また冬がやってきた。今年の冬は暖冬だった昨年よりは降雪は多いものの、平年よりは積雪量は少なく、年が明けても新潟県山間地域は1mに見たない状態だった。年明けに一度、ドカ雪は降ったが、一晩だけっだたので溶けてしまったのか断続的に積雪は続いているのか、現在の積雪状態を見るために、今年一発目の新潟入りを試みた。毎日新潟の天気概況はチェックしているので、ほぼ毎日雪は降っているのは分かっているのだが、乾雪、湿雪、あるいはミゾレを繰り返しており、累計積雪量はいまいち想像できない。いちおう只見線県境近くの大白川の積雪量のサイトがあるので、こちらも毎日確認しているが90cm周辺を微妙に増減をしている。ラッセルは今シーズン何度か走っているようなので、現地偵察ついでにDD15も撮れればと、軽い気持ちで新潟に向かった。
深夜2時、仕事終了。急いで自宅に帰り出発の準備。別に急がなくてもラッセルには間に合う時間だが、ETCの深夜割を効かせるには3時前に家を出たい。第三京浜、環八を飛ばし、関越道新座料金所を割引失効10分前に無事通過。渋川伊香保ICを過ぎた頃から雪が降り出した。道路情報では石打塩沢から先がチェーン規制とのこと。山の向こうでは順調に降雪は続いているようだ。長い関越トンネルを抜けると、雪は力なく降っているだけで、追い越し車線が少し白くなっている程度。大したことないな。ラッセルが出動する程度ではないので大和PAで2時間ほど仮眠。小出駅に立ち寄った後、大白川へ。道路は圧雪で走りやすく、大白川に着くと情報通り1m未満の積雪。ラッセルの排除した線路脇の雪もまだまだという感じ。時期的にもう少しのようだった。まだ時間は9時で時間もあったので、国道17号の三国峠を越えて、渋川伊香保ICから関越に乗って横浜に帰った。
あれから1週間以上が経ち、毎日チェックしている天気予報ではほぼ毎日降雪は続いているようだったが、気温が高いらしく、積もる前に溶けているようだった。この夜、本格的なまとまった雪ということだったので、新潟行きを決定。前回と同じく深夜まで仕事の後、関越に乗った。しかし群馬県に入った頃、睡魔に襲われ運転に危険を感じ、駒寄PAで1時間の仮眠。その後も半分仮眠状態で関越トンネルを抜けたが、再び石打塩沢SAでノックダウン。シートを倒した途端に気を失い、起きたら昼前だった。もう只見線ラッセルも間に合わない時間だったのでSA併設のインターで高速を降り、料金所を出てすぐにUターン。ただ帰るのはもったいないので、電機の運用を調べるとEF65535が高崎線に入っているようなので、藤岡ICで降り、例の鉄橋へ。しかし雨足が強くなり、そのままどちらの目的を果たすことなく帰路に就いた。
排雪列車といっても大きく2つに分けられる。まずラッセル車。くさび形をした先頭形状をしており、走行する勢いで線路に積もった雪を跳ね飛ばす。また先端部分に開閉可能なウイングもついており、車両前面で押しのけた雪をさらに横に跳ねることができる。主な車両はDE15、DD15、DD16。西は山陰地方から青森、北海道と幅広く分布する。出動回数の多い只見線、米坂線では降雪があると大体翌朝には出動するので、天気予報を見れば、ほぼ出動を特定できる。
次にロータリー車。連日の降雪でラッセルが跳ね飛ばした雪が線路脇に溜まってくると、雪壁となり、効率的な排雪が出来なくなる。そこでこの雪壁をウイングで切り崩して、遠方に雪を飛ばすのがロータリー車の役割。特殊排雪列車=特雪(とくゆき)と呼ばれ、DD14、DD53などが存在する。特雪は雪が降ったから即出動というわけでなく、線路際の雪壁が決め手なので、出動を予測して撮影するのは極めて難しい。最も機会の多い只見、米坂線でも1シーズンに数回程度。暖冬だった昨年では、全国で只見線に1回だけ特雪が走っただけであった。
そんなわけでいつも特雪狙いのつもりで新潟入りしているのだが、今まで一度も撮影できたことがない。今年こそはと願いつつ、今夜も新潟行きの出発準備をしていた。前日にまとまった雪があったので、ラッセルくらいは走るだろう。そういえば1月23日に北上線で今年第一号の特雪が運転されたとのこと。気温も一月後半に入って冷え込むようになり、天気概況でも湿雪、ミゾレのマークがなくなってきて、乾雪の表示が増えてきた。雪壁も高くなりつつあるようで、そろそろではないかと思われる。秋田県の北上線なら諦めがつくが、毎日仕事の日は掲示板を見ながら、どうか特雪よまだ走らないでいてくれ!と願っていた。一度特雪が出てしまうと、その線には数週間走らないのだから。また特雪は降雪が続き、一旦冬型の気圧配置が緩んで雪が降っていない時に走ることが多いらしく、今日がまさにその日。前日まで1週間降り続いた雪だったが、あしたは曇り。仕事は休み!だんだん特雪に近づけているような気がしてならない。
またまた深夜2時半出発。いつものように関越に入り道路情報を聞くと、小出から先がチェーン規制。ん? 平野部で降っているのか? トンネルを抜けると少し雪は降っているが、アスファルトが見える程で、積雪は少ない。小出ICで降り、小出駅を目指す。この時間、特雪があれば駅構内にスタンバイしてるはずだが、駅に向から跨線橋から横目で構内を見るが、DD14の姿は無い。掲示板でも只見線ラッセルの目撃情報は無く、勢い米坂線を目指すことにした。距離にして150km。今からでも米坂ラッセルにはギリで間に合う。すぐに高速のインターを目指し北上。新潟市内を通過し、ETCの通勤割引を適用させるために新潟空港ICで降り、すぐにまた日本海東北道へ。米坂線越後金丸に到着したのはラッセル通過10分前だった。
雪221レ。特雪があれば次の越後金丸で交換だが、本日の運転は無かった。
2008,1,28 米坂線 越後金丸〜小国 EOS5D 100-400mm
次の日、早朝の仕事前に携帯で掲示板を見ると、昨夜の見たままカキコで、新津常駐のDD14の姿が消え、どこかに行ってしまったとの情報があった。マジかよ〜!! 特雪は今日なのか!? あと1日遅く行けば初特雪を拝めたのに無念極まりない。あー今頃新潟では・・・と考えると仕事が全く手につかなかった。しかし結局この日も特雪は出ず、DD14の深夜の徘徊は謎のままである。
念願かなってついに初対面。本日はDD14328。プッシャーを務めるのはDE101680。
2008,1,31 只見線 小出 EOS5D 100-400mm
一番列車421Dの到着を待つ。出発準備も整い、これから先の白魔との戦いに闘志を燃やす。
2008,1,31 只見線 小出 EOS5D 24-105mm
まるで昆虫のよう。目的地、只見へ睨みをきかす。
2008,1,31 只見線 小出 EOS5D 24-105mm
小出駅での撮影を終え、車に乗り込み先回り。有名な薮神の跨線橋に着くとすでに10名以上のテツがDD14を待ち構えていた。降る雪は一層激しさを増し、容赦なく撮影機材に降り積もる。普段ならカメラを濡れないよう気をつけるのだが、今回だけはどうでもいい。EOSが死んでも構わない。せっかく出会えた特雪の姿をCMOSと記憶に焼け付けよう。やがて踏切が鳴り、遠くにヘッドライトが見えた。しかしなかなか近づいてこない。すでに作業をしているようで、パタパタというロータリーの音がゆっくりと近づいてきた。
まだ雪との戦いは始まったばかり。平野部でこの雪の量はハンパじゃない。
2008,1,31 只見線 薮神〜越後広瀬 EOS5D 100-400mm
振り返ると、DD14のウイングが作った美しい造型の雪壁が出現。鉄路を切り開く。
2008,1,31 只見線 薮神〜越後広瀬 EOS5D 100-400mm
さて追っかけ開始。跨線橋のテツたちはそれぞれ車に分乗して猛ダッシュを開始。自分は濡れたカメラとビデオの撤収に手間取り、一番最後になってしまった。国道に出て追撃を開始し、およそ2分。先ほどの撮影地から500mほどですぐにDD14を追い抜いた。ほぼ全線に渡って作業をするようで、スピードはかなり遅く、この先、何ショットでも稼げそうだ。しばらく進むと、先ほどの追っかけ集団は小さな川を跨ぐガーター橋のたもとで陣取っている。駐車スペースが無かったので、自分はそのまま通過。まだ誰も先客のいない魚沼田中のホームで待ち構えた。
DD14が「なんでやねん!」とツッコミ。駅通過のためホーム側左ウイングをお茶目に閉じた。
2008,1,31 只見線 魚沼田中 EOS5D 100-400mm
大倉沢鉄橋はあえてやめて、その小出方のインカーブで。山間に入りだんだん雪深くなってきた。
2008,1,31 只見線 魚沼田中〜越後須原 EOS5D 100-400mm
ようやく雪原から姿を現したDD14。向こう側に投雪するものと思っていたら、こっち側に攻撃してきて自分を煙に巻く。
2008,1,31 只見線 上条〜入広瀬 EOS5D 24-105mm
神社の鳥居にも容赦なく雪をあびせていた罰当たりな特雪。冬神と言われるくらいだからこれも許されるのだろう。
2008,1,31 只見線 上条〜入広瀬 EOS5D 24-105mm
柿ノ木手前の大カーブ。DD14328は前方投雪型。ピュ〜とした細い放物線状の雪が特徴。
2008,1,31 只見線 入広瀬〜柿ノ木 EOS5D 100-400mm
シンボリックなコンクリートアーチを渡る。
2008,1,31 只見線 柿ノ木〜大白川 EOS5D 24-105mm
「ランランラ〜ン♪」 大好物の雪を食べてご機嫌な様子のDD14。最初の休憩地、大白川はもうすぐそこ。
2008,1,31 只見線 柿ノ木〜大白川 EOS5D 24-105mm
大白川場内信号付近で最後の撮影をし、一安心。追っかけは終了したので、のんびり車に乗り込み大白川駅へ。ここで対向普通列車と交換し、ついでに駅構内の除雪もDD14でやるそうなので、駅撮りをしよう。車を駅前に停めホームに出ると、ホームに到着するはずの特雪は場内入り口のポイント上で停車し、ここで交換の423Dは当然出発できなく抑止を余儀なくされている。どうしたのか?聞くと特雪が構内進入時に開きっぱなしの左ウイングで出発信号をなぎ倒してしまったというのではないか。かわいい奴め! あたふたする保線員を尻目にDD14は反省のアイドリングをしながら前へ並え。倒壊した信号柱はグニャリと曲がり、特雪のパワーを見せ付けていた。
「オレ知〜らねぇ」と黙んまりを決め込む憎めない奴。それがDD14「ロータリー式除雪用ディーゼル機関車」
2008,1,31 只見線 大白川 EOS5D 24-105mm
DD14はしばらくして構内に移動。423Dに開路を作り、点検タイム。指令と連絡をとる保線員の会話を盗み聞きすると、ウイングに異常は無いらしく、このまま終点只見を目指すようだ。この先は六十里越えの冬季閉鎖道路のため、追っかけはここまで。只見に向けて発車する特雪に別れを告げた。初めて出会った特雪。想像していた過酷な白魔との闘いを目の当たりにすることができたが、その反面、でっかい目をした人間味あふれるかわいいDD14をますます好きになった。また来るよ!高性能排モの登場でこの先永くはないだろうけど、もう一度違った角度からお目にかかりたい。