信越山線 いよいよ最後のラッセルDE15。試雪を追った!

2014.11/21

 来春開通する北陸新幹線の開業に伴い、第3セクターに移管される信越本線、長野〜直江津の区間。とりわけ峠越えの区間は冬になると日本海性の湿った低気圧の通過による降雪で、日本屈指の豪雪地帯と知られている。当然そこを通る信越本線の除雪対策も、他地域に比べ厳重であり、3セク移管を控えているという理由もあってだろう、DD14による日本最後の特殊排雪列車の運転でこれまた有名である。今シーズンがJR信越本線としては最後の冬。しなの鉄道からの正式な発表は無いが、このままDD14を譲渡するわけではないだろうから、ついに「特雪」も絶滅してしまうことになるのは明らかだ。そんな厳冬期を控えた11月。例年と同様に日本各地から除雪列車の試運転、「試雪」の運転の知らせが相次いでやってきた。この信越本線も、DD14による試雪もさることながら、通常の降雪時に活躍するラッセルDE15の試雪の情報も舞い込んできた。以前、偶然にもこの区間でDD14の試雪には遭遇したことはあったが、DE15はお初である。まだ経験の無いDE15試雪を撮りたい!幸いにも運転される3日間のうち、最終日が休みとかぶったため出撃することにした。

 21時過ぎに仕事が終わり職場を出発した。21時という時間が中途半端だったために、自宅に帰ってから装備品などを準備する手間が惜しく、すでにクルマには撮影機材とお泊りセットを積み込んできた。職場から5分ほどの所にあるスーパー銭湯で禊(みそぎ)、すぐに高速に乗って北上した。実は我が愛車、何度目か分からないくらいのリコールで現在修理中である。今回の旅の相棒はクルマ屋が代車として用意してくれた、「フリードハイブリッド」だ。というよりは実のところ、普段と違うクルマで遠出したかったという魂胆から、このDE15試雪の運転日にタイミングを合わせ、いつもの愛車を入場させていたのだ。軽のワンボックスでもいいし、ちょっと大き目のワゴンでもいい。おとといワクワクしながらクルマ屋に出向くと用意されていたのはフリードハイブリッド。心の中でニヤニヤしつつも、「まぁこれで我慢しますわぁ〜」的な感じで鍵を受け取り、帰り道、首都高神奈川線をぐるっと1周して感触を楽しんだ。新潟へ出発後、関越を走りながらいつもと違う感覚やモーターのアシストや充電を気にしたり、初めてのクルーズコントロールで感動したりしているうち、いつもは眠気と疲労で辛い仕事終わりの道中も、全く飽きることなく目的地の一つ手前の妙高SAに到着することができた。試雪の直江津発が8時前ということなので4時間程度仮眠することにした。

 翌朝、太陽が昇った時から見事な快晴になった。紅葉も眩しいくらいのピークで、朝の光を浴びて景色の全てが黄金色に染まっていた。一般道に下りて脇野田駅に向かう。この駅の前後には田んぼを一直線に貫く編成写真向けの区間が存在し、その道の方々にはよく知られたポイントだが、開業する北陸新幹線の上越妙高駅がこの脇野田付近に建設されるため、乗換えの便を図ろうと新幹線駅にグイっと線路を敷きなおして新線が誕生した。切り替えはすでに先月完了したばかりでありであるが、旧脇野田駅がどうなっているのか、訪ねてみた。






旧脇野田ホームが手前。すでに駅舎は解体されており、新線は新幹線の駅舎の真下を通っている
2014.11/21  信越本線  脇野田   EOS5D  24-105mm

 まもなくDE15がやって来る時間になった。この脇野田周辺ではすでに数人のテツが撮影場所を求めてウロウロしており、ほとんどの多くが直線区間で狙っている模様だが、自分は最後の組み合わせとなる新幹線高架の背景を選んだ。到着してしばらく悩む。別の場所にしようかそれとも・・・。と決めかねているとすでにDE15のヘッドライトが近づいてくるのが見えた。まだカメラはクルマの中。慌てて取り出し動画撮影のためのビデオカメラを三脚に取り付けようとするが巧くいかず、慌てて欲張った結果、どちらも中途半端な感じになって今日の戦いはスタートした。。




初めて新線区間を行くDE15複線型。この区間は初にして最後のシーズンだ。
2014.11/21  信越本線  南高田〜脇野田   EOS5D  24-105mm

 駅進入に備えて大きなウィングを「ガッコン」としまってゆっくりとDE15は通過していった。付近に散らばっていた一同は一斉にクルマに飛び乗り猛然と追撃開始していった。今回の試雪、自分が把握しているのは直江津と黒姫の発着時刻のみ。途中の通過時刻が分かっていないので、追っかけするにもなかなか作戦を立て辛い。直江津→黒姫の所要時間が往復ともに約1時間40分。この区間の普通電車が1時間程度で走りきるのだから速度が遅い試雪でもどこかの複数の駅にバカ停することは考えられない。かなり急いで追っかけて、黒姫までにもう1発撮れればいいかなくらいに考えて自分も集団の後を追うことにした。県道に出て妙高方面へと進むや否や、反対方から普通列車が新脇野田駅に進入するところが遠めに見えた。時間的にもラッセルは次の北新井まで行っていないタイミング。ここからは見えないがDE15は脇野田であの普通電車と交換するのだろう。これからのことなどを一瞬で判断し、以前DD14を撮ったことのある、脇野田駅を出てすぐの矢代川の橋梁にたどり着き、望遠で積雪の始まった山々をバックにその一瞬を切り取ることにした。構図を決め終えるとすぐにホイッスルが聞こえ、慌ててまだセッティングの終わっていないビデオを三脚に取り付けようと焦れば焦るほどうまく行かず、諦めてEOS1本で行くことにした。




2014.11/21  信越本線  脇野田〜北新井   EOS5D  100-400mm

 天気はいいのに撮影時に落ち着いて準備をすることが出来ない最悪な状況を2回連続でやってしまった。悪い兆候・・・。この先の通過時刻、運転停車駅も分からないのでラッセルのケツを追いかけながら撮影するとまた失敗することはよく分かっている。でも止められなかった。先に進んで二本木駅周辺を徘徊。同士の姿も無いので行ってしまったのか、はたまた単に人がいないだけなのか? 続いて関山も同様の状況。ダメだ。完全に見失ってしまったようだ。この先停車があるとすれば妙高高原。でもここに立ち寄ると次の終着、黒姫まで時間がないことが予測できる。仕方ないので諦めて妙高高原〜黒姫の国道の妙高大橋からの俯瞰で往路は終了にしようと標高を稼ぎ、橋のたもとのパーキングに到着した。到着するろ脇野田にいたテツ10名様ほどが強い風の吹き付ける橋からスタンバイしている。でも全員黒姫方の反対を向いているので一瞬何が何だか分からなかったが、時刻表を見ると間もなく直江津行きの「妙高1号」がやって来る時間だ。試雪の予想通過時刻まであと15分。全員「妙高1号」を撮影した後、橋の反対側に移動してラッセルを撃つのかも知れない。もし1号にN101編成が入れば午後は国鉄色183の2往復体勢。ここまでうまく行っていないラッセルの穴埋めも出来るような気がしてきたので、早速自分も「妙高1号」迎撃体制に入った。




遠目からも分かるくらいボロボロのN102でした。
2014.11/21  信越本線  黒姫〜妙高高原   EOS5D  100-400mm

 「妙高」が行ってしまうと一同は一斉に妙高高原方へ移動するのかと思いきや、全員足早にこの場を立ち去り、広い妙高大橋にただ1人取り残されてしまった。事前の黒姫到着時刻まであと10分以上あるのに何故だ?と思いながら試雪の目的地、黒姫駅に到着するとすでにDE15がホームに横たわっており、にわか撮影大会になっていた。入場券140円を買い駅構内へ。間近でDE15を心行くまで観察してやった。




すでに直江津方のヘッドライトが点灯していた。
2014.11/21  信越本線  黒姫   EOS5D  24-105mm




後を追いかけてきた普通電車に進路を譲る。



     
ラッセルヘッド1エンド(長野方)、2エンド(直江津方)。




なんだかN102編成よりもキレイだな・・・。



     
ラッセルヘッドと機関車本体の連結部。推進軸やダンパーなど、意外としっかり結びついているのを初めて知った。




後半戦スタート!!

 黒姫の撮影大会を終え、駅を後にする。往路のように見失わないように、知らされている黒姫発の時刻を元に、この近辺で撮影できればいいと考えた。紅葉もピークを終え本格的な冬支度をしてきた高原の冷たい風を受けながら幾つか撮影場所を吟味していたが、今日、ラッセルのウィングを開いて「くぱぁ〜」をまだ撮影していないことに気がついた。正面がちに狙えるようなアングルを捜し求め、複線区間の開けた場所にたどり着くことが出来た。準備をしながらその長閑な光景に身を置いていると、かつてここは関東〜日本海側を結んでいた大動脈、歴史に名を残してきたさまざまな特急気動車や電車、夜行列車が日夜問わず走っていたんだと想像すると不思議な気分になってきた。今はこうして115と183程度しかやって来ないが、これも来年になればまた伝説になるのだろう、などと感慨にふけって妄想して時間を潰していた。


そうでした。複線区間なのでウィング全開にはならないのでした。
2014.11/21  信越本線  黒姫〜妙高高原   EOS5D  100-400mm

 実はこの撮影地を選んだ理由がもう一つあった。上信越道の信濃町インターがすぐ近いところにあるため、追っかけに有利ということで選んだと言ってもいいくらいだ。通過後、すぐに出発。美しすぎて眩しいくらいの風景の中、次の妙高高原ICで一般国道へ。しばらく走り二本木駅手前の跨線橋に到着した。さすがに行ってしまったとも思わないくらいの速度で来たが、どのくらい先行してこれたのかも不明だ。なので一応セッティングを急がなければならない。やがて妙高方面から追っかけと思われるクルマが1台到着。降りてきた方は全く焦った様子がないので、まだ時間はあるのだろう、と手持ちではなく三脚で撮影しようと準備しだすと、遠くから赤いボディが近づいてくるのが分かった。ビデオをクランプにねじ込んで橋の手すりに取り付けが、どうした訳か何度やってもクリップがスルリと動いてしまいなかなか固定できない。仕方ないのでスチルだけでシュートすることにしたが、先ほどの直線区間のマニュアルの露出のままだったので、しまった!と思ったときはすでに被写体は画面中央までに来ていた。「あとでRAWを現像しよう」とだけその時は思い、構わず連写を続けた。クルマに戻る途中プレビューを確認すると白飛びした目がチカチカするくらいの明るすぎるJPEGが残されていた。


 ←これをどうしたものか・・・




なんとかここまでにすることができた。
2014.11/21  信越本線  関山〜二本木   EOS5D  24-105mm

 結果はご覧の通りになったが3回もの失敗で後半かなりヤケになっていたかもしれない。最後はもう一発、ちゃんと押さえて生還していきたい。落ち着くよう心がけながら、この先の交換での停車はあるものかと時刻表を開くと、すぐそこの二本木で「妙高4号」を退避する模様だ。スイッチバックの駅なので通常の交換よりも時間がかかるであろう。二本木駅進入を狙っている大所帯のグループがいたが、彼らの脇を通過してどこで撮影しようかようやく本気で悩み始めた。するとルームミラーを一瞬見たとき、背後の山々の美しさにハッとなった。線路は手前でカーブしている。直感ですぐにクルマを停め、どうやったらこの雪山と列車を絡めることが出来るのか、何十回ともなく立ち位置を変えながらファインダーを覗くことを繰り返し、自分の中ではベストなポジションを選んだ。




2014.11/21  信越本線  二本木〜新井   EOS5D  24-105mm

 以上の結果を持って、本日の撮影は終了となった。ここ信越本線の本番ラッセルは未明に運転されることが多く、平行道路と離れている区間がほとんどなので撮影は多分無理であろう。ついにラストシーズンになった信越山線DE15とDD14。もし本番に遭遇することができたのなら、ぜひこの場でレポートしたいと思う。




あっ!