まだまだ残っていた EF65の代走運用
2026.3月某日
ある2月の平日、会社の全体会議があるとのことで関内にいた。その休憩時間、屋外の喫煙所で、数少なくなった喫煙者の同僚と談笑していると、根岸線の高架を意図せぬものが平然と通過していった。その瞬間、飲んでいたルイボスティーを勢いよく吹き出しそうになったが、同僚にバレないように我に返り冷静さを保った。何を見たかというと・・・
国鉄色のEF65・・・だと?
ゥエッ!! 新鶴見のEF65ってもう定期運用無いんでなかったかい?? 休憩が終わり会議が再開し、机の下でスマホで例の貨物サイトを覗き、EF65の項で下の方にスクロールすると・・・ 「!?」 毎日のように複数の65がEF210の代走に就いているではないか! さっき目撃したのはEF210のA101運用。夕方単機で根岸に向かいコンテナをくっつけて戻って来る日曜以外ほぼ毎日運転の列車だったようだ。てっきりEF65は昨年の定期運用終了を真に受けて調べていなかったし、自分から情報を集めることも、ここ何か月もしてこなかった。どうやら1年以上、我が地元を毎日のように国鉄色電機が往来していたのだ。そして我に返った。今日は3月9日。ダイヤ改正まですでに1週間を切っている。すぐにXで調査を開始すると、やはり今週いっぱいで65代走は終了とのことらしい。やばいやばいやばいやばい・・・ 今週の休みは平日の明後日たった1日のみ。すぐに作戦を練った。
2026.3月12日
とうとうダイヤ改正前日になってしまった。自分にとっては最初で最後。復路の2070レの根岸発は17:21と、この季節では露出が厳しいことに加え、根岸での折り返し時間も30分程度なため、桜木町〜根岸間で往復2発と行きたい。いくつか撮影地を候補に挙げたが、あまりにも地元過ぎて全て未訪問。少し早めに出発してロケハンを繰り返しながら本番を待ちたい。
昼過ぎ自宅を出発。今日は大いに晴れている。横浜市中心部であり移動時間の制約もあるので公共交通で乗り込むことにした。まずは根岸駅。ずいぶん昔、何かのサイトで見た記憶のある根岸駅を出た上り列車の工場バックの俯瞰ポイント。位置的には分かるのだが地図アプリを見てもそれらしき道が見つからない。そこを探し当てたい。駅から本牧通りを進みそろそろというところで、左手の断崖を気にし始めた。すると住宅の密集する谷戸のような地形の最末端に、地図アプリでは表示されていない崖上のエリアに抜けられる長い階段があった。登ってみると大正解。始発駅にも近いし陽もギリギリ当たりそう。でも駅から徒歩20分。タクシーでも使わなければ無理だろう。その後、山手駅、石川町駅周辺も探索して大体のプランができた。やっぱり根岸の俯瞰は移動時間からパスすることにした。
ということでまずは石川町へ。駅前からいきなり始まる坂を上り、根岸線のトンネルの直上にある施設に到着した。


「山手イタリア山公園」 なんて優雅な名の公園なのでしょう。中にはモダンでお上品な西洋建築や、色とりどりの瀟洒な庭園が紳士淑女を優しく迎え入れてくれますわよ。午後のひと時をテラスで読書しながら過ごすなんて素敵な時間になりそうだわ。
と、ここへどうみても場違いなリュックを担いだ中年男性が入園。人目を避けるように公園の片隅に陣取り一眼レフを取り出した。園内には幸せな老後を送っていらっしゃいそうな品のある老夫婦、近くの女子大の知的な学生グループが闊歩していたり、この周辺の高級住宅街に邸宅を構えていらっしゃるような成功した若い外国人カップルたちが、ゆったり流れる春の午後を愉しんでいた。自分はというと努めて空気になるよう気配を消し準備を始めた。夕映えする横浜の街並みと港を見下ろしながら、風景写真を撮っているフリをし続けていた。通過まであと20分。すると眼下から、どこかで聞いたことのあるジョイント音が聞こえてきた。「ダダン・ダダン・ダダン・・」 6連の打音のする眼下を覗くと、まだまだだと思っていた、夕陽に照らされ紅潮したEF65国鉄色が単機で通過していった! 最初は意味が分からなかったが、単純に自分の情報収集能力の低さによるもの。間違った通過時刻を信じていたのだ。しかしそこで考えた。根岸俯瞰行けんじゃないの? 次の列車で追いかければ十分に撮影地には間に合うことができる。早速石川町に戻り根岸へ向かった。
2026.3/12 根岸線 根岸 EOS6D 24-105mm
EF652083が磯子方で待機していた。ホームにはカメラを構えた同志が10名ほど盛り上がっている。さぁ歩くか・・・と跨線橋を上がろうとするが、ふと立ち止まった。「ん? なんだか・・・歩くの・・面倒くさくなってきた」 タクシーでも1000円ちょっとの距離だが、それを支払うのも勿体ない気がし、別の撮影地にすることにした。情けないことに一旦改札を出て再び入場。上り電車に乗ってここに来る前下見しておいた隣駅の山手で下車した。先ほどの石川町もそうだがこの一帯は市内随一の高級住宅街。古くから由緒ある建物が並び穏やかな時間が流れるハイソサエティな街で、煌びやかさ、というよりも品のある落ち着いたエリアだ。そんな街に降り立った下々の人間である自分。駅から徒歩5分で山手駅を見下ろすトンネル上の児童公園に到着した。駅周辺は活気があったがここは別世界で安心して撮影準備に入れる。が、その児童公園のベンチに高校生カップルが薄暗くなったことをいいことに、激しいスキンシップを始めている。彼らはその行為に夢中で、すぐ近くにいるカメラを持った不審な中年男性には一切気が付いておらず、こちらとしては幸いだが、求めあう激しさは時間を追う毎に増してきた。でもこちらはそれどころではない。往路で通過時刻を見誤った身としては、復路の情報も果たして本当に正確なのか、常に気を抜けないのである。
やがて、把握していた時間になるとEF65が駅反対方のトンネルから顔を出してきた。復路の時刻は正解だったようだ。
2026.3/12 根岸線 山手〜石川町 EOS6D 24-105mm
暗いな〜、てか空コキばっかだな〜。特に手応えや達成感も感じることなく、撤収を開始した。ニャン●ャンしていた高校生カップルはいつの間にか姿を消しており、変わって若いマダムがすっげー高級そうな犬を連れながら幼子を遊ばせていた。2070レは明日が最後になるはずだが、仕事で撮影には出撃できない。もっと早くから知っていれば・・・と後悔するでもなく、高級住宅街を後にした。
それから、週が明けてダイヤ改正から何日か経ったある日。何気なく例の運用サイトを見ると、ダイヤ改正など何も無かったかのように、新鶴見のEF65たちは当たり前のようにEF210の代走運用を回し続けていた。ガセの書き込みだったら相当タチが悪いが、少し気にもなってしまっているので実際にこの目で見て見よう。翌日。早朝からの仕事が早く終わったので、先週のイタリア山公園で「見るテツ」してしまった時刻+所用時間に合わせて根岸駅にやって来た。仕事帰りなのでクルマで来ているため迷惑にならなさそうな公園の横に路駐し車内から待ってみた。すると! 本当にEF65が時間通りに姿を現した! 廃止って言ったやつ、ウソじゃん! この日は当然「確認テツ」だけだったのでカメラを持ってきておらず、作戦を翌日の休日に決行することとした。
2026.3月24日
翌日に決行する、と宣言したものの天候とか諸事情により1週間空いてしまった。いよいよ今日こそは仕留めてやろう。正午過ぎ自宅を出発。某食堂チェーンが台湾フェアをやっているらしく、昼飯にと最寄り駅のその店に向かった。食してみると・・・失格。二度と喰わねぇ。まだだいぶ時間もあるし、どこかの街でぶらっと降りてコンビニで白昼にビール買ってチキン喰って一服したい。そういうことが許される街といえば鶴見か川崎エリアだろう。と勝手な偏見で京急に乗り川崎へ。駅周辺のコンビニで目的を達成し、キマッタところでそろそろ向かおうか、というにもまだ時間は早い。とりあえずJRに入場し尻手、浜川崎、鶴見線と濃いい地帯を通って「テツモチベーション」を上げていくことにしよう。

「お前まだいたんかよ〜!」と思わず声に出そうになった、首都圏で最も有名なスイッチャー。「浜川崎のヌシ」さん。オレが学生時代からここにいるような気が・・・
石川町で下車した。前回と同様、坂を上りイタリア山公園へ。入場し駅俯瞰ポイントに向かうと、その立ち位置から一番近いテラス席に女子高生4名が談笑しながら優雅なティータイムを愉しんでおられた。気まずいな・・・。こちらの存在を認識しているか分からないが、彼女たちの方に背を向けて絶対目を合わせないようにし、撮影準備に取り掛かる。一応ビデオカメラも持参してきたが、ここで三脚を展開するには相当な勇気が必要で、止む無くスチル撮影1本にすることにした。しばらくして通過時間。関内方から白いLEDの光ではなくハロゲンの黄色のヘッドライトが近づいてくる。手持ちなのでレベル調整に注意していると、眼下の反対の上り線を列車が接近しているのが感じられた。被られるか!と一瞬緊張したものの、単機は非常にゆっくりとしたスピードやって来るので、10両の列車だとしても、被られることはないだろう。そして・・・
2026.3/24 根岸線 石川町 EOS6D 24-105mm
足の遅い貨物列車だったため、見事なまでの被り様に茫然自失。この専貨も先行の旅客電車に接近しないようかなりの鈍足で、バッチリ上記の結果になってしまった。さてすぐに移動だ。例のJK軍団はまだティータイム中だが一目もくれることなくその場から移動し、駅へ。2駅移動し根岸に到着した。徒歩20分で例の俯瞰場所に到着。以外と早く到着してしまいセッティングも完了してしまったが、すぐそばに住宅地がありながら全く人通りはなく、先ほどとは違い安心して三脚を展開できそうだ。今日は一日中晴れだったが、夕方になると薄曇りになり露出もだいぶ厳しくなってくる。時間を追うごとに露出を1段ずつあげ、ISO1000になった17:21、2070レがゆっくり築堤を上がってきた。
また空コン。この列車はこうなりやすいのか?
2026.3/24 根岸線 石川町 EOS6D 24-105mm