山スカには”ヤマ”が似合う! 中央東線で名峰とC1三昧。

2015.10/27

 前回、運用表見誤りという失態によりその姿を捉えることが出来なかった長野車スカ色115系こと、C1編成。あれからまだ2日しか経っていないが、休みだし天気も良いので再び甲斐路に出撃することにした。前回と同じバイクでの出撃を計画していたが、当日朝起きてみると一昨日とは打って変わって肌寒くなっており、クルマで行くことにした。6時頃出発。高速に乗りながら一発目の撮影地を考え始める。今日の運用予測はA42。撮影するには甲府〜小淵沢間を日中に2往復する運用なので、かなりお手ごろな行程である。

 話は変わって今から10年ほど前、信州方面へと運転される183系の集約臨を何度か撮影しに行った事があった。高地の澄んだ清涼な空の下、雄大な南アルプスや八ヶ岳をバックに快走する183系や115系、原色のロクヨンの撮影を楽しんだ。確かあの時は良く調べもせずに撮影地を探し、行き当たりバッタリで選らんだところが思いの他に画になる情景だった。しかし、韮崎〜小淵沢付近で撮影したことは覚えているのだが、肝心の具体的にどこのポイントで撮ったのかを全く思い出せないところが数箇所あった。そんな訳で前日、ネットで撮影地情報を検索したり、かすかな記憶を頼りに地形図で見当を付け、ストリートビューなどで下調べをしたのだが、どこも当時の撮影地とは違うようで、結果、ほとんど事前リサーチの成果もないまま、今日も当ての無いまま中央道を西に進み韮崎ICで降りた。

 中央本線は標高350mの韮崎を出ると甲府盆地に別れを告げ、ピークとなる標高950mの富士見駅のまでの連続登り勾配に入る。線路は川沿いの低地を走るのではなく、釜無川沿いの国道20号線と、並行する塩川沿いの国道141号線の間に挟まれた七里岩と呼ばれる連続した山々の尾根付近をトレースして登って行く。下界との比高は100m以上あり、それ故この区間は独特な沿線風景が展開している。七里岩ロードと呼ばれる中央本線と並行した県道を先に進み、記憶を辿りながらあらゆる脇道に入ってみるものの、当時の記憶はあまりにも曖昧で、小一時間ほどウロウロしていたもののついに時間切れとなり、C1が充当する532Mがもうすぐやって来てしまうことに気が付いた。仕方なく有名すぎる撮影地、新府の桃畑でやってみることにした。春にはそこかしこに桃の花が咲きまくり、遠くの山々をバックとした言葉通り桃源郷のような光景が広がることでお馴染みの撮影地だったが、秋真っ只中のこの季節でも茅が岳を背景に絶景のパノラマが広がっており、どこをどう切り取るかがとても悩ましいところだ。すぐ隣にそびえる誰でも知ってる名峰、八ヶ岳に山容がウリふたつなことから「ニセ八ツ」とも言われる茅が岳。そのニセをバックに桃畑の中で撮影の準備をしていると、近くに数名の同業テツの方が散らばって列車を待っていることに気が付いた。同じグループでもなさそうだし、そういえばここに来るまでの間も何台かの県外ナンバーが待機していたことを思い出した。先週くらいに確かあったスーパーあずさの新しい車両の試運転でもあるのかいな?と思って、近くにいたビデオだけを準備している人に訊いてみた。「シーワンっすよ。多分みんなシーワンじゃないのかなぁ」と意外すぎる回答 えっ!? C1編成のこと? そんなC1ごときでこんなにも! とビビッていると、532M通過時間が近づくと付近のテツの皆さんは一斉に臨戦態勢に入った。 


532M  茅が岳をバックに標高を稼ぐC1編成。MT54が唸る唸る!
2015.10/27   新府〜穴山   EOS5D 24-105mm

 列車が通過すると皆さんは一斉に撤収を始めたので本当にこのC1編成だけを狙っていたようだ。まさか近々引退するんじゃなかろうか。なんでもない平日にこの人手。その辺のことに関しては全く無知だったので帰ったら調べよう。むしろ今日が自分にとっては最後になるかもしれない、と今日一日の気合がこみあげてくる。さて次は小淵沢で返してくる332Mである。時間は1時間ちょっと。ここに立つ前に見つけておいた332M用のポイントへ急ぐ。急ぐといってもここから数百m程度であり、おそらくここにいる全員終結する予感がしたので早めの行動だ。線路をくぐり反対側へ。編成最後尾までは入らないがこちらも名峰、甲斐駒ケ岳を背後にカーブで急坂を下りてくるアングルだ。10年前、何も知らずに発見したこのアングルだが、コチラも名が知れた撮影ポイントとなっているようでいくつかの撮影地案内的なサイトに紹介されていた。クルマを止めて早足で現場に近づくと何やら賑やかなエンジン音。それも2ストロークの甲高い音。いつも通り、とってもイヤな予感・・・。さらに近づくとトラックやらワゴン車が線路脇のスペース何台も占領していた。なんとそのお立ち台ポイントはまさに草刈作業の真っ最中。撮影者の立ち位置となるアウトカーブは作業車が停まり前線基地となっていた。そんな中でもすぐ脇でブンブン唸る刈払い機の騒音と飛散する大量のチリの中、三脚を立ててレンズを伸ばしている猛者が5人ほどいた。さぞかし邪魔になるだろうが、作業員の方がは慣れたもので、まるで複数のテツの存在を無視するようにすぐ近くでいつも通りのように草を刈っていた。自分もその撮影集団の中に入ろうとしたが、あまりのチリの多さと通過直前の全員排除だけは避けたかったので、クルマの中に戻りしばらく様子を静観することにした。やがて332M通過10分前、意を決してお立ち台に立つと1時間前と同じように黙々と刈り払いの作業は続行されていた。しかし作業はだいぶ遠方のほうに移動しているものの、直接的な被害は無いが列車通過時には退避として作業員がフレームインしてしまいそうだ。少し悩んだが撮影決行。やがて列車接近を知らせる音声が監視役の無線機から聞こえ、作業は中断。レリーズを切る位置によっては退避する作業員をかわせそうだと踏み、115のヘッドが振るのをイメージした。




甲斐駒ケ岳をバックに急勾配を下ってくるC1編成。オヂさんたちをかわすことはできなかった。
2015.10/27   穴山〜新府   EOS5D 100-400mm

 332Mが通過すると刈り払いの作業はすぐに再開。我々一同は現場を後にした。332Mは終点の甲府でわずか12分の折り返し時間の後、335Mとしてすぐに戻ってくるので、なるべく甲府から遠い小淵沢手前の三峰の丘から富士山を撃つことにしていた。時間はあまり無い。高速のインターも遠いので一般道を使い先へ急いでいると、背後に見えていた富士山が薄らボケっとし始めていた。一昨日の訪問の時よりも大気は澄んでいないのだが、前回この周辺から確認できた冠雪したばかりの山頂付近の雪は、今日は肉眼でようやく見えるほどで、またさらに正午に近づくにつれ気温も上がりますます富士山はモヤの中に消え入りそうになってきた。通過20分前。三峰の丘に到着。三峰とは富士山、北岳、穂高岳の国内標高3位までの山のことで、この丘に立てばその3位までの山々が全て見ることが出来ることから名づけられたそうな。近くの案内板にあった写真を見て実際と見比べる。いずれも霞んでいるものの本当に見本通りの位置にその姿はあった。スゲー!!  ・・・ていうか北岳と穂高岳は手前の山に隠れて山頂が極僅かにしか見えないのが無理矢理ってところだ。そんな中でも本日のターゲットは一番まともに見えるが、麓に沸いていた雲が待っている時間ともに徐々に頂上付近に侵食し始め、ついにもう限界というところで遠くの踏切の遮断棒が降りるのが見えた。




う〜ん・・・。
2015.10/27   長坂〜小淵沢   EOS5D 100-400mm

 う〜ん、などと言っている場合ではない。すぐ目と鼻の先の小淵沢でわずか9分の折り返しで548Mとして戻ってくる。移動できるヒマもないので、前回、211を撮ってしまった八ヶ岳チラリバックで狙うべくクルマを急発進させた。遅い先行車にイライラしながらもやがて現地到着。すでに1名の方が待機しておられすぐにその隣にお邪魔しスタンバイした。




2015.10/27   小淵沢〜長坂   EOS5D 24-105mm

 この548Mは高尾行きであり、撮影可能時間にまたすぐに甲府行きとしてコチラに近づいてくるのだが、4発とはいえ当初の目的を果たせたことだし、もう少し紅葉が色づき始めたら再訪しようと決め、帰還の決断を下した。まだまだ時間も正午過ぎと早いので国道20号線で甲府市内を目指し、一般国道で峠を越えて河口湖経由で帰ろうとしたものの突如睡魔に襲われ、吉田市内の道の駅であろうことか8時間以上も昼ネしてしまい、自宅に到着したのは日付が変わった頃というあり得ない帰還だった。

 ところで、この撮影に訪問した日、A42運用に入ってくれたC1編成は翌日、運用最終番号であるA43に充当。そのまま所属区である長野への行路が最終運用となり引退となってしまったことを何日か経って知った。新府の撮影地のあの人手はそういうことだったのか、とようやく理解し、山スカとまで呼ばれた115系の今まで活躍に思いを馳せたのだった。