伊豆急100形 最初で最後の梅雨空ツーリング

2019.7/2

  伊豆急行開業時に登場した100形電車が今年の七夕の日を持って引退することが発表された。最後の1週間は限定乗車で、平日を含む毎日、伊豆急下田と片瀬白田を2往復する記念運行がされるという。個人的には人生において一度も乗ったことも、そして撮影したこともない伊豆急行線。そんな自分でもシンボルカラーである爽やかな「ハワイアンブルー」をまとった100形は、実物は見たことはないが知っている程度。今だに走っていたのか・・・とやや驚きながらも気づいたのが引退1週間前という時間の無さ。この週唯一の休みであるこの日、撮影に出かけることにした。

 梅雨真っただ中。毎日降り続いた雨だったが、今日に限って50%程度の降水確率とのことで撮影は「それなりな感じ」にできるだろう。雨の中の出撃なのでクルマで行こうか迷ったが、現地での撮影場所探しなど小回り優先でバイクで向かうことにした。自宅を出るとムワッとした大気がまとわりつく。雨は降っていないものの湿度は限りなく100%に近い。ところで現地までのアプローチ方法は、道路事情の悪い伊豆半島東岸。自動車専用道などもほとんど通じていないので別ルートで向かうことにした。東名高速を西へ。御殿場を過ぎると強烈な霧になり、ついに湿度は100%を超える。沼津ICで伊豆中央道に乗り継ぎ、修善寺付近を通過すると本格的な雨になってしまった。道の駅でカッパを着込み、なぜか普通の雨の時よりも妙にヌルヌル滑るリヤタイヤを気にしながら天城峠を超えた。たどり着いたのは河津。今日の100形の運行は伊豆急線南側区間の往復であるので、ここ河津と片瀬白田、約10kmの間での撮影になるだろう。撮影地も調べていなかったため、あと1時間近くあるのでアテもないまま国道を北上し撮影地を探し始めた。すると国道から海バックでやや俯瞰気味に見下ろすポイント発見。バイクを降りて近づいてみると、ああ! 見たことあるあるこの景色! とある有名撮影ポイントに偶然やってくることができた。






2019.7/2   伊豆急行   片瀬浜海岸〜伊豆稲取   EOS6D 100-400mm

 ここは185系踊り子とかリゾート21とか長編成向けの撮影地だったため、単行の103にためにすぐに体制を変えられるよう手持ちにしておいた。そして小雨降る中とは言え、初めてみたハワイアンブルーの旧型電車はなかなか良かった。昭和30年代の地方鉄道の電車が、こんなオシャレな装いで登場したのだから、長い間鉄道の開通を悲願されていた地元の方たちは、さぞ度肝を抜き、そして喜んで、かつこの鉄道を誇りに思ったのだろう。初見だからだろうか、実物を見てこんな衝撃を受けたのは初めてだった。「も、もっと、もっとください!!」 夏の暑い太陽を浴びて青い海をバックに往く103、シーズンオフのホッとした表情。通えば通うだけいろんな情景に出会うことができそうだ。しかし残念ながら今週で引退だ。自分は今日が最後になる。あと3発。どこで撮ろうか。
 この折り返しはすぐにやって来るので、少し下見しておいた上記写真に写る奥の踏切からやることにした。河津からいろいろロケハンしてきたが、この伊豆急行線、どうやら片持ちの架線中は全くと言っていいほど見当たらなく、門型のものばかりなのでどうしても撮影場所が限られてしまう。まぁ今回は単行なので架線中抜きをすればいいだけの話だが、なぜなんだろうか。




2019.7/2   伊豆急行   伊豆稲取〜片瀬浜海岸   EOS6D 24-105mm

 あら、こんなところで。東急の8000系じゃないか。東急系列の伊豆急はその昔、夏季のハイシーズンに車両が不足し、親会社である東急から7000系を借りて繁忙期をしのいだとして知られている。東急に残った多くの仲間とは違い、未だVVVFに換装されずに直流モーターの音を元気に響かせて去っていった。さていよいよ片瀬白田発の103がやってくる。ジメジメとした撮影地。蚊の猛攻を受けながら列車を待った。




2019.7/2   伊豆急行   伊豆稲取〜片瀬浜海岸   EOS6D 24-105mm

 確か1回の定員50名だったと思うが、ボックス席に2人づつくらいのラッキーな乗客たちは窓を開け、今や珍しくなった非冷房車の雰囲気を楽しんでいる。伊豆急の案内にも「冷房がないため体調管理には気を付けて」と注釈があったくらいだ。でも屋根上に見える2つの大きな箱は冷房装置じゃないのかい? でも普通の鉄道車両の分散式にしては形がおかしい。またベンチレーターにしては大きいし、現代でいえば衛星アンテナ? キハ40みたいに水タンク? 発電ブレーキ用の抵抗器? 悶々としているのも気持ちが悪いので帰って調べてみると、実は100形は一部の車両は冷房改造されていたそうだが、そのさらに一部は電源確保の難しさと、残りの耐用年数を鑑みて、「市販の冷房装置」を取り付けたとのこと。市販の冷房装置!? まさかあの奇妙な箱の中身は霧ケ峰とか白熊くんとかが入っているというのか!! (たぶん違います)

 ところで実はもう一つ、今日は別の目的があった。昨日たまたまテレビでみた海鮮丼を喰いたかった。昔から西湘〜東伊豆はよくツーリングで行き来してきたので、名だたる漁港も点在していることから国道沿いに海の幸系を扱う食堂が多く存在していることは知っていた。今日は朝飯を抜き、撮影を済ませた夕方、猛烈に腹を空かせた状態で海鮮丼を存分に喰らうというのがプランでもある。いまこうして空腹を我慢しているのもコンディションを整えるため。今度の上り折り返しまで少し時間があるので、耐えかねてコンビニでおにぎりを買いそうになってしまったが、ここは我慢してまた国道を流す。しばらく河津まで行ったり来たりを繰り返しながら撮影場所を探しているが、どうもこの区間トンネルが多かったり、また例の門型の架線中でうまくいかなかったりで、だいぶ時間を使ってしまったため、そんな時用にキープしておいた、竹林バックの築堤をのぞむ場所を、伊豆急下田からの上りの撮影場所に決めた。セッティングをしている最中、なんだか随分昔にここに来て何かを撮影したような気がしてきた。いつ何を撮ったのか?思い出せない。でも訪問済であることは確か。いつだったか・・・なんだったか・・・さっきの冷房装置の時と同様、非常に気持ちの悪い感じで上り103を待った。


2019.7/2   伊豆急行   片瀬浜海岸〜伊豆稲取   EOS6D 100-400mm


ダァー! 思い出したぁ!!

 
大きな声を出して申し訳ない。高校時代の友人であるN山氏と、彼の操るHONDAアコードに乗って伊豆半島をドライブした時、あるネタ列車が走るというので途中、撮影地に選んだのがまさにここだった。帰宅してからハードディスク内の過去の写真を探していると、あった! 時は2001年秋のことだった。



 スーパービュー踊り子を撮りに行ったのではない。いずれ想い出写真館に載せようと思っているので、ネタバレしてしまうため直前の練習での一コマだ。デジャブではなかった。そうと判ると少しすっきりして、いよいよ最後の撮影だ。




2019.7/2   伊豆急行   片瀬白田〜伊豆稲取   EOS6D 24-105mm

 結局、今日一日少しも晴れないまま、2往復、計4発の撮影ができた。失礼ながら思い入れもへったくれも無い電車だったが、昭和36年の登場とはいえ、斬新な装いの単行電車の最期の現役の姿に立ち会うことができて本当に良かったと思う。さて、感動もそこそこに念願のメシの時間だ。目的の丼ぶりがいただけそうな店はいくらでもある。撮影地から帰りがてら北上してしばらく、一軒の店が営業中であった。こんな店で可能かどうかも分からないが、恐る恐る店員に聞いてみた。「ごはん大盛できますかぁ・・?」 +200円の1700円でようやく本日最初のメシにありつくことができた。







コレだよ〜コレコレ!!!