桜とキハ40を求めて高山本線の旅

2012.4/27

 とある日の22時。仕事を終え職場の駐車場に止めてあるクルマに戻ります。おウチに帰るのではありません。車内にはいつもの撮影機材フル装備が積まれています。そうです。お出かけするのです。いつもの方向とは逆方向に進路を取り東名のインターに向けて走り始めますが、夕方から降り始めた雨は相変わらず本降りでアスファルトを濡らすのをやめません。申し遅れました。本日のターゲットは高山本線でございます。久々に明日、仕事が休めることを確信した昨夜のこと、ネットで桜の満開情報を検索しまくりました。今年の冬はご存じの通り、2月3月の気温が例年より下回る日が多かったことから、ソメイヨシノは例年より5日以上遅れているのでした。今年は4月初頭に久留里線で桜と国鉄色のコラボをいただきましたが、テツ活動はおろか休みもそれっきりです。桜前線はいったいどのくらいまで北上しているのでしょうか? 調べると国鉄色485のT18編成やK編成が元気な新潟、富山地方は満開からすでに10日以上経っており、いくら遅咲の桜ももう終了でしょう。さらに北上か?それとも高地か?北日本の各地を調べて悩んでいると意外な盲点がありました。高山本線です。それなりに標高が高いと思われる高山市周辺では満開が4/25。まさに今真っ盛りじゃないですか?国鉄色のツートンに戻されたキハ40はまだ撮ったことはなく、ちょうどいいきっかけになったかも知れません。ただ問題が2つ。高山本線の撮影は未経験で土地勘など皆無だし、地形なども全くの未知。思い立ってから調べる時間もなかったのです。2つめ。国鉄色のキハ403812と406812は現在コンビを組んでいるらしく、これを追っかけることになりそうですが、運用なども知りません。ただ某高山本線の掲示板の管理人さんが見たままと明日の運用予想を毎日更新してくれるサイトがあるので、これを頼りに行くことになりそうです。というわけでとりあえず出発しました。

とは言っても・・・。どうやって現地入りしようか全く考えていませんでした。距離が短いのは中央高速〜安房峠〜高山。もしくは遠回りですが東名〜東海環状〜東海北陸道で南から攻めるというのも考えましたが、明日の運用が分からない限り悩んでいてもしょうがないので先日開通したばかりの新東名を走りたいがために南側から高山本線入りすることに決めました。御殿場を過ぎて真新しい分岐路が左に逸れます。今回の新東名の開通は過去最長の同時開通区間162kmだそうです。こんなに大規模な高速道路が一気に供用開始するのはめったにないことで、非常に楽しみな瞬間です。雨は降っているものの旧東名とは比べ物にならないほどの広い道幅、緩い勾配、巨大なトンネル、橋梁などの建築物。贅沢な工法で一気にズドーンと山野を突き抜けているのが爽快です。従来の深夜の東名高速は過密な交通量で、しかもリミッター付きのトラックが幅を効かせていたので巡航速度をなかなか上げられず、浜名湖SAでヘロヘロにくたびれて休憩していましたが、この新東名開通のおかげで交通量も分散され、気持ちのいいスピードをキープすることができそうです。

 いつしか快適なドライブも終わり新東名の未完成区間を残して強制的に旧東名に戻されます。豊田JCTから東海環状道へ、高山本線の美濃太田駅にほど近い美濃加茂SAで明日の作戦会議です。先述した掲示板で明日の国鉄色コンビの運用を調べます。明日、岐阜、美濃太田、下呂など高山本線南部で動きがあれば今日のルートは正解ですが桜は期待できず。一方、高山〜猪谷方面の北部であれば100km以上余計な遠回りをしてきたことになりますが、標高が高い分桜はマンカイ! というわけで発表です!

4/27
高山4:44〜1702C〜岐阜7:32
岐阜8:50〜回781D〜9:32美濃太田
美濃太田9:57〜1715C〜下呂11:18
下呂13:49〜1716C〜美濃太田15:10
美濃太田17:27〜748D〜岐阜18:04


 むむむ・・・。桜が咲き誇っている(だろう)高山方面には日中顔を出さない運用で、しかもまともに撮影できるのは日中の下呂までの1往復しかなさそうです。ここで休憩しなければそのまま高山まで走り切る予定でしたが、この運用からすると、このSAで仮眠して次のインターで降りて1715Cの出発前に起きて北上しながらロケハンするというのが妥当でしょう。幸いなことにこのSAはインター併設で、SA利用者もこのままここ美濃加茂で降りられるとのことです。とりあえず目覚ましを9時にセットして寝ることにします。時刻はすでに5時前でした。

 寝坊しました。1715Cが美濃太田を出発する20分前です。個人差があるかも知れませんが3〜4時間の睡眠て危険ですね。レム睡眠、ノンレム睡眠の関係でしょうか、どっちがどっちだか忘れましたが、こういう時はむしろ1時間程度の方がいいかもです。それはさておきすぐに出発です。昨夜降ってきた雨はとうに上がり、予報通りまさに春うららの陽気です。線路に沿って走る国道41号線は流れも良く、開けたウインドウから入り込む春の風が心地いいです。一方肝心の桜は・・・というと、完全に終了。ところどころ日陰に自生するソメイヨシノでさえ花びらが散り、むしろ新緑をテーマにした方がいいくらい緑が鮮やかでした。ところで現在、1715Cと同方向に北上しているのですが、通過する現在地と時刻表を見比べると自分も列車もほぼ速度が均衡しているようで、20分の差は縮まりもせず広がりもせずみたいな感じです。やがて、どれほど進んだのでしょうか。何度も雑誌などで見たことのある構図に出会いました。カーブしたガーター橋で飛騨川を一跨ぎに渡る有名ポイントです。なるほど。来てみて手前に通信線が入るもののスッキリとしたガーターをこの時間だと順光で太陽が照らしています。ただ狙うべき1715Cは後追いになってしまい、さらに可憐に山肌に咲くヤマザクラなどありませんが高山本線らしいココで最初の撮影をすることに決めました。一旦通過して路肩の広くなったところでUターン。構図を決定します。


2012.4/27  高山本線  白川口〜下油井  EOS5D  24-105mm

 換装されたカミンズエンジンの軽快な音と共に列車は通過していきました。待っていた間にかいた汗を拭い撤収し、列車と同じ方向に国道を北上します。天気は昨夜の雨模様とは打って変わって快晴です。下呂からの折り返しは順光でビシッと決めたいもんです。走り始めて数分。土地勘の全くない高山本線ではどのくらい進んだのか全く分かりませんが、平行する高山本線の下油井駅に先ほど見送った一般色キハ40が停車しているのが見えました。予期せず追いついてしまったようです。もしかしたら先行できるのかもしれないと、カーナビと時刻表を見比べると、どうやらここ下油井駅でワイドビューと交換のようで、前後の駅程からすると12分程停車のようです。さっきまでのんびり楽しんでいたドライブから戦闘態勢に変わります。大きく蛇行する飛騨川と同じように進路を共にする国道41号線。一方線路は要所要所の川の蛇行を短いトンネルを駆使して貫いています。せっかく稼いだ先行を無にしたくはありませんので、さらに先を急ぎました。しばらく行くとまたどこかで見たことのあるシチュエーション。小さな堰堤でできた小さなダム湖。穏やかな水面はバッチリ背景を写してくれそうです。すぐに車を止めて撮影準備に取り掛かりました。


2012.4/27  高山本線  飛騨金山〜焼石  EOS5D  24-105mm

 さすがにここからさらなる追っ掛けは厳しいでしょう。のんびり1715Cの終着下呂を目指しました。当然返しの1716Cの撮影地も考えながらです。やがて山峡の温泉街、下呂市街に入りました。猫の額ほどの狭い平地に拓かれた歴史ある温泉が有名で多くの観光客がここを目指してやって来るそうですが、せっかくなので自分もその名湯を楽しみたいとも思いましたが、折り返し1716Cの出発が2時間後と中途半端な感じなので、温泉はやめて昼寝をすることにしました。その前に駅に止まっているキハ40も見ておこうと下呂市内中心部にクルマを走らせました。


2012.4/27  高山本線  下呂  EOS5D  100-400mm

 構内にたたずむキハ40を撮影したのち、昨夜新東名の静岡SAで飯を食ったきりだったのでコンビニで軽食を調達。窓を閉めていると汗ばむほどだったので、川べりで窓を全開に開けてランチタイム。そののち往きに目星をつけておいたポイントを日照の当たり具合などを確認しながら2.3地点ロケハンし、鉄橋のたもとに小さく咲く桜を望む国道沿いのお立ち台を見つけ、その近くで1時間ほどさらに寝ることにしました。


なんだか平仮名で書かれると、乗っただけで酔ってしまいそうなバスですわ。(ロケハン中、携帯電話で撮影)

 やがて1時間後、さっき確認した時は超順光でビカビカに太陽光が当たっていたのが、この1時間で太陽は鉄橋のこちらから反対側に移動してしまったようで、列車通過時にはもう正面にしか陽が当たらなくなっていました。でももう移動する時間はありません。ビデオとカメラをセットしますが、場所柄三脚を立てられないところだったので手持ちで待ちます。しかしトンネルからの飛び出しなので、いつ列車が現われるかも分からいので、ひたすらカメラの重さに耐えながらじっとファインダーをのぞき続けました。


2012.4/27  高山本線  下呂〜焼石  EOS5D  24-105mm

 時刻表を見ると上り列車は特に長時間停車もないようなので、このまま追いかけるのはやめて帰ることにしました。ルートは国道257で中津川に抜けて中央道〜東海環状〜新東名で帰ることも検討しましたが、距離の短い当初の安房峠ルートを使うことにしました。再び下呂市街を抜けて高山へ。するとちょうどそこは桜がいたるところに満開で咲き誇り、線路近くにまで桜のピンクの枝が迫っているところもあります。もうプリップリに薄ピンクの花弁が線路端に色彩を付け、そこを国鉄色が通った日にゃさぞかし眩しい情景になることでしょう。でも今日は帰りますし、来年の新たな課題ができたと思って、今日は撮影予定リストに追加だけすることにしました。