T18最後の任務? 「足利大藤まつり号」に密着。

2015.5/5

 ゴールデンウィーク終盤の5月5日、連勤やいろいろな大人の事情の関係で仕事を休みにせざるを得なかった。上司や同僚には別に好きでこの日を休みにしたわけではなく、「仕方なしに」といった感じで恐縮するフリをしつつも、先月買っておいた某情報誌を穴の開くまでガン見して調べた結果、今回の行き先は毎年恒例となる秋田車583を使用した「弘前さくらまつり号」の撮影に決めていた。しかし5/5の前後はいずれも早朝からの早番。指定席などGWで取れるはずも無い「こまち」で秋田に向かうことも出来ないため、気合の仕事終わりの自力での現地入りをすることにした。帰りは帰省のピークにちょうどぶつかってしまいそうであるが、東北道上り50kmの渋滞は覚悟の上だ。

 当日、早めに切り上げるつもりの仕事が長引き、自宅に帰ってきたのは17時過ぎだった。583の秋田出発まであと12時間以上あるので、途中仮眠など含めて十分達成可能な時間であるが、問題は帰路。数時間の仮眠で現地に到着し、1発目的を果たしてすぐに帰還のため首都圏に向かったとしても、随所に待ち構えるハードな渋滞。翌日も早朝からの勤務であるので、考えただけでもゲロが出そうだ。しばらく己の精神力と体力に自問自答を繰り返していたが、出た答えは「NO」。今年も583は諦めることにした。ただせっかくの祝日休みでもあるのでこのまま自宅警備は勿体無い。手ごろな距離ということで、先日、水上付近で送り込み回送を狙った485系T18編成による「足利大藤まつり号」をまだ撮影したことの無い両毛線で狙ってみることにした。

 翌朝。7時頃出発。距離も距離であるし、今季まだクルマでの遠征撮影にしか出かけていなかったので、今回はバイクを選び、近所の首都高入り口を目指す。ところで最近バイクのETCの調子が悪く、5回に1回は通信が失敗し、料金所で立ち往生して後続車に迷惑をかけながら係員に車載器から取り出したカードを渡してゲートを通過することが頻発してきたため、今日も慎重に速度を落としてゲートに近づく。10km/hくらいでゆっくり進入すると、やはり表示板に「STOP!」の文字。後続車はいなかったがETCカードを取り出して係のおっちゃんに渡し、いざ出発! 下りは特に渋滞するわけでもなく、2時間ちょっとで佐野SAに併設のスマートICで一般道に下りることができた。まだまだ時間があるのでコンビニに立ち寄りオニギリとおつまみの朝食を摂り、大平下〜岩舟の撮影地を目指す。毎年恒例だし485と185の地味な多客臨であるので、せいぜい撮影者は数えるほどでしかないだろうと勝手に想像し、岩舟駅に立ち寄ると周辺にはすでにカメラを持った大きいお友達がチラホラ。撮影地に向かう途中でも農道に中京圏や関西圏のナンバーのクルマが何台も停まっていたりして、かなり予想を裏切られた。新潟の485は定期運用を糸魚川快速のみ残存している現在。やはりこれだけ注目を集めているとは少々驚きだった。果たして目的地である某踏切に到着すると数十台の路駐のクルマと50人以上のひな壇。天気も曇りだし、よくまぁこんなにも集まったものだと感心するのはさておき、場所探しをする。まだ本番通過1時間前であるにも拘わらず、撮影スペースの余地などほとんど無かったのだ。ようやくあるスポットに落ち着きセッティングを開始、曇り空の下、練習の普通電車でウォーミングアップを開始した。






2015.5/5   両毛線   大平下〜岩舟   EOS5D  100-400mm

 太陽は姿を見せないまま、いよいよ本番485通過の15分前。するとどこからともなく1人のお巡りさんが登場した。雛壇を形成している先頭集団のテツと、丘に登ってスタンバイしている我々に何か大声で叫んでいる。しかし遠すぎて丘の上にいる我々には聞こえなかったが、だいたいこういう時は予想が付く。多分、「路駐のクルマで近所からクレームが来ている。早くどかしなさい。」というところだろう。自分はバイクである上にかなり遠くに止めて置いたので大丈夫だとは思うが、ここからは木の陰で見えないが到着した時の台数より倍以上に増えているものと想像できる。「巻き添いはゴメンだ・・・」 勧告により2.3名の人がカメラをそのままにし動いたが、公僕は排除の手を緩めない。相当な台数に膨れ上がっている模様で、現場にいた一人ひとりに「クルマできてますか?」と尋ねながら丘に登ってきた。自分は「バイクっす」というと逃してくれたが、隣で先着していた方がつかまってしまい、通過10分前の中、哀れにもクルマを移動するため現場を後にした。しかしそれでも駐車車両は通行に支障があるようで、一部のテツ集団とお巡りさん、そして地元の方も登場してきてしまい押し問答が始まってしまった。通過5分前。もうクルマを移動させる余裕など誰も無く、「もう少しだから見逃してくれ」と、「先頭集団よ、そのままディフェンスしてくれ!」と誰もが願っていた。直前の全員排除は止めてくれ。そう思う間もなく踏切が鳴った。




2015.5/5   両毛線   大平下〜岩舟   EOS5D  100-400mm

 列車が通過してしまうと一同はありえないほどの手際の良さで撤収し、1分後には自分と他数名だけが残された。無事だったバイクに戻り出発。とは言っても午後の返しまで5時間以上あるので、少しツーリングしてみようと思った。目指すは足尾。小学生の時、まだ国鉄足尾線だった頃一回だけ乗ったことがあるが、30年近く経った現在はどうなっているんだろう、と少し興味が沸いてきたからだ。国道のバイパスには戻らず両毛線沿いの県道で桐生に向かう。いつしか雲は途切れ5月らしいさわやかな晴れの日になっていたが、途中藤祭りの影響で混雑する佐野市街の通過に予想以上に時間を取られ、足利市からバイパスへエスケープ。わたらせ渓谷鉄道と平行する国道122号線で足尾駅に到着すると、ちょうどトロッコ列車の折り返し時間だったのか、駅周辺は連休の家族連れでそこそこの賑わいになっていた。






ちょうどトロッコ列車の機回しの最中だった。
2015.5/5   わたらせ渓谷鉄道   足尾   EOS5D  24-105mm

 今まで興味が無かったので全然知らなかったが、茶色のDE10が牽くものとばっかり思っていたココのトロッコだが、原色のDE10もいたなんて全く知らなかった。客車はアレだが国鉄色の機関車なら紅葉のシーズンにでも撮りに来ようと思い、自身の「死ぬまでに撮っとくリスト」に追加しておいた。




構内にはいろいろな怪しい展示ブツ。「西寒川」とは良いセンス。

 機回しの機関車の連結を見届け、さらに奥地へ向かう。現在の終点「間藤」より先、1986年に廃止された精錬所につながる足尾本山までの探索だ。実は昨日、ストリートビューでこの界隈をウロウロしていると、結構廃線跡がそのままになっているようなので見学してみようと思ったのだった。




いきなり踏切跡に遭遇。警報機、線路がそのままだ。




その踏切から奥を覗くと鉄橋発見。




その鉄橋の先にはトンネルが。まるで現役のように路盤もポータルもしっかり残っている。




その先のもう一つのトンネル。足尾本山の場内腕木信号がそのまま!オレも場内進行しちゃうよ?




足尾本山直前の最後の鉄橋。背後が本山。堅牢なバリケードに阻まれ駅跡には入れなかった。

 ひとしきり廃線探索を楽しんで国道に戻ってきた。これから返しの列車を撮影するためにまた桐生市内に戻り、岩舟付近で撮影するのだ。長く緩い下り坂をのんびりとしたペースで走っていると眠くなってきた。前を走るクルマの速度がほぼ一定だったため、途中で意識がなくなり、気が付いたら大間々市街に入っていた。早朝出発してからほぼろくなものを喰っていなかったので、雰囲気で旨いと分かるラーメン屋探しの能力を使い、街を流しながらリサーチする。2.3軒目。県道沿いの駐車場が大きなラーメン屋でセンサーが反応し、ピットイン。店内に入ると休日だというのに他の客は1人だけであった。しまったと思ったときにはもう遅く、バイトの子がおしぼりを持って注文をとりにやって来てしまったので、少しの期待に掛けてメニュー表の一番デカイ多分おすすめであろうネギラーメンを注文した。待っている間に今さらながら本格的に腹が減っていることに気が付き、追加で小ライスを注文してしまった。やがて注文の品が運ばれてきた。目の前に置かれ湯気が顔をなでると、「?」となった。とにかく臭い・・・。見た目は味噌ラーメンなのになんだかシナモンのようなコカコーラゼロのような異質の芳香が入っており、そこにさらに使いまわしたような古い油のニオイ・・・。臭気だけでエヅくようなスープ。では麺は?と箸で持ち上げようとすると全ての麺がブチブチと切れて丼に帰って行く。なんだこの初めてな感触。レンゲでその麺をすくって口に入れてみると、コシもへったくれもない噛まずに飲み込めるノビまくった麺だった。今までいろんなまずいラーメンに出会ってきたが、間違い無く人生ワースト1!! レンゲの麺の二口目がどうしても進まない。「クレーム言ってやろうか・・・」 でも受け入れられたとしてもそれは麺だけ。多分スープは変わらず廃油+シナモン風味だろう。1分ほど迷った挙句、一口だけ手を付けただけで¥1010払って店を出ることにした。運ばれてから1分ほどで、ほとんどそのままの状態で席を立ちお支払い。店員さんの顔を見ることはしなかったが、どうぞ今後のためにも不幸な客は出さないでください、と願いつつ、他のラーメン屋を探すことにした。国道50号に戻り少し行ったところで給油。すぐ近くに安心安全の山岡屋があったので迷わず入店した。ガソリンも腹も満たされ先を急いでいると、どうやら目的の列車までかなり危うい時刻になっていることに気が付いた。岩舟駅に通過5分前到着。夕陽が低い位置から背後の岩舟山を照らしてくれているが、線路はここから北東に進路を変えるため、どこでどう撮っても逆光になることが分かった。もう時間が無い。今月末にはT18の引退セレモニーも予定されていて、今まで何年間も被写体になってくれたT18編成の自分にとっての最後の餞としたい。なので撮影は思い出として適当な線路脇にバイクを止め、やがてやって来たT18編成とファインダー越しに別れの挨拶をして本日のツーリングは終了となった。

本日の走行距離 451km




2015.5/5   両毛線   岩舟〜大平下   EOS5D  100-400mm