来るのか!? ムーミンの試運転。
2008,12/2
 こんなに不安を抱いて撮影に出発するのは特雪以来だろう。時刻表にも載っていない列車シリーズ!
来年1月、高崎のマスコットであるEF551がついに引退することになった。重大な故障(コンプレッサーらしい)を抱えてしまい、一昨年の秋以降、本線上であの愛らしい姿を見ることはなくなり2年が経った今年10月、突如大宮で全検を受け出場した。美しい姿に復元されたが、それは自分の引退セレモニーのためという、何とも無情な運命である。まぁともあれ今年12月から来年1月まで高崎、上越、信越横川の各線でほぼ毎週末にEF551のイベントが予定されて、俄然注目される存在になってきたので、かくいう自分も「EF55碓井号」の土曜日を休みにしてたりして、密かに撮影を楽しみにしていた。しかし長い眠りから覚めた機関車。まして車齢70年を過ぎた電機が毎週末だけだが営業運転に入るとなっては、当然事前の試運転が当然必要になってくるだろう。と、調べると偶然なことに本日すでに試運転があったようだ。しかも驚いたことに牽引したのは、本番で予定されている「ばん物」や12系ではなく、なんと旧客であるという。いわゆるシテンでカン無し、雑客4Bというヤツ。しかも事前の情報流出が少なく、沿線は非常にマターリとしていていた模様。なんとも羨ましす! さらに調べるとこの試運転は12月2日か4日のどちらかに2度目があるという。自分は12月2日が休みだったので、勝率5割に賭け、深夜の関越道を急いだのであった。
 今日は懸念していた環八の工事渋滞も無く、スムーズに上州入りすることが出来た。渋川手前の駒寄PAに午前4時到着。3時間ほど車の中で仮眠して7時過ぎに出発。渋川インターを降りた。もし試運転があるとすれば「SL奥利根」のスジでやって来るっぽいことは分かっていた。まだまだ通過時間まで2時間以上あるが、万一今日が試運転の日で情報が広まっていた場合、場所取りも心配だったので、早め早めの行動を心がけた。っていうかウヤであるという可能性も全く無い訳ではない。ドキドキしながら国道18号を右に折れ、いつものSカーブに到着するとすでに20人以上の長タマの砲列が出来上がっていた。安堵。こんだけ人いるんだから試運転は4日ではなく今日で間違いない。と、ここで新たな不安材料。「場所、ねぇじゃん・・」 すでにベストな位置には2重3重のひな壇が出来ており、隙間なんてどこにも無い。しょうがないので少し離れた所に三脚を立てると、ここは注意しないとバックにお墓とケーブルが写ってしまうポジションだった。でも場所はここしかないので、その墓バックポイントで2時間ほど寒さに耐えながら、(多分)やって来るEF551を待ち構えた。



いつものように朝の一発目はカメラの暖機運転から。練習だが湘南色115系も貴重な存在。
2008,12/2  上越線   岩本〜津久田   EOS5D  100-400mm



キターッ! 検査上がりで超ピカピカ。本当に引退するとは、にわかに信じられない。
2008,12/2  上越線   岩本〜津久田   EOS5D  100-400mm

 列車が通過するとテツ車は一斉に蜘蛛の子を散らすように国道18号へ走り去った。沼田駅では5分程度の運転停車があるので自分も追っかけ。沼田市内を抜け月夜野ICから関越道に乗り次の水上ICで降り、景勝として名高い諏訪峡に間に合った。やがて渓谷の向こうからEF551のヘッドライトが見え始めると、丁度今到着した追っかけ組が間に合わなかった腹いせに、クラクションを連発。ビデオには下品な負け犬の遠吠えが入ってしまったが、スチルはV。こういう時にこそ「ザマーミロ」だ。



秋は終わって冬枯れの諏訪峡を行くEF551+旧客試運転列車。
2008,12/2  上越線   水上〜上牧   EOS5D  24-105mm


 諏訪峡の撮影を終え、折り返し上りまで3時間以上ある。ちょくら水上での方向転換を見に行こうと駅まで車を走らせた。到着するとすでにEF55は転車台に載るところで、その一部始終を観察した。




2008,12/2  上越線   水上   EOS5D  24-105mm


      
グルグル〜  これが水上大回転ショー


 一通り駅構内で撮ったので、上り列車の場所取りをすることにした。さっき撮った諏訪峡の反対側には冠雪した谷川岳が遠方に望め、なかなかいい感じだったので置きゲバしてみたが、このムーミン谷はかなり深い谷になっていたので、上りの通過時間である15時20分過ぎには恐らく陽は山に翳ってしまうだろう。しかし人が殺到することも予想されるので、置きゲバを1本。ガードレールに添えて昼寝をすることにした。しばらくして赤い西日に目を覚ました。時計は水上発車2分前。ヤバイ! 三脚を置いているとは言え通過直前に乱入とは迷惑千万だ。気まずいな〜と思いながら現場を目にすると、アレ・・たった3人。案の定線路に陽は無く、遠方の谷川岳も微妙な按配。これを撮ったら帰ろうかと思っているうち上りの試運転列車が峡谷に姿を見せた。



またあるのかな?EF55と旧客の組み合わせ。
2008,12/2  上越線   水上〜上牧   EOS5D  24-105mm


 さーて撤収して遅くならないうちに帰るべと思っていると、同じ場所で撮っていた3人のうちの1人が、猛ダッシュで「わ」ナンバーの車に乗り込み、高速インターの方へ突っ走っていった。追っかけだろう。この先は日照も厳しくなると思っていたので諦めていたが、彼の行動を見ているとさらなる深追いができるようだ。自分もEF55と、この「わ」ナンバーのレンタを追っかけた。予想通り水上ICから東京方面へ。あまり露骨に追尾すると他力本願追っかけがバレてしまうので、200mほど車間を空けてニヤニヤ。。どこへ連れて行ってくれるんだろうか? 心配を他所に月夜野、沼田を過ぎる。ここまでくればおそらく大正橋だろうが露出は得られるんだろうか? 深追いをすればするほど露出は厳しくなる一方なので、ここで一旦考え直して「わ」ナンバーを見送りギブアップ。アテも無いまま赤城ICで高速を降りた。撮影場所もまったくの手探りなので、線路沿いの道を高崎方面へ車を走らせた。右目を見やると今まさに沈まんとする太陽が、上越線の線路を照らしていた。バックには子持山。通過まであと10分ちょっとだったので、この誰もいない田んぼの真ん中を撮影地に選んだ。するとすぐに1台2台3台と続々と追っ掛け車が到着。あっという間に激パならぬミニパになってしまった。



ゴトゴト・・ゴトゴト・・ C-C台車と客車のジョイント音が心地よく響き渡る。
2008,12/2  上越線   敷島〜渋川   EOS5D  24-105mm



今となってはユーモラスだが、当時は時代の最先端を行く前衛的なイメージを持って迎えられたに違いないだろう。
2008,12/2  上越線   敷島〜渋川   EOS5D  24-105mm


 本当の最後の1発が決まって、悠々と車に乗り込み帰ることにした。朝からの緊張感も解けて心地よい満足感と疲労感に満たされている。と発進させようとすると、脇をこの撮影地に停まっていたテツ車が列車を追いかけて爆走していった。「な、なに!? まだ行けるのぉ〜」 もうこの先日没してしまう時間なので完全に諦めていたが、どうやらまだ撮れるらしい。確かに次の渋川で20分以上停車するが、すでに太陽は沈んでおり渋川出発後では流し撮りでも厳しいと思う。しかし皆の必死さ加減から諦めてはいけない不屈の精神を学び、自分も倣って追っ掛けることにした。国道18号に出て渋川市内で先行のテツ車は渋川駅方面へ左折して行った。なーーんだ、駅撮りかぁーとそのまま国道を南下。まだ17時前で帰るのには早過ぎたので、写真は撮らず適当な踏み切りで見送ろうと、何とも贅沢な「見るテツ」をすることにした。日本に1機しかない超旧型電機が、これまた同様超貴重な旧型客車を牽引するシーンを、写真を撮らずただ「見る」だけ。あえて至高の時を過ごすことにした。渋川から南へ3kmほどの田んぼに到着。すでに3人のテツが見るテツ・・かと思いきや、カメラを構えてスタンバイしている。太陽は完全に没し空は怪しい紫色で、今日最後の光をかすかに放っている。カメラを持ち出し露出を計測してみると・・・「お、行けんなぁ・・・」。何とか流しで撮れそうだ。ならば早く来い。30秒ごとに露出が1段づつ下がっていく状況の中、踏切が鳴るのを待った。来た! 直前に確認するとISO1600、絞り解放、1/15秒。走行写真には限界の暗さで、列車に合わせてカメラを振った。どうだ!



やっつけで撮ったこの一枚が、本日の一番のお気に入りになりました。うぅ〜寒い。帰ろう!
2008,12/2  上越線   渋川〜八木原   EOS5D  24-105mm


 心から楽しめた一日になった。本番運転の12月27日の「EF55碓井号」も出撃予定だったが、今日でだいぶ満足してしまった。きっと本番当日はどこもパニック状態で、区間も短く1往復なのでまともな写真は撮れないだろう。また派手なヘッドマークが付くだろうし牽くのは12系。一方。本日は旧客カン無し。しかも試運転なので非常にマタ〜リ。本当に今日来て良かった。あと2ヵ月後には引退するムーミンと過ごした幸せな一日でした。