485系「北越」 2014年秋編

2014.10/24

 K2編成が帰らぬ旅路に発ってから2ヶ月が経とうとしていた。T18は先々週くらいから秋田の土崎工場で、どういうことか検査と塗装が行われているらしく、稼動している国鉄色485はK1編成ただ1本のみになってしまった。そのK1もここんところしばらくは検査でお休みか、快速「くびき野」のループ運用に就くだけの日々が続いていた。接近戦でも俯瞰でも、「くびき野」のあの緑一色のヘッドマークはどうしても好きになれない。やっぱし日本海縦貫線=海=青い「北越」のヘッドマークで走ってもらいたい。特急として産まれてきたからには最後の最後まで「特急」でいて欲しい。そんなことを日々思いながら毎日を過ごしていた。しかし毎日の仕事に忙殺され、そんな望みも忘れかけたある日、突如として10月の第3週目からK1が「北越」運用に回りだしたのである。これは行かねばならん! 前月初めて訪れたものの天候がイマイチだった塚山俯瞰の紅葉はどうなっているんだろう。気になりだしたら止まらなくなっていた。日曜A605 月曜A601 火曜A602 水曜A603・・・ こんなにも順当に差し替えなく運用が回っていくのも珍しい。自分の休みは金曜である。そして木曜A604。ここまで来てしまった。604〜605は新潟滞泊なので編成差し替えは十分に可能性としてはあるが、明日の金曜にはA605には何事も無く無事に回って欲しい。そう願いながら木曜の仕事を夕方に終え、20時過ぎ、新潟に向けて出発した。A605は「北越」4号〜7号で金沢までを往復するだけの運用である。しかも帰りの7号は撮影可能時間帯には走行しないので、撮れても4号の一発のみである。新潟地方の天気は晴れ。一本だけを塚山俯瞰に賭けることにした。そういえば北越4号は新潟発10:12。目的地である塚山付近は11時過ぎとかなり遅いので、わざわざ急いで高速で行かなくともいい。なので首都高で都内を抜け5号池袋線へ。与野ICで降りて国道17号を使いひたすら下道で向かうことにした。流れの速い17号で前橋、渋川を過ぎる。沼田付近で少し眠くなってきたので関越に乗って新潟入りしようかと一瞬迷ったが、まだ集中力は落ちていないことに気づき、最後のインターを横目に通過し県境にある三国峠へ歩を進めた。気温7度。暗くて紅葉の色づき加減は全く分からないが、明日のお楽しみにしよう。さらに先を進み湯沢の下界に下りてもまだまだ元気で、高速のSAで快適に寝るためだけに小出ICから関越に入り、次の堀ノ内PAで夜を明かすことにした。

 翌朝、天気は快晴。いよいよ3回目にしてその願いがかなう時がやってきた。少し大げさだが本当にその時は思っていた。次のインターである小千谷で高速を降り塚山へ。麓にクルマを停め、カメラ2台とレンズ4本、そして三脚2本を担いで山に足を踏み入れた。前回は9月初めだったが今回はだいぶ下草が少なくなって思いのほか歩きやすい。しかし登山道にしては荒れ果てすぎた上り道。何となく獣道っぽくはなっているが周囲の植生と境目はあいまいで、ほぼテツしか通っていないのだろう。登り一辺倒からの水平トラバースに移ってからしばらく経った時のこと。突然茂みのなかで動く物体を発見。クマか!? と一瞬凍りついたが山菜取りをしているおばちゃんだった。目が合った。「SLでも来るのかい?」 このヤマでテツに出くわすのは慣れているんだろう。「い、いや特急電車を・・・」と自分。なぜか少し後ろめたい気分になりながらもようやくお立ち台に到着した。よく晴れている。狙うべき北越4号がサイドにも正面にも陽が当たるベストな被写体なのだろう。2台のカメラを念入りにセッティングさせてからしばらくすると1人、また1人と到着する同業者があらわれ、計3名で待ち構えることになった。 




やってきたのは485-3000。30分ほど遅れている「くびき野3号」と思われる。これも3月以降目が離せない存在。
2014.10/24    信越本線  長鳥〜塚山   EOSkissX3  55-250mm




来た! 「北越4号」。 紅葉まであと2週間くらいだろう。
2014.10/24   信越本線  塚山〜長鳥   EOSkissX3  55-250mm




本務機はタテで。
2014.10/24   信越本線  塚山〜長鳥   EOS5D  100-400mm

 う〜ん・・・感無量。この一発のためだけにやってきたが来た甲斐があった。撮影の後、勝利の余韻に浸りながら一服。ではまた今来た400km近くの道を引き返そうと山を降りて車に戻った。しかしまだようやく正午頃。空はこんなに晴れている。最初の目的でもある485以外でも何か他の楽しくなるようなモノはないかと考えた。EF81カモレもいつかはきちんと向き合わなければいけない被写体だが、生憎今日は貨物時刻表は持ってきていない。しばらく悩んだ末、先月天候のため一部失敗した国鉄色183「妙高」の黒姫山バックの再チャレンジをすることにした。とはいっても国鉄色183、つまりN101が今日の妙高に入っていなければ話にならないので、今から直江津に向かい、午後の「妙高6号」の待機編成を確認する作戦に出た。柏崎から直江津に向かう途中、ここんところ毎回立ち寄る鯨波の撮影地近くのコッテリラーメン屋に入り腹ごしらえ。ウ○コまでがネギ臭くなるほどのネギ味噌ラーメンを食いながら何となく485の掲示板を見ていると、珍しく今日の「妙高」の情報があった。そこにはナント!午後の6号は国鉄色であるとのタレこみが! これはありがたい。早速黒姫山バックに向かうことにするが、といっても時間があるので、余裕かましながら途中のコンビニでお口直しのチョコモナカアイスを食いながら海を眺め、現場に到着したのは13時間前だった。30分ほど昼寝をし、下校途中の多くの中学生の好奇の視線を浴びながらセッティング。時間が経つごとに太陽光は赤みを増し、サイドからの柔らかな光線になってくれる。この季節、6号が最もオイシイ時間なんだろう。ギラリもいけるのかも知れない。誰か先人のガーデニングの跡を拝借し三脚を立て、カメラの測光が教えてくれる露出より-1くらいにし、その時を待った。 



アリガトー やさしい人よ。(携帯電話で撮影)




直前の353M。この光線具合。勝算アリ。
2014.10/24   信越本線  黒姫〜古間   EOS5D  24-105mm




思い出に残る一枚になりました。
2014.10/24   信越本線  黒姫〜古間   EOS5D  24-105mm




引いてサブでもう一発。
2014.10/24   信越本線  黒姫〜古間   EOSkissX3  18-55mm

 あーもう本当に美しかった。情景は変わらないが来年3月の新幹線開通により3セクに移管されるこの区間を走る車両は大きく変わってしまうことだろう。結果的に本当に大満足の収穫を得ることが出来た。気分があまりにも良かったので退屈な上信越道ではなくて遠回りの中央道を経由してドラマチックな帰路を選択した。