本物のオリジナルカラーEF81を頂きたい! 羽越線弾丸ツアー

2016.3/18

 北陸新幹線開業からちょうど1年後、私事であるが福井県に転勤となった。485を追って何度も足を踏み入れた北陸地方にまさか自分が住まうなんぞ夢にも思わなかった。もしこの転勤が2.3年前だとしたら、時間があるごとに近所の北陸本線、少し足を延ばして信越海線に連日のように出かけていたのだろう。しかし欲求は叶い始めると際限が無い。首都圏から日本海沿いの485を撮影するために、たまの休みの日に出かけていたのがちょうどいいのかも知れない。
 
あの毎月のように通った485行脚から1年。この地元を走る国鉄型は富山機関区所属のEF81のみになってしまった。しかしそのパーイチも日々拡大する金太郎の勢力に押されながらも細々とではあるが関西〜北陸地方の物流を担う大役を現在も果たしている。今まで485を待っている間、やってくるEF81をきちんと撮ったことは無い。ならば地の利を生かしてとことんローピンのパーイチの捕獲をライフワークにしてやろう、と殆んど無知であった彼らの生態をネットで調べることにした。ほぼ毎日運用に就いているのはおよそ6両。全て交直機のアイデンティティであるローズピンクを纏っているのだが、車両更新のたびに施される全面白帯の無い純粋な国鉄色は、そのうちたったの3両だ。富山車の運用のほとんどはロングランの運用なのでイレギュラーな車両の差し替えは少なく、目撃情報から運用を予測するのは比較的容易だった。そしてとある日、純国鉄色を纏うEF81729が、翌日、日本海縦貫線2093レに就くことを知ったのは前日の夕方だった。調べてみると運転時刻は地元福井の通過は深夜。新潟県内で日の出を迎えたあと北上する便。露出を得られたければなるべく北上して距離を稼ぐしかなかった。さらに他サイト様の撮影記録などから得た各地の通過時刻をすべて位置関係に合わせて並べてみた結果、新潟〜秋田までのおおよその通過時刻がわかってきた。この季節。完全なる日照を狙うなら村上以北の交流電化区間。結局首都圏から向かうより遥かに遠い、小岩川〜あつみ温泉の撮影地を目的地として設定した。

 前日22時ころ出発。すぐに福井市内のインターから北陸道に乗り北を目指す。あとはもう何のイベントもないひたすら単調な北陸道の距離を稼ぐだけで、音楽を聴きながら、缶コーヒーを飲みながら、タバコを吸いながら、石川、富山を通過し新潟に入った。日本海東北道に入ると予期していた睡魔が襲う。目的地まで残りの距離を換算すると2時間程度は仮眠できそう。でも経験上2時間の仮眠は非常に危険であることは分かっているが運転に危険が生じたらもっと大事だ。何時だか忘れたが朦朧とした意識の中、日本海東北道最後のPAである豊栄に到着。念入りに4重に目覚ましをセットしてしばしの睡眠をとることにした。

 2時間後、目覚ましのアラームに一発で目を覚ますことができた。むしろ寒さで起きたほうが正しいかも知れない。目覚めの一服の後、出発。高速の終点である朝日まほろばICで国道に降りさらに北上し、ついに山形県に越境するとすぐに目的地である撮影ポイントに到着した。有名ところとあって通過1時間前に県外ナンバーのクルマがすでに1台。首都圏よりも、そして福井県よりも遠いところのナンバーの先行者の横にクルマを停め、機材一式を降ろした。その機材を担ぎながら線路を横断して段々畑の跡地の斜面を登り日本海を見下ろす。オォーッ!この景色だ。見たことあるある! 紙面やネット上でしか見たことのなかった風景の中に、自分が今まさに立っている。周囲の風景は想像していたものと違っていたり同じだったりその時々によって異なるが、ほとんどの場合、イメージしていた場所と違うことのほうが多い。今回もそうだった。そして畑を登っていると一番上段にあのクルマの持ち主と思われる方がセッティングを済まされている。その一段低い位置で自分は今日の機材を展開した。展開を終え改めて空を仰ぎ見ると、2093レ通過時刻には背後の山から太陽は完全に登っていると予測できるが、それよりも雲行きが怪しくなってきた。かなり高い上空に低いスジ状の雲。薄曇りのイヤな展開だ。




と思ってたら差し始めた朝日に照らされ新潟行きの「いなほ」が通過。にしても「フルーツ牛乳」とはよく言ったものだ。
2016.3/18   羽越本線  小岩川〜あつみ温泉   EOS5D 100-400mm

 「いなほ」を見送ってから数十分。空を流れる巻層雲の作る薄い日陰にドキドキしながらその度に露出を上下する。「早く来てくれないか」、もしくは「今コイ!さぁ」と交互に念じながら、やがて2093レ登場のタイミングになってしまった。




サブ機でズームUP。白帯の無い生粋の国鉄色EF81の登場だ。
2016.3/18   羽越本線  小岩川〜あつみ温泉   EOSkissX3 55-250mm




2016.3/18   羽越本線  小岩川〜あつみ温泉   EOS5D  100-400mm

 ちょっと薄雲ってしまった感はあるが一応柔らかな太陽光線はオリジナルのローズピンクを照らしてくれた。まぁまぁ・・・・まぁ・・。って感じだった。用を済ませたからにはあとはもうひたすら来た道を戻るのみ。途中のPAで寝足りなかった睡眠をむさぼり、福井に到着するころにはすっかり陽も落ちていた。

 この撮影から1か月。北海道新幹線開業に合わせたダイヤ改正で富山機関区のEF81の運用は全て抹消されてしまった。もっと早く知っていれば限られた時間の中でパーイチと向かい合うことができたと思うのだが、虫の知らせか急に思い立ち、今回の撮影が成功したことに少し安堵した。しかしながらダイヤ改正後、本来EF510が受け持つべき運用を、残されたEF81が連日就いていることが分かった。恐らく暫定的な臨時の運用であると思われるが運良く残った機関車は719、721、726の3両のみ。いずれも白帯仕様の更新車ばかりだが、少しでも日本海縦貫線という大幹線を担ったパーイチの姿を記録できるよう努めていきたいと思う。