中央西線でロクヨンに癒されて来よう!

2019.3/12

 私ごとではあるが4月1日付けで転勤を言い渡された。しかしながら玉突き人事の調整から、3月の最後の1か月間だけ隣の事業所に出向みたいな型になった。まぁまぁ中規模事業所の責任者だった自分は一時的に、隣の小規模事業所のしかもNo2の立場になった。規模が規模なだけにシフトも思いのまま自由自在。しかも正式な責任者がもう一人いるもんだから、この3月は公休通りの休みが取れることになった。そんな3月第2週。3連休をありがたく頂戴することとなった。2年ぶりの連休に、すぐに遠征しようと画策した。場所は最近原色64の動きが熱い中央西線。特に運用も調べるわけでもなく、連休初日の夜、撮影道具一式と貨物時刻表や資料などを車に積み込み、福井を出発した。今夜は岐阜県境の油坂峠を越え、高山〜安房峠〜松本を経て、塩尻から中央西線入りすることだけを決めて、夜道を急いだ。運転しながら今回の案をようやく考え始める。そういえば今週末はダイヤ改正。おそらく貨物では毎年のことながらスジやカマの運用も人知れず変わってしまうのだろう。だとすれば今持ち合わせている情報も今回限りのものになってしまう。さらに・・!そうそう!中西貨物のハイシーズンと言えば石油需要が高まる秋から春にかけての今!臨貨ラッシュ。臨貨の運転はいつまでかは知らないがそろそろ終了の時期だろう。あっ!忘れてた!最後の189系による篠ノ井線「おはようライナー」も今改正で姿を消すのも思い出した。国鉄色でないいわゆる「あさま色」だが、かつてはその名の通り特別な存在だった特急を、誰でも利用できる庶民の足として全国に名をとどろかせた国鉄特急電車。485や183は先に姿を消し、最後に唯一残ったのが長野車189系N102編成だ。そして愛知機関区のEF64国鉄色全5機がすべて運用についており、しかもしかも! 1022+1024、1023+1026号機の原色重連もここ数日手を組んだまま運用を回っており、どうやら・・

「今回の旅は実に絶妙なタイミングだったらしい」

・・・ことが出発後に判明した。とりあえず明日は「おはようライナー」の撮影を皮切りに、1023+1026が充当されると思われる臨時専用貨物6883レを迎撃しよう。急に有意義な目標が見つかると嬉しくなる。目が冴え、ギンギンの状態のまま明朝の篠ノ井線内での撮影が便利なようにと、松本から長野道に乗り、目的地一つ手前の筑北PAで朝を待つことにした。3時間ほど仮眠する予定だったが、クルマを停めて就寝の準備をしたにも関わらず、なぜか依然意識は冴えわたり、ほとんど眠りにつくことができなかった。

 翌朝、うたた寝したのかしてないのか、アラームで我に返り外を見ると、辺りは視界数十mほどしかない濃い霧に包まれていた。とりあえず目覚めのコーヒーと一服をしてから出発。撮影地へと向かう。途中濃霧の中を黙々と歩くテツ集団に遭遇。横目に通過し撮影地を見つけてセッティングし、あらためてファインダーをのぞくと、後方は霧に隠れ先頭2両くらいしか写らない感じだ。しばらくして練習電が通過。するといつの間にかあんなにフォギーだった視界は徐々に晴れ、手前の障害物が目に付くようになってきてしまった。もう移動している時間はない。とにかく「撃つ」べし。




霧の中からグッドモーニング。誕生からずっと信州で過ごしてきたN102編成。あと3回ここを通れば引退だ。
2019.3/12  篠ノ井線   聖高原〜冠着    EOS6D 100-400mm

 通過する列車の車内の様子は、長野に向かうサラリーマンとか通学客とかではなく、明らかに自分と同じ目をした人たちが窓際を占拠し満員のようだった。各ブログなどでも最近お別れ乗車で盛況の様子が伝えられているので予想はしていたが、このせいでライナー券を入手できなかった本当の乗客たちに同情せざるを得ない。ところで撮影は薄日も少し差し、一先ず成功。出発し、すぐ近くの麻績ICから長野道へ。塩尻ICで流出し6883レ迎撃のため木曽路へ向けて国道19号を行く。下界に降りると濃霧は晴れ、そして青空が広がった。6883レの撮影地は場所取り時間と、この後の追っかけも考え、定番中の定番、薮原のSカーブに決めた。確か人数の限られる撮影ポイント。しばらく走り現地に到着するとすでに5名の先客が。どうにかして空きポイントを見つけて望遠をセットすると続々と増える人々。ただの国道の歩道に30名以上が密集し限られたスペースで陣を張る。直前に来た2,3人の人はついにあきらめどこかに消えてしまったほどだ。全員少しも身動きの取れぬまましばらく経った後、ついにあの最強コンビがカーブに姿をあらわした。




信州のみなさんに石油を届けに来た臨専貨6683レ。

2019.3/12  中央本線   宮ノ越〜薮原    EOS6D 100-400mm

 欲を言えばもう少し左の立ち位置で「重連感」を出したかったが人多すぎで無理だった。さて言い訳している場合ではない。追っ掛けるのだ。次の薮原を出ると峠越えだ。その峠を降りた奈良井でしばしの運転停車もあるから追っ掛けが可能なのだ。撮影場所も確認スミ。分水嶺でもある鳥居峠を越え下界に降り、奈良井に停車中の6883レを確認し目的地到着。奈良井で交換する上り列車が通過したのでもうすぐやって来てしまう。焦りながらも務めて冷静に準備をする。




2019.3/12  中央本線   奈良井〜木曽平沢    EOS6D 24-105mm

 これにて午前の仕事は終了した。っと一息つく前に他の64の動向を調査し、午後の行動の計画を立てることにした。昨日の運用から本日の夕方下ってくる8885レに充当されると踏んでいる1022+1024の国鉄色コンビはまだ早い時間なのか目撃情報はなく、また単独行動中の1028号機は昨晩稲沢に帰ったきり消息不明だ。しかしながら後に分かったことだが、この日1028はすでに未明に南松本に8089レとして到着しており、その折り返しは8084レはまさにこの時間、塩尻を稲沢に向けて出発するところで、上記写真の1023+1026コンビの6883レとは、すぐ目と鼻の先にある洗馬付近で交換していたのだ。そんなことは全く知らず、朝から何も食べていなかったので、早めの昼飯にすることにした。以前も利用した松本市内の山岡屋を目指そう。少し混雑する国道19号で塩尻市内を経由し北上していると、また別のラーメン店が。信州味噌を前面に打ち出しており、自身の中の「ご当地味噌のラーメン推しに外れ無し」理論に基づき即入店。店内は夫婦で切り盛りしているどこにでもある店だったが、先客はゼロ。周囲をさらに観察すると、状況から過去幾度となく経験したことのある「やばい、入っちまった」のセンサーが作動し一瞬後ずさりをしようとしたが、おかみさんの愛想の良さに思いとどまりオーダーを開始。「初見の店では大盛にするべからず」理論を発動し、信州味噌ラーメン並と小焼肉丼を注文。しばしあって着丼。食してみると意外やかなり「旨い!」だった。疑ってごめんよー。というわけで個人的には満足したが、気の毒なほどに自分が食事している間、後からやって来た客は一人だけだった。末長く営業していて欲しい店だった。



 十分満足し退店。昨夜出発してからほとんど睡眠らしい睡眠を取ってなかったので、夕方の6882レまで時間があるので昼寝をすることにする。また木曽路へと少し戻り、奈良井手前の道の駅で3時間ほど仮眠。夕方になり起きると時折小雪の舞う怪しい空模様となっていた。しかしながらこういうシチュエーションを待っていた。6882レの通過時刻は18時前。日没を過ぎて間もない時間でもあるので、まだ明るさも残っていればとなるべく塩尻に近いところで迎え撃ちたい。昨年末新しい相棒となったEOS6Dの高感度性能を試すには最適だ。前機の5Dでは最も感度を上げたISO3200ではノイズがひどくとても見れたもんではなかった。5Dから10年以上の技術の進歩で最近のデジ一眼ではISOも万の桁というとんでもない高感度を達成している。6Dも最高感度ISO102400という天文学的数値だ。月明りで走行写真が撮れてしまうんではないか、ってぐらいの勢いだ。道の駅を出発し、途中コンビニでおやつなんかを買ったりして洗馬駅付近に到着。陽が沈み薄暗くなる中、スタンバイをした。




2019.3/12  中央本線   洗馬〜日出塩    EOS6D 24-105mm

 プレビュー確認もほどほどにすぐに機材をしまい、追っかけを開始。この先のいくつかの運転停車でこの6882レを追い越すことができる。目指すはおよそ60km先の十二兼駅。なぜ十二兼を選んだかというと、この6882レと、もう一つの国鉄色コンビである1022+1024が充当されるであろう8885レがここで交換するのだ。交換といっても十二兼駅は単線と複線の境界駅で、ダイヤグラムを見るとこの十二兼駅で6882レがしばらく運転停車。8885レが通過後発車となる。国鉄色同士、合計4両の重連電機が交換するのをみすみす見逃すわけがない。気分を盛り上げるため音楽をガンガンにかけながら一人カラオケを1時間ほどしているうち、だいぶ先行して十二兼駅到着。どこにでもあるような対面式の無人駅で、周囲に人家は数件あるものの通りに人の気配は全くなく、静まり返っている。



ホームに上がるとかなりの急カーブ上にある駅で、どこでどう画に収めてやろうとホーム上をうろうろしている時、重大なことに気が付いた。単線複線の境界駅と言ったが、それぞれの単線側、複線側の方向を勘違いしており、複線側からやってきた6882レが単線側から来る8885レを待つため運転停車をするのではなく、その逆、つまり単線側(塩尻方)からやってきた6882レが複線側(名古屋方)から来た8885レを見届けてから出発ということらしい。この運転停車は謎であるが少しでも6882レが遅れていたら双方通過することになるのであろう。案の定、洗馬から追い越してきた6882レが数分遅れでそのまま通過。国鉄色重連でやってくるだろう8885レを、仕方なしにホーム上で流しで撮影しようとスタンバイ。やがて構内の接近警報が鳴り、機関車特有の得も言われぬ「圧」が迫ってきた。ファインダーをのぞきレンズを振ると、なぜか更新色だった。一瞬たじろいだがそのまま撮影。どうやら差し替えか運用表の見間違いをしていたようだ。



 突然の運用の差し替え、いや単なる思い込みかもしれないことに動揺し、流しは大失敗。しかしよく見れば1046号機で乗務員扉がカラシ色の広島更新色というやつだ。8885レの国鉄色コンビが堕ちたとなると、明日の予定は今日往復を撮影した1023+1026が就くA51+A61、およびA52+A62の2往復だ。

        稲沢        松本
8089レ   024   →   404
8084レ   1505  ←   1037
8081レ   1900  →   2317  (ヨ)
8088レ   1122  ←   731

2往復とは言いつつ8088レは明後日になってしまうので撮影可能なのは明日の8084レのみ。追っ掛けながらそのまま帰還がよろしいかと思う。さて今夜の投宿場所に移動しよう。と、その前に塩尻駅に移動する。明日8084レ撮影の前に、一度記念に「おはようライナー」に乗って国鉄特急型電車の走りを体感してみようと思ったのだ。今朝見た「おはようライナー」はかなりの乗車率だったようだし、気になって調べた各ブログの乗車記録も、ここのところかなりの混雑との報告がなされており、当日駅で買うよりも事前にライナー券を購入しようと思ったからだ。塩尻駅に到着しクルマを停めて改札に上がると、するとなんとたった今、みどりの窓口の営業が終了したらしい。券売機で買えないものかとしばらく操作していたがどうやら発券できないらしく、明日の窓口の営業開始を待つしかないのであろう。でもどうなんだろう・・・。休息もそこそこに朝っぱらからマニア諸氏に紛れて券を買って往復2時間の旅を楽しむよりも、今夜は旅先でゆっくりするほうがいいかと思い始めた。久々の連休。加えてかつて過去にも何度も経験してきた対象の運用の予測考察。出発当初はいつも通り風呂入って車中泊のつもりでいたが、久しぶりのこの贅沢なシチュエーションを存分に謳歌したいと思い、屋根のある場所で羽を伸ばしたいと考えていた。まずは塩尻市内に戻りガソリンの補給と飯。松屋で生姜焼き定食を食い、村井駅にほど近い健康ランドへ。少々古い造りでくたびれている様子もあるが巨大な施設で、さまざまな温泉を堪能。明日の活動開始は11時過ぎということもありまだまだ贅沢が足りないと、館内の食堂へ向かい、もろきゅうとたこわさを肴に、明日の計画を綿密に立てながら中ジョッキを数杯空け、それでも足りなく自販機で500mlの缶ビールを調達。いやーいい一日だった。酩酊してきたところで仮眠室へともぐりこんだ。




2019.3/13

 もうとにかく爆睡した。8時間以上寝て目が覚めるとチェックアウト寸前の9時過ぎだった。早速支度をして出発。目指すは洗馬〜日出塩の国道沿いのカーブから開始だ。空は晴れているものの盆地周囲の山裾にはかなり低い雲が。今はいいが木曽路に入った途端、天候が不安定になることは簡単に予測できる。追っ掛けも成功するか自信も五分五分なので、まずは一発目をガチッとキメてやりたい。ほどなくして現場到着。すでに20人以上の方々がポイントに密集しておられた。しかし近づくとどうも様子が変だ。狙うべき1023+1026の8084レは上り列車。つまり名古屋方面へ向かうのだが、ほぼ全員名古屋方へレンズを向けている。この時間やってくるのは昨日撮影した6883レ。まさか!昨日十二兼でやってくるものと思いスカされた1022+1024が就いたのか、と慌てて例の有名サイトを調べてみるも、1008+1037という更新色ペアというのは確かな情報。もしや更新色6883レを撮影したのち、一気にこちら側へ全員押し寄せてくるのだろう。と思うと自分は最初からこちら側(塩尻方)で待機して8084レ一本にかけたい。露払いの旅客列車が何本か通過。しかし時刻表を確認すると名古屋方面への列車に遅れがでているようだ。




6683レ通過。下りは定時に動いているようだ。

2019.3/13  中央本線   洗馬〜日出塩    EOS6D 100-400mm

 上りのダイヤの乱れは、どうやら今朝「おはようライナー」の人身事故による影響とのこと。乗ってなくてよかった・・・と思いながらも目的である8084レと天候に不安を覚えた。空模様は薄日が差しているものの小雪がちらついており、時間に増して雪の降り方は本降りになってきた。8084レは定時から10分、20分経っても現れず、また9年間使用し続けたビデオカメラのバッテリーもそろそろ寿命を迎え、予測よりかなり撮影可能時間が減ってきており、予断を許さない状況になってきた。そして定時から30分過ぎ、ついに国鉄色重連コンビが舞台に登場した。




雪がちらつくなか30分遅れで登壇した8084レ。

2019.3/13  中央本線   洗馬〜日出塩    EOS6D 100-400mm

 8084レを見送ると早速追撃だ。この先しばらくは運転停車は無く、次の撮影地はかなり距離を稼いだ倉本〜須原の下り勾配アウトカーブだ。追撃を開始して10分。クルマを運転しながら国道から見える奈良井駅の方向を何気なく見ると、本来のダイヤではこの駅は通過のはずの8084レが停車をしているではないか。30分も遅延していれば当然か。単線複線入り乱れ、特急もそれなりに本数のある中央西線ならば交換駅を変更して旅客を優先させるのだろう。走りながらも次の撮影地のを再考してみるが、ダイヤ通りに行かないとなると追っかけも全く手探りになってしまう。運転は上の空でしばらく行くと鳥居峠トンネルに突入。トンネルを出たところで不意に右に曲がって予定外のポイントに到着した。先人たったの一名。ツイッターの類の更新もなかったので自分の見たまま情報の「8084、奈良井で臨時停車してますよ!」と教えて、いつ現れるかもわからない8084レを一緒に待った。




2019.3/13  中央本線   奈良井〜薮原    EOS6D 24-105mm

 さて、想定外の場所で撮影できてラッキー・・・と思うのも束の間、当初の目的地へ間に合うかどうかも怪しくなってきた。こうなれば須原のわずかな運転停車を利用して1駅先の須原大桑のガーター橋だ。国道に戻りすぐに南下。途中線路と国道が離れて平行しているため、追い越したんだかそうでないのか分からなくなっている。目的地まで列車がこのまま30分遅れをキープしてくれれば間に合うのだが、すでに奈良井でもあったように交換駅の変更により、予想外の回復運転をされてしまう可能性は十分にある。とは言っても全線片側1車線追い越し禁止の国道19号では前を走るクルマのペースに合わせる他なく、間に合うことを祈りながら20km走り、ついに目的地到着。国道を逸れて線路を望む高台へ走らせると、続々と県外ナンバーのクルマが一気に降りて来た。どうやらすんでのところで間に合わなかったようだ。すぐに撤退し国道に戻るがこの後はもう運を任す他ない。昨夜、ベロベロになりながら検索して選び出した坂下駅手前の橋梁へ。追い越したのかどうか不安になりながらもセッティングしていると、追っかけをしてきたと思われる同志1名が到着。焦っている様子だったので挨拶だけで特に会話もせず、互いに入念に準備をした。




いつの間にか追い越しに成功していたようだ。

2019.3/13  中央本線   田立〜坂下    EOS6D 24-105mm

 この後、ダメ元で中津川から並走してきた中央高速に1区間だけ乗り、釜戸〜瑞浪の拓けた田んぼの撮影地にやって来たが、こちらもすでに8084レは通過の後。しかし計3発も行けたんだし満足して帰ることにした。愛知機関区EF64。まだしばらくはその雄姿を拝めそうだが、「いつ、何時」で予断は許されないと思う。他人任せになるが来週からの新ダイヤの運用の解析に期待を寄せ、また訪問してみたいと思う。