最後の冬。上越新幹線200系を追う。

 2013.2/13

 首都高速5号線の終点少し手前の与野ICで一般道へ降り、新大宮バイパス〜国道17号線に入ると日付が変わるころだった。今回は今年3月で引退する200系新幹線を撮影するためにやって来た。東北上越新幹線開業から走り続けてきて30年。一方元祖新幹線顔である0系からすれば約50年。おなじみのマスクが日本の鉄路からもうすぐいなくなってしまうのだ。0系引退の2009年。大々的な0系引退フィーバーをマスコミは煽っていた。しかし200系引退のこの静けさは何だろう。むしろこちらとしてはこのほうがじっくりと200系と向き合える。あと1か月。残された時間はわずかだが少し通ってみようか上州の地へ。

 深夜の国道17号の流れは相変わらず良く、関越道を使うまでもなくあっさりと群馬県境手前まで来てしまった。今夜は道の駅「おかべ」で寝ることにする。目的地である本庄早稲田駅までは6kmほどなので明朝のアクセスにちょうどいい。おやすみ前の用を済ませ外に出るといつの間にか雪が本格的に降って来た。予報では今夜は積もらないまま明日は晴れてくれるとのことではあるが、午前中の撮影が主な予定なので雲が残ってしまわないよう願うしかない。

 7時半に目が覚めると快晴だった。雪は数cm積もっている程度だが、日当ではすでに溶けてしまっている。なかなかいい一日になるかも知れない。目覚めの缶コーヒーを飲みながら朝のラッシュで混雑する本庄市街を抜け、郊外の本庄早稲田駅にやって来た。駅前の激安コインパーキングにクルマを入れ、切符売り場で高崎までの乗車券+特急券を購入。構内に入場し上りホームへ上がる。都内に通勤するサラリーマンで少し混雑するホームを歩き東京寄りまで来た。少し控えめにホームに立ち、望遠を目いっぱい伸ばしスタンバイ完了。唯一の国鉄色200系ことK47編成は、この後高崎行き「たにがわ471号」としてやって来るのだ。やがてアナウンス放送が流れると、憧れのグリーンの帯を纏った元祖「新幹線」が入線してきた。



以前にも撮ったことのあるこの構図。ギリギリまで引っ張ってみたがケツが切れてしまった。
2013.2/13  上越新幹線  本庄早稲田   EOS5D  100-400mm

 この「たにがわ471号」は高崎折り返し。471号が高崎に到着すると53分後に再び「たにがわ476号」として東京に戻るのであるが、この高崎の折り返し時間の間に舐めまくるように撮影してみたいとうスケベ心で、次にやって来る列車で高崎へ追いかけるため乗車券+特急券を買った次第だ。反対ホームに移動し次の「あさま507号」を待つ。待つ間、そう言えばこの本庄早稲田の高崎方はどんなんだろう?と見てみることにし長い無人の下りホームを端まで歩いて向かってみた。すると、線路が南東に向いて走っているため、もうしばらくすれば午前中の列車はドが付くほどの順光になってしまうことを初めて知った。なかなか良いではないか。200系を追いかけて高崎で撮影しようと思っていたがそれは別の機会にすることにし、K47が折り返してくる「たにがわ476号」を待ってここで撮影することにした。と言ってもあと1時間以上ある。幸いにもホームに待合室があるので通過するMAXやらを眺めているうちに、お時間になったようだ。先客は2名ほど。通過線があるとは言えここは新幹線ホーム。さすがに三脚を立てるわけにもいかないので上りも気合で手持ちで待ち構えることにした。「たにがわ476号」もこの駅に停車するので撮影はしやすい。ベタベタの太陽光線が線路に当たるようになってくると、列車接近の案内放送が流れてきた。



2013.2/13  上越新幹線  本庄早稲田   EOS5D  100-400mm



ふ、美しい・・・。朝の光が200系の複雑な造形部を際立たせた。
2013.2/13  上越新幹線  本庄早稲田   EOS5D  100-400mm

 先月1月26日。上越新幹線に残された200系の9運用のうち、7運用がE2系に置き換わってしまい、ついに東北上越新幹線の開業から走り続けた200系の運用はたったの2運用に残されるだけになってしまった。さらにその2つの仕事も3月のダイヤ改正で消滅してしまい、それは新幹線の始祖でもある0系顔の消滅も意味する。同時に新幹線から直流モーター車も全滅してしまうということだ。残された1か月、その乗り心地を味わうため一度乗ってみたいとも思った。滑るようにK47が走り去ってしまうと、ラッシュの終わった本庄早稲田の駅は再び静寂に包まれる。さてこれからどうしたものか。高崎撮影会をするつもりで買った乗車券、および特急券。当初の予定にはなかったK47の東京行きを撮ってしまったので結果論では入場券でも良かったのだが、勿体ないので次に来る列車に乗って高崎まで往復してみることにした。ちょうど「たにがわ476号」を高崎で見送ったとしても同じ列車でここに戻ってくるのだ。しばらくホーム待合で待って9:42発の「MAXとき311号」に10分揺られて高崎着。すぐに帰りの切符を買って今度は「たにがわ406号」に乗車。本庄早稲田駅に戻って来た。駅前のクルマに戻り北上開始。先ほど東京に向かっていた「476号」は一旦上野第一運転所に取り込まれたのち、午後の「とき327号」で新潟を目指す。撮影地は赤谷川橋梁。しかしまだまだ時間があるので、以前から気になっていた別の場所に下見に向かうことにした。駅から国道17号に出、高崎市内の路地をチョチョイと曲がると新幹線の高架橋と並走を始める。頭上を通っていた高架橋の線路は、平行する緩い県道の上り坂を進むと同じ高さになり、やがて線路の高さを追い越し、路盤はトンネルに吸い込まれる。榛名山トンネルだ。このトンネルの入り口には跨線橋があり、ここから南方を望むとどういう感じになるのか前々から気になってはいた。現場に到着。クルマを停め猛烈な空っ風が吹き荒れる跨線橋上に出ると、一応編成写真がきれいに撮れそうであるということが分かった。しかし午後は終日逆光になり200系で午前中にここを通る運用がないことから、引退までの1か月の間には再訪しないであろう。しばらくするとやって来たMAXを見届け、さらに北上を開始した。渋川市内のオートバックスで空になっていたウォッシャー液を購入。タンクにドボドボ注いだのち渋川インターから月夜野インターまでワープ。国境も近いこともあって関東平野の快晴は嘘のように重く湿った曇り空に変わり、もうここは越後の延長であるかのようだ。すぐに赤谷川橋梁のたもとを目指す。撮影地までのヤブ漕ぎ入り口までは最近降り積もった雪でクルマでは近づけそうになかったので、少し離れた空地に駐車。三脚を担いで果樹園の中の農道を歩いていくと・・・、ヤバい。農家の方がリンゴの木の手入れをなさっている。以前このお立ち台を訪れた際、明らかに堂々と立ち入ってはいけないような「ナニか」があったので、不特定多数のテツがこのお立ち台を訪れるのは許されないのであろう。もし注意されたら上毛高原の駅撮りになるだろうと、半分諦めかけながらなるべく目を合わせないように下を向き、一切気にしてませんのでボクのことも気にしないでオーラを出しながら樹の手入れをされているすぐ横を通過。後ろから声をかけられないかとヒヤヒヤしたが、意外にもスルー。農道を逸れて森の中の人になることに成功した。相変わらず超急傾斜地に踏ん張りながら三脚をセット。狙うべき「とき327号」は、すぐそこの上毛高原は通過するのでそれなりの「新幹線のスピード」でやって来るはず。そのため前回と同じくカメラ2台体制だ。直前来る列車は各駅停車の「MAXたにがわ」。スピード感覚もつかめないので、今日も一発勝負にかけることにした。


小枝にブッ刺さる200系。良く考えりゃ気付くことですな。
2013.2/13  上越新幹線  高崎〜上毛高原   EOSkissX3  18-55mm



こちらは本務機。今日も安定の失敗。早切りのためトリミング上等。
2013.2/13  上越新幹線  高崎〜上毛高原   EOS5D  24-105mm

 撮影後はあまり長居したくない場所でもあったので即座に撤収。クルマまでの戻り道、また農家の方に出くわさないか、それともパトカーなんかが停まってたりしていなかドキドキしながら森から這い出ると、運良く誰もいなかったので見つからないうち急いでクルマに戻った。今新潟に向けて走り去っていったK47編成が谷川連峰のこちら側に戻ってくるのはすでに暗くなっている時間。つまり本日の撮影はお開きとなった。まだ時間も16時前だし明日の仕事も遅いので高速には乗らず国道17号をのんびり南下して帰ることにした。それにしてもなんだか今日はグッとくる手応えのある成果を得られなかった。本庄早稲田の駅撮りではケツ切れ。赤谷川橋梁では曇り。モヤモヤした感じと同じような曇天の空。どんなシチュエーションであろうとビシッと決めて大腕を振って帰還したいのはいつもと同じである。こんな日もあるさと諦めてしばらく走り沼田市内に入ると、国境付近の厚雲はどこへやら、急激に真冬の快晴の空になってきた。西日で景色をオレンジ色に染めている。ああ〜なんてこった。こんな光線中グリーンのK47の走行がいただけたらどんなにか・・・とさらに進むと眼下に上越線の線路が見えてきた。ギラギラのオレンジ色のエロ光線に照らされている。列車はこなくても画になりそうだとクルマを停め、何気なく時刻表をめくってみると、あと数分で下り普通列車がやって来る。急いで望遠を取り出し外へ。やって来る列車は115系か107系だが、115が来てくれたらいいかも・・・?程度に思っていたら本当に湘南色115がやって来た。



2013.2/13  上越線  津久田〜岩本   EOS5D  100-400mm

 帰りの駄賃で、しかも目的外の撮影でいい風景に巡り合うことができた。良かったのか何なんなのか?気分を良くしたところでいつも立ち寄る渋川のラーメン屋で暴飲暴食をした後、関越道に乗って帰って来た。



本庄早稲田にて。グリーンの列車のグリーンな車両。もう乗ることはないだろう。