北越の夏を味わう

2013.8/7

 熱帯夜の東京都内を駆け抜け、関越道新座料金所を通過したのはちょうど日付が変わるころだった。今日の昼、仕事の休憩中に見た485系のサイトで、T18編成が北越に入りだしたことを確認。それ自体は特段珍しいことではないが、今年2013年夏、バイクでの長距離遠征をまだしていなかったので、深夜の高速を新潟まで走りこみしたいという欲求に駆られ、いい機会なので出発を決めたのだった。聞けば常磐線のEなんちゃらという新しい特急電車が導入され、余剰になったフレッシュひたち用のEなんちゃらが新潟に転入し、愛すべき485を順次駆逐するという情報も入ってきている。そのフレッシュではない元フレッシュひたち車は、今年の9月からは同じく新潟車で運用される「いなほ」に第1陣が登場するとのこと。こうして手軽(?)に日本海側まで485系を撮影に出かけることができなくなるのも時間の問題だろう。今まで初めて訪れた路線に心惹かれ、また通うつもりでい続けたまま手遅れになってしまったことは何度もあるが、今回ばかりは本気で日本の美しい季節の中を往く485の表情を収めるべく、今後の新潟通いを強く心に決めたのであった。

 関越道の流れはいつものように快適で100km=1時間で新潟まで距離を詰められそうだったが、そんなに急がなくても明日のT18編成は、「金沢 (北越3号) 新潟 (北越8号) 金沢」といたってシンプルな1往復のみであり、まして北越3号の金沢発は10:34と遅く、どこかで時間潰しをしなければならなくなりそうだ。深夜だというのに昼間吸収した熱をこもったままにしたアスファルトを感じるほどに、地面からの熱気は凄まじいものだったが、渋川を過ぎて登り勾配に差し掛かると高原の涼やかな大気へと変化してきた。下牧PAでジャケットを着込み関越トンネルに突入。ほとんど走りっぱなしだったのでトンネルを出てすぐの土樽PAで少し休むことにした。あまり眠くはなっていないが、バイクに跨ったままそのまま仮眠。寝たのか寝てないのかよく分からないまま、2時間ほど頭を垂れて時間をすごし、明るくなってきた頃、出発。それにしてもまだ時間があり過ぎた上に、体力も眠気もまったく感じていない無敵状態だったので、暇つぶしに湯沢ICで高速を降り、一般国道17号線で撮影地をのんびり目指すことにした。早朝からすでに容赦ない真夏の太陽光線が降り注ぎ、滝のように流れ落ちる汗を蒸発させながら、堀之内市街で日本海に抜ける国道253号に折れ、柏崎を目指す。途中のコンビニで朝飯のオニギリとデザートで買ったモナカアイスを食い、撮影地に到着。有名所らしいが自分ではまだ撮影したことの無いラブホテル裏のポイントだったので、国鉄色ではないが同じく485系を使用する先行の「快速くびき野3号」を撮影してみることにした。




2013,8/7   信越本線  笠島〜青海川   EOS5D  24-105mm

 なかなか良いところだった。ただここの光線状態は午前中限定のようで、狙うべき北越3号の通過時刻の13時前には正面に陽が当たらなくなることは間違いない。なので移動開始。何度も訪れたことのある米山俯瞰は若干霞み気味だったのでやめて、来る途中に立ち寄った笠島駅周辺でやってみることにした。短い日本海の夏を満喫すべく開かれた寂しい海水浴場がなんとも新潟らしい。いよいよ一日で一番の本気を出してきた頭上の太陽にガンガン照らされながらEOSをセットし始めた。




2013,8/7   信越本線  笠島〜青海川   EOS5D  24-105mm

 自慢の屋根上二灯ヘッドライトを輝かせながら笠島駅を高速で通過していったT18は、「ス、スピ〜」と甘踏みしたタイフォンとともに手前のトンネルに吸い込まれていった。この北越3号は新潟まで行き、折り返して8号になってここに帰ってくるのは3時間後。かなり時間があるので以前から気になっていた塚山付近の撮影地を巡ってみることにした。とはいっても腹が減った。超有名撮影地の鯨波海バックから程近い、いつものコッテリラーメン屋で昼食の後、バイクを内陸に向かって走らせ始めた。小さな塚山峠を越え来迎寺付近まで行き、今度は線路沿いに撮影ポイントをいくつか回って戻ってきた。田んぼ、午後の光線状態、バックの山並み、どこでどう撮っても画になる日本の原風景だ。散々迷った挙句、高速でS字カーブを駆け抜ける列車を正面ズドンできそうなポイントに決定。ここにたどり着くまでも沿線で何人か同業者を見かけたので場所取りのため早めにスタンバイすることにした。いったん塚山の駅前で飲料補給とトイレ拝借。通過1時間前に再び撮影地まで舞い戻ってくると、すでに1名の方が熱心に新潟方にレンズを向けている。隣にお邪魔して一通り準備が終わり話しかけてみようとすると、その方は急に機材を片付け始め、クルマで立ち去ってしまった。これから1時間後には国鉄色をまとった485が美しいS字カーブのコーナリングを見せてくれるのに・・・これ以上の場所があるんかいな!? といつものように邪念が出てくるが、ここは我慢。線路際に放置された土管に座りながら猫じゃらしで遊んでみたりトンボを採ってみたり、夏の午後の田んぼでオッサン一人がひたすら時間を潰す。そしていよいよその時間。直前に通過する普通電車を撮影し構図、ピント、露出確認。勝利を確信した。




2013,8/7   信越本線  越後岩塚〜塚山   EOS5D  100-400mm




2013,8/7   信越本線  越後岩塚〜塚山   EOS5D  100-400mm

 タマらんぜよ!! スチルは成功したがビデオを確認すると、通過時の振動でガクガクぶれた後、最後に構図が変わってしまうというハプニングが発生。しかし西に傾いた夏の太陽に国鉄特急色が、もう映えること映えること。確かな手応えをしっかりと感じながら、すぐ近くの関越道長岡南越路スマートICから首都圏を目指し爆走した。カット数は少なかったものの、なかなか収穫のあった思いつきツーリングでした。

今回の走行距離  690km