夢ノチョウトッキュウ。0系新幹線リバイバルカラーを追った!
2008,8/18
 23時、バイクに火を入れ東名の横浜町田ICを目指した。目指すは漠然と近畿地方とだけ決めて。今回、奇跡の3連休をゲットしたので、なかなか行けそうで行けないJR西の国鉄色を追い求める旅に出た。ターゲットは、国鉄色381の唯一の定期運用「はんわライナー」、リバイバル塗色になった0系新幹線、特急雷鳥485、俱利伽羅でボンネット489急行「能登」・・・。いずれのターゲットも1,2年で姿を消しそうな代物ばかり。これらを効率良くまとめて撮影したいものだが、この3日間という限られた時間では、どうも上手い案が浮かばなかったので、勢い旅に出て、その時のテンションで撮っていこうと決めた。まずは初日だけの計画を立てなければならないので、東名に入ったころバイクを飛ばしながら考えた。明日の381は編成差し替えで、普段入ることの無い「やまとじライナー」に就くので、このまま休憩せずに奈良に向かい、関西本線河内堅上で撮って、その後湖西線に移動して雷鳥かな?と大まかな計画を立てた。横浜を出て約250km、浜名湖SAで最初の休憩中、天気予報を見た。明日は晴れ、あさっては雨。明日晴れなら、新幹線0系を撮っておきたい。0系を撮るなら岡山相生間の大津トンネルは外せないので、急遽目的地変更。岡山県に向かうことになった。表定速度110km/hをキープしながら第2回休憩の新名神の甲賀SAで目的地までの距離と時間を計算。なんとこの先90km/h以上で巡航しないと間に合わないことが判明した。初の撮影地だし、先客もいるものと仮定しても通過30分前には着いていたい。すぐにタバコを消し、また真夜中の新名神をブッ飛ばした。順調に距離を稼ぎ、6時15分、大津トンネル到着。すぐに場所は分かった。先客は2名。「おはようございます」と挨拶を交わし早速セッティング。トンネルポータルのすぐ脇の斜面からは、弧を描く標準軌の線路が遠望できた。400mmの望遠に付け替えファインダーを覗くと、意外と架線柱が手前に入ってしまう。雑誌などで見るこのアングルはどうやら脚立を使用したり、400以上の超望遠を駆使しなければならない撮影地だった。しょうがないので不本意だがトリミング覚悟でアングルを決め、0系通過前に通る何本かの新幹線で練習をしよう。新幹線を撮るなんて初の経験。いつも撮影している列車の3倍近くのスピードで迫ってくるのだから、いつも通りのテクと心構えでは敗北するだろう。一体どのくらいのモンなのか、ワクワクしながら練習のぞみを待った。やがてカーブの向こうからレールがライトに照らされたと思うや否や、物凄い爆風と轟音で5m目の前を通過。圧倒されて何もできなかった。気がつくと手元に置いておいた大型時刻表とレンズのフードが風圧で吹き飛ばされていた。コイツを撮影するなんて・・・予想以上に手強いぞ!?新幹線!! すぐに作戦変更。感度をISO800に増感。シャッターを1/1500秒にし絞りは開放から一段絞ってF6.3。このスピードではAIサーボも追従しないだろうからワンショットで置きピン。またEOS5Dの連写性能では絶妙の一瞬を逃しそうなので、気合一発、連写に頼らず一本勝負に賭けることに決めた。今通過したのぞみ700系は300km/h、一方0系は220km/h。されど200㌔以上なのである。通過時間が迫る。気配を感じてからビデオの電源を入れるのは遅いだろうから、常時ONにし、スタートボタンに指を掛けて待機。その後加わった計6名が息を殺して接近する0系の気配を感じ取ろうとしていた。



こだま620号。太陽も顔を出し激V!! 一発勝負にかけて正解だった。0系よ、オレの勝ちだ。
2008,8/18    山陽新幹線    岡山~相生   EOS5D   100-400mm



 「夢の超特急」として新幹線が初めて走ってから今年で44年。その44年前から走り続けてきた元祖新幹線、0系は今年11月で姿を消す。それを記念してJR西日本に残る0系3編成が、登場時のアイボリーとブルー、つまり新幹線の国鉄色に塗り替えられ、11月まで新大阪~博多間で最後の花道を飾ることになった。1日3往復。次の2本目は15分後に博多行きとしてやって来るので、場所を移動して違うアングルを探す時間は無く、同じ場所で後追いを狙うことにする。




弧を描いて高速で去って行く博多行きこだま629号。
2008,8/18    山陽新幹線    岡山~相生   EOS5D   100-400mm


 さて午前中の0系は終わってしまった。しかし狙うターゲットはもう1本存在する。500系。1997年に当時世界最速の300km/hでの営業運転で華々しく登場したが、使い勝手の悪さと居住空間の狭さから、10年後の現在、早くも廃車が発生し始め、また一部の編成は短編成化されこだま運用に就く予定で、オリジナルの16両のぞみ用W編成は2本しか残っていない。この500系を使用したのぞみ6号まであと2時間。前日から一睡もしていなかったので、列車通過ごとに爆風吹き荒れるこのトンネルの出口でしばしうたた寝。しかし油断していると三脚が吹き飛ばされるので三脚の足を抱きながら仮眠した。



翼を付けたら飛べそうな勢いの500系。戦闘機のようなキャノピーと精悍な顔だちで、現在でも1番人気のキングオブ新幹線。
2008,8/18    山陽新幹線    岡山~相生   EOS5D   100-400mm


 この500系撮影後すぐに撤収→移動。約20分後に0系が下ってくるためだ。別の場所へ移動して撮ってみようと思った。近くの撮影ポイントでは約10km離れた千種川橋梁。赤穂市街を抜け目的地の川に架かる橋に到着すると、ちょうど目の前を0系が通過していった。しかし次々とやって来る変顔の700やN700のを見慣れてきたせいか、0系や500系を見ると、高速列車の威厳というか、純粋なカッコ良さを感じてしまう。午前中はこれにて撤収して、午後は明日の撮影に向けての移動に充てようかと思っていたが、気が変わってもう少し新幹線を撮ってみたくなった。この次の0系は博多からやって来て岡山で折り返すこだま638号。これを撮るには一番近くても岡山まで行かなければならないが、昨日から24時間以上寝ていないのでそろそろ限界である。バイクでの自力移動は到底ムリなので、ここから列車に乗って岡山まで行き、駅撮りをすることにした。近くの山陽本線有年駅にバイクを置き、切符を買って普通列車を待った。岡山までは約1時間なので、のんびり昼寝をしながら移動しようと、やって来た列車を迎えると、あろうことか3両編成の列車は超満員。無理矢理体をねじ込んでなんとか乗り込むと、車内は若い熱気に満ち溢れていた。そうだった!思い出した。この1313Mはムーンライトながら接続の列車だった。大垣、米原、姫路で順番に乗り換えるとこの列車になってしまうので、18切符シーズンは座席争奪戦で有名な列車だった。そういやこのオレも学生時代にはこの列車に十数回のった記憶がある。迂闊だった。寝るどころか、満員の車内で手すりに掴まることもできず、揺れに翻弄されながら、113系はたおやかな山陽路をのんびりと進む。岡山に到着してようやく解放。新幹線の入場券を買いホーム博多方へ移動。先客はテツ子含めた2名であったが、もともと狭い場所だったので、ここでも場所確保のためベンチで寝ることは出来ず、ひたすら睡魔に耐えながら0系を待った。



2008,8/18    山陽新幹線    岡山   EOS5D   100-400mm


帰省ラッシュも終盤の岡山駅。多くの夏休みの思い出を運ぶのも0系にとっては今年で最後。
2008,8/18    山陽新幹線    岡山   EOS5D   100-400mm


優しい目・・。永遠にその輝きを失わないでほしいが、それも叶わぬ夢。。
2008,8/18    山陽新幹線    岡山   EOS5D   100-400m


コックピットへの造形は、かのYS11にも通じるところがある。1960年代の艶めかしさ。
2008,8/18    山陽新幹線    岡山   EOS5D   100-400m

 眠気で腰が抜けそうになりながらも停車中の0系を舐め回すように撮影。このこだま638号は2時間後、こだま659号となって博多へ折り返すので隣の新倉敷に先回りし、のぞみ退避を撮ることにした。このまま新幹線に乗れば10分ちょっとで到着できるのだが、少しでも座って寝ていたかったので、再び普通列車に乗り込んで仮眠を取る。残暑厳しい新倉敷の無機質な駅舎の前でポカリを一気飲みし水分補給。新幹線ホームに上がりこだま659号の入線を待った。



のぞみ退避は失敗したので入線を。
2008,8/18    山陽新幹線    新倉敷   EOS5D   100-400m



去り行く0系におじいちゃんと孫がしきりにシャッターを切っていた。夏の想い出はできたかな?
2008,8/18    山陽新幹線    新倉敷   EOS5D   100-400m


 本日の撮影は終了。バイクを置いた有年駅に戻るため、¥1450の切符を買い、115系3000番台の快適なクロスシートで1時間ほど居眠りをしながら東に向かう。そういえばこの感覚。何年ぶりだろうか。日中の山陽本線。のどかな田んぼと遠くの山並みを望み、淡々と山陽路を行く普通列車にゴトゴト揺られる幸せ。学生の頃、18切符を駆使しイヤっていうほど乗った普通列車の旅を思い出した。そういや最近していないな・・・。時間と移動することに追われ、限られた休みの範囲内で写真を撮りまくる、そんなハードな”業”ばかりしてきたので、1時間ほどとはいえ、この普通列車は遠い日のノスタルジアを思い起こさせてくれた、夢見心地の時間だった。
 有年駅で降り、FORZAと再会。今日のこれからの計画を建てる。風呂入りたい、飯食いたい、布団で寝たい・・。とりあえず姫路に出て考えることにしよう。途中国道沿いの「いかにも」コッテリ系のラーメン屋があったので迷わず入店。昼も食べていなかったので大盛りラーメン、餃子、炒飯を暴飲暴食。店を出て薄暗くなったバイパスを、地図に載っていた宿泊も出来る健康ランド目指して走った。しかし現地に着くとそこは潰れてしまったようで、姫路駅に戻り、iモードで検索したら出てきた駅前のカプセルホテルに投宿した。¥2800を支払い泡風呂で汗を流し、ロビーでビールを呑みながらオリンピック観戦。駅寝も考えたけど、今日はそんな気分ではないし、何より冷房の効いたところで布団に入って熟睡したかった。40時間ぶりに布団に入ると、1分も経たぬうちに深い眠りに就いた。


2008,8/19

 5時30分起床。昨日と同じこだま620号を、昨日見送って撮り逃してしまった千種川橋梁で撮影するためだ。到着すると川面から発生した霧で視界はクリアーではないが、昇ったばかりの太陽が新幹線の橋脚を照らしていた。



栄光の16両時代と比べて半分以下の6両編成で余生を送る0系。かつて大勢いた仲間も減り、現在は6両×3本が残るのみ。
2008,8/19    山陽新幹線    岡山~相生   EOS5D   100-400mm



昨日も撮った500系のぞみ6号。主役の座は奪われたが、今だ王者の貫禄充分。
2008,8/19    山陽新幹線    岡山~相生   EOS5D   100-400mm

 間もなく昨日撮り逃した0系こだま639号がやって来る。今度は流してみようと事前の列車でシャッタースピードの確認。相生を出てすぐなのでスピードも遅く1/125秒でちょうどいいことが分かった。



やった!流し成功。さよなら0系。もう走っている姿を見ることは無いでしょう。きっと・・・。
2008,8/19    山陽新幹線    岡山~相生   EOS5D   100-400mm

このこだま639号で今回の撮影は終了。381や雷鳥に浮気をせず、0系に集中できて良かったと思う。今日の夜に横浜に着けばいいので、国道2号バイパス、阪神高速、西名阪、名阪国道、東名阪、伊勢湾岸、東名と、節約コースを使い横浜に着いたのは23時前だった。

今回の総走行距離 1369km