仙台車A1+A2編成のお盆臨

2015.8/14

 先週、今までの人生で最も多く被写体として向き合ってきた485系新潟車両センター所属のT18編成がついに帰らぬ旅路に発ってしまった。正確には新潟方の2つ目ライトで有名なクハ485-1508の一両だけは運良く新津に建設中の鉄道博物館に生態保存されることが決定しているのだが、相棒であった残りの5両は土崎工場に送られ近々スクラップになるという。散々悔いの無いよう過ごしてきたので、ここで感傷的になるつもりは皆無だが、こうして考えてみるとオリジナルの国鉄色を纏った485系は仙台のA1+A2編成と、大分のDo32編成のみの2本という寂しさになってしまった。そんな中、2015年お盆に件の仙台車を使用した多客臨が磐越西線で運転されるということを知った。「あいづライナー」からの撤退も久しく、またあの国鉄特急色が磐梯山の麓に帰ってくるというのだ。こりゃ行かん訳にはいかん。決行の日はお盆クライマックス前日の8/15(土)。「あいづライナー」時代のように贅沢に何往復する訳でもなく、ただの1往復の運転とのことだが、注目すべきは仙台から郡山への送り込み回送だった。5:14に仙台を出発。途中大河原で1時間16分、越河で31分、福島で12分、松川で58分、本宮で59分、そして客扱いの始まる郡山で22分の長時間の運転停車があることだった。もうこうなると磐越西線内での撮影はついで程度に考えてしまい、どこでどうやったら最も効率が良い「追っかけ」になるかを考えだしていた。当日の天気予報は曇り時々晴れ。ただし往路の金曜の夜は強い雨の予報が関東から東北南部に出ており、一瞬クルマで行こうかと思っていたが、到着すれば現地はどこも混雑するのは請け合い。また翌日の勤務が早朝からだったので、お盆の帰省ラッシュの直撃を回避するため、また追っかけ撮影のため小回りが利くよう、雨天覚悟で急遽バイクにて旅立つことに決めた。

 仕事が終わり少し昼寝して19時頃出発。早くも渋滞の始まっている上り線を横目に北へ急いだ。場内に流入するクルマで大混雑の蓮田SAで夕食。蓮田を出て栃木県に入る間もなく予報通り雨が降り出した。次のサービスエリアまで我慢できそうにもないほどの降りだったので、ハザードを焚き路肩の非常駐車帯に停車してカッパを着込み再出発。少し落ちた巡航速度であるにも関わらず、疲労がかさむ雨中運転のため1時間ごとに休憩をし、目的地の白石ICの一つ手前の国見SAに到着したのは0時少し前だった。バイクなのでサービスエリアで夜を明かすことにしていたのだが、この時間でも帰省客で食堂の席は埋まっていた。諦めて高速を降り、ネットカフェでもビジホでも探そうと判断を下したその時、食堂の一番端に空席を見つけたので、ようやくそこに旅装を解くことができた。ガンガン効いている冷房の寒さでほとんど深い眠りにつくことは出来なかったが、3時間半程度、目をつぶりうたた寝をしてしばしの休息をした。

本日の走行距離 350km

2015.8/15

 目覚ましに起こされ4時ちょい過ぎ起床。赤枠にガッツリ入ってしまった燃料計を気にして場内のスタンドで給油すると残り0.5Lで、宿を求めて昨夜このまま運転を継続すれば危うく本線立ち往生するところだった。さてまだ暗い東北道を走り白石ICで下りる。最初の運転停車である大河原の少し手前で撮影の予定だったが、朝霧がなかなか晴れず、日もまだ薄暗いのでスチル撮影は不可能と判断。とりあえずビデオだけで出迎えることにした。


2015.8/15   東北本線  槻木〜船岡

 無事動画撮影を終え、次に向かうは馬牛沼のお立ち台。到着すると約10名くらいの方々が485を待ち受けていらっしゃった。低い雲が多いものの、晴れ間の日差しは強烈だったが、なんとなく真夏のそれではなく、少し秋の気配を感じられるくらいの澄んだ光線だった。太陽光線を浴びながら25‰を駆け上って来る485の姿を想像しながら念入りに立ち位置を決めた。




彩度上げていませんよ。朝のクリアな大気が情景をドラマチックに変えた。
2015.8/15   東北本線  白石〜越河   EOS5D 24-105mm

 なかなか美味だった。列車はすぐ次の越河でまた長時間停車があるので先を急ぐ。越河の次は福島市内をパスしなければならないため、高速で短区間先行しようとも考えたのだが、そこまでしなくても余裕はあり、のんびり国道4号線で福島盆地に降り、市街をスルー。そしてまた盆地を抜けるための長い上り坂の途中で折れ、未だ訪問したことのなかった南福島のカーブに行く予定を立てていた。山の上を縫うようにして走る国道から再び下界に降り、果樹園を抜けると現場はすぐに分かった。線路と同レベルまで上る獣道を進み、トンネルポータルの上に立つと、何度も画像で見たことのある光景。ただし想像していたよりスケールは小さく、周囲の木々の圧迫感が画面を占領してしまい、フレーミングに少々時間を割いた。ここにも同志5名。ヤブ蚊の攻撃に耐えながらその時を待った。




左上に福島市街を見下ろす。午前中に晴れると逆光になるので心配していたが、薄曇りになってくれた。
2015.8/15   東北本線  南福島〜金谷川   EOS5D 100-400mm

 有名撮影地だけだったが、走行写真は少し満足し、今度は駅停車での舐め回すような観察と、発車をムービーで撮影するため次のバカ停駅である松川に向かった。ここでは約1時間の停車。駅前広場にバイクを停め構内を覗くとすでに先行していた485は体を休めていた。有人駅のようだが改札はしているのかしていないのかよく分からず、地元民がフリーパスで改札を抜けている合間に、到着してきた追っ掛け組のテツ集団もドサクサに紛れて改札を突破している。自分は一応入場券を購入したが、本州に唯一残った原色の485をお値打ち価格、たったの¥140で1時間近く撮影できるのだから安いもんだ。はやる気持ちを抑えきれずにホームへ。間近に出会ってまず驚いたのがA1+A2編成のその美しさだった。最後の全検がいつだったか調べてはいないが、少しの剥がれや色褪せも無い塗装。丹念に修復したであろう下地。そのまま博物館に展示されていそうな装いを纏わせた職人さんの485への愛着が見て取れた。その丁寧な仕事によって輝く鋼鉄のボディをなでてみたり、間近に観察したりして時が経つのを忘れ、そろそろ出発時間になった時、気がつくと485は自分だけの独占になっていた。やがて厳かに動き出す列車。その出発風景を見届けて次の目的地へ先回りをした。




ここで何回目かの休息。貨物や普電に道を譲る。
2015.8/15   東北本線  松川   EOS5D 24-105mm




構内の外れにあった古いレンガ庫。数々の東北本線の名列車を見送ってきたに違いない。




もうピッカピカ! 次の目的地へGO!

 次も相変わらず時間的に余裕があったので一般国道で南下。長時間停車の本宮のさらに先を狙う。気が付くと西側の山々のモヤが晴れて、名峰、安達太良山の姿が見えてきた。とある跨線橋にやってくるとすでに大勢のカメラの砲列があった。ほぼ全員線路の直上で正面がちに狙っているようだったが、自分は安達太良山の勇士が捨て難かったので広角気味にサイドから行くつもりだ。軽快に行き来するステンレスの普通電車で構図と露出調整。ほぼ真横からの撮影だったため絶好の一瞬を5Dの遅い連写には任せられないので、気合の指先一撃勝負に出た。




2015.8/15   東北本線  本宮〜五百川   EOS5D 24-105mm

 低い真夏の雲の下、すべるように去って行った送り込み回送9128Mは次の郡山で客扱いを開始。磐越西線へと入っていくのだが、正直、この送り込み撮影だけで満足してしまった。磐西内での撮影地は全く決めておらず、内陸は天候も不安定だというのであまり乗り気がしなかった。また現在、ありえないほどの寝不足。帰りは渋滞必至。明日は午前5時からの勤務・・・。しかしそんな理由で撤退を決めれば後年の後悔は目に見えている。なのですぐに近くの本宮ICから高速に乗り、郡山JCTで西に進路を取りショートカットをし、若松行き下り1本だけを撮るため磐越道に入ったた。そして走りながら撮影地を考えた。一体どこで撮ろうか?通過直前に乗り込むわけだから場所はかなり限られる。まして猪苗代湖畔に上り詰めると小雨ながらもついに降ってきてしまった。結局撮影地を決められないまま、なんとかなるだろうと猪苗代ICで降り、無意識のうちに布藤へと向かっていた。数台の先客のクルマが停まっていたが、かなり自由度の高い撮影地だったと記憶している。バイクを止め線路へと歩き出すと、すでに数名の方々が線路際に密集しておられた。近づくと全員の方から「こんには〜」と爽やかな挨拶を受けた。そういえば今日撮影した全ての場所でも自然と全員挨拶していた。ネタ列車に付きものの殺伐とした雰囲気に慣れていた自分にとっては少しカルチャーショックを覚え、今後の行動を自覚しなければと決心した出来事であった。さてその一団が密集する付近から磐梯山の方向を臨むと、線路脇の下草が想像以上に伸びまくっており、その下草をかわして撮影するにはもうほとんど場所はなかったことに気が付いた。時間は無いが他に移動しようか迷って一団の後をウロウロしていると、一人の方が隣を指し「ここどうぞ」と微笑んでくれた。丁重にお礼を言い早速お邪魔させてもらいセット完了。磐梯山の頂は雲の中で見通すことが出来ないので、仕方なく編成重視で画角を振った。




2015.8/15   磐越西線  翁島〜更科(信)   EOS5D 100-400mm


次のコマではタイフォンが「クパァー」。
2015.8/15   東北本線  南福島〜金谷川   EOS5D 100-400mm

 列車が通過してしまうと一同また爽やかに労をねぎらう挨拶をして撤収していった。さて次の返しは4時間後。しかし明日の早朝からの仕事と今にも降り出しそうな空の下、やはり復路は諦めて帰るという決断をした。バイクに跨りエンジンをかけ、走り出して10分も経たないうちに突然夕立のような大雨に襲われた。幸先の悪い帰路。まだ昨夜の乾ききっていない湿ったままのカッパを装着し、国道294号線で白河に向かっているといつの間にか雨は上がり、また8月の暑い直射日光が照り付けてきた。高速に乗ると覚悟していたお盆帰省の大渋滞が発生中。40kmの通過に2時間以上と目眩のするような渋滞を、眠さのあまり仮死状態ですり抜けを慣行。無事、自宅に帰還できたのは午後7時過ぎだった。

今回の総走行距離 851km