非電化貨物の醍醐味。DE10速星貨物を狙う

2016.10/7

 いつか撮ってやろう・・・と思ううちに消えゆく被写体は経験上と大変多い。そんな中、城端線の二塚貨物がいつの間にか運行を終了していたのを知ったのは、廃止から半年ほど経ったある日のことだった。奇跡的に残されていた富山県内の非電化貨物3つのうち、1つが消えてしまっていた。残るは氷見線能町貨物、もう一つは今回ご紹介する高山本線速星貨物だった。翌日の休暇と安定した高気圧にようやくその気になり、前日、富山機DE10の運用を調べてみると、どうも国鉄色と更新色の2機が、ほぼ規則的なパターンで交互に能町と速星の貨物それぞれに運用についているようだった。明日はこのパターンからして国鉄色を堅持するDE103506が速星貨物こと1090レ〜1093レに就くようだ。氷見線と違い速星は1日1往復。日中の長い折り返し時間は富山市内で飯でも食おう。と、軽い気持ちで早速出かけることにした。1090レは朝9時過ぎの運転なので特別早起きしなくとも、ここ福井からたどり着くことはできるが、近所のスーパー銭湯に入りたかったのと、湯上りの気分のまま高速を流したかった、ただそれだけのために前夜23時ころ出発した。自宅を発ってから2時間もしないうち目的地の手前、呉羽PAに到着。高速に乗る前に仕込んでおいた缶ビールを一気に食らって寝ることにした。

 翌朝、近くのICで高速を降り、まだ朝のラッシュが残る混雑した県道を撮影地へ。過去何度も来たことのある婦中鵜坂の陸橋にやってきた。列車通過1時間ほど前に到着。空は一面の快晴で秋風が心地よい。バイクで来ればよかったと後悔しながらもセッティングし、後ろを行き交うクルマも気にせずワンセグをみながら時間をつぶした。しばらくして普通853Dが通過。あと30分で1090レがやってくる。するとどこからともなく1人の同じく貨物狙いの青年が陸橋下から歩いて登ってきた。「おはようございまーす!」とこちらから挨拶すると「・・・あ、ハイ」みたいな感じでつれない素振り。まぁいいやとファインダーで最終調整をしていると、遠くから紫煙を吐きながらDE10がゆっくり近づいてきた。件の青年を一瞥すると携帯をいじくっていて気が付かない様子。自分はビデオもスタートさせているので彼に近づき「来ましたよ!」と小声で教えてあげると、「・・・あっ・・・」とレンズを線路方に向けた。ゆっくり築堤を登って足元のカーブを右にクイッと機関車が顔を向けた瞬間を切り取ることができた。全くの快晴。国鉄色。しかも荷だくさん。うんうん、来てよかった・・・。




1090レ撮影のテツのためにJRが用意している853D。これで構図、ピントを確認させるというJR西の粋な計らいだ。(大嘘)




大本命1090レ。今日は3506号機が登板だ。
2016.10/7   高山本線  西富山〜婦中鵜坂   EOS5D 100-400mm

 これで午前中の一仕事を終えたわけで、ここから近い富山のラーメン屋へ急行!かと思いきや、まだ時間は10時前と早すぎる。なので1090レの後を追い、1090レの目的地でもある速星駅に出向き機回しを見学することにした。到着するとすでに入れ替えは始まっており、分割したコキを専用線に押し込んだりスイッチャーが機敏な動きを見せていた。ここでもマニヤ氏、1名。先ほどの跨線橋の彼とは違いとてもフレンドリーで、自分はほとんど知識のない富山のEF81の動態などをレクチャーしてくれた。この後の予定を聞かれ、今日は北陸本線の○○○レがオススメとかどうとか指南してくれたのだが、さっぱり分からない。やがて彼は時間が無いとかで挨拶もそこそこに別の物件へ向かうのであった。


機回し終了。再び静寂が駅を包んだ。
2016.10/7   高山本線  速星   EOS5D 100-400mm

 賑やかな入れ替えを見物していたが、やがてDE10の運転手は機関車を降り、休憩に行ってしまい動きがなくなってしまった。なので早速飯にする。スマホで食べログを検索し、富山市内で割と評価の高いラーメン店を物色していると、かつての富山港線、現富山ライトレールの越中中島駅にほど近い「一鶴」というラーメン屋が人気No1となっている。開店は11:30というのに、少し早い20分前に到着するとすでに行列が。やがて開店となり食券を買って店内へ。運ばれてきたラーメンはこれでもかというほどの煮干し系だった。ところで個人的には地元福井はネットにもあるようにラーメン文化不毛の地と認識しており、すでに県内では評判の店にはほとんど行ってみたが、どれもなんだか、なんだかなぁー・・・、という感じで旨いラーメンというものに飢えていたので、それはもう格別に旨いごちそうのようだった。同僚曰く、「福井には固め、とか麺のコシとか、そういう考えがないのが普通なんだよねー」と話しているのを思い出した。完食し、再び撮影地に戻る。と言っても1093レまで時間があるし、むしろ撮影地すら決めていないので当然ロケハンだ。富山〜速星のわずか7.9kmの距離の中で、撮影地と言えるところはごくわずかだ。ようやく朝撮影した跨線橋の反対側に回って築堤を下ってくるアングルを決定し、2時間ほど昼寝することにした。

 窓を閉め切っていた車内の暑さで目が覚めた。しかし昼間の様子と全く異なっていて、いつのまにか空には雲が沸き、「午後の赤い光線を浴びながら」のイメージは危ういものになってきた。セッティングを済ませ雲の行く先にドキドキしながら待機していると、半年ほど前、偶然連絡を取ったきりになっていた20年前のバイトの同僚から、これまた偶然連絡が入った。時間を持て余していたのでやり取りをしているうち、なんと今いる撮影地から3kmほどのところにあるショッピングセンターで働いているというのだ。当然撮影後、会いに行く約束をし、間もなく通過時刻となってきた。心配していた空模様はまさに最悪のタイミング。それでもかすかに放った西日が1093レの側面を照らしてくれた。


2016.10/7   高山本線  婦中鵜坂〜西富山   EOS5D 100-400mm

 撮影後、すぐにクルマを走らせ旧友が待つショッピングセンターへ。20年ぶりの再会を果たし、時を経つのも忘れ懐かしい話などで盛り上がっていたが、仕事に戻らなければならないとのことで早々に別れを告げ、自分は北陸道を飛ばして家路を急いだ。