2014年冬 国鉄色雪祭り

 自分ごとですが、クルマを新車で買いました。そして納車から10日後、早速「テツ用クルマ」としての使い勝手はどうか、検証のためのドライブに出てみることにしました。ちょうど冬季休暇として4日ゲットできたので良い機会です。いや、この納車に合わせて休みを作ったも同然でした。行き先は北方面。休みの最終日である2/13に奥羽線 秋田〜弘前で団臨の583の運転があるので、それだけをターゲットに、あと他の日は485系「いなほ」「北越」、あわよくば排雪くらいにしか漠然と決めていないまま出発しました。

 首都高、東北道を経て北に向かいます。順調に村田JCTから山形道を経て日本海側を目指しますが、どこかのPAの休憩で確認した485系見たまま掲示板では、狙うべき国鉄色は本来なら明日入るはずの「いなほ」運用をスルーして新潟車両センターでいつの間にかR編成に差し替えられてしまっていて、このままだと明日は「いなほ」ではなくて「北越」が国鉄色にとってアツイらしいことが判明。とんだ目的地変更になりました。そのまま山形道を日本海側まで走りきり、この無駄な労力と浪費をチャラにすべく、進路を変え、一般国道でひたすら西進します。新潟市街をバイパスで過ぎ、いつもの撮影地に近い米山の道の駅に今日は宿泊です。 何も撮影しないまま、ただひたすらに走った一日になりました。

2014.2/11

 6時過ぎに起床しました。雪は降っていないものの撮影には最も適さない、重たい雲に空は支配されています。今日の一発目は「くびき野1号」に充当されているK1編成です。米山俯瞰から狙います。この道は岬の展望台への道のためろくに除雪もされていませんでしたが、積雪は大したことなく、むしろ日中解けた雪が夜中に凍ってスケートリンクのようになっており、走行1000km程度の新車が横滑りしながらガードレールに何度も接近し、生きた心地がしませんでした。






K1編成 「くびき野1号」
2014.2/11   信越本線  米山〜笠島    EOS5D  100-400mm

 低く垂れ込める雲の下、荒れる日本海を横目にK1は通過していきました。撮影が終わるとまたクルマをぶつけないようにビビリながら、山を降ります。米山駅まで出てトイレを拝借。用を足し終えて考えました。今日これからの行動をどうしようか・・今撮影した「くびき野1号」は新潟で長い昼寝の後、ここに戻ってくるのは日没後になります。同じく国鉄色のK2編成は一昨日の「いなほ」から急遽外れて運用を差し替えし、昨夜金沢に向かってます。ということは次の「北越3号」に充当されるのでしょう。この裏切り運用のおかげでここに来るまで山形県経由という大迂回をさせられたのですから、どうしても仕留めなければなりません。しかし「北越3号」のこの界隈の通過時刻は正午過ぎ。5時間近くやることがなくなってしまいました。いろいろ考えあぐねた末、信越山線に移動して「妙高」を狙ってみることにしました。完全に運任せですが、もしかしたらこちらも183系国鉄色のN101編成でやってくるかも知れません。全く情報は無いですが、早速移動です。あまり時間も無かったので1区間だけ高速に乗って、以前特雪を撮影した二本木駅手前のカーブに到着しました。例年なら積雪で線路と同じレベルになるまで高い雪壁を登らなければなりませんが、今年の積雪は少なく、ちょっとガードレールを一跨ぎして運動靴で雪の斜面に登ると、すぐに線路脇に立つことが出来てしまいました。気がつけばいつの間にか太陽も顔を出し、眩しさのあまり目をやられてしまいそうになりながらも手持ちで望遠を構え、「妙高1号」を待ちました。



N102編成 「妙高1号」
2014.2/11   信越本線  二本木〜新井    EOS5D  100-400mm

 あさま色のN102編成でした。長野新幹線開通前、首都圏と長野を結んでいた往年の名門特急「あさま色」をまとった183は、当時どうしても好きになれなかったカラーですが、横軽に通っていたあの頃を思い出し、とても懐かしい気持ちになりました。しかしながらやはりいただきたいのは485。山線ではこの編成が日中2往復の「妙高」を担当することになるので、浮気はやめて海線に移動しました。幾つか場所を選びながらもいつものように時間切れ、そしていつものように妥協して「北越3号」の撮影場所を選びました。この辺かな?と適当に見当をつけて雪の積もった山肌を枯れ枝を掻き分けるように登り、ようやく発見した撮影場所は、労力の割りに障害物が入りまくりのお立ち台でした。




K2編成 「北越3号」
2014.2/11   信越本線  柿崎〜米山    EOS5D  100-400mm

 撮影後、また登ってきた時と同じようにヤブを漕いで脱出、その後はよく覚えていないですが飯を喰ったり昼寝をしたりして、普段の生活と真逆のリフレッシュを思う存分にしました。夕方近くになり「北越3号」の折り返しである8号の撮影地場所へ移動します。昨夏に訪問したことのある塚山駅手前のカーブです。海岸から少し山に入ると積雪も少し多くなってきました。昨日今日と降雪はほとんど無いので雪の舞い上げは期待できませんが、夕刻の日本海縦貫線を急ぐ特急列車を表現できるのではないでしょうか。現地に到着すると夏場は農道でお立ち台までダイレクトに近づくことは出来ましたが、当然今日は人間ラッセルです。あまりにも有名な撮影地なので同士の付けて行ってくれた足跡があれば助かります。農道の入り口に近づくと案の定それはありました。慎重にその足跡を踏み外さないように歩を進め、現場に到着。氷点下の中、刻一刻と落ちる露出を気にしながら雪に吸収されるであろう列車の接近音に耳をそばだてました。




K2編成 「北越8号」
2014.2/11   信越本線  越後岩塚〜塚山    EOS5D  100-400mm

 なかなか格好良かったです。さてこれからどうしたものか・・・。この旅の絶対外せない目的は583ですが、それは明後日。1日早く移動して明日はそのロケハンだったりのんびり温泉で半日ゴロゴロするのも良いかも知れない。あまりポジティブな動機ではないですが、秋田目指してこの地を後にすることにしました。長岡越路スマートICから高速に乗って北上を開始し出すと、何となく考えが変わってきました。「温泉なんてこの先いくらでも行けるじゃないか。この今を逃してどうするんだ?」 もう1人の自分が自分に囁いています。そうだ! 2014年の今、国鉄型の特急電車が普通に走っている新潟にいる。何年か後になって今に戻りたくなっても戻れないではないか。今まで何度も後悔してきた事実。少しでも形にしていかなければ・・・! 危なかった。気が変わってすぐに次のインターで高速を降り、再び柏崎市街に向かって戻りました。栄ICでした。柏崎市街の松屋で明日の行動を考えながら夕飯。明日おそらく充当されるであろう信越山線のN101「妙高」と、今日追ったK2編成が「北越1号」としてやって来るのでそれらを効率よく撮影できるならこの柏崎近辺にいるよりは直江津方面に移動しておいたほうが得策であろうと、さらに西に進むことを決定。少しは落ち着いて寝たいと思い、高速に1区間だけ乗り、インター併設の名立谷浜SAが本日の投宿場所になりました。

2014.2/12

 翌朝、SAのトイレで洗面を済ませ缶コーヒーで一服やった後、出発しようとすると、どうもこの名立谷浜、SAに入ってしまうと併設のICから一般道へ降りられないことが判明しました。仕方なく次のインター目指して走り出します。目的地がどんどん遠くなります。次の能生ICで退出。国道8号を今度は東へ進みます。やがて目的地、有間川駅に到着。駅通過を遠望できるポイントに三脚を立てます。今日は朝から快晴。夜中に少し降った雪に反射して、もうどんなシャッタースピードでも切れそうです。しばらくして雪の煙幕を引き連れて485が高速で駅を通過しているのが見えました。




K2編成 「北越1号」

2014.2/12   北陸本線  有間川〜谷浜    EOS5D  100-400mm

 撮影後すぐに信越山線に移動です。「妙高」は毎日2編成が運用を担当しています。昨日は日中2往復する運用はN102でしたので、順調であれば今日の日中運用はN103か国鉄色のN101のどっちかです。バックの冠雪した山並みがサイドからキレイに捉えられる脇野田に移動。雪の積もった川の堤防を歩き、ほとんど完成した新幹線の高架橋の下から狙います。やがて踏切が鳴りファインダーを覗き列車を待ちます。そして左から視界に入ってきた「妙高1号」は待望のN101編成でした。




N101編成 「妙高1号」
2014.2/12   信越本線  北新井〜脇野田    EOS5D  24-105mm

 この妙高1号の折り返し、4号もこの素晴らしい晴天の中撮りたかったのですが、こういう日のために考えていたスポットがありました。米山俯瞰です。「くびき野」運用で回っているK1編成。今日は今から1時間後の「くびき野3号」で米山を通過するはずです。「くびき野3号」は20分後にこの脇野田を通過するのですが、高速道で先回りしましょう。上越ICから柿崎ICへ。昨日も訪れたばかりの俯瞰ポイントに到着すると、昨日と打って変わって遥か遠くに北アルプスが望める絶景になっていました。そうそう、こういうのを頭に描いていたんです。今回はカメラは愛機1台だけだったので、遠景手持ち、近景三脚に付け替えで2回狙います。絶対に失敗のないよう念入りにシュミレーションしながら、音で接近が分からないため、ファインダーを覗いたまま登場するK1編成を待ちわびました。






K1編成 「くびき野3号」
2014.2/12   信越本線  米山〜笠島    EOS5D  100-400mm

 このページ1つ目の写真と比較してください。同じ場所、同じ車両とは思えないほど素晴らしい光景に出会えてため息が漏れました。余韻に浸るのもほどほどに、今度はまた信越山線に移動して「妙高」です。




N101編成 「妙高3号」
2014.2/12   信越本線  関山〜二本木   EOS5D  100-400mm

 結局良さげなポイントは見つけられず、ド逆光の中手持ちで3号撮影。またすぐに出発しました。今度は朝イチで見送ったK2「北越1号」の折り返し「6号」を迎え撃ちます。雪晴れの北陸本線上り、午後の撮影地といえばもうここしか思い浮かびあがりませんでした。水橋の立山バックです。何度か訪問したことはありますが、雪山バックはやったことがありません。いつか必ずやってやりたいと思っていましたが、今日がまさにその運命の日。早速現地に急行することにしましたが、ここから100km以上。この旅何度目かの高速にまた乗ります。上越ICまで下っていると時間がなくなりそうでしたので、上信越道の中郷ICから乗りました。上越JCTで北陸道へ。しばらくは順調でしたが、親不知付近のトンネル群を抜けると、いつしか昨日のような重い曇り空になってきました。今のところ遠くの山々の頂まで見ることはできますが、いずれ時間の問題になるでしょう。ここまで来てしまったことを少し後悔しながらも滑川ICで降りて例の神社脇のポイントへ。到着するとすでに20名以上の集団が今にもモヤに隠れそうな立山方にレンズを向けて待っていました。




K2編成 「北越6号」
2014.2/12   北陸本線  水橋〜東富山    EOS5D  100-400mm

 Oh・・・なんということでしょう。せっかく100km移動してきてこの有様です。山の白飛びを抑えると列車の顔がつぶれ、列車を主体にすると山が飛び、上記がギリギリの妥協点でした。撮影し終わるとすぐ移動開始です。忘れてはならないいよいよ明日は本番の秋田で583です。現実に戻りますがここは富山です。ここから秋田まで、その遠さに頭がクラクラしてしまいそうです。でもクラクラばかりしててもしょうがないので、出発します。滑川ICからとにかく東へ東へ。上越、柏崎、新潟市内を抜けて日本海東北道に入ります。そしてその道の終点、「朝日まほろばIC」で久々の一般道に戻りました。インターの出口から国道に戻ってすぐの道の駅に温泉があります。昨日は風呂に入りそびれてしまったので、久々のリフレッシュ。真冬の露天風呂に心底癒され、火照った体のままのドライブの気持ちのいいことったらありゃしない。ところどころ部分開通している日本海東北道を利用しながらついに秋田市内を通過。大館市内で給油した後、白沢陣場の撮影地近くの国道パーキングに車を停め、今夜はここで夜を明かすことにしました。

2014.2/13

 朝6時ころ寒さで目が覚めました。車内で朝のワイドショーを見ながら昨夜仕入れておいた朝食を喰いながらダラダラと時間を過ごします。やがて時間になってきたので寒い屋外にでます。本日1発目に狙うのはこの春引退が発表されている寝台特急「あけぼの」です。ラストまであと1ヶ月程度なのでこの撮影地はどんな騒ぎになっているんでしょうか? といっても自分は直前の通過30分前に到着しました。すでに先客10名程度。想像していた人手より少なくやや拍子抜けしましたが、意外にも徒歩テツが多く、待っている間にも陣場駅から歩いてきたテツが続々と増えます。




2021レ 「あけぼの」 貴重なブルトレがまた消えます。

2014.2/13   奥羽本線  白沢〜陣場    EOS5D  100-400mm

 次はいよいよこの旅唯一の目的であった583です。この界隈で撮影するのは白沢陣場以外では初なのでいろいろロケハンしてみたい。団臨なので途中駅の通過時刻は知る由も無いが、大体特急「つがる3号」の先行20分くらいであると予想されます。なので時刻は14時過ぎ。時間はたっぷりあります。しかしそのたっぷりあった時間が仇となり、昨日と同じように昼寝したり飯喰ったりで時間がなくなり、ふと立ち寄った跨線橋の上で撮影することになりました。正午ごろは天気も良かったのですが、この時間になると完全に太陽は顔を出さなくなり、おまけに風も猛烈に吹きつけ始め、かじかむ手でセッティングを始めることにしました。




6両って意外と短い。また583を撮影できる日は来るんだろうか?

2014.2/13   奥羽本線  鷹ノ巣〜前山    EOS5D  100-400mm

 とうとう全ての撮影が終了しました。思い返せば移動移動を重ねて狙い通りの作品を作ることも出来た時もありましたが、無駄な労力のほうが大きかったような気もします。それにしても今回登場した485、183、あけぼの、そして583をハシゴして撮影しまくるなんてもうこの先できなくなることは間違いないです。とても贅沢なことをしていたんだと撮影が終わって実感しました。帰り道は大館からひたすら花輪線沿いに盛岡方面へ向かい、高速に乗る直前の洗車施設で、この4日間、雪国を走り続けたおかげでドロドロに汚れたクルマを洗車して、西根ICから東北道に乗って帰還しました。出発時、走行距離が478kmだったまっさらの新車が、家に着くときには3402kmになっていました。3000km近く走った今回の国鉄色冬祭り、めでたく終了。