DE10 最後の?本線運用  念願の石巻線貨物

2020.11/6

 積年の夢でもあった石巻線貨物にそろそろ向き合わなくなってきた。10年以上前から「死ぬまでに・・・リスト」に入れてたが、その微妙な居住地からの遠さに、なかなか足が向かなかったが、いよいよ環境にやさしいとかのハイブリッドディーゼル機関車の運用も増えてきており、少し本腰を入れて調べてみた。

 運転本数は相変わらず多く、日に7往復。しかしDE10が担当する運用はそのうちたったの2往復。さらには撮影可能時刻を考えると1655レ〜654レの1往復になってしまう。そしてもっと悪いことに原色DE10が充当される確率は1/3程度。そしてとどめはその運用がランダムで、前日に予測が全くつかないことだった。なんてこった・・。当日はるばる現地に乗り込んだとしても運次第になるとは、かなりハードルの高い計画になりそうだ。1655レは11時台の運行。公共交通機関で行く場合、仕事が連休であれば運任せで夜行バスで向かうこともできるが、現状それも難しく、当日朝の新幹線で出撃せねばならない。そこへ更新機がきてしまったら・・・。ますます足が遠のきそうになり、半ばあきらめかけていた10月後半。更新機が2連続で運用に入った。そろそろ原色も入りそうな頃合い。確たる根拠もないまま、仕事終わりの深夜。クルマで向かうこととした。

 荷物をまとめて午前0時前出発。かつては数えきれないくらいこうして深夜の高速を飛ばして各方面へ通っていたことが思い出される。深夜の東名、深夜の中央道、深夜の関越、深夜の東北道・・・。眠気の限界まで走りきり最寄のPAで仮眠し、翌朝の撮影に掛ける。そんなかつての行動を再現しているようで、久々のこの感覚が嬉しくなってしまい、車内カラオケ、真夜中のSAでの暴飲暴食など、かなり気分も高揚してしまい、目的地直前までギンギンのテンションで到着することができてしまった。宮城県、鶴巣PA、午前4時到着。そして仮眠。

 翌朝、なぜかほとんど眠れないまま朝を迎えてしまった。興奮していたからなのか、それとも車内仮眠が快適でなかったのか。ともかく頭が重いまま出発。古川ICで高速を降り、まずは石巻線への送り込み1655レを東北本線内で迎え撃つことにした。この列車、東北線内では金太郎にが本務機となり、石巻線内でこれから活躍するDE10を次位に従えて小牛田に到着。EH500はここで切り離され、無動力回送で連れて来られたDE10がそのまま石巻線内へと入って行くという珍しい形態をとっている。そのEL+DLの重連コンビ(DLはムドだが)を撮影すべく、小牛田駅近くのコンビニで軽い朝飯。撮影地を探し始めるも、どうしても気に入ったところが少なく、いよいよ時間切れになった通過直前、仕方なく小牛田から一つ手前の松山町駅付近の踏切で1655レを待つことにした。国鉄色は来てくれるのか? やがて踏切が鳴り列車が近づいてくる。すると本来先頭に立つべき金太郎の姿ではなく、なぜかDE10がコキを率いて近づいてきた。しかも原色だ! 今日の期待に胸膨らませながらファインダーを覗くと、意外にもフルコンテナを牽引しながらもとんでもないスピードで向かってきているのだった。




2020.11/6   東北本線  松山町〜小牛田   EOS6D 24-105mm

 普段なら超強力電気機関車の高速のスジでやって来る1655レだが、そのスジに乗るべくDE10が、おそらくマックスのパワーで本線を駆け抜ける姿は圧巻であった。閑散線だったり距離の短い専用線をのんびり貨物を牽引するイメージだったDE10の全力走行を見たのは初めてかもしれない。それはそうとなぜDE10の単独牽引だったのか? 調べてみると、どうも1週間前くらいから運用の差し替えが発生し続けており、通常ならこの1655レは列車番号を変えずそのまま石巻線内に入線し、1655レ〜654レと往復するのだが、ここ1週間前から、本来運用に就かない653レ〜1652レを連日こなすようになっていた。653レの小牛田出発は1655レより遅れること2時間後の13時過ぎ。しかし変則運用が突然終了し、今日から通常のパターンに戻る可能性も無いとは言えないので、念のため小牛田で1655レが出発準備を整える約1時間で、撮影場所に先回りすることにした。広大な田園風景の中を気持ちのいいドライブ。しかし天候は薄曇りの様相。初めての訪問で目的がすべて達成するわけないだろうから、今日は下見回として現地調査のつもりでの訪問でもあった。やがて到着。これぞ石巻線撮影スポット、として超有名撮影地。茅葺バックのトンネル飛び出しだ。この時間であればバッチリ順光といきたいところだが、こんな空の調子ではそれも期待できない。しかしハッキリしない空模様と同様、1655レ通過時刻になっても、10分過ぎても30分過ぎても列車はやって来なかった。ここ数日の傾向と同様、やはり13時過ぎの653レでやって来るんだろう。結局理由は定かではないが1655レの石巻線内がここ数日運休。そのまま午後の653レとして運転されていることが判明した。

 そうすれば通過まであと1時間半。朝コンビニでおにぎり1個を口にしただけなので猛烈に腹が減っているが、それにも増してとにかく眠い。少しでも仮眠しておこうと車内のシートを倒し横になり、気が付けば通過15分前になっていた。撮影場所は線路と平行する農道から。しかしあまりに幅が狭く、有名撮影地だけあって地元の方も迷惑していることが予想され、かなり遠くにクルマを停め、急ぎ足でやって来た。先客は3名。姿を見せない太陽光線は諦め、遠くのホイッスルを待った。




2020.11/6   石巻線  涌谷〜前谷地   EOS6D 100-400mm

 どんよりした空の下。先ほどの東北本線での走りには及ばないものの、それなりのスピードで1591号機は走り去っていった。さて、この列車の追跡を開始する。過去頻繁に発動した「追っかけ」ほどではないが、石巻に到着した貨物列車は、石巻港へ向かうためにはここで機回しを行いスイッチバックをしなければならない。どの列車も石巻で20分から1時間程度の停車時間が設けられている。この列車も石巻で47分の機回しタイムがある。線形と違い道路はショートカットしているので、だいぶ余裕を持って待ち構えることができそうだ。田園風景の中をしばらく走り、大都会石巻市内へ。専用線内をどこでどう撮ろうか全くリサーチもしていなかったので、ひとまずクルマでウロウロ探索開始。しかし市街地ゆえほぼ築堤上を往く列車の撮影は困難な様子なので、ならばと最終目的地である工場に入る直前の踏切まで行ってみることにした。さすがに築堤のまま場内に入る専用線などないだろう。到着すると案の定、築堤を駆け下りてくる線路が一望できた。




2020.11/6   仙石線貨物支線  陸前山下〜石巻港   EOS6D 100-400mm

 ひとまず往路の撮影を終え、復路1652レはこれから1時間後に折り返してくるのだが、この天気に加え、明日の仕事が早いこともあって、ここで帰ることにした。市内の三陸道無料区間から仙台市内へ。そのまま常磐道へ。首都圏への距離は東北道とあまり変わらないものの、山越えの無いこちらのほうが早く帰還できるものと考えていたが、いわきまでのほとんどの区間が暫定1車線のままで、先行のクルマに追いついてしまい、どんどん時間が掛かってしまう。また7.80km/hという眠くなるスピードに本当に瞼が重くなってきてしまい、途中のとあるSAで休憩。食事も今日はおにぎりくらいしか食っていないので、大盛生姜焼き定食を注文。すると本当に通常の倍くらいの大盛のだったので十分満足し、仮眠もせずに走り切り、終点の三郷料金所を通過。深夜割ではないので分かっていつつも、お会計¥1万以上に度肝を抜き、無事21時ころ自宅に到着することができた。それにしても疲れた。今まで何度も経験してきた深夜の出撃、日に1000km以上走る撮影行。体力、精神力、というより生命力が落ちてしまったような気がしなくもない。いやいや! 自身のコンディションが悪かっただけ。ということにして、次回は優雅に酒でものみながら公共交通機関で乗り込みたい、と次のチャンスをうかがった。


2020.11/19

 初の石巻線訪問を終え数日経つと、例の変則運用は終了し、ムド回送や1655レの運転が復活していた。ある休みの前日、出勤前。どうも明日原色1591号機が運用に入ることが分かった。前回の自力移動でうんざりしていたので、今さらながら夜行バスをいくつか当たってみると、どうも今日の仕事終わりではギリギリ間に合わないことが発覚した。ならば明日の朝の新幹線・・・。これでも十分1655レに間に合ってしまうのだが、夜行バスなら¥5000程度なのに当たり前だがその倍額。なんだかそのケチさ加減と現地での徒歩移動の面倒くささもあって、前回と同じく自家用車で向かうことにした。仕事が終わり帰宅。準備は済ませてあるので、シャワーを浴び、着替えて22時ころ出発。今日は常磐道で向かうことにする。深夜なのであの1車線区間でもスムーズに距離を稼ぐことができるだろう。首都高を抜けて常磐道で北上開始。すると最初に現れた電光掲示板にこんな表示が踊っていた。

「いわき中央〜広野 工事通行止め」(笑)

 も〜!!早く言ってくんねぇかな〜!!! いや、多分事前に情報は表示されていたと思うが、見落としていたのだろう。常磐道はあまり利用したことが無かったので、広野ICの位置関係がよくわかっていないのだが、幹線でもある常磐道なので通行止めはおそらく1区間。そこだけ一般道に降りて再び高速に乗りなおそうと考えたが、せっかくの深夜割が効いている今日の行程なので、勿体ないと思ってしまい、迂回して東北道に入ることにした。圏央道?北関東道?磐越道? 脳内日本地図を広げるも東西移動ではなく少しでも北に向かえる磐越道がよかろう。そこまで考えると、仕事終わりで何も喰ってきていなかったことから、設備の充実してそうなSAで爆食いすることにした。SAならこの時間でも開いているだろう。カレー+ラーメンセットか、それともラーメン+ミニ丼か。空腹というコンデションは今最高の状態。とある大きなSAに意気揚々とピットインすると、またしても悲劇が襲う。

「本日のフードコートの営業は終了しました」(笑)

 爆食いするテンションで乗り込んでコレとは、ショックで膝から崩れ落ちそうだった。しょうがないので併設されているコンビニで売れ残りのノリ弁を購入。誰もいない広いフードコートでさみしくつついた。気を取り直して出発。東北道とは全く異なり、この時間、他のクルマはもとよりトラックの姿もほとんどいない。真っ暗な3車線の道を孤独に北上。水戸を過ぎると2車線になるものの、出会うクルマは少なく、いわきJCTで磐越道に入るとさらに通行量は激減した。山々を越え郡山JCTで東北道に合流。打って変わってこちらはトラック船団が群れを成し、なかなか速度を上げることができない。前回より2時間も早く出たというのに、宮城県に入るころには前回よりも少し遅めのペースになっていた。まだ眠くはないが、菅生SAで本日は仮眠することになった。


 翌朝。今日はこの季節にしてはだいぶ暖かだったので、エンジンをかけなくても十分快適で熟睡することができた。洗面を済ませさて出発。予報では晴れ時々曇りとのことだが、現在、まさに少しの薄雲があるくらいで、撮影への期待が高まる。今日こそ送り込み1655レの無動力回送を取るべく、少し引き気味で押さえる場所を探したい。松島北ICで降り線路沿いを北上。色づく秋の風景と絡めて撮りたいと考え、駅間の撮影場所を探すも失敗。偶然にも諦めて駅撮りしようと向かっていた跨線橋からみた線路がいい感じだ。早速準備開始。




2020.11/19   東北本線  鹿島台   EOS6D 24-105mm

 広い構内がかつての大幹線の栄華を今に伝える鹿島台駅。後輩の電機にエスコートされてDE10が仕事に向かっていった。充当機は1591号機。今日もいい撮影になりそうだ。前回と違い小牛田で1時間弱の小休止のうち、そのまま1655レとして石巻線に入る。前回、天候で不発に終わった茅葺バックに急ぐ。立ち位置もベストを確保しなければいけないので、すぐに向かった。広大な田園地帯の中に時折現れる集落を結ぶ道路。現在は流路を一部変えられているが、旧北上川の巨大な氾濫原が生んだ肥沃な大稲作地帯をひたすら進む。やがて到着。通過30分前、1番乗り。今のところ太陽はビカビカに照ってくれており、少し色づきの増した木々がそれに映えていて美しい。絶対失敗してはいけないシチュエーション。念入りに構図を決めていると、後から2名の同業者がやって来た。互いに挨拶し、それ以上は言わないまでも心の中では闘志を燃やされているのが分かる。刻一刻とその時が近づく。そしてトンネルの山の向こうからディーゼルの咆哮が近づいてきた。






2020.11/19   石巻線  涌谷〜前谷地   EOS6D 100-400mm

 ロケーションは最高だったが草で足回りが隠れているし、引きだとなんだか背後の電柱の存在感が気になってしまう。茅葺も魅力的な被写体だが欲張り過ぎはダメってことですね。ともあれ日の当たり方や露出も満足したので、一応リベンジは成功と言ったところだろうか。すぐにクルマに戻り例の専用線内での撮影に向かう。市内に入り、あまり時間はないけど昼飯を喰うくらいならありそうなので、なんとなく直感でモスバーガーに入ってしまった。注文後、久しぶりに喰うモスの味に期待をしているが、当たり前だがなかなか食事が運ばれてこない。ヤベェ、マックのつもりで入ってしまった。押し迫る通過時刻! ようやく持ってきてくれたスパイシーモスセットとチキンを、味わう訳でなくガツガツとほおばり、最後にオレンジジュースで流し込む。勿体ないことをしてしまった。すぐに店を出て近くの築堤に向かった。ものの3分で現場に到着し機材をセット。煽るポイントなので出来上がりの画を想像しながらファインダーを覗き、神経を集中させていると、突然、自分の立っている1mくらいの距離に、500mlのペットボトルが物凄い勢いでバーンッ!と投げつけられてきた。高いところから落ちた、というような衝撃ではなく、明らかに誰かが自分を狙って投げつけたようだ。ファインダーを覗いていたため、そのやって来た方角は分からなかったが、ふと周りを見上げ警戒すると、付近の何軒かの住宅の窓が開いている。しばらく様子をうかがっていたが、こちらを観察している気配はなく、また列車の音も近づいてきていることから、すぐに撮影に没頭した。




2020.11/19   仙石線貨物支線  陸前山下〜石巻港   EOS6D 24-105mm

 DEの次位には空コキが4両。専用線内ではスイッチバックしてくることを完全に忘れていた。まぁしゃぁない、と機材を撤収する。撮影に集中している時、植木鉢とか降ってこないか内心ビクビクしていたが、襲ってきたのはあのペットボトル1本だけだった。ただの子供のいたずらだったのか。それとも・・・。 そういやここ数日、全国のコロナ感染者が徐々に増えつつある。以前のような外出自粛のような空気にはなってはいないが、中には趣味でやってきた県外ナンバーを苦々しく思っている方もいるかもしれない。撮影場所は周囲に人がいない状況であったが、一応マスクはしており、それゆえにペットボトルで済んだのだろうか。なんとも言えぬモヤモヤを抱えたまま、折り返しの654レまで1時間ほどあるので、場所を移動して昼寝タイムを取ったあと、折り返し用のポイントに向かう。あまり詳しくは述べられないが、この貨物列車が存在する理由でもある製紙工場を背景にした俯瞰スポットだ。




2020.11/19   仙石線貨物支線  石巻港〜陸前山下   EOS6D 24-105mm

 撮影後、そんなに急ぐわけでもなく撤収作業を完了させクルマを発進。石巻駅での機回しのため先行して追っかけをする。さきほど通って来た道を引き返し、午前中撮影した茅葺バックのトンネルの反対側で待つことにした。駐車スペースが無かったため、数百m離れたパーキングスペースに停め、トンネル飛び出しのオーバークロスにやって来た。時刻はただいま15時少し過ぎ。しかし陽の短いこの季節では自分の今立っている跨線橋の影がじきに線路に伸びてくるのだろう。太陽も紅く今日最後の光線を放ちながらじわりじわりと侵食し始めたその時、山の反対側の向こうでホイッスルのこだまが聞こえてきた。




2020.11/19   石巻線  前谷地〜涌谷   EOS6D 24-105mm

 とまぁこんな感じで充実した一日が終わった。明日の仕事は午後からと余裕があるので、この界隈でしばらく休んでから高速を走り、深夜割が適用される午前0時直後に首都圏の本線料金所を通過すればよいだろう。にしてもさすがに一日中活動していたので、ここの撮影のために停めたパーキングスペースでそのまま1時間半ほど昼寝し目覚めると、辺りは真っ暗になっていた。まだ時間的にも余裕があったので、先ほど撮影した跨線橋の反対側を見物することにした。こちらからのアングルも石巻線屈指の撮影スポットで、先ほどはちらっと見ただけだったが、どんなもんかと次回のために確認することにした。当然日没後であるし、さらに月は地平線に没する直前でもあるため、暗闇に慣れた目でも線路をハッキリと見通すことができない。跨線橋に戻り三脚を立て、露出を極限の2歩手前まで増感。30秒バルブで大気のわずかな光と遠い街明かりで何度かシャッターを切り、構図とピントを調整。出来上がった画像を見てみると、見たことのある特徴的な線形がプレビューに浮き上がった




2020.11/19   石巻線  涌谷〜前谷地   EOS6D 100-400mm

 今回はある程度満足のいく撮影ができたし、次回は明るい時間にここ一本勝負で訪問してみよう。1655レの通過時刻は11時過ぎ。朝早い新幹線に乗って古川から在来線に乗り継いでも余裕でたどり着くことができてしまう。撮影後、昼行の高速バスで帰郷することもできるようだ。そうだ、そうしよう! 楽しみは次回に少しだけ残すことにし、石巻線を後にした。高速一本で帰るには恐らく到着が早すぎてしまうので、仙台東部、南部道路で通過に時間がかかる市街地をパスし、すぐに一般道へ。かつて何度も通った国道4号をひたすら南下し、首都圏までの距離と頃合いを見計らって郡山ICから東北道に乗り、そのまま走り続けると、浦和料金所は0:05分の通過で深夜割が成功した。

 年内にはその計画を実現したいと考え、ことあるごとに例の貨物運用サイトを確認しているが、その後自分が両日撮影した1591号機は、なぜかここから遠く離れた新潟で焼島貨物の運用についており、石巻線に残された国鉄色は3510号機ただ一両のみになってしまい、ついに石巻線内で国鉄色DE10を拝めるチャンスは下手したら1/5程度の確率になってしまうことだろう。2020年度中の目標達成のために、今後は今まで以上に石巻線貨物列車を個人的に注目していきたい。


2021.3/15

 年度内の石巻線再訪を夢見ながら年が明け、3月になってしまった。2月前半から仕事が猛烈に忙しくなり、ダイヤ改正前に訪問できるチャンスすらない状態に陥っていたが、出撃は叶わぬままやはり3/13改正を過ぎてしまった。今回のダイヤ改正では石巻貨物は大きな動きはないように思われたが、運転時刻なども多少なりとも変更があるだろう。改正後の貨物時刻表もまだ入手していなかった上、首都圏には今だ緊急事態が宣言されていることから、また近いうち落ち着いたら撮影に向かおう、と考えていたダイヤ改正直後の月曜日。翌日、1カ月ぶりに休暇が取れることになった。早速運用を確認すると、国鉄色DE101591号機が明日、1655レに入りそうな気配が濃厚。この時点でまだ夕方だったので、早速今夜初の仙台行きドリーム号のチケットを手配してしまった。当然貨物時刻表も未調達。改正前と大きな運転時刻の変更と、運用の変更がないものと勝手に期待して、旅立つことにしたのだった。
 その夜、横浜駅東口バスターミナル。ここから夜行バスに乗るのは1991年夏休み、九州〜西日本青春18きっぷの旅の始まりに乗った、京急バスの名古屋行き「ラメール号」以来だ。青春18きっぷでもあるので当然大垣夜行に乗るものと思いきや、なぜか長旅のプロローグを贅沢に楽しみたい、という理由だけで奮発して人生初の夜行高速バスに乗ることにしたのだった。その30年前の「ラメール号」と同じプラットホームにやって来たJRバスに乗り込んだ乗客はわずか3名ほど。すっかり意味の無くなってしまった緊急事態宣言も解除されていないのでこの程度か、と思っていたが、途中経由地のバスタ新宿で大勢の乗客が乗り込み、満員となってバスは深夜の東北道を北進した。

 酒も適度に効いていて、道中ずっと爆睡しており、翌朝の仙台到着の放送によって目が覚めた。外に出ると、まだ真冬の気候。関東では昨日4月下旬の陽気だったので、ついに東北地方にやって来た、と実感することができた。さて・・・。移動を格安に済まそうと思って、今回は新幹線ではなく夜行バスでやって来たのだが、当たり前だが時間が随分開いてしまった。狙うべき1655レの小牛田発は11時過ぎ。現在時刻、まだ6時前。どう5時間を潰そうか・・・。ひとまず腹も減っていたため駅近くの松屋で朝納豆定食を食し、少し興味のあった路線を体験してみることにした。2015年開業と新しい仙台市営地下鉄東西線である。この路線、西側の終着駅である「八木山動物園」は、ここ仙台駅から6.5km程度の距離なのに、標高136mと日本一高い地下鉄駅だそうで、仮に仙台駅の標高を0mとしても単純計算で連続20.9‰という勾配が連続していることになる。当然新しい地下鉄なので仙台駅は既存の地下施設を避けるように、かなり深く作られ、また途中駅など緩勾配もあることから最大勾配57‰というトンデモ区間も存在し、そのことから空転しない鉄輪式リニアモーターによるミニ地下鉄方式を採用している。改札を抜けホームへ。やって来た小ぶりな車体の電車に乗り込むと、早速体が斜めに感じるほどの傾斜で、ぐんぐん登ってゆく。いくつかの駅を過ぎると地上に出、地下鉄らしからぬ深い渓谷を橋梁で渡り、終着八木山動物公園、到着。外に出てみるとそれなりの住宅街が形成されているのだが、街はずれからは眼下に仙台市街が見下ろせる絶景だった。なかなか感動。すぐに戻るのもまだ早いので、近くのコンビニでコーヒー&一服タイム。急坂を駆け下りる地下鉄で戻ってもまだ時間が余るので、駅併設のバスターミナルから路線バスで仙台駅へ向かうことにした。出発時は自分ひとりだけだったが、坂道をだんだんと降りていくにつれ、通勤通学客で満員になり、下界に降りてきた。さてまだ時刻は8時。駅構内をうろついたり、ロータリーの喫煙所でモクモクしたりしているうち、ふと気になって機関車の運用を調べてみると、なんと! いつの間にか今日の1655レは更新機が就くことに変わっていた。なんてこった・・・。このまま昼行便のバスで帰ろうかともよぎったが、せっかくならこの目で確かめてから原色を諦めたい。と小牛田に先回りして見ることにした。1655レの運用、時刻など改正前と変わっていないことを前提とすると、小牛田には10:24到着。ここで前補機のEH500を切り離し11:12発。石巻線内に乗り入れる。この停車時間中に発車する石巻線普通が唯一撮影地へと連れて行ってくれる列車となる。早速下り電車に乗車。小牛田到着。仙台では無かった暖房の効いている待合室で1655レの到着を待つ。すると定時+3分。仙台方からEH500を先頭にしたコキ群が構内に入線してきた。次位のカマは・・!? やった! 前回訪問時と同じ国鉄色DE101591号機。悪意を持ってなのかどうかは分からないが、掲示板のカマ番はガセ情報だった。




2021.3/15   東北本線  小牛田   EOS6D 24-105mm



 では撮影地に向かうとしよう。石巻線キハ110に乗り込み15分。前谷地に到着した。大震災の津波の影響で、気仙沼に行かなくなってしまった気仙沼線の分岐駅だが、とても小ぢんまりしたどこにでもある田舎の駅だった。さて、のどかな雰囲気を楽しんでいられない。貨物列車通過まで時間がないのだ。撮影地まで2km弱。あと30分しかない。セッティングの時間も考えると普通に歩いたのでは到底間に合わない。タクシーがいればそれを使っても良かったのだが、駅前は閑散としており、国道まで小走りに向かう。今のところ急速に空模様は回復してきており、暑い中、国道に出てからもペースは落とさず、息も上がって来たのでマスクを外す。そしてようやく4カ月前に立っていた、例の跨線橋に通過10分前に到着することが出来た。呼吸を整えてセッティング終了。やれやれ、と空を仰ぐと辺りはいつの間にか厚い雲に支配されていた。




2021.3/15   石巻線  涌谷〜前谷地   EOS6D 100-400mm

 もう、いつものパターンですね・・・。そしていつものように日頃の行いの悪さを呪ったあと、また駅までトボトボと歩いていると、わざとらしくまた太陽が顔を出してきた。前谷地から石巻線、東北本線と仙台へ乗り継ぎ、早速メシにすることにする。以前から名物の仙台ラーメンに惹かれ、駅近くのそれらしい店に入ったものの、たまたまその店だったからだと思うものの期待は大きく裏切られ、またトボトボと駅へと向かい、帰りの交通手段の手配をする。撮影と仙台ラーメンに愛想を尽かされ、今回最後の唯一の楽しみであった特急「ひたち」の全区間乗車だ。昨年、常磐線の不通区間が解消された際、恐らく多くの鉄道ファンが予想しなかった仙台「ひたち」の復活。新幹線でサクッと帰るのは勿体ないのでせっかくなので、いつか体験してみようと思っていた。4時間を越える在来特急だが車内販売は無いそうなので、コンビニ弁当とビールを調達。特急「ひたち26号」は定刻に仙台を出発すると、キレイな夕焼けの光線の中、単線区間もあるので運転停車や速度制限を受けながら適度なスピードで南下した。毎度のことながら寝ては勿体ないとしばらく頑張っていたが、いわき〜上野でワープしてしまっていた。

 この撮影から3ヵ月経ち、愛知機関区のDD200に役割を奪われながらもDE10は石巻線で活躍しているようだ。しかし今年度、JR貨物は事業計画として電気、ディーゼル機関車の増備により、とうとう国鉄型機関車の淘汰を本格化するらしい。いつかはこうなるだろうと、仕方のないことだが、今できることは悔いのない活動をすること。いつか自分が命果てる時、「あぁ・・・DEをもっと撮っておけばよか・・・ガクッ・・・」と言わないように日々活動しようと思う。なので・・・

「また行くぜ! 東北」