冬晴れの関東へ・・・ 直流電機三昧

2017.12/5

 年末年始の繁忙期を控え、この12月になって、ようやく取り損ねた5日間の夏休みを取得することに成功した。数日前からぼんやりと目的地として、廃止が決定している三江線でも訪問してみようかと思っていたが、撮影のためだけではなくとも、キハ120のためにわざわざ・・・という考えが沸いてしまい、ならばちょうど先週ついに新型気動車が登場し、キハ40の置き換えが決定している八戸線を撮影テーマに向かってみることにした。国鉄色の3両も動いているようだし、運用、撮影ポイントなどを調べ始めていた。しっかし当たり前だが八戸は遠い。陸路+レンタカーも視野に入れたが、なんだが重い腰が上がらない。

2017年、ついにどうしても訪れてみたいと自然に湧き上がるような感情がなくなってしまった。

そこで、八戸線の運用を調べている最中、気晴らしに、と確認してみた貨物関係のサイトで、ここ1か月近く、稼働の確認されていなかった吹田のEF6627が運用に入りだしていることに気が付いた。また時を同じくして新鶴見の国鉄色EF652139、同様に先日国鉄色に復元されたEF652065も運用に回りだしているではないか! ただ今休み初日の月曜日、連休取得のための雑務で一日つぶれてしまったが、今から出発すればEF652139の新鶴見→西浜松の3071レに間に合ってしまう。曜日が翌日に変わった深夜3時、土砂降りの福井市内を勢い出発することにした。

3071レは9時過ぎ、西浜松に到着するコンテナだ。ここ福井から300km近くの距離があるが時間はだいぶ余裕がある。しかし心配なのが睡眠不足。途中のSAで買ったブラックの缶コーヒー2缶をチビチビ飲みながら目的地までの距離を詰める。ようやく静岡県内に入ったところで猛烈に眠くなってきたが、後ろから追従してきた名古屋ナンバーのT社のハイブリッドカーにガンガン煽られ、気づけばとんでもないスピードでバトルを開始していたため、一気に眠りから覚め、おかげで無事浜松ICで降りることができた。さて、問題は撮影地である。なんとなく天竜川橋梁に向かってみるも、トラスが鉄橋のたもとまで続いている橋だったのでパス。仕方なしに線路沿いを静岡方へ車を走らせ撮影地探しが始まった。有名な菊川~金谷とかまで行けば風光明媚な情景を頂戴できるのであろうが、そこまで時間の余裕はない。1時間ほど線路に付かず離れず東進しながらついに開けた田んぼの築堤に出た。築堤を見上げるポイント。通過まであと30分。北陸地方とは違って空は澄み渡っている。直前の普電で練習開始だ。



 意外にも築堤の下草が伸びていて足回りが隠れてしまうが、もう移動している時間はない。やがて定刻通り、美しい装いを纏った国鉄電機が登場した。しかしなんだか様子がおかしい。もしや!?




なんと! オール空コキの3071レだった。
2017.12/5   東海道本線  袋井~磐田   EOS5D 24-105mm

 見事なまでの空コキ編成だった。本当に1個もコンテナが載っていない。呆然としていたが、ふと我に返った。「この後、どうする?」ということだ。出発前に見たEF6627は昨日5053レとして幡生まで行っている。なので明日午前中に東海道を上ってくる5052レがいただけそうだ。一方今通過したEF65219は今日の夜、新鶴見に向けて3070レとして帰るので撮影は不可だし、この運用に入ると次が全く読めない。悩ましい・・・。取りあえず明日午前のEF6722の5052レを初訪問である菊川~金谷間で撮影するためのロケハンを試みようと思う。明日の通過時間まで丸24時間以上。この界隈で過ごすしかないのか・・・。ともあれ出発してから一睡もしていないので、国道1号にある道の駅「掛川」で昼寝することにした。3時間におよぶ昼寝の末、またまた運用の確認。すると今度はEF652065が明日、鹿島貨物に入ることが判明。距離と移動時間を計算すると、明日朝、この界隈でEF6627の5052レを撮影した後、東名を飛ばせば鹿島貨物に間に合うことが分かった。またまた300km近くになる大移動だが、もう八戸線やら三江線などどうでもよくなっていた。目が覚めると移動開始。茶畑の間を縫うようにして走る線路を見ながら楽しいロケハン。いくつかポイントを見つけて島田市内へ抜けると夕方になっていた。まずは風呂に入りたい。調べるとここからもっとも近い道の駅、その名も「川根温泉」に併設の温泉があるとかで早速大井川鐡道に並行する国道473号を北上し到着すると、ちょうど月に一度の定休日らしくスルー。もうしょうがないのでさらに奥の寸又峡か接阻峡温泉を目指すことにしたが、その2つはイメージでは気軽に立ち寄れる温泉施設という感じではなく、「知る人ぞ知る秘湯」なので不安がよぎる。さらにすでに日没し真っ暗で、そんな「秘湯」が行きずりの旅人を夜遅くまで待っているはずがない。案の定、遥々狭隘路をたどってやってきた寸又峡はすでにひっそりと静まり返っており、すぐに静岡市内に向かうことにした。山から下り久しぶりの街の明るさに眩さを感じ、まずは食事。ちょっと値の張るファミレス形態のラーメン屋で暴飲暴食メニューを注文するが、旨かったのだが、なぜかどれも小ぶりで腹が満たされない。その後、市内にある大江戸温泉を今日の宿と決め、到着。ナイトパックを選択し、食堂で喰い直ししようとするがすでに営業時間外であったので、ヤケ酒にと、自販機のビールを大量に買い込んで仮眠室で就寝した。



      


本日の走行距離495km


2017.12/6

 疲れていたせいもあって8時間も寝た。今日も相変わらず絶好調に晴れ渡っている。5052レの撮影ポイントである菊川金谷はここから1時間もかからない上にまだ時間も余裕がある。途中のSAで昨日喰い足りなかった朝飯を平らげ、順調に運用を流れているだろう66の情報を確認すると、どうも定刻から30分ほど遅延している模様だ。上りブルトレ撮影でも有名だったところからわかるように、そこは朝の早い時間ほど光線がいい。ま、30分くらいなら・・・と気を取り直して相良牧の原ICで高速を降り、例の茶畑の撮影地に向かうと、大挙して押し寄せてそうなネタガマ屋さんたちの姿はどこにも無く、自分一人だけだった。やがて通過時刻+30分。同志も現れず少し不安になりながらもまた情報を見ると、いつしか2時間の遅れになっているそうな。この後移動する午後の鹿島貨物も危うくなってきた。でももう5052レを待つ以外の方法は無いので、とにかく待つ。暇つぶしにテレビを見たり、スマホをいじっていると、なんと先月、全検を受け、国鉄色に塗りなおされたばかりの愛知機のEF641028号機までがついに本線上に姿を現し、まさに今、ムドで吹田に向かっているとのこと。い、一体なにが起こるんだ・・・!? EF66、EF65×2両、そしてEF64まで、すべての国鉄色直流電機が動いている。もうどうしたらいいんだ・・・。嬉しい悲鳴とはこのこと。しかしそんな感動もしているうち、迂闊にもポカポカの陽気で居眠りをしてしまっていた。
 
 どれくらい眠ったのであろう。ふと我に返り時刻を見ると、まさに今が通過予定時刻+2時間。ヤバい! すぐに外に飛び出しカメラのセッティングを開始すると、すでに麓の踏切は鳴り出しており、5052レが撮影地に躍り出ようとするところだった。構図も露出もまだ決めていない。動画撮影の準備も当然できていない! とにかく冷静になるよう努めシャッターを切った。




露出も決められないまま定刻より2時間以上遅れ通過。
マッ白。終わった・・・




撮っててよかったRAW撮影❤  大カーブを行く遅5052レ。
2017.12/6   東海道本線  袋井~磐田   EOS5D 100-400mm

 さて、仕上がりを確認している場合ではない。すぐに茶畑の撮影地を発進。東名高速に乗り鹿島貨物撮影に臨む。カーナビが伝える到着予定時刻は1092レが鹿島スタを発つ30分前だ。当初は何度か訪問したことのある物井佐倉での撮影予定だったが、よくよく考えれば鹿島スタは15:53発。この季節よほど始発に近いところで迎撃せねば明かりが厳しくなるだろう。なので目的地は利根川橋梁。この日の千葉の日没は16:18とあるので、丘など背後に太陽を遮るものが何もなければギリ行けてしまうかも知れない。富士山を左にやりながら朝霧高原通過。神奈川県内に入り首都高渋谷線、中央環状線、湾岸線を経て東関東道、ノンストップでさらに圏央道の下総ICで無事降りることができた。すぐに橋梁を見渡せる土手へと駆け上がる。と、ここで重大なことに気が付いた。自分の中で想像していた、長大な橋梁で大河を渡る鹿島線のイメージは実はここではなく、もっと起点に近い北浦を渡る橋梁だ、ということだった。ここは昨日の天竜川と同様、対岸から対岸までトラスが連なっており、川を渡る列車は写しきることができない。もう北浦まで移動している時間もないので、やむなく対岸のトラスまでのアプローチ部分を狙うべく400mmに付け替えた。



 美しい・・・。日没15分前。今日最後の輝きを見せる太陽の弱い光を受けながら、周囲にあるものを全て紅く浮かび上がらせる。もう1092レは鹿島スタを出発している時間。一刻も早く来てほしい。イライラしながら露出を少しずつ上げ待っていると、次第に影が手前から侵略してきた。早く来い! 今コイ! 願えば願うほどあれほど紅を放っていた太陽光がついに落ちてしまうや否や、遥か前方から2灯のライトが迫ってきた。




あと2分早かったら・・・。利根川橋梁を渡る1092レ。
2017.12/6   鹿島線  十二橋~香取   EOS5D 100-400mm

 そして今度は列車の通過を待つまでもなく、すぐに静かにカメラを三脚から外し、流しの体制に移行する。露出も設定スミだ。行け!




もうちょっとシャッター速度遅くても良かったかな。一応トラス抜き成功。
2017.12/6   鹿島線  十二橋~香取   EOS5D 100-400m

 初めてであった2065号機。遠目からもその美しさはよく判った。背後で弧を描いて築堤から降りていく列車を見送っていると急激に気温が下がってきた。今日のやるべきことは終わったし、まずはメシだ。走り出してすぐの佐原市内で、横浜に住んでいたころよく通っていたラーメンチェーン店を発見。別格に旨いというわけではないけど、懐かしさのあまり思わず入店。今日は腹も満たされたのでまずは風呂に入って明日の作戦を考えようと千葉市内へ一般道で戻り、健康ランドヘピットイン。湯上りにロビーで今日の動向と明日の分析。EF6627は東京に到着したのち順調に運用が流れ宇都宮に行っているので、明日朝に首都圏に帰ってくるのだが、東北本線を上る時間が早すぎて撮影不可能。しかし終着近くの浜川崎付近で待っていれば撮影は可能。たった今見送ったEF652065は東京ターミナルと隅田川を往復する75、76運用なので同様に浜川崎付近で撮影可能。そしてEF652139は所在不明、ということだった。決めた。明日は南武線南端で両機を掛け持ちすることにした。しかしながら元地元とはいえ、この界隈で撮影した経験がないため撮影地も調べなければならない。またクルマで乗り付けらるようなところはないだろうから、駅チカのコインパーキングに停めて本数の少ない南武支線で移動するしかなさそうだ。そうと決まれば今日の宿泊地は明日の行動に移しやすいよう、東京湾アクアラインの海ほたるPAにすることにした。まだまだ寝る時間も早いので、こんな時のため暇つぶしにノートパソコンを持参し映画を一本仕込んでおいた。木更津市内のマックスバリューで夜食と酒を買い込みアクアラインに乗り、海ほたるの駐車場の一番端で夜を明かすことにした。

本日の走行距離491km


2017.12/7

 太平洋側に来て3日目。相変わらず空は澄み渡っている。目覚めの一服と缶コーヒーで体勢を整え、出発。尻手駅を目指す。駅周辺を探索しコインパーキングを発見。クルマを置いて入場券を購入し構内に上ると、平日にもかかわらずすでに20名近い猛者たちがホームの端ですでに臨戦態勢でカメラを短絡線出口方向へ向けていた。自分はなぜか一角だけ空いている場所があったのでそこから望遠で覗いてみると、さすがにケツは切れてしまいそうだが、順光でやってくる機関車をとらえられそうなポジションをキープすることに成功した。待つこと30分。いよいよ短絡線の踏切が鳴り出し、昨日牧の原台地で見送った青いアイツが姿を現した。ファインダー越しに目で追うと、アイツは予測外の動きをしだした。




キタキタ・・・。短絡線からゆっくり姿を現したEF6627牽引の東京ターミナル行き4072レ。




手前の線路を進むと思い込んでいたらまさかの側線進入。慌てて振った結果がこうなってしまった。
2017.12/7   南武線  尻手   EOS5D 100-400m

 なるほど、だから皆さんこちら側にはいらっしゃらなかったんですね~。画角の左右が厳しい上に慌てて構図を変えたもんだからピント調整に手間取り、何とか上記の結果になってしまった。気を取り直し次は昨日鹿島線で捕捉したEF652065牽引の75レだ。場所は次の駅の八丁畷に決めていたが、この尻手でのテツの多さにビビり、次の電車ですぐに移動して場所取りをすることにした。1時間程度なので楽勝だ。切符を買い直し2両編成のワンマン電車で次の駅、八丁畷に到着。すでに1人の方が狭いホーム終端で待ち構えていたので、隣ににお邪魔させてもらう。三脚を立てるのもはばかられるほどの狭い場所だったので当然カメラは手持ち。2065号機を待ち構えていた。




隅田川行き75レ。
2017.12/7   南武線  川崎新町~八丁畷   EOS5D 100-400m 



 75レを見送り、本格的にこれからどうしようかなと迷いだした。尻手駅に戻りクルマで懐かしい国道1号を南下。ガストで昼食を取りながら作戦を考えてみたがどうもいい考えが浮かばない。2139も原色64も動いていないようだし、強いて言うならEF6627が明日の午前中に吹田~姫路の81レに入りそうなことくらい。休みはあと1日あるので帰るついでに今日中に関西まで移動して、須磨付近で撮影かとも考えたが、天気予報も芳しくない上、なんだか面倒くさくなってきてしまった。その後は早々に首都圏を後にし、新東名~東海北陸道を走り抜き帰還した。
 ともあれ3日間、奇跡的に話題のネタ釜が3機動いてくれて天気も恵まれた。思えばとても贅沢な日々を過ごせたのではないか。こういう機会もう二度とないんじゃないかと感じることのできた貨物づくしの遠征だった。

本日の走行距離557km

総走行距離1543km 終了