只見線開業70周年号を、撮る

2012.11/3

 先月、11月のシフトを作る際、そういやここ1年ほど週末休みにしていないな、とふと思った。たまには一般人と同じ週末休みにして一般人向けのネタテツでもしてみたいと考えた。まだ来月のウヤ情が発売されていないので、どこで休むかは運次第。何かしらネタ的なものはあるだろうと踏んで、適当に11月3日の土曜日に休みを作った。しかし発売された11月のウヤ情を穴の開くほど調べてみると、11月3日は只見線小出口でキハ40タラコ色が「只見線開業70周年号」として小出〜大白川を2往復するのと、大宮車の183が横川に乗り入れるだけとういう「快速碓氷号」が運転されることが判明した。11月初頭ならバイクで遠出も余裕であろうと、只見線タラコ狙いで出撃するつもりでいた。しかし前日、天気予報を確認すると、新潟県中越地方は雨時々曇り。加えて日本海には冷たい大陸性の低気圧が通過するとあってこの秋一番の冷え込みになるという。一方上越国境のこちら側、群馬県は快晴の予報。バイクで出かけたいし、バリ晴れの183よりも、雨の中しっとりとした紅葉の中を行くタラコも撮りたい。前日の仕事が終わった22時になっても行く先を決められず葛藤は続き、職場から家までのバイクでの帰路、あまりに寒かったのでついに決断を下し、クルマで只見に向かうことにした。

 すぐに準備していたいつもの機材をクルマに積み込み、関越道練馬ICへ。いつもと違う金曜日の夜なので渋滞はいかばかりか?と心配していたが、順調に環八を進み、いつも通りの時間で関越道に乗ることができた。予報通り天気は依然良く、月の明かりで夜道も明るい。渋川を過ぎて登り勾配に差し掛かり、沼田を過ぎる頃、天気の境目に入ったようで、時折ポツポツとクルマのボディを叩く音がしてきた。群馬県側最後の土樽PAで最初の休憩。気温は4℃。バイクで来なくて良かったと思いながら、今日の寝場所を考えた。このペースなら翌朝の撮影まで少し仮眠を取ることができるが、バイクの高速道路移動だと身を休められる屋内の設備はかなり限られてくる。寝られそうなのはこの先だと越後川口SAまでなかったはずだし、むしろそこは目的地、小出のさらに先だ。ほんとにクルマにして正解だった。土樽PAで缶コーヒーを買い、関越トンネルをこえると間欠ワイパーでは視界が妨げられるほどの本降りの雨になってきた。今日はだいぶいいペースでやって来ている。現在時刻は4時前。目的地である小出ICの一つ手前の大和PAでひと眠りすることとした。思えば数年前、只見線の除雪列車を狙って真冬に何度も訪れた時も、ここ大和PAで仮眠していたのを思い出した。狙うべき午前の往路は9時20分に小出を出るので、目覚ましを8時にセット。少し仮眠を取ることにした。

 どれくらい寝ただろうか。節々が痛くなって起きてみると、なんと昼の12時前だった。過去に何度も経験し、危険なことは十分と分かっている「撮影地での4時間仮眠で寝過ごし」をまたやってしまった。午前中の1往復はすでに小出に戻ってきている。もう午後の一往復しかなくなってしまった。とはいっても午後の便まで3時間近くあるので、この大和PAに併設されているスマートICで一般道へ出て、国道17号線を走りながら飯処を探すことにした。しばらく行くと雨の小出市街手前にラーメン屋を発見。週末の昼時なのでなかなかの混みっぷりである。そういえば普段ほとんどお出かけするのが平日なので、どこに行っても週末の混雑っぷりには毎度のことながらカルチャーショックを受ける。行列を作って駐車場空きの順番を待ち、長時間飯の順番を待たされた挙句に、渋滞の高速道路でヘトヘトになって帰宅する。あぁ自分は平日休みの人種で良かった・・・と思う反面、たまには多くの人に混じって休んでみたいと思うのも事実だ。そんな訳で混雑する店内に入り多分普段の倍以上の長い待ち時間で待たされ、出てきたラーメンは・・・。 「・・・・。」 だった。取りあえず腹も満たされたので、雨脚の弱まらない小出市内で国道17号から只見線沿いに会津若松方面に向かう国道252号線に進路を取る。何カ所かロケハンを繰り返しながら奥地へと入り込むと、所々、三脚をセットした集団が線路沿いに見て取れる。こんな雨の日でも皆さん熱心だな〜と他人事のように思えてしまいながらも、入広瀬を過ぎ、特雪の現役時代、破間川(あぶるまがわ)への放雪で有名だった入広瀬から国道を逸れて林道を進む。しばらく行くと渓谷を鉄橋で渡るポイントに到着した。橋のたもとの紅葉と、雨でしっとり濡れた岩場が「いとをかし」だ。先客は4人。クルマのナンバーから皆、首都圏からの遠征のようだ。自分はその一団の脇に三脚だけを広げて陣取り、雨宿りのためクルマの中で通過直前までヌクヌクと過ごしていた。


雨の紅葉も、これまた風情。
2012.11/3   只見線   入広瀬〜柿木  EOS5D  24-105mm

 今行った9438Dは回送列車で、この先の大白川で17分の折り返し時間ののち、客扱いをしながら再びこちらに戻ってくる。小出からここに来るまで何か所か取れそうな場所に立ち寄って撮影地は探してきた。その数少ない候補の中から、バックに紅葉が一番映えそうな国道から少し離れる上条〜越後須原を選ぶ。到着すると先客はいないのはいいのだが、雨はますます激しさを増し、傘を差し手こずりながら三脚、カメラをセットした。



客扱いの9429D
2012.11/3  只見線 上条〜越後須原  EOS5D100-400mm

 残った作品はどれも眠たくなるような駄作ばかりだった。しかしなぜか満足感に溢れていた。久しぶりのお出かけ。まして週末の臨時列車。適度な遠出といくつかの要素がそう思わせたのかもしれない。9429Dを撮影するとすぐに空は暗くなり始め、小出から関越道に乗り首都圏を目指していると交通集中による渋滞の情報が電光掲示板に表示されていた。「花園から15km区間。渋滞。通過に2時間以上」 週末ではいつものことかもしれないが平日では有り得ないハードな渋滞に驚愕し、あわてて本庄児玉から一般道に降りて国道17号線で帰路に就いた。