代車でGO! 2018年初撮り

2018.1/10

 昨年暮れのとある日、雨の夜、自家用車を業務利用している最中に、ふとした気の緩みからボディを大きく傷つけてしまった。そのまま年末年始の繁忙期に入ってしまい、ようやく世間が日常を取り戻した第2週に2連休の休みを取ることができた。午前中私用を済ませ、夕方修理のため愛車をクルマ屋に持って行き、受け取った軽の代車で帰宅した。その名はダイハツ「エッセ」。多分、最近の低燃費を売りにした室内の広い軽自動車の洗練されたモデルとは違い、恐らく1世代前の前近代的なスペックを持ったマシンだ。休みはあと1日ある。少しこいつでお出かけしようと思い情報を集めた。軽い気持ちで・・・

 調べるとEF6627が、通常就かないEF210の代走の運用を順調に流れているらしい。明日は午前中に東海道を下ってくる5085レ吹田行き! 西浜松を7:34、稲沢10:04、岐阜ターミナル10:50。無理しなくても楽々戴けそうだ。午前中の天気予報は滋賀県、岐阜県ともに曇り時々雨。対して愛知県東部は快晴0%! 隣県なのに落差のある予報だったので疑いながらも、迷わず、今まで未訪問であった三河大塚の大築堤に目的地を定めた。5085レ通過予定はおよそ8時ちょい過ぎ。まだ時間も余裕があるので日付が変わる頃、福井から九頭竜川沿いを遡上。降りしきる雪に除雪が追い付いておらず低速ドリフトを繰り返しながらようやく油坂峠を越え、東海北陸道白鳥ICから高速に乗った。今回は代車であるのでETC車載器は搭載されておらず、入り口で何年振りかに受け取った通行券を、有人の料金ブースでETCカードとともに渡せば良い。およそ200km。途中の小さなPAで3時間ほど仮眠を取り、東名音羽蒲郡で退出。場所取りのため5085レ通過1時間前にお立ち台に1番乗りすることができた。

 セッティングを済ませ空を仰ぎ見る。雲一つない快晴。まだ低い高度の太陽は、頻繁に通過する銀色の電車をギラギラと輝かせる。反逆光なので露出選びに時間を割き、いよいよ通過時刻が迫ってきた。しかし・・・、このネタ釜の代走運用、天気、有名撮影地と3拍子揃っているのに、平日とはいえ誰も後からやってこない。少々心配になりながらも情報をチェックしてみたが変わった様子も無く、未明に新鶴見を発ったことだけは確かなようだ。



 いいねーいいねー。本来は午後順光になる撮影地だが、半逆光もいいではないか。今後午後の下りスジにPF国鉄色が入ったら撮りに来よう。と考えていると、遠目から2灯の電気機関車がゆっくり近づいてくるのが見えた。再度露出調整を済ませ集中! 腹も減ったしこれを撮ったらメシでも食って早々に帰ろう。昼過ぎには帰還を果たせるはずだ。



 あれ?ニトーさんじゃんか。確かにこの時間、吹田のEF210運用の通過が集中する時間でもあるので少し乱れているのかな?程度に思った。そして再び情報を確認。すると5085レは静岡県内で1時間ほど遅れているとのこと。何て日だ! でもこれはこれで少し助かった。腹も減っているので下界のコンビニで食糧調達して昼寝でもしよう。しかし時刻通りにくる旅客列車撮影はともかく、遅延している長距離貨物の通過は予測が難しいため目が離せなく、撮影前の食事は3年前のあの件からかなり慎重になっている。なので空腹は我慢。でも報告時刻とここまでの距離を考えると、まだ2時間以上も来ないわけだし待っている間、クルマの中で昼寝しよう。日差しが出ているのでエンジンをかけなくても車内はポカポカで、1時間ほど寝た後現場に戻ると一人の方が列車を待っていた。「来ましたか?」「いや〜まだっすね〜」 そのあとは互いに会話も続かなくなり、いよいよ通過予定の1時間半後になるころだった。

 その後・・・定刻 + 遅れの1時間 +現地までの所要時間 = 通過時刻予想時刻である10:30になっても麗しの青20号の車体は姿を見せなかった。天気は相変わらず快晴のままで、朝には霜が降りるほどの気温だったが、日向にいればとても暖かい。しかし一向にやってこない5085レ。さらにスマホのバッテリーの容量がひと桁台になってしまったため、あまり頻繁に情報確認できない事態にもなってきてしまった。カメラの時計を見ながら15分ごとにチェックすることを決め、手早く情報を確認するも、もうすぐそこまで来ていると思われる5085レに全く動きは無かった。



 待てども待てども・・・・



 6627は来ず・・・



 旅客も変わり映えしないし・・・

 あぁまた210が来た・・・

 気が付くとほとんど快晴だった空模様も、いつしかデカい流れ雲が無数に空を占拠するようになり、おまけに風も吹いてきた。寒い。すると例の15分毎のチェックでついに上流の方々のありがたいご報告が・・・「5085レは3時間遅れ」。 ・・・・。その報告地点から計算するとあと1時間以上ここにいなければならないようだ。「寒い眠い腹減った」という旅先での3大苦痛と戦いながらとにかく待つ。ここまで待ったのだから運命を共にするべく暗くなるまで粘るという覚悟もでき、ひたすら、遠くない将来、姿を現すであろう遠方の線路のカーブの先に注視し続けた。その後遅延を聞きつけてやってきた集団の方々も続々と参戦。その騒ぎを見てやってきた地元のご老人もさらに2名。間もなく時刻は正午になろうとしていた。



 さすがに見飽きたぜ・・・



 キヤか・・・



 65単機もやってくる・・・



 陰ると暗いな・・・てか313ばっかだなぁ・・・



 ・・・・・。



 形式、なんだっけ? 東の211に似ているヤツ・・・。なんだっけ?



 そろそろ限界が・・・。

 しかし、待ちくたびれているものの、遅ければ遅いほど太陽は背後から降り注ぎ、定時ではありえなかった列車の正面に陽が当たるようになってきた。そんな正午からさらに1時間。突然猛スピードで坂を駆け上がってきて我々の近くに地元ナンバーのクルマ一台が停まった。運転者は大慌てでバカデカイ三脚を取り出し一眼レフを急いでセッティング。「この人、何か事情を知っていそう」と現場にいた全員が気配を感じ取り、一同に緊張が走った。遠方の線路から目を離さないようにしながら、瀕死のスマホで情報確認すると5085レはわずか3駅先の西小坂井で抑止中とのこと。もうすぐそこまで来ている! しかし運転頻度の高いこの区間。退避などの兼ね合いから足の速い旅客電車の一瞬のスキをついて出発させるのだろうが、なかなか登場しない。まるで大縄跳びに入る感覚のようだ。どれくらい待ったであろうか。事情通?の地元氏も解せぬ顔をしている。そして今日何回目かの「もう30分待って来なかったら撤収しよう」と心に決めた時、ついにあのご尊顔がカーブの向こうから姿を現した。

13:20。5085レ、登場。なんと5時間の遅延である。




2018.1/10   東海道本線  三河大塚〜三河三谷   EOS5D 100-400mm

 感動・・・というよりはやっと終わったと力が抜けていくことを感じた。もうとっとと帰るのみ。昨日の夕方以降何も食べていなかったので、腹が空き過ぎ気持ち悪くゲロ吐きそうだ。高速に乗り最初の上郷SAの食堂で名古屋ラーメンとミニじゃないチャーハンのセットを注文。味はフツーだったが久々の飯に、体が過剰反応し、スープがスーッと体に吸収される初めての感覚を味わいながら、ようやく今日の成果に改めて満足したことを実感した。