生初経験だ。神戸行きでもあるので現地に近くなおよろし。

 当日。「バス停」ではなく「待ち合わせ場所」だという横浜シティエアターミナル(YCAT)に向かう。コンビニで夜食のサンドイッチとビールを仕入れ、通常の路線高速バスが発着する東口バスターミナルから少し離れたYCATに近づくと、0時前だというのに大勢の若者の集団がたむろしており、皆、キャリーケースや大きなバックを携えている。建物の中も合わせると数百名以上とみられ、ほとんどが10〜20代のようだ。これ、まさか全員バスの乗客? 掲示板を見ると全国各地に5分間隔で次々と出発していくようだった。毎晩こうした光景が地元で繰り返されているとは全く知らなかった。勝手に乗り場で待つなどという自由行動は許されていないようで、それぞれのバスの出発時刻が近づくと、係員が便名と行き先を大声で連呼し、乗客たちが集合。乗り場に誘導されているようだ。やがて自分のバス便の招集が掛かり列に並びバスへ移動。カメラバックと三脚が入った大き目のリュックを携帯していたので、トランクルームに入れてもらおうと係員に尋ねると、大型キャリーケース以外は防犯?のため全て持ち込みせよ、とのことだった。車内は当然2+2でピッチの狭い普通の高速バス。かつ本日は満席とのことなので、窮屈な車内になりそうだ。自分の席上の棚には、すでにトランクに収納を拒まれた中型以下のキャリーケースで埋め尽くされ、手持ちのリュックは足元に置かざるを得ない。イスの下に無理やり押し込んでも、足を出し入れするのは相当キツかっつた。席に着くと通路側はガタイが良くイカツめの兄ちゃんが着座。自由の全く効かない空間でこれから8時間耐える覚悟をしなければならなかった。

 0時ちょうど。会社名は忘れたがなんとか交通の神戸三宮行きツアーバスが出発。すぐに始まる車内放送。乗合路線バスのそれとは違い、乗客へいくつもの注意事項が延々と説明される。とまぁ、腹も減っているしメシの前に一先ず乾杯だ。500ml缶を開栓。一口目を付けると、驚愕の注意事項が追加された。

「車内でのお食事、飲酒は固くお断りさせていただきます。なお、発見した場合、没収させていただきますのでご了承願います。またお客様の中で、そのような行為を発見された場合も、乗務員へお知らせ下さいますようご協力をお願いいたします。」


「エェ〜ッ!! そういうもんなの!?」

 直近10年で一番驚いたかもしれない。理由は匂いとのこと。左手に握っている一口付けただけの500ml缶をそーっと降ろし、座席足元のドリンクホルダへ。隣りのイカツめニキは気づいていても気にしていないようで通報されることはなさそうだ。アルコール以外とかはいいらしいので、仕方なくビール後の焼酎用のチェイサーに買っておいた綾鷹をチビチビやることにした。長々とした注意事項が終わるとすぐに消灯。放送では、他のお客様のゴメーワクになるため、読書灯すら使用できなくなっているらしい。読書灯ってそういう時のため用じゃない?と訝しく思いながら、酒も呑めずメシも喰えず、真っ暗の車内で厳しい体制を取りながら眠りに就こうと努力するが、とてもじゃないが無理。少しも眠くなることはなく、最初の休憩、駿河湾沼津SAに到着した。いつもならほろ酔い&メシ後の一服がオイシイ頃合いだが、今日だけは外の空気だけが吸いたい。ウトウトしている通路側のイカツめニキに恐る恐る小声で「すみませ〜ん」と言って通路に出ようとすると、見た目と正反対の高音ボイスで「あ、どうぞどうぞ、跨いじゃってくださぁ〜い」との返事。雰囲気とか持ち物、アクセサリーからお姉さん的なお兄さんのようだった。

 とりあえず外に出、一服し落ち着き、さっきから気になっていたことを確かめることにした。放送からこの先やけに休憩が多いことを感じていたからだ。また「トイレ休憩」とも言っていた。改めてスマホに残されていたシートマップを確認すると・・・トイレが無いのである!! 突発性多便症候群(?)に悩まされる自分としては、事前にそれを知っていれば絶対に選択しなかったであろう便(ビン ね)だった。大のほうは今のところ兆候はなさそうだが、小を念入りに済ませ、また真っ暗な車内へ。今度は起きていたイカツめニキだったが、自分を見つけると「おかえりなさぁ〜い」と言われ、足をずらしてくれた。

 翌朝、8:30。ようやく三ノ宮到着。寝ることができたのは明るくなってからだった。隣りにいたイカツめニキは途中で降りたらしく、車内の乗客は半分ほどになっていた。ヘロヘロになりながら待ちに待った屋外へ。ついて出た言葉は、

「二度と乗らねえ、ツアーバス」

 自分は今まで一度も感じたことが無かったため、よく一般人が「夜行バスって疲れるよねー」って言っているのはこのことだったのか、と初めて悟ったのだった。さて・・・今日の撮影地はここから電車で20分ほどの場所。しかしまだ3時間以上もあり、和田岬線の朝の最終に乗れそうなのでそれを考えていたが、昨夜は飲食禁止の地獄行きバスに監禁されていたため、とりあえず食事をしないことには始まらない。駅前の繁華街をウロウロしたが食指を動かされるようなところが無く、しかたなく何年かぶりに朝マックを喰おうと店内へ。するとカウンター前には長蛇の列だったため、これまた何年かぶりのモバイルオーダーで注文してみた。しかし店員をよーく観察してみるとどうやら2人で回しているらしく、漫画のようなてんやわんやな様子でなかなか番号が呼ばれない。自分も店員側として飲食店で働いた経験もあるので、彼らの気持ちは痛いほど理解できる。やがて15分ほどで着丼。空の胃袋にソーセージエッグマフィンセットをぶち込むと、もう和田岬線には間に合わない時間になっていた。仕方ない。早めに現地に到着していよう。

 普通列車しか停車しない塩屋駅で下車。駅前の国道を数百メートル歩くともう撮影地だ。先客1名様。目の前に海が広がる絶景なのだが、道路と線路の交差する角度が微妙で、立ち位置や焦点距離を何度も変えながらトライしたがどうもしっくりこない。スマシオと呼ばれているらしいこの区間で有名なのはアウトカーブから狙うポイントだが、高いフェンスを超えるための脚立が必須であることから、事前にストビューで確認しお手軽なこちら側を選んでいた。天気もイマイチだし滅多に見られない関西の電車たちを撮影しながら、あと2時間ヒマを潰そう。




形式はパッと出てこないが、新快速にも入るすげー速いやつ。でも走っているのは緩行線。
2024.4/15  山陽本線  須磨〜塩屋   EOS6D 100-400mm

 何本か列車たちを見送り、そろそろ飽きてきたころ、遠くのカーブから赤いディーゼル機関車が近づいてくるのが見えた。予定までまだ1時間以上あり油断していたが、慌ててファインダーを覗き撃つ体制に入ったが、どうも様子が違う。DD51じゃなくDE10、しかも牽いているのは濃緑の客車ではなくチキ×2両。工臨のようだ。




2024.4/15  山陽本線  須磨〜塩屋   EOS6D 100-400mm

 あれは一体何だったのか?そしてどこに向かうのか? すぐに調べてみると厄神工臨とのこと。厄神?やくじん? どこかで聞いたことのあるような駅名。そうだ! 廃止まで二軸レールバスが活躍していた三木鉄道の起点、加古川線の厄神だ。覚えていたのは、学生時代、青春18きっぷで西日本を巡っていた時、その三木鉄道に乗るために下車していたからだ。そしてこの厄神工臨のこの先の時刻を確認すると、加古川線にダイレクトに入線するのではなく、一旦加古川を通り過ぎて4駅先の御着というところで時間を潰し折り返すとのこと。加古川駅構内の信号とか配線のための措置と思われるが、そのおかげもあって、ここでこの後の網干訓練を撮影し、追っ掛けると無理なく加古川線内でこの工臨も撮影できることが判った。一発終了の予定だったが、一挙両得。まだここで1時間以上も潰さなければならないが、少しモチベーションがUPした。




置き換えの噂もあるHOT7000「スーパーはくと」。130km/hの新快速を煽るバケモノ気動車だ。
2024.4/15  山陽本線  須磨〜塩屋   EOS6D 100-400mm

 そろそろ時間は本日の目的である網干工臨が出発しているころ。しかしどの情報源を見てもDD51がー、とか「なにわ」がー、など一つも書かれていない。隣りにいた先着さんもとっくに引き上げられている。そうだよな・・・ ド素人の関東テツがそうそう容易く、遠い関西のネタなんて手にできるはずもない。でもまさかということもあり得るので、ここはやはり自分の目で確認しないと気が済まないため、通過予定時刻を10分過ぎまで待機し、「本日の運転は無し」を確認。怪我の功名というか、今度は先ほどの厄神工臨を押さえるべく駅に向かった。

 やって来た電車に乗り換え、厄神工臨の後を追う。学生時代、何度も西日本を18きっぷで旅した際、美味さに感動したあの有名な姫路の立ち食いソバを頂くために足を延ばすことも考えたが、ソバを喰う時間はあるものの、加古川線の本数が絶望的に少なく、接続を逃さないため諦めざるを得なかった。加古川駅着。加古川線用のホームに上がると、関東では見なくなって久しい103系の2両電車が満員の乗客を乗せて待機していた。懐かしい直流モーターの咆哮を楽しむこと約10分。33年前にも降りた厄神駅に到着。同業者数人と下車した。この区間の撮影地は初だったので、塩屋の撮影の長い待ち時間中に調べた厄神駅手前のスポットに向かう。真っすぐで長閑な田んぼ道を1kmちょっと歩き現場に着いた。晴れていれば真逆光であるが幸いなことに今日は見事なまでの曇り空。計10名ほどで列車を待っている間、近くの方とテツ的な世間話をしていたが、はるばるやって来た情報に疎い関東テツは、ほとんど内容を理解することができなかったが、「この厄神工臨はまぁまぁの頻度で設定される」ということが唯一理解できた情報だった。




3000両以上の仲間もいた103系は、ここ加古川線の3550番台と播但線、筑肥線のみ。そう遠くない将来には置きえられてしまうのだろう。

2024.4/15  加古川線  神野〜厄神   EOS6D 100-400mm




5時間以上前に向日町を発った工9362レ
。目的地である厄神はもう間もなく
2024.4/15  加古川線  神野〜厄神   EOS6D 100-400mm

 うーん・・・・   感動も充足感も全く無いな・・・。国鉄型機関車が牽く工臨も珍しいっちゃ珍しいが、まぁまぁ、満足したことにして帰路に着こうか。と、機材撤収を始めていると、あっ!! 18年間苦楽を共にしてきた三脚のクイックシューが手から滑り落ち、視界から消えていったのだ。落ちた瞬間、ポチャンともカチャンとも音がしなかったので極近辺の草むら内かもと思い、10分ほど探していたが発見できず。諦めることにしよう。帰路は厄神には戻らず若干距離の近い神野駅へ向かい、やって来た普通電車で加古川へ。三ノ宮の朝マック以来何も食してこなかったが、駅前には唯一の飲食店である吉牛があるのみ。牛丼って気分ではなかったので仕方なく入店したが、食事を終え店を出て気が付いたのは、こちらと反対の南口のほうが栄えており、もっと選択肢があった様子。後悔しても腹は減らせることはできないので、諦めて西明石まで移動し、混んでいる「のぞみ」を避け、時間はかかるが自由席が多くいつでも座れる「ひかり」で帰還した。

 後日、厄神の草むらに消えたクイックシューを調達しようとアマゾンで雲台の型番を入れて検索すると、18年前の製品だからか該当する物はなし。SLIKのお客様問い合わせセンターにメールにて互換品を聞き、無事¥1600でリプレイスを購入することができた。