遠征。岡見貨物を撮る!

2012.9/17

 6月の終わりころ、翌月7月のシフトを作っている最中、どうやら工夫しだいでは7月の第1週に4連休を取れることが判明しました。またとないチャンスです。ネタの多そうなお盆周辺はさすがに無理ですが、4連休あればこの時期にはバイクでもって遠征し、数年前から個人的に温めていた物件、岡見貨物に撮影に出かけられそうです。陽の時間もまだまだ長いですし、仕事終了〜高速ナイトラン〜翌日の午後の貨物〜 撮影三昧!!! 〜4日目の午前便撮影〜すぐに高速で昼行、帰郷。これで黄金の4日間、6回の岡見貨物が楽しめることができてしまいそうです。何たる幸せ。行き帰りは一見ハードなように思われるでしょうが、学生時代何度も経験してきたこと。250ccのバイクで休憩含めた平均速度は85km/hをキープできる自信はあります。早速、先の「工夫」をちょいちょいして、7月の頭に4連休を準備することに成功しました。

 しかし、なんということでしょう?出発を翌々日に控えたある日、現地の情報を今さらながら調べ始めると、4月の中旬から岡見貨物は長期運休とのこと。どうも工場のメンテナンスやいろいろな大人の事情によって、この岡見貨物は定期的に数か月に渡って運休するらしいということでした。「にわか」の思い付きは危険です。良く調べてからプランニングすべきでした。奇しくも4連休は突発的な事情で仕事でつぶれてしまい、そのまま盛夏も終わり、9月になってしまいました。岡見貨物も7月下旬から運転を再開し始めている模様。なのでもう一度チャレンジすべく9月に再度4連休をこさえました。バイクでブィ〜っと長距離を走りたい。久しぶりに野宿も敢行してみたい。空いた時間にユルリと三江線なども見学してみたい。そして行き帰りの駄賃に伯備貨物のロクヨンも撮ってみたい!!  様々な欲求を取捨選択してたどり着いた答えは、公共交通機関+レンタカーでした。限られた4日間の中で極限に貨物列車と触れ合うにはどうすればいいか? 学生時代毎年のように通っていた山陰本線の撮影地を新型特急の車窓から眺めるのもいいかもしれないという新たな欲求まで出てきてしまいましたが、現地の拠点になるであろう益田には駅レンタカーは存在せず、往復乗車券の割引を考慮すると米子駅か出雲市駅でレンタカーを借りた方がよさそうです。というわけで以下のプランにしました。

サンライズ出雲で米子入り〜駅レンタカーを借りて西へ〜初日午後の貨物を撮影〜怒涛の2日間〜3日目午後の貨物を撮影後、米子へ移動〜早朝の伯備貨物撮影〜米子にレンタカー返却〜スーパーはくと〜新幹線

いくつか選択肢を捨てましたが、我ながら満足のいく旅行計画になりました。


 早朝からの仕事を切り上げて、夕方東海道線で東京駅に向かいます。地元の横浜から乗ってもいいのですが、長距離夜行列車の旅立ちの興奮を味わうには、当然始発から乗り雰囲気を楽しみたいものです。ラッシュも一段落した東京駅9番ホームの売店で弁当、そして旅のお供には欠かせない缶ビールを3本購入。サンライズの入線を待ちます。やがて品川方から285系が入線。東京口に唯一残された夜行列車ですから当然注目度も高く、これから旅立つ人が列車をバックに記念撮影をしたり、駅撮りバルブを楽しむ人がいたりして、一瞬往年の活気が甦ります。




 今回も贅沢を楽しむ旅ではないので、ソロでもノビノビでもどちらでもよかったのですが、ソロより1000円ちょっと高いものの喫煙室が用意されているシングルを選びました。ホームで一通り記念撮影を終えて車内に入ると電球色の暖かな照明に照らされ、限りある車内空間を有効に活用するべく工夫された個室構成に感心しましたが、何より登場してから15年経過しているにも関わらず、どこを見てもくたびれた様子などなく、今でも登場時と変わらないおもてなしが感じられとても感心しました。さて時間は22:00。いよいよ出発です。出発と同時にビールを開栓。見慣れたいつもと同じ景色は、寝台特急の個室から見ると全く違います。横浜に着くまでもなく弁当を完食。丹那トンネルを抜け富士付近では爆買いしたビールも早くも底を尽き、いつの間にか気を失っていました。


2012.9/18

 目が覚めるとサンライズは伯備線を走っていました。いつの間にか岡山で「サンライズ瀬戸」を切離し、中国地方を縦断して北に向かっています。山間部では天気が悪かったですが、平野部に降りてくると晴天でした。終着手前の米子で下車。9:03。駅横のレンタカーは10時から予約していたのですが、まだ時間もあり腹も減っていたので構内のソバ屋で朝飯タイム。やがて予約時間になったので営業所に赴き、手続きをしました。案内されたクルマは現行型のFit。軽自動車でもよかったのですが、こちらは喫煙車は少し予約確認に待たされるとかで、即決のこのクラスにしていました。説明を受けて出発。すぐ近くのインターから山陰道に乗り、一路西を目指します。高速の終点の出雲市で国道9号線に降りてまだまだ西進。穏やかな夏の日本海を眺めながら、かつてバイクで死ぬほど訪れた名撮影地である、田儀、五十猛、折居などを懐かしく思いながら通過して行きました。途中浜田バイパスの道の駅のモスバーガーで昼飯を食ったり、何だか忘れましたがデザートにご当地名産を使ったソフトクリームを喰ったりしながら、完全に浮かれているただの観光客になっていました。そんなこんなでチンタラ走った結果、目的地である益田市内に入ったのは14時過ぎになっていました。今日から3日間、ここ益田を拠点に東へ南への毎日になることでしょう。とりあえず今からなら午後の岡見への単回が撮れるはず。でもまだ時間があるので、益田駅へ午後の出動を待っているであろうDD51×2の重単の待機を見てモチベーションを上げることにしました。国道から市内中心部へ。駅本屋がある反対側の空地へとやって来ました。ゆっくりとクルマを移動させながら構内を確認します。凸凸はどこだ〜?? と目で探しますがどことなくさびしい感じの駅構内。どこにも赤いDDは見えません。一瞬何か理解できませんでしたが、冷静になればなるほど恐れていた2文字が頭をよぎりました。

ウヤ。・・・?

 今日は火曜日。出発前の情報では先週の1週間は毎日走っていたみたいですが、そう言えば昨日の目撃情報が全く上がっていないことに気付きました。まさかそんなことはないだろうと思いますが、朝送り込みだけ運転され、発電所にタキは置き去り、翌日の午後の便で迎えにくるとかいう訳の分からない妄想までし始めてしまいました。自分の目で確認しないことには納得できない。いてもたってもいられず、今来た道を戻り、クルマを岡見方面へと走らせました。国道から駅へ。そして発電所へ。構内を覗き込むと本来この時間ならタキが夕方の午後の重連単機の迎えを待っているのですが、その姿はどこにもなく、ついに本日の運転中止が確証に変わってしまいました。まぁ今日はいいとしてあと3日チャンスはあります。このまま、まさかまさかの1週間ウヤになんてことになったら気でも狂って三江線乗りテツなんかしてしまいそうです。ともあれ益田市内に戻ります。今はまだ夕方だというのに本格的にやることが無くなってしまっており、こういう時は食うか寝るかのどちらかですが、体がそれを欲していません。しょうがないので市内で一番大きい書店の駐車場にピットイン。買っていなかったDJの今月号を調達し、あとはもうひたすら3時間立ち読みです。やがて閉店近くになったのか店内の人もまばらになってきたので立ち読み終了。飯の時間にします。そういえばさっきの岡見から益田への帰り道、国道を流しているとどこかで見たことのあるデザインの看板のラーメン屋がありました。気のせいか?まさかこんなところに!?と思い直して再び国道9号を東へと戻ります。すると見間違いではありませんでした。千葉県の久留里線撮影時には毎回立ち寄る、あのラーメン屋があったのです。チェーン店らしいので以前HPも検索したことがありますが、それらしいヒットは全くなかったので、こんな久留里から遠く1000km近く離れたこんな地で再会できるとは感動しました。恐る恐る店内へ。メニューも同じことを確認して、心の中で「いつものヤツ」を注文してみました。が、出てきたものは全くの別物。味も麺のコシも比べようがないくらいお粗末なものでした。落胆しながらも一応は平らげ、今度は風呂に入りに行きます。益田市内を通過してそのまま西へ20kmほど走り、学生時代に来たこともある田万川温泉にやって来ました。道の駅の交差点を右に曲がり真っ暗な川沿いの道を海の方向へ走ると確かあったはず。しかしながら暗闇は果てしなく続くばかりで、やがてしばらく行くと「←田万川温泉」の看板がありました。暗闇の向こうをハイビームで照らすと、温泉の建物はあったものの明かりは点いておらず、なんと火曜日定休とのこと。もう何がしたいのか、目当ての列車は来ないは飯はマズイは、挙句に風呂には入れないなんて。風呂は諦めてもう今日の寝床に向かうことにします。明日は走っていればになりますが、山口線内からの撮影の予定。この時期になってくるとあまり戻り過ぎてしまうと陽が昇りきらないうちの通過になってしまうので、益田から15kmほど南下した道の駅「にちはら」で今日は寝ることにしました。

本日の走行距離 225km

2012.9/19

 5675レ(山陰線内は5582レ)通過30分前に起床しました。今日こそは本当に来ていただかなければ困ってしまいます。まずは偵察です。この道の駅にほど近い青原駅に行ってみます。青原駅は上下交換可能な駅です。何かヒント的なものがあるかと踏んでです。駅前にクルマを停め駅構内の益田方の出発信号機を見ると、「青」でした。旅客列車の一番列車は益田発山口行の2534Dです。貨物列車は2534Dの出発前に益田方へ通過していくわけですから、朝イチの益田方の信号機が「出発」を現示している段階で、本日の運転はつまり「アリ」ということになります。「ッシャ!」と小さくガッツポーズ。すぐにクルマに飛び乗ります。目指すは岡見貨物の山口線内で最も有名所と言われる本俣賀の跨線橋です。あまりにメジャー過ぎる感じはしますが、遠方からはるばるやって来たシロウトにとってこういう撮影地はやはり安心感があります。初めての撮影地。近づくにつれて跨線橋上でうごめく人影を発見。「テツだ! テツがいる!!」 この旅初めて見た同業者の数に本日の運転は間違いないと思われ、準備する手に気合が入ります。この時期になってくると、太陽光線は背後の山から顔を出さず、線路だけが日陰になってしまいます。でもそんなことより有難くいただかなければ・・・。到着して5分。遠くで汽笛が山々にこだまして聞こえてきました。


これを頂きにやって来ました。毎日DD51原色重連がやってくるという地球上最後の奇跡。それが岡見貨物。
2012.9/19  山口線 石見横田〜本俣賀 EOS5D 100-400mm

 跨線橋周辺で撮影していた同志たち約10人。のんびりと撤収し岡見貨物後半のステージへと散って行きました。この先の益田では1時間以上の停車時間があり、ついでに列車番号も5675レから5582レと名前を変えます。益田市内を通過し、まずやって来たのは遠田の海バック。事前情報を元にやって来たのですがなかなか場所を特定できず、集落の中の小路を行ったり来たりし、頭に思い浮かんだ景色とGPSを駆使しながらたどり着いたのは墓地の中でした。遠目に見える線路と日本海の白波が、ここが山陰本線であることを実感できます。ただ通過の8時過ぎですと陽は完全に当たらず、先頭の一部が照らされるくらいで、なかなか露出を決められず先行するレールバスのような普通列車でテスト撮影をしました。そして到着から30分。遥か彼方の松林の間から紅いボディが海原に飛び出してきました。


一筋の光がDD51のボンネットを照らした瞬間。やっぱりDD51はステキです。

2012.9/19  山陰本線 益田〜石見津田 EOS5D 100-400mm

 また先を急ぎます。この5582レは益田〜岡見の区間、全駅で10分以上の停車時間が取られており、朝の澄んだ光線の中を日本海を舞台にのんびり終着駅を目指してくれるので、撮り甲斐のある貨物列車です。全国からファンが集まってくるのも理解できます。そんな訳で次は石見津田の先です。大きく海が入り込んでいる大浜海岸に飛び出す直前、国道の釣具屋の裏で列車を待ちます。海をバックに真正面から迎え撃つため白いバズーカーを目いっぱいに伸ばし三脚に固定。背後ギリギリに通過する大型トラックの粉じんを浴びながら、列車の出現を逃さぬよう集中力を高めると、自然と無音の世界になっていきます。さぁ来やがれ!獲物はゆっくりとファインダーに姿をあらわしてきました。


2012.9/19  山陰本線 石見津田〜鎌手 EOS5D 100-400mm

 次の鎌手を過ぎると線路は国道と離れ、険しい海沿いのルートを選び、終点の岡見駅に向かいます。この区間は平行する県道の遥か下を線路が走っているため、道路から撮影することはできませんが、各所に海釣りを楽しむ人が拓いた獣道が無数に海に向かって伸びており、ボクも含め軟弱なテツさんもこの道を伝って撮影ポイントに行きつくことができます。というわけで路肩にクルマを停めて、怪しく海岸に降りて行く道をたどっていくと、線路が見渡せる斜面に到達しました。先人に感謝です。


昨夜から走り抜いてきた貨物列車も、間もなく終点の岡見です。。
2012.9/19  山陰本線 鎌手〜岡見 EOS5D 100-400mm

 いよいよ終点の岡見駅。一旦ここで列車は停車し、数分ののち体勢を整えてから発電所内に向かう引き込み線に入っていきますが、この引き込み線は山陰本線の旧線を利用した専用線であり、途中短いトンネルがあります。というわけで先回り。岡見を出た貨物列車は本当に人が歩くほどのゆっくりとしたスピードでトンネルから顔をのぞかせました。


止まってしまいそうな速度で専用線に進入してきた5582レ。

2012.9/19  三隅発電所専用線  岡見〜三隅発電所  EOS5D 24-105mm



発電所の公園脇を通り、いよいよ構内へ。

2012.9/19  三隅発電所専用線  岡見〜三隅発電所  EOS5D 24-105mm



到着するとすぐに重連単機の出発準備が始まる。

2012.9/19  三隅発電所専用線  三隅発電所  EOS5D 100-400mm

 タキから切り離されたDD51重連は、単機回送「単5361」として出発するまで2時間近く構内で待機します。この単機の撮影場所として岡見〜鎌手間の俯瞰海バックポイントを探し、クルマを停めては海への傾斜地をヤブ漕ぎを繰り返してみましたが、ついにその場所は分からずじまいだったので、以前にも訪れたことのある青浦鉄橋のたもとに降りてきました。今日は風が非常に強く、何十mも下の海面から容赦なく波しぶきの飛沫が襲ってくる断崖上の撮影地。このキャパシティのない撮影地に先客はいなかったのでクルマの中で通過直前まで身を隠していました。


2012.9/19  山陰本線 岡見〜鎌手 EOS5D 24-105mm

 単5361は11:09岡見発 11:38益田着。この後、DD51は益田駅側線で昼寝の後、単5362として15:30 岡見へと出発して午後の貨物を迎えに行きます。4時間も時間ができてしまいました。特に何もすることはないので、朝から各撮影地で目の前をしきりに忙しなく往来しているキハ187の特急に乗りたくなってしまい、益田駅に行ってみることにしました。この時間だと特急「スーパーまつかぜ10号」で浜田に行って、飯でも食って普通列車で帰ってくればちょうど午後の単5362の撮影にぴったりのようです。益田駅に戻り、駅前の激安駐車場にクルマを停め、券売機で運賃740円と特急券730円の2枚の切符を購入し、「スーパーまつかぜ10号」を待ちました。やがて入ってきたキハ187は2両であるにもかかわらずガラ空きで1両に5人ほどの乗客しかおらず、運転席真後ろのカブリつき席を陣取ることに成功しました。12:08。元気なエンジン音とともに電車並みの加速をしながら、DD51が牛歩の如く走っていた海沿いの道を振り子を効かせながら110km/hで爆走していきます。キハ181の時代によく撮影に来ていましたが、181では到底なし得なかったスピード。技術の進歩とは偉大なものです。感心しているうちにあっという間に浜田到着。さて飯でも喰おうと駅前に出ますると・・・、あれ、何もない。ちょっと歩けば何かありそうな雰囲気ですが、理想は15分くらいでささっと済ませられそうなモノ。あいにく浜田駅周辺にはそのようなところは無いようでした。仕方なく駅に戻り帰りの切符を購入。新しく建て替えられたばかりのような橋上駅舎の小さな待合所で時間をつぶし、キハ120の普通列車に揺られてクルマの置いてある益田駅に舞い戻って来ました。


2012.9/19  山陰本線  車内より  EOS5D 24-105mm



益田駅構内では夕方の運転に向けてDD51×2が火を落として昼寝中
2012.9/19  山陰本線  益田   EOS5D 24-105mm

 改札を出てすぐにクルマを駐車場から出し、午後の重連単機の撮影場所を探しに行きます。といってもこの単5362レ、益田から岡見間をノンストップで走り切ってしまうのでどうしても一発勝負になります。せっかく天気もいいことだし海バックのシルエットギラリをやってみようと思い、午前中に撮影した青浦鉄橋に向かいました。列車通過は15:40頃なので完全なる夕日バックには程遠い感じですが、正面には傾きかけた太陽を見据えるポイントですので、なるべくイメージ通りの構図になるように崖の上の立ち位置を微調整しながらその時を待ちました。



単5362レ
2012.9/19  山陰本線  鎌手〜岡見   EOS5D 24-105mm

 次は岡見からの返しです。散々迷いましたが遠田のカーブに決めました。狭い集落内の撮影地なので少し離れたところにクルマを停めお立ち台へと向かいました。先客は5人ほど。各自思い思いの場所に陣取ってスタンバイをしていました。



収まりきらなかった!! 重連ばかりを表現しようと思ったが、これはヒドイ
2012.9/19  山陰本線  石見津田〜益田  EOS5D 100-400mm

 何を血迷ったか2台のDD51が重ならないことだけを考えてしまい、結果ケツ切れになってしまった。少し薄曇りになってしまったものの光はまずまず当たっている状態だったので失敗のショックはデカかった。ファインダーをのぞきながら連写している時にすでにケツ切れは分かっていました。なので失敗を確認してさらに凹むより、あえて確認せず明日もここで同じ5583レを撮影することを決心しました。この5583レが行ってしまうと、本日も業務は終了になります。先日入りそびれてしまった田万川温泉に向かい2日ぶりの風呂に入ります。温泉に到着した時、ちょうど夜の闇が夕暮れを支配しそうな瞬間で、一日を惜しむかのように鳴くヒグラシの声が静かな海沿いの温泉に響いていました。露天風呂で足を延ばしていると地元の方であろう初老の男性が話しかけて、旅の話を少ししました。特に観光地でもなく地元の人が集う素朴な温泉。それが田万川温泉でした。すっかり暗くなった頃施設を出、益田市街へ戻り、そしてまた市街をパスして昨日と同じラーメン屋に向かいました。懲りていたはずなのに、昨日はたまたま。今日こそは・・・と変な期待をしてしまい突撃したはずでしたが、違うメニューの一品も、本家(?)には程遠いほどの仕上がりでした。なんだか口直しでもしたい気分。でも残念ながら腹は満たされてしまっていて、帰り道のコンビニで今日の晩酌用のビールとつまみ少々を調達。昨日と同じ道の駅「にちはら」に移動し、本日の活動は終了しました。

本日の走行距離 244km

2012.9/20

 寒さで目が覚めました。省エネのためエンジンを止めて寝てましたが、9月の山間はとても寒かったです。夜中にも何度も目が覚めましたが、暖房を入れることまで思考が回らず、朝を迎えてしまったようです。さて洗顔をして移動開始です。今日も本俣賀の跨線橋からスタートします。今朝は昨日の倍ほどの同業者がおられ、撮影スペースが限られていますので、一団から少々離れたところで三脚を全開にしてEOSを据え付け、クランプにビデオを取り付けます。昨日より少し早い時間に到着したので石見横田で貨物とすれ違う2534Dを撮影。しばらくして交換してきた5675レがやって来ました。今日は広角で狙います。



とことこやって来た2534DD。車体更新工事スミだがタラコなので撮っておく
2012.9/20  山口線   石見横田〜本俣賀   EOS5D 24-105mm



そして本命5675レは今日も定時にやって来た。
2012.9/20  山口線   石見横田〜本俣賀   EOS5D 24-105mm

 どうも今日の予報では一日中曇りとのこと。これでは昨日の雪辱を晴らすことはできないでしょう。撮影していた一団に混ざって撤収を開始し、益田市内に向かいます。市内のコンビニで軽食を調達。食べ終わっても空は相変わらずどんより模様だったので、海を入れて・・・の野望は捨て、駅撮りに徹することにしました。入線する長大な貨物列車を収めることのできる石見津田駅を選びます。ホームの端に陣取り長タマを付け替えて列車を待っていると、あろうことか天候が急速に回復してきました。



2012.9/20  山陰本線   石見津田   EOS5D 100-400mm



石見津田では普通列車と交換。山陰本線の長距離運用にも平気な顔で入ってしまうキハ120。
2012.9/20  山陰本線   石見津田   EOS5D 100-400mm

 しばらくは晴れ間は持ってくれそうでしたが、終点の岡見を目指します。出発前に調べた岡見駅手前の断崖上海バックの撮影地を探すためです。どうやら発電所近くの展望台から望遠で切り取れるそうですが、昨日ロケハンした際、そのアプローチ方法が分からなくてそれを発掘するためです。走って来た国道9号を岡見駅方面へ左折して、さらに駅に向かうT字路をそのまま直進。しばらく街中を低速で探していると、ありました。運動公園ほど広くないゲートボール場程度の小さな広場。そこから山上に向かって階段が延びています。ここに違い無い。と確認しに行くヒマもないので撮影機材を抱えてそのまま階段を登ります。9月下旬になってかなり涼しくなってきたというのに、息を切らせながら山の頂上まで登り詰めると自然と汗が滲んできます。しかしなかなかの絶景。ここだけではなく過去訪れた時の片手間撮影では到底見ることのできなかった光景に毎日新鮮な気持ちになります。



2012.9/20  山陰本線   鎌手〜岡見   EOS5D 100-400mm

 今日は発電所への参拝は中止。少し昼寝をし目が覚めると今にもにわか雨が降り出しそうな気配。返しの重単は適当にやっつけてから午後の過ごし方を考えることにしました。



2012.9/20  山陰本線   石見津田〜益田   EOS5D 24-105mm

 さて・・・午後の重単まで何しようか・・・。昼寝もしたし飯も喰った。1日2往復の列車撮影ではこういうことはしばし起こってしまいます。普段の日常からすれば信じられないくらい贅沢なことですが、縁も所縁もない遠方の地。せっかく来たのだからと、近年廃止が取沙汰されている三江線で「見るテツ」することにしてみました。ここから三江線の起点である江津までは約50km弱。今から行けば数少ない三江線の列車の午後を「見るテツ」できてしまいそうです。早速国道9号を東に流します。途中浜田市街で少し渋滞にはまり、そのあとはひたすら快調に飛ばし江津到着。右折して江の川沿いに内陸に進みます。江の川(ごうのがわ)は広島県阿佐山を水源とする一級河川。中流〜下流にかけてゆったりとした穏やかな流れが特徴で、古くは水運として盛んに利用された河川です。なので三江線は全線のほとんどの区間をこの江の川に沿って走るため、中国山地を横断する鉄道としては唯一分水嶺を越えない鉄道です。江津から南へ、三次から北へ線路を徐々に伸ばしてきた三江南北両線は、昭和50年にようやく最後の中間地点が開通し全通と至った訳ですが、当時から沿線の人口は希薄で、現在区間運転含む5往復のワンマン列車が運転されるのみで、当然旅客輸送数は岩泉線が休止となった現在全国で最下位という超閑散線区です。全長108km。ここに1日5往復の単行気動車。なかなか興味深いです。1991年に1回だけ乗り通したことがあり、途中階段駅として有名な宇都井駅にも途中下車したこともありますが、沿線の雰囲気はほとんど覚えていないので、少し余裕のできた2012年現在、その三江線を少し体験してみたいと思って21年ぶりに再訪です。まずカーナビに現れた適当な駅で列車を待つことにしました。川平という駅でしたが、これがなかなかステキな駅でした。







2012.9/20  三江線   いずれも川平   EOS5D 24-105mm

 駅についてから列車出発まで15分。時間がゆっくりと流れていた川平駅。本当にいつまでも居たく心が洗われる時間でした。他にも三江線にはこんな駅があるんではないでしょうか? いつか時間ができたらじっくりと各駅を巡ってみたい、そう思わせる駅訪問でした。列車を見送ると出発です。国道261号は江川を挟んで線路とは対岸を走っているのですが、それも勿体なく線路沿いの名もなき細道を列車と同方向に向かって走り始めました。するとすぐに列車に追いつきます。追っかけはするつもりはないのですが列車があまりにも遅すぎるのです。目的地はこの先の比較的まとまった集落の石見川本まで列車を撮影しながら進む予定でしたが、それをしてしまうと午後の単5362レに間に合わなくなってしまいます。追い越した列車よりかなり先行して沿線を見学した後、目的地の石見川本でUターン。岡見へと戻ります。単5362レの撮影地は何か所か迷いましたがこちらに戻ってくると相変わらず曇り模様だったので、仕方なく大浜の漁港で後追いを狙いました。



2012.9/20  山陰本線   石見津田〜鎌手   EOS5D 24-105mm

 重連単機を見送った後、今回の旅最後の岡見貨物撮影です。当然昨日ケツ切れで撃沈した遠田のSカーブに迷いはありませんでした。昨日の感じからすると早めに場所を押さえておかないとあぶれてしまいそう。通過1時間前に現地に到着するとすでに3人ほどの方が、自分の持っているヤツより5倍くらいデカい三脚を伸ばし談笑していました。その後続々と同業者が現われ、直前に通過する「スーパーおき」なんかを練習撮影していると、どこからともなく香ばしいニホイがしてきました。なんだかいつものイヤな予感。ちょうど真裏の民家が野焼きを始めていて、現場は一瞬にして凍りつきました。地方での夕方撮影にはよくあること。自分も過去何度も白いベールに覆われた写真を撮ったことがありますが、まさかここまで来てこんなことになるとは・・・。現場にいた一同、海からの奇跡の神風を期待しましたが、そんなうまいこと行く訳もありません。ホイッスルが鳴り海岸線のカーブを、DD51×2を先頭にこちらに近づいてきました。



DDの吐く白煙ならまだしも・・・。一帯を覆った乳白色のフォギー。
2012.9/20  山陰本線  石見津田〜益田  EOS5D 100-400mm

 こればかりは誰も責められる訳はありません。住民の方はいつものように日課をしているだけ。一同ため息とともに解散となりました。またいつかここに来なければならないでしょう。クルマに戻り、3日間滞在した益田市を後にします。翌早朝、帰路のついでに伯備線貨物を撮影するためです。何度も往復した国道9号線を東に200km。大田市内でクソマズイ担担麺を喰った後、出雲市に到着。撮影対象の伯備線貨物がかなり早い時間だったので寝る時間を確保するために高速に乗ります。やがて米子市内。一旦山陰道を降りて市内のコンビニで寝酒&夜食を購入した後、再びインターに向かい今度は米子道を南下します。パーキングエリアでの寝場所確保と、そこが翌朝の行動に便利だっただからです。訪れたところはその名も大山PAという所でした。

本日の走行距離 447km

2012.9/21

 まだ暗いうちに起床しました。缶コーヒーで目覚めの一服。そし江府ICで降ります。この辺が昇って来たばかりの太陽の明かりでかろうじて撮影できそうな南限。数々の撮影地ガイドにもこの周辺のロケーションの素晴らしさが謳われています。とは言ってもこの明るさで走行を撮影するのだから割と正面から撃たなくてはブレてしまうので、時折現れる踏切を渡って確認しながら一地点を決めました。そういえば電気機関車には詳しくないですが、伯備線のロクヨンに原色は入っているのでしょうか?そんな上手い話ないなと思いながら待ち構えていると踏切が作動し始めました。



2012.9/21   伯備線  武庫〜根雨  EOS5D 100-400mm

 残念ながら更新色でした。その後、今の列車が次の根雨で交換する下り貨物も撮影してみましたが、こちらも貨物色。あきらめて米子市内に戻ることにします。レンタカーは12時間ごとの契約なので4日前に借りた時間の10時までに返却すればいいので、まだ6時であるため高速には乗らず国道で米子市内に戻りました。市内に入り最後の給油で満タンに。米子には意外と早く到着してしまい、まだ開いていなかった営業所の駐車場にクルマを停め、4日前にも喰った駅ソバをすすっているとようやく営業所がオープン。鍵を返し4日間連れ添った相棒とお別れしました。今日はこれから列車での移動になるので早速、朝ビールを楽しみたいところですが、乗るべきスーパーはくとの始発駅までは普通列車の移動で、しかも少し混みそうな感じだったので、ビールは諦めて倉吉へに向かいます。倉吉で駅弁とビールを買い、10年以上前から見ることしかなかったスーパーはくとの乗客になり、ビールを飲みながら振り子制御でさらに酔っぱらってきてしまいました。因美線の低速区間に入ると、急行砂丘のタブレット時代に何度も訪れた懐かしい風景にますます気分が良くなり、ちょうど通りかかった車内販売で旅のお供、ジャガリコと麦でできたお酒を追加購入。智頭急線内の高速運転に入る間もなく眠りこけてしまいました。起きるとすでに新大阪。「のぞみ23号」で今回の旅は無事終了しました。天候は一応恵まれた4日間でしたが成果として課題はいくつか残りました。これだけまとまった休みを取れることはそうそう無いでしょうし、1年以内の目標として是非再訪を果たしたいと思います。もちろん遠田のカーブは必須課題です。

本日の走行距離 50km
総走行距離 996km