ダイヤ改正で消えるアイツ、じゃなく超有名撮影地で185系踊り子狙い

2020.3/13

 3月ダイヤ改正。毎年多くの列車がデビューし、そして消え去っていく一年で最も変化の激しい時期。自身、かつて、ダイヤ改正前になると新しい時刻表に胸ときめかせ、北へ南へと忙しい春を送っていたのだが、もうかれこれ何年もしていない。そして2020年春。今年の改正ではどんな変化があるのか、ほとんど無知のままであった。が、唯一理解しているのは251系こと、スーパービュー踊り子の引退だ。JRになってからの誕生であるし、そこそこ近代的なデザインでもあるので、自分にとっては専門外の列車であり、乗ったことはもちろん興味も撮影もしたこともなかったのだが、たまたま改正前の休日、天気も良かったので暇つぶしにバイクで出かけてみることにした。

 国道1号を南下し海沿いの134号、西湘バイパスに乗る。途中、前から気になっていたラーメン屋で昼飯を喰ったのだが、ものの見事に不味く、口直しでもしようかとバイパス唯一の西湘PAで再飯をするべく入場すると、なんと改装工事のため食堂は休業中とのこと。仕方なく後味の悪いまま、超有名撮影地、石橋俯瞰に到着した。国道を折れてミカン畑の中の細い農道を登っていくと、相模湾の大パノラマ。そして驚いたことに同業者が20名以上。185系は本数は減るものの、何往復かは残存するらしいし、まさか全員SVO目当てなのか? 貨物運用も調べてみたが、皆さんが好きそうな被写体は、今日この時間は別の場所でお仕事中なのでやっぱり251狙いだろう。キャパの広い撮影地なので皆、思い思いの場所でセッティングをし、麗らかな春の陽気の中、列車を待っている。到着後、すぐにやって来たのは185系踊り子だ。




2020.3/13   東海道本線  早川〜根府川   EOS6D 24-105mm

 午後のこの時間を狙って大正解。碧い相模湾と美しいグリーンのストライプ。でもゴメン。今日は君じゃないのよ。そしてそれから15分。心地よい日差しに眠気が差してきた頃、本日の主役の登場だ。




2020.3/13   東海道本線  早川〜根府川   EOS6D 24-105mm

 相変わらずいつ見てもイモ虫にしか見えない電車。30年前登場した時から自分の中ではそんなイメージだ。ところで先ほど一度も乗ったことはないと言ったが、一度だけ251の乗客になったことがあった。10年ちょっと前、東京某所にある自身の勤める会社の本社で3日間の研修があり、その最終日、仲良くなった全国から研修に参加したメンバー数十名と大宴会を開催。大いに盛り上がってしまいベロベロになり、新宿からこの251系の湘南ライナーで帰還したことを思い出した。よく覚えていないが2階席へ上がる階段付近でぶっ潰れていた記憶があり、それが最初で最後の251との思い出だ。そんな素敵な思い出のいっぱい詰まった電車・・・では全く無く、とっとと撤収して家に帰ろう。しかしその前に、前から気になっていた、この山腹の谷を挟んで向かい側からの通称「裏石橋」でもう一発何か撮ってから帰ることにした。




2020.3/13   東海道本線  根府川〜早川   EOS6D 24-105mm

 30分ほど待つと上り踊り子がやって来てくれた。想像通り半逆光だったが夕方にはベッタリのオレンジ光線が車体と海を照らしてくれるのだろう。今度来よ、と頭の中の備忘録にメモして、もう少しこの界隈を探訪してみることにした。急斜面を網の目のように設けられた農道を上がったり下がったり。下界に降りて自販機の脇で一服したりしているうち、上りスーパービュー踊り子の時刻になって来た。さっきまで晴れていた空はいつしか曇りがちになり、ポツポツと雨も降って来た。先ほど見つけておいた場所でスタンバイ。SVO通過直前になると薄日が差し、絶妙なタイミングで晴れ間も出てきた。一撃必撮!!!




2020.3/13   東海道本線  根府川〜早川   EOS6D 100-400mm

 一撃必撮!とは言ったものの、相手が相手なだけに特に気合を入れるでもなく、立ち位置やらフレーミングもなんだかな〜の感じで、その想いが天に通じたのか薄晴れ?薄曇り?といったモヤッとした結果だった。

とは言え・・・

 この場所、天候と切り取り方によっちゃ、美味なる作品も産まれそうな気がする。そうだ、国鉄色185系だ。ミカンもいいアクセントになるので収穫される前に近々実行に移そう。SVOはバイバイ! ダイヤ改正後の最初の休日、残ったわずかな185系踊り子を狙って出撃することにした。

2020.3/17

 そうして訪れた3/17。前回とは打って変わって気温は冬に逆戻り。近場だしバイクで向かおうとしたが、ヒヨってしまい、ヌクヌクと車で行くことにした。狭い農道が入り乱れる裏石橋。農家の方の邪魔にならないように、撮影場所から少し離れた道幅の広くなったところに駐車。準備をしているとすぐに向こうから一台の軽トラが近づいてきて自分の前に停車した。首都圏ではメジャーな撮影地。ネタ列車が走るとなれば多くの撮影者がやって来ては道路を占拠し、現地の農家の方はいつも迷惑しておられるのだろう。何か注意されたらすぐに移動しよう、と身構えていると、軽トラのおっちゃんは「いや〜いい天気だね。なんか来んの?」と満面の笑みでクルマから降りてきた。敵意ゼロのコミュニケーションに少々拍子抜けし、しばし世間話し。「すんません、お邪魔させてもらって・・・。いつも大勢写真撮りに来るのがいてご迷惑でしょう」と言うと、大きく首を横に振り、ガハハハと笑う。最後に「いい写真撮ってけろぉ」と言葉を残し山上の方に去って行かれた。とても心温まる時間だった。というのはこのおっちゃんだけかもしれないが、普通なら忌み嫌われる一人の撮りテツに暖かい言葉をかけて下さったこと。そして会話の節々に懐かしい生粋のネイティブ神奈川弁が聞けたことだった。東京との距離的にも標準語をしゃべっていると思われている神奈川県民。そしてその県民自体も、標準語で会話していると自認しているつもりの人がほとんどであるが、微妙な言い回しや音便に標準語とは違うそれがあるのを知ったのは、自身最近になってからだ。北陸地方で4年間住んでいた際、今まで喋って来た口調で会話をすると、部下やバイトの学生たちがドン引きしていたので、不思議に思いある時尋ねると、「○○さん、なんか言い方乱暴だし怖い・・(北陸弁)」みたいなことを言われ少しショックだった。と同時に標準語を話しているつもりだったのに、それが方言であることに気づかされた。

 少し寒いものの日なたでは燦燦と降り注ぐ太陽光で心地よい。眠くなるような撮影地で準備を済ませ、うたた寝しないようにいきなり現れるであろう本日の被写体に神経を尖らせ、今日こそ一撃必撮だ。




2020.3/17   東海道本線  根府川〜早川   EOS6D 100-400mm