初訪問! 修善寺踊り子185系

2019,12/4

  2019年もあとわずかという年の瀬の押し迫ったある日の朝、出発の準備をしていた。ここから2時間弱の目的地の天候は終日快晴、最高気温は11月中旬の陽気になるとのこと。現在、7時ちょっと過ぎ。まだ霜も降りそうなほど寒いが、気象庁発表の16℃の予測を期待してバイクで出発することにした。完全防寒で東名高速を下り、沼津IC、そして伊豆中央道に入った。

 今回は去就が注目される185系踊り子号の、修善寺直通運転を伊豆箱根鉄道線内で頂戴するつもりだ。実はつい先週のこと、ある休みの朝、起床した時にひらめき、思い付きで伊豆箱根鉄道へ行ったばかりだった。初めての路線であったので撮影地も理解しておらず、今日と同様天気も良かったので、どこかで富士山と絡められれば最高かもとひらめき、出発までの15分間で調べ上げ、そこで初めて修善寺直通の踊り子号は平日たった2往復であること。富士山バックで撮れる場所は意外と限られていることを知った。道中、雲一つかかっていない見事に冠雪した富士山を正面に見据えながら目的地に向かい現地に到着すると、30分もしないうちどこからともなく雲が現れ、頂上どころか山容全体を覆い隠してしまった。一日中快晴、の予報であったにもかかわらずだ。というわけで本日はそのリベンジというわけだ。

 線内に入る1本目の「踊り子105号」を撮影するために選んだのは三島二十日町〜大場。今まで伊豆箱根鉄道線内での撮影は、全く検討したこともなかったので、作例を見て「そういや見たことある」程度のポイントだった。でも通過40分前に到着すると、前回と全く同じ状況。空一面は雲一つ無い快晴であるのに、正面の日本最高峰の頂付近にはうっすらと雲が発生し始めていた。イヤな予感ほどよく当たるもの。自分が到着するのを待っていたかのように、モク・・モクモク・・・と、それは分単位で分かるくらい、激しく湧き出しているようだった。



到着直後。湧きだした雲が気になるが・・・



いよいよ巨大なボスが登場し・・・



と思ったら小さくなってみたり・・・



散り散りになって山容を隠してしまった・・・




「踊り子105号」
2019.12/4   伊豆箱根鉄道駿豆線  三島二日町〜大場  EOS6D 100-400mm

 30分ほど、山頂のデカくなったり小さくなったりする雲に翻弄され、結局本番は、かろうじて最高地点3776mの剣ヶ峰がチラリと姿を見せてくれた結果になった。も〜!!また来なくちゃなんないじゃんか〜!! 天気相手だからしょうがないが、近々3度目のリベンジと行きたいところである。さて次の撮影は、今修善寺に向かった105号の折り返し106号。2時間ほど空きができてしまったので少し早いが昼飯だ。いつもならここでラーメンと行きたいところだが、前回の訪問で大失敗してしまったので、なんか上手いラーメン屋センサーがこの地では鈍るような気がして、国道に出て安心の味、吉野家で飯を喰い、腹が満たされると眠くなってきたので、その駐車場に停めたバイクにまたがったまま昼寝。しかし出発時に装備してきた完全防寒着のせいもあって、暑さで30分ほどで目が覚めた。撮影地に向かう。高台からの俯瞰、そして富士山バックのポイントだ。下から見上げて恐らくここだという付近にたどり着くも、そこへのアプローチ方法が分からず、右往左往を繰り返す。起伏に富んだ地形だが、意外と山肌には住宅地がびっしりと立ち並んでいる。そういえばこの沿線はありきたりな地方都市の郊外路線という感じで田畑が続くところも多いのだが、駅周辺やこうした丘陵地帯は市街地が形成されており、この駿豆線の20分ヘッドの運転頻度からも理由が分かる。さてそんな訳でバイクで山を登り降りを繰り返しているうち、ようやく目的の場所を見つけることができた。106号は後追いになるが俯瞰からの遠目なのでそれも気にならないはず。相変わらず汗ばむ陽気の中待機していると、いつしか富士山山頂の雲は退いてくれて、山容がくっきりと拝めるようになってきた。




「踊り子106号」
2019.12/4   伊豆箱根鉄道駿豆線  田京〜伊豆長岡  EOS6D 100-400mm

 この時季になると太陽光は列車の反対側へ移動してしまい、ここはどうやら午前中のスポットであったらしい。にしても美しい。他の山々を従えるでもなく、すっくと立ちすくむ気高い独立峰。過去の祖先たちが神体として崇めていたのが理解できる。この現代でも富士に日常的に見守られながら生活を営むこの地の人々にとって、富士山の存在感はいかばかりだろうと羨ましくも、興味のあるところである。さあ、次は115号の撮影である。今、東京へと去っていった106号と丹那トンネル付近で離合して向かってくるのであまり時間がない。午前中一発目のポイントで完全なる順光を期待して、先ほどの踏切へと向かった。




「踊り子115号」
2019.12/4   伊豆箱根鉄道駿豆線  三島二日町〜大場  EOS6D 100-400mm

 午前中に撮影したのとは比べ物にならないくらい、山は美しい裾野を露わにしてれたが、もうここまで来ると完全な雲一つ無い富岳の全容と185を撮り切るまで通い詰めることを決心してしまった。さて・・・、この115号の折り返しである114号が本日ラストの撮影となるのだが、ここに戻ってくるのはおよそ2時間後。どうやって時間を潰そうか、その前に114号の通過時刻の日照はどうなんだろうか。日の短いこの季節、早速調べてみると本日の日の入りは16:35とのこと。通過時刻が16時少し前なので西に開けていれば大丈夫そうだが、むしろ場所を選べば夕方の黄金の光線を拝めるかもしれない! こればっかりは運次第なのであまり期待せず、列車に乗って修善寺まで往復し時間潰しをすることにした。自身伊豆箱根鉄道は初乗車だ。大場駅近くにバイクを停め、修善寺までの切符を購入。形式など全く分からない電車にゴトゴト揺られ、山間に入った突き当りが修善寺駅。観光地の駅らしい造りで温泉客の姿も目立ち、1日2往復ながらもやってくる東京行きの特急列車の出発間際とかさぞ賑わうのだろう。乗って来た電車を見送り駅前のコンビニで一服。次の列車で大場駅へと向かった。その道中。あれほど悩まされていた富士山頂付近の雲は消え去り、少し角度の付いてきたオレンジ色の太陽光を浴びて神々しく輝き始めた。おっ・・・これは自分史に残る名作誕生の予感・・・と期待を膨らませながら大場駅に到着。しかし撮影対象の114号は北に向かうわけで、黄金富士とコラボできるのは後追いしかない。すぐに例の踏切に到着。前面から狙うか、それとも後追いで行くか・・。結局どちらかを捨てるのは勿体なかったので、前撃ち後、三脚から外して手持ちで背後を狙うことにした。




「踊り子114号」
2019.12/4   伊豆箱根鉄道駿豆線  大場〜三島二日町  EOS6D 24-105mm




「踊り子114号」
2019.12/4   伊豆箱根鉄道駿豆線  大場〜三島二日町  EOS6D 24-105mm

 少し背後がうるさい撮影地だったが、至福のひと時を得ることができた。さて、寒くならないうちに帰ろう。最短コースは標高850mの箱根越えだ。夕闇迫る国道1号を登りながら考えた。いつか2日の連休ができたら、わざわざ東京から185踊り子に乗って修善寺へ。安いビジネスホテルでもいいから温泉入って一泊し、何て呼ぶのか知らないが、刺身や天ぷらや、固形燃料が燃えている鍋物をつつきながらビールを呑み、朝風呂に入って185踊り子に乗って帰ってくる。そんなジジババ旅もいいかもしれない。やろう! と思い立ってしまった。ていうか、きっと実行に移すことはないんだろう。それまで国鉄型の温泉行特急電車が残っていることを願いたい。