国境を往く、毎年おなじみ183系 シーハイル上越号

 2013.1/19

 関越道に入ると同時に雪氷情報が視界に入って来た。「下牧PA〜長岡JCT チェーン規制」 下牧PAといえば国境よりもだいぶ手前の群馬県側。ここから規制が始まるとは新潟県側ではよほどの大雪であったり、また区間も長岡までと長大な範囲に渡っていることから、かなり熱いチェーン規制である。やがて練馬から1時間半ほど走り下牧PAに近づいてくると「全車PA内へ」とのお知らせ。車線をふさぐパイロンに誘導され場内に入ると係員に停止を促され、マグライトでタイヤを照らされ、「行ってヨシ」の合図。再び本線へ進みだした。同じチェーン規制でも「自己責任」と「強制装着」の2種類があるらしく、「強制装着」の場合は通行車両すべてを係員がチェックして条件を満たしているか1台1台確認する。新潟までまだ遠い下牧PAから全車強制装着とはこの先どんな世界になっているのだろう。道路公団の本気を見た。走り出してしばらく進み、水上ICを過ぎるとうっすらと路面に雪が覆われるようになってきた。今日はだいぶ早めの出発だったので、いつものように、とにかく早く現地入りするような熱い走りではなく、途中のSAで飯を食ったりしながら一般的なペースで北上を続けていた。目的地もトンネルを抜けたすぐの湯沢IC。その距離からもいつもよりもさらに心の余裕が出てきた。天候はというと前日から日本海側は大荒れの警報が相次ぎ、各線ともに乱れが発生している状態。せっかく北に向かったとしても思惑通り狙うべきモノを狙えない状況になってしまうだろう。だとしたら轟轟たる雪中を突き進む鉄道撮影よりは、少し安全な環境でネタ列車を撮ってみようということで、今宵の出発となったわけだ。何せ明日は土曜日。例の如く某情報専門誌で調べてみるが、いつものようにあまりにもネタが無さ過ぎる。強いて言ってみたところで大宮183を使用した「シーハイル上越」くらいという寂しい週末だった。183といえば何気に今年か来年あたりには現役引退という情報も入ってきており、せっかくなので訪れたことはあっても撮影したことのない新潟側の新清水トンネル坑口に今日は向かうことにしたのだった。というわけで目的地の湯沢ICの一つ手前にある土樽PAが今夜の寝場所と決めてやって来たのだが、折りしも降り始めた大雪に、この土樽PAは除雪の最前線基地になっており、狭い場内にクルマを停めて一晩明かすのはどうしても気が引けた。よって仕方なくそのまま湯沢まで降り、さらに目的地湯沢ICを過ぎ次の休憩所のある塩沢石内SAまでやって来てしまった。駐車場の一番端にクルマを停め就寝準備完了。さすが週末というだけあってスキー目的の首都圏からのクルマが多く、場内の端に停めたつもりがしばらく経つと周りはクルマに囲まれ、にぎやかになりながらも今日も仕事終わりの出発だったので構わず爆睡することができた。

 翌日。雪は小降りにはなってきていた。SAに併設されているインターから一般道に出て、湯沢市街を走り、新清水トンネルの北口に到着した。ちょうど頭上には関越道の高架橋があり、雪に積もられることなくセッティングができてしまうという快適なお立ち台だ。シーハイル通過の大分前に到着してしまったので、上り下りの普通列車はいずれも定時運転しているのが確認できた。しばらくして先ほどの普通列車で降り土樽から歩いて来たと思われる方が1名参戦。いつしか雪は止んでおり、時折晴れ間ものぞいている。雪景色なのでシャッター速度は選び放題。きっちりやってやろうと1/400秒で183を待ち構えた。



2013.1/19  上越線  土合〜土樽   EOS5D  24-105mm

 特急マークの無いのっぺらぼうのヤツだった。どのOMなんとか編成にマークがあるかは知らないが、数少ない往年のスキー臨時列車らしい1枚をいただくことができて実はかなり満足だった。ではまだ午前中だけど帰るとしようか。しかしクルマに戻りなんとなく気になって携帯で西日本の運行状況を見ると、昨年12月にDD16を捕獲した時と同じように、大糸線の午後の1往復の旅客列車が今日も運休とのお知らせがあった。昨晩はあれだけ降ったのだからほぼラッセルの出動は間違いないであろう。しかしここから糸魚川まで200km近く。頑張ればラッセルには間に合ってしまう可能性は大だ。今からこのまま直帰しても早過ぎる。決断して遥か遠くの大糸線めざしてさらなる北上を続けることにした。湯沢ICから関越道に乗り、しばらく行った小出付近。すると突如として路面の積雪は増え始め、除雪の追いつかない追い越し車線はこんもりと雪が積もっていてほぼ1車線の状態だった。時折現れる遅い車の後につけてノロノロ運転をしていたが、とうとう我慢できなくなり慎重に車線変更し、その雪原のような追い越し車線に突っ込み決死のパスを試みた。積雪は15cm以上ありクルマの腹を雪で擦りながら徐々に追い越しをかけると、突然クルマのケツが何かに憑りつかれたかのように振りだしてきた。ヤベェ! 振幅は徐々に大きくなりそのたびにハンドルを進行方向と逆方向に切り替えしたりしていたが、ついに進行方向に対して90度になった時、その振幅は収まった。何度も雪道は走ってきたが初めての経験だった。ユーチューブとかで見たロシアの車載動画が何度もフラッシュバックした出来事だった。おそロシア・・・。手汗でベタベタになったハンドルを握りながら長岡JCTから北陸道へ。糸魚川の一つ手前の柿崎で高速を降り、運休の430Dの15分前に例のDD16のクラの前に到着することができた。覗き込む。するといない、のである。おそらく427Dが到着してすぐにラッセルは出発して行ったのだろうか。すぐに南小谷に向けて走り出す。前回と同様、並走する線路に気を向けながら大野、根知、平岩を通過したが、その姿は見えず結局最後の通過駅である中土を過ぎた。するとついに前方にDD16を捉えることができた! 昨晩の大雪で積もった線路脇の雪を盛大にラッセルしているのが遠目でもよく分かる。あークソー!!と思いながらしばらく並走していたが、とうとう終着の南小谷に到着してしまった。午後になってからは雪は降っておらず、返しの排雪は期待できそうもないので、そのまま南小谷を通過し、安曇野ICから中央道で首都圏に帰り、たった1発の本日の日程は終了となった。