長距離走行前の整備日誌
一般的にクルマと違ってバイクは寿命が短い。小排気量ゆえクルマのエンジンより高回転なのもその理由の一つなのだが、概してメーカーは長年二輪車を酷使するように作られているような気がしない。特にスクーターは乗りっぱなしでも近距離を長期間乗れるようにユーザーを絞っているようで、オレのような長距離酷使ライダーは眼中にないっぽい。そんなわけでメンテナンスは常日頃自分で行い、手は入れているつもりだが、2000km以上のロングツーリングの前にはやっておかなければならないことが沢山ある。旅先で不具合を感じても極度なストレスとなるからだ。主に主要な消耗部品の交換になるが、ビックスクーターの場合、それが2万kmが目安となっているようだ。我がForzaも購入から2年経ち、先日の羽越線「あけぼの」撮影の旅程中、新潟市内で目出度く2万kmを達成したばかりなので、今回の整備も主要なパーツから見ていきたいと思う。
1・スパークプラグ
気化したガソリンにパチンと放電による着火を目的としたアレである。サービスマニュアルでは1万km毎の交換を推奨しているが、自分のForzaは2万km、一度も交換していない。別に横着なわけではない。このForza=MF10のプラグは特殊なのである。MF08から大幅に変更されたエンジン。中でも2バルブから4バルブへと大きく移行した。4バルブになるとシリンダーヘッドの燃焼室もバルブに占拠され、従来のスパークプラグでは設置場所の確保が難しくなる。そこでMF10ではロングリーチタイプという特殊な形状のプラグが開発された。その名もLMAR8−9といい従来のCR○○とかDR○○とは全く違う型式である。ほぼMF10専用に開発されたといってもいいほどで、市販の汎用品にラインナップは当然ないので、HONDA純正を手に入れる必要があった。勿論バイクパーツ屋などにも在庫は無く、1年ほど前、プラグという重要部品なので念のためにHONDAのバイク屋に発注して購入しておいた。従来のスパークプラグは店頭価格\400〜\1000ほど。しかしこのLMAR8−9は純正部品オンリーなので¥1800ほどと高価だった。
まずはプラグ交換のためサイドカウルを外す。通常ならプラグ専用のメンテナンスリッドを開けて・・というのが一般的ではあるが、MF10はまずカウルを取り払う。ツメを折らないように注意してカウルを外すとすぐにプラグキャップが見える。
まずはこの左サイドカウルを外す。
外すといろいろ穴が見える。
穴からのぞくとシリンダーヘッドに突き刺さるプラグキャップが見えるので引っこ抜き、レンチで交換。
誇らしげなGENUIN(純正)の文字。特殊タイプなので価格が高い上に汎用品が無い。
2万km使用したスパークプラグ。摩耗して丸っこくなった電極がお判りだろうか?
カウル脱着+プラグ交換は10分で終了。特段難しい作業ではない。慎重にやらなければいけないのは、新品のプラグのガスケットの潰れ具合で、なかなか手応えを感じ辛い。トルクレンチがあれば簡単なのだが、そんな物持ち合わせていないので少しづつ力を加えては戻しを繰り返しながら「アタリ」を感じ取った。それを怠るとネジ山をナメ切ってしまう。そうなればシリンダーヘッド交換という一大事なのでこればっかりは慎重にやる必要があった。試運転のつもりで近所を一周しても交換前との変化は感じられない。まぁ消耗部品の交換なんてそんなもんだ。
2・リアブレーキパッド
生命を預かる重要部品である。マニュアルでは車体後部からキャリパーを覗き、パットの摩耗限界線を確認とはあるが、かなり奥まっていて目視できない。以前新車で購入してから14000kmで交換しているので、2万kmでは2代目パッドはまだ平気だと思われるが、念のためキャリパーまで分解して確かめることにした。
マフラーを外さないとキャリパーまでたどり着けないのでこいつを外す。
で、直管状態。ここまでは小学生でもできる簡単作業。
思った通り厚みは全然ある。交換せずにそのまま使用することにした。
キャリパー固定のボルトには必ず緩め防止剤「ネジロック」を塗布。命に関わりますのでこれも慎重に。
元通り組み付けて終了。もしパッドを交換する場合には必ず対で交換のこと。またアタリを付けるため最初は通常使用を控えて、ブレーキの慣らしを行わなければならない。作業自体は簡単だが、重要保安部品なのでくれぐれも慎重に一つ一つ確認しながら行っていただきたい。一方フロントのパッドはホイール前側から覗くと残っている厚みは見てとれる。こちらも充分厚みは残っていた。以前乗っていたMF08は4万kmで交換した程度であり、リアに比べると3倍の寿命がありそうで、今回フロントのパッドは確認のみに終わった。作業はリアのみでも15分あればできるだろう。
3・エアクリーナー
吸気するエアーのホコリを取り除くフィルターだ。メーカー推奨は2万kmで交換。乾式ろ紙タイプなのでスポンジ湿式のように洗浄はできないので新品と交換せよとの指示がある。一応交換する前に確認だ。ちなみにこのMF10、定期的なメンテナンスが必要な箇所の整備性は非常に悪い。このエアクリもスパークプラグと同様、ボディカウルを剥がして半裸状態にしなければならない。手のかかる子ほど可愛いというが、デザインを重視したいというデザイナーとエンジニアの絶妙な妥協点が垣間見えてこれまた楽しい。
脱がして脱がしてようやく現れたエアクリーナーケース。最後に8本のスクリューを外す。
そして出現したフィルターエレメント。交換時期だが意外に汚れは少ない。
とてもキレイな状態だった。エアクリが汚れたままだと濃い目のガスになってしまい燃費の悪化と出力の低下を招くので、少しでも汚れていたら交換しちゃおうと思っていたのだが、ここまできれいな状態だと「いっそ洗ってしまおうか」という良からぬ知恵が芽生えてきた。¥3500もするしね。ということで外してエンジンコンディショナーをろ紙全体にたっぷりと吹き付け、しばらく置いた後に水道水で流しながら毛の長いブラシでゴシゴシこすった。気持ち汚れは取れたように見える。水気をよく切ってから取り付け、カウルを元通りに組み直して終了した。
4・タイヤ
いちばん重要な点検項目であると思う。出力を路面に伝えるという重要パーツだからこそ、即、そのコンディションが走りに影響する。指定空気圧に不足してしまうと走行抵抗は増え、燃費悪化と走行性能に支障をきたす。自分は月に一度はエアゲージを使って規定圧より0.25高めにしている。特に長距離走行前には必ず確認しておきたい。ホームセンターで買った安物のバイク用の空気入れには一応圧力計がついているが、精度がかなりプアーなので専用のエアゲージを用いて計測する。こちらも安物で¥500くらいだったが、信頼度と安心感は格段の差がある。
こうやってゲージをプシュッと一発バルブに押し当てる。
指定圧は一人乗車時2.0kPa。二人乗車時2.25kPa。高速連続走行に備えてご覧の数値にした。
空気圧測定は終了したが、心配事がもう一つある。タイヤの溝である。以前タイヤを交換したのが1万km。すでに同じ距離を走行しているので換え時であるかと思われるが、今使用しているのはリプレイス用の中国製タイヤだったが、これが意外に持ちが良く、このまま旅に出ても3000kmくらいは持ってくれそうな予感がした。なので今回は交換はパス。
スリップサイン。ここだけ溝が浅くなっており、ここが周辺と高さが一致したら交換時期。
5・オイル交換
こちらは交換したからといってすぐに走行に影響するものではないが、前回交換より5000kmほど経っているので、整備ついでに新しい血液を入れてしまおう。じつは久留里線の帰りに寄ったバイク屋で、目当ての純正オイル「E1」が品切れだった。別の純正である「Gシリーズ」でもいいのだが、こちらはMA級。E1などのMB級推奨のForzaにMA級を入れても大きな問題は無いのだが、以前MAのオイルを入れた時、どこかしらエンジンノイズが大きくなったような気がした。なぜならMAは湿式クラッチを使用する一般の二輪車用の化学合成油。一方MB級は乾式クラッチを備えたスクーター用の部分合成油で、クラッチを潤滑しない前提で摩擦係数が低くなっているそうだ。つまりMA級をスクーターに入れるとエンジンの負担が大きくなる。これから長距離を走るわけだし、ストレスを感じながら走りたくないので、どうしてもE1を手に入れたい。すると2件目に訪れたホームセンターで同じくMB級の純正「S9」が売られていた。こちらはE1よりグレードの高いオイル。1缶¥600ほど高かったが、探しているヒマもないので仕方なく2本購入した。
エンジンの真下にあるドレンボルト。このボルトを抜くとオイルが排出される。
廃油処理パックもいいのだが、自分はいつもコレ。バケツに水を張りごみ袋を装着。
ボルトを抜いてオイルを排出。暖気をしておくと粘度が下がり抜けやすい。
付着したゴミの噛み込みでオイル漏れを防ぐために、ドレンボルトはパーツクリーナーで洗浄。
全容量とはオイルフィルター交換時、ろ紙にしみこむ量も含まれている。今回は1.3リットル。
燃えるごみに出しましょう。油100%なので良く燃えそうです。
オイル交換も非常に簡単な作業だが、注意点はダストをオイルパンに入れないこと。オイル通路をふさいで潤滑不足が起きたり、シリンダー内に混入しメタルに傷が入る可能性がある。
6・グリスアップ
負荷のかかる部分にグリスを塗り込む。2輪車に使うものとしては主にモリブデングリス、シリコングリスの2つがある。モリブデングリスは固体である二硫化モリブデンが配合され、それがコロのような役割を果たしてくれるので、荷重のかかる極圧部に使われる。ベアリングやピポッド部分に用いることができるが、鉱物油をベースにしているためゴムや樹脂などを浸食しやすい。金属同士の接点の潤滑に適している。というわけでモリブデングリスをブレーキレバーのピポッド部分へ塗布。これを定期的にやってやるとブレーキレバーのタッチが非常に気持ち良く、新車の感覚がよみがえるのでお薦めだ。
シリコングリスはその名の通りシリコンをベースにしているので樹脂部やゴム類の潤滑、劣化防止に最適だ。防水性もあるので万能のように思えるがモリブデングリスほど耐圧性はない。今回はアクセルグリップの擦動部分と、アクセルワイヤーのブーツ内に封入した。こちらも新車時の滑らかさが復活して快適になる。またコーティングの役割もするので、劣化防止のためにエアクリーナーのゴム製のドレンバルブにも塗布する。小さいことだが外気にさらされているゴムなので劣化しやすく、1年も経つとカピカピのボロボロになりやすい。買っても¥200くらいなのだが面倒なので保護しておきたい。
本日はこんな程度。こまめな点検、手入れで愛車の寿命は確実に延びる。またトラブルも発見しやすいので、休みの日で曇ったり写欲の湧かない日だったりしたらこうして手を入れてやっている。旅から帰ったら、ドライブベルト、タイヤ、ブレーキパッド、エアクリ―ナーエレメント、オイルフィルターなどを替えリフレッシュしようかと思っている。また工具については、自分はホームセンターで¥1000くらいで買ったソケットレンチセットを10年以上愛用している。またシグネスゲージ、エアゲージ、プラグレンチ、テスター、フットポンプなどの備品も安物ばかりを揃えている。これでエンジンオーバーホールも問題なく出来てしまう。よく、こだわって¥ウン万する工具セットを手に入れ萌える人がいるが、自分はこれぐらいで十分だ。無くなったり壊れたりしたら単品で買い替えれば全く問題ない。
それでは快適になった愛車でお出かけしようではないか!?