いわゆる「有名撮影地」と桜を追い求めて、春の北越2014。

2014.4/14

 世の中には数えきれないくらい多くの「鉄道撮影地」がある。気軽なスナップから駅撮り、編成写真、はたまた本気モードで望まなければならない場所全てが鉄道撮影地となるわけだが、その中でも取り分け「有名撮影地」と呼ばれるところが存在する。多くはそのロケーションの良さ、光線具合、線形の妙など、有名と呼ばれる所以は幾つか挙げられる。アマチュアからプロまで、ある程度腕と運があれば、そこを訪れると大方イメージしている画がいただけてしまうのだが、一方でそういった行為を否定する意見があるのも事実だ。「どうせ皆同じ写真になっちゃうじゃん。撮影地とは自身で切り拓くもの・・云々」といったものだが、ちょっと待て。それでいいじゃないか。パリに行ったらエッフェル塔行くでしょ?自分はそう思ってしまう。間違いの無い選択。それも魅力的だけど何よりも・・・、

「おぉ〜! ここが○○かぁ〜、何度も見たことある風景だ。でも意外に△△なんだな」

 という頭に思い描いていた空想の光景を現実に目にしたことの嬉しさと、有名撮影地に身を置いたという純粋な感動。そして多くの大先輩と同じように同じ地で記録に残せることの喜び。少々大げさに書いたが、別にミーハーでもいいじゃないか。行きたいモンは行きたいのである。

 というわけで今回も485系「北越」を仕留めに行って参ったのだが、今日のテーマは塚山峠である。いままでその麓では何度か撮影したことはあったのだが、塚山峠から長鳥駅への俯瞰と塚山駅方への俯瞰は未挑戦であったため、これらを履修することにした。新潟の485系は改正ごとにその活躍の範囲を狭められ、秋田まで足を伸ばす「いなほ」運用からは先月の改正でついに撤退。酒田までも1日2往復となってしまったものの、依然「北越」と「くびき野」は485のみの体制であり、尚且つ国鉄色を堅持するK1、K2、T18編成も現役であるので今のうち多く記録に残しておきたい。出発前夜、見たまま情報からすると明日はK2が「北越3・8号」での往復、T18が一旦入ると抜け出せない「くびき野」のループ運用で2・3号。塚山で待ち構えるならば一発目が「くびき野3号」が11時前の通過ということで、今から出発してもかなりのんびりと向かうことができる。

 23時出発。練馬から関越に入る。4月1日から消費税増税に伴い高速道路料金の値上げと、ETC割引の大幅な見直しで、今までの遠征より今後は少し気合を入れて行かなければならない。今日も早朝から仕事だったので睡魔に襲われることにヒヤヒヤしていたが、無理かと思っていた関越トンネルを抜け、目的地である長岡南越路ICまで50kmを切った大和PAまで到達することができた。少々寝る。真冬とは違って冷え込みも大したことはなかったのでエンジンを切って寝ていたが、寒さで7時ごろ目が覚めた。起きてしまったものだから、まだまだ時間はあるがとりあえず出発。走り出すとすぐに腹が減って次の越後川口SAでガッツリ朝飯を食らう。腹も満たされクルマに戻ると外はまぶしいほどの陽気で、もう一眠りすることにしうたた寝をしていたが、今度はハッと気づくと「くびき野3号」の塚山通過時間まで1時間を切っていた。急いで出発。長岡南越路スマートICで降りて塚山峠に向かう。下界の撮影地を通過して山道を登り、何度も通過したことはあっても立ったことがなかった長鳥俯瞰に到着した。よく雑誌などで見たことのある光景に少々感動。この場所からは列車は遥か足元を通過するので「くびき野」の地味なヘッドマークは目立たなくていいが、充当車両はT18編成。新潟方を捕らえるので1500番台の4つ目ライトは表現できるので、まさにうってつけの場所だった。




新緑でもないし冬でもない微妙な色づき具合。
2014.4/14  信越本線  長鳥〜塚山    EOS5D  100-400mm




引いてもう一発。せめて左の田んぼに水が張っていれば少しは違ったかもしれない。
2014.4/14  信越本線  長鳥〜塚山    EOS5D  100-400mm

 今日は一日を通して降水確率0%。関東ではすでに桜は終焉を迎えているが、この地ではまだまだ咲き始めという感じ。標高の低い日のあたる場所の桜はそろそろ見ごろを迎える時期でもあったので、この塚山からは少し離れて桜とコラボレーションできるところを探してみようと思い、里に下りることにした。この付近から柏崎までの間、信越本線は日本の原風景と呼べる長閑な田園の中を右へ左へカーブしながら進路を取り、個人的にはどこでも画になる情景を収められそうであるこの区間は国内屈指の撮影スポットが点在していると思っているのだが、「桜」という欲望が出てきてしまうとそれを血眼になって探し始めていた。でもこういう時に限って線路沿いに桜の花は見つけられないのである。次の「北越3号」まで2時間半程度あるので線路沿いを行ったり来たりしているうちに、ついに柏崎市街に入ってしまった。妥協しながらも幾つかの桜ポイントは見つけておいたので、5時間と経っていないが腹ごしらえ。国道沿いにあった近年稀に見る大外れなマズいラーメン屋で昼飯を食べた後、取捨選択をして逆光ながらも最も満開と思われる中学校裏の農道に戻ってきた。至る所で田起こしが始まっており、春を実感する。ブリブリに乱れ咲いた桜の花と線路をロックオンし、来たるべきK2編成を待った。




2014.4/14  信越本線  北条〜越後広田    EOS5D  100-400mm

 さて前半の下り2本は終わった。後半上り編に入る。後半は予てより登ってみたいと思っていた塚山峠塚山駅寄りの本家「塚山俯瞰」である。出発前のリサーチではアプローチは登山道というよりは獣道に近いという事しか分からず、発表されている数々の作品から大体の場所は見当が付くのだが、肝心の登り口が分からない。何箇所かクルマを停め、それらしき場所からヤマに分け入って行くのだがどうも違うらしい。携帯のGPSや国土地理院の地形図などをもってしてもどうしても行き着くことができない。しかしそうこうしているうちに485の目撃情報で当初、全く予測していなかった「北越6号」に急遽K1編成が入ったらしい。時間は現在13:30。あと20分程度でやって来てしまう。とりあえず泥だらけになったズボンのままヤマを降りて、2年前ボンネット「北越」を撮影した地平のポイントで迎え撃つことにした。




厳しいアングルで急遽登板したK1編成「北越6号」迎撃成功。
2014.4/14  信越本線  塚山〜長鳥   EOS5D  100-400mm

 こうしてK1,K2,T18の新潟国鉄色485オールスターズ全てが運用に就いた。自分はここ塚山で485と運命を共にする覚悟でいたが、海バックなどよからぬ邪念が一瞬出てきて少し葛藤もしつつ、この遠征の本来の目的である「塚山俯瞰で国鉄色」を我が手中にしなければならないことを思い出した。しかし今の6号を撮ってしまったせいもあって、次のT18充当の「くびき野2号」の通過時間の間も、職場からの電話による緊急応対の事案が重なってそれを諦めざるを得なくなった。仕方なく線路の築堤と同じレベルになるプチお立ち台に登って「くびき野2号」を待つことにした。




思ったよりも側面に陽が回らなかった「くびき野2号」。塚山俯瞰はちょうど自分の遥か真上。
2014.4/14  信越本線  塚山〜長鳥   EOS5D  100-400mm

 それでは最後の締めである。もう時間も無かったので往路、ICからこちらまで向かう途中に目を付けておいた桜と梅のポイントに向かうとする。ここもよく知られた名撮影地で、午後の遅い時間に線路にカブリつけば端正の取れた杉並木をバックに順光ですっきり編成写真を撮れるポイントとして名高い場所だが、少し引いたアングルになるこの桜と梅は捨てがたい。すでに先客2名が線路にカブリついているが、彼らをファインダーに入れないよう、また桜と梅をなるべく目が引くよう微調整を繰り返し、本日最後となる「北越8号」を待つことにした。




2014.4/14  信越本線  越後岩塚〜塚山   EOS5D  100-400mm

 結局、出発時の目的でもあった長鳥俯瞰に立つことはできたが、塚山俯瞰は果たすことができなかった。目的はリサーチ含め集中し、欲張ってはいけないことを痛感した。今日は達成度40%と自己分析し、反省の意味を込めて越後湯沢まで一般国道で走り、そこから関越道に乗って帰路に就くことにした。