祝! EF641023 国鉄色初の中央西線運用!

2018.6/12

 全検で大宮工場に入場したままだったEF641023号機。入場からしばらく経つと、どうも貨物色から国鉄色に塗り直されているという情報が入ってきた。そうなれば1028、1022についで3機目のロクヨン国鉄色。鉄道車両は数多かれど、個人的に、64の無骨な面構えに反して、清々しい青15号の国鉄色の組み合わせは小さいころから大好きだった。言うならば「歳をとったオシャレなオヤジ」というところか。もし輪廻転生があるのなら、オレは生まれ変わったら来世はEF64になってヤマで働きたい! そんなEF64国鉄色の3機目がいよいよ登場しようとしていた。そして5月も間もなく終わろうとしていたある日、ついに眩いその姿を披露し、大宮から暮らし慣れた愛知機関区へ回送されたとの報が入る。あとは実戦投入を待つのみ。構内試運転をして1〜2週間ほどで実戦デビューになるのだろう。待ち焦がれること10日、唐突に稲沢〜名古屋ターミナルの短距離運用に就いた。こうなると毎日の情報収集だ。運用、天気、休み。そしてそのXデーは意外なほど早く訪れた。愛知機関区、その名も「A64運用」! 中央西線を午後に下る81レ。専貨ではなく高速貨物である。ダイヤを見ると追っかけは何か所かで可能である。20年以上前の165系撮影、10年以上前の同じく64撮影では中央西線北部で何度か撮影に出かけたことはあるので、大体の地勢は記憶に残っている。しかし今回は多治見付近から追撃していきたい。前夜、ダイヤグラムと撮影地情報を熟考しながら翌日に備えた。

 朝8時起床。福井は一日中雨の予報だったが、目的地である岐阜県南部、および木曽地方は晴れであった。追っかけなので機動力重視でバイクでの出撃を考えていたが、行き帰りと雨の福井県内を通過するのは少し骨が折れるので、クルマで向かうことにした。時間はまだまだたっぷりある。高速だと2時間程度で現地に入れるが、いつものように一般道で油坂峠を越え越美南線と長良川に沿って南下。予報通り峠を境にウソのような快晴になった。関市内や美濃加茂市内で渋滞に遭遇。どこかで飯でもと考えていたがそうも言ってられない時間になってしまった。先月641028号機を撮影した多治見〜土岐市の撮影地に到着したのは通過20分前だった。前回は重連で、しかも列車長の短い専用貨物だったので、長編成向きのこのポイントは今日のネタにまさにうってつけのところだろう。しかし当然、逆光である。薄曇りくらいなら何とかなりそうだけど、薄曇りの逆光ってホワイトバランスがメチャクチャになりそうな気がする。まぁ後で補正すれば・・・と思っていると通過時刻。すると背後から予期せぬ轟音が近づいてきた。ヤマからタンカー列車が降りてきたのだ。ヤバい・・・、裏カブり・・・。こんな列車本数の多くないこの地でカブられるとは! 目の前を上り貨物は通過。一刻も早く遠ざかってくれと思いながらヤキモキしていると、ついに遥か彼方から青い車体が姿を現した! 






2018.6/12   中央本線   多治見〜土岐市   EOS5D 100-400mm

 キ、キマッター・・・。カッチョ良過ぎる! 編成の長さもタンカー車と比べ物にならないし、何より全検明けの車体の美しさだ。ギラギラにシルバーの輝きを見せるパンタ、黒光りする下回り、まるでクルマにワックスをかけたかのような艶やかな塗装。まるでお召列車のようだ!(見たことないけど) あまりの美しさに我を忘れてしまったが、いかん、追っかけなければ。次の停車はすぐ次の土岐市。約25分。ここで稼がなくてはならない。まるで林道のような線路沿いの道を対向車に注意しながら走り国道19号に出、一気に巻き返しを図る。流れはとても順調で次の目的地、釜戸に無事到着することができた。築堤周りに広がる田んぼ。稲が生長していたので水鏡にはならなかったが、なかなか気持ちのいいところだ。広角で煽る。セッティングを終えるとすぐ、81レが牛歩のごとく超低速でやってきた。登り勾配なので力行で挑む。吊り掛けとブロアーの音が周囲を圧倒していた。




2018.6/12   中央本線   釜戸〜武並   EOS5D 24-105mm

 ここからしばらく81レは停車も無く、迎撃にはかなり距離を離さなければならない。次は中津川のさらに先の南木曽と十二兼の停車。この2駅の停車と、途中並走する中央高速に1区間だけ乗り、ここでアドバンテージを稼がなくてはならず、そうなると自然と撮影地できそうなところは限られてくる。ならば13年ぶりにあそこに行ってみよう。この時間だと半逆光になるところだが、場所も知っているし、このような時間に制約がある時は過去の経験が多いに役立つ。しかし中津川ICで高速を降り、岐阜長野県境に近づくと、ずいぶん前から前方に大きく見えていた積乱雲の下にとうとう入ってしまい、あれほど明るかった空が、完全な曇天になってしまった。まぁいい。そんな時用の撮影地だ。しかし見覚えのある風景に国道を逸れお立ち台に上ると、13年前とは比べ物にならないくらい木が生長していて、カーブ後方まで見通せなくなっていた。




2018.6/12   中央本線   大桑〜須原   EOS5D 100-400mm

 通過直前、どこからともなくやって来た数名の追っかけ軍団とともに撮影後すぐに出発。国道19号を走り始め5分もしないうちに積乱雲のしたから抜け出し、また初夏の眩い光が差し込んできた。途中線路と並走する区間で、かぶりつきで81レを狙っている方々を見かけた。あんなビカビカの順光の中で64を撮影できるのだから何ともうらやましい限りだが、列車はすぐそこまで来ているのだから、自分はもうセッティングしている余裕は無く先を急いだ。81レはこの後ほとんど停車も無く、列車のスピード以上で走らなければ迎え撃つことはできなく、とにかく時間と距離を稼いでおくべく、とうとう藪原の俯瞰に到着した。ここの撮影地も20年ぶり以上。確かこの辺から・・・と森の中の小径を進んでいくがどうも記憶の中の景色と全く違う。ところどころ木々の隙間からシンボリックなコンクリート橋が見え隠れするが、写真として狙うには難しいだろう。あれ・・・?どこだっけ・・・? 行ったり来たりを繰り返しながらようやく気が付いた。ただ単に木々が生長しているだけである。あれだけ距離を稼いでおいたつもりだが、もう81レはこの峠道を登ってきてしまう。慌てふためきながらようやく一地点を見つけ通過2分前にセットを完了することができた。




2018.6/12   中央本線   藪原〜奈良井   EOS5D 100-400mm

 すでに時刻は18時前。夏至間際なので相当に明るい。しかしここは国道からずいぶん離れてしまっているし81レも次の奈良井で少し停車するのみであるから、ここで今日は終わりにすることにしよう。このまま塩尻市内に抜けて飯でも食って高速で帰ろう。と、のんびり撤収。再び19号に戻り81レの後を追った。標高1000m近くまで登ってきた中央本線と国道19号は、ここ鳥居峠を境に一気に塩尻まで下ってゆく。意外に速い国道の流れ。走りながら奈良井駅で退避している81レを追い越した。依然として快調に19号は流れている。もしや!? もう一発!? この界隈では日没寸前の太陽は山々に遮られ光は届かない。しかしこのまま塩尻市街まで行けば西方は開けてくるはず。カーナビである程度目星を付けておいた踏切へ右折。思惑通り高度の低い太陽が鋭く線路を照らしてくれていた。あとはロケーションの問題。しかし近づくと順光側は軌道敷ギリギリまで背の高い果樹園で埋め尽くされており、撮影は不可。反対側へも回ってみたがどうしても障害物が多すぎてどうにもならない。結局ポイントも決まらぬまま半分諦めた自分を横目に、逆光の中、美しい1023号機は高速で通過して行った。




2018.6/12   中央本線   洗馬〜塩尻   EOS5D 100-400mm

 最後の撮影は電柱ドーーッン!で終了。その後、塩尻市内でラーメンを食い、松本〜安房峠〜高山〜油坂峠の中部山地横断コースで福井に帰還したのは23時を少し回った頃だった。10年以上昔、追い求めて訪問してきた中西の64国鉄色カモレ。突如として復活した同じ被写体を目の当たりにして、激烈な疲労感も吹っ飛び、次回の訪問が楽しみだ。聞けば今後全検を出場する愛知機関区EF64は、新鶴見のEF65と同様、順次国鉄色に変更されるとの情報も。俄然脚光を浴び始めた(自分の中で)このシリーズの今後をご期待ください。