冬の富山。キハ58最後の冬


2011.1/13


 23時過ぎ、八王子の駅前でK1トップ氏を拾うと、すぐに中央高速の八王子ICを目指して走りだした。どういう経緯だか前日くらいにメールでやり取りしているうちに、2人とも休みだった今日、どこか撮影に出かけようということになった。勿論、行き先は雪のあるところ。各地でラッセル車が走っていた数年前ならいくつも候補地が思い浮かぶ。本日から日本海側は大雪との予報であるが、2011年の今年、確実に除雪関係を仕留めるために思い付きで北国に行くことは、雲を掴むような話である。日本海縦貫線系統の国鉄色485系が無難であろうという結論になった。しかしこれまたどういう訳か485系はいつの間にか高山本線に最後に残ったキハ58を狙う旅に目的が変わっていた。現地情報からすると今週は高岡色ではなく、比較的長く国鉄色が運用に回っているっぽい。いつものパターンならそろそろ高岡色の出番が近付いているようで、明日まで国鉄色が持ってくれれば・・・という期待を込め、遠く富山に向かうことにした。

 今日もいつものように富山へのアクセスは安房峠越え。遠回りする高速とほぼ同じ所要時間であるが険しい山岳路を越えなければならない。2時間ほど平和だった高速を松本で降りて安房峠へ。市街を外れた頃から路面は積雪になってきた。ぐいぐい九十九折りを登り長いトンネルを越え長野県〜富山県へ。目的地の越中八尾駅前に到着したのは富山からの送り込み回送838Dの到着する30分前だった。当然この季節、まだ陽は昇っておらず走行写真を撮るにはかなり厳しい。特に銀塩派のK1トップ氏にとってはほぼ無理であろう。ともかくビデオだけでもということなので、少し明かりのある所、例えば途中の駅構内や踏切なら照明があるので、かろうじて写ることはできるであろう。越中八尾をから線路際をロケハン開始。どこの踏切も明るさは厳しい感じだったので、千里駅ホームで通過する回838Dを流すことにした。しかしこの時点でも今日やって来るのは狙っている国鉄色か、それとも紫の高岡色かは分かっていない。もし紫だったら485にでも転戦しよう。そう思っていると掲示板情報に新しい書き込みがあった。

「今日の運用は国鉄色」

ということだ。今日の我々の目標が決定した。やがてスプリンクラーが軌道に融雪用の散水する音だけが響き渡る静けさと暗闇の中から、2つのヘッドライトが接近してきた。




暗闇から突如現れたキハ58477+282360。回送列車なので車内灯は消えたまま。
2011.1/13  高山本線  千里  EOS5D 24-105mm


ひとまず今日の運用が急行色で良かった。良かった・・・。良かった・・・・。と安堵するのも束の間、「次はどこで撮んべ?」  今行った回送の折り返し841Dの時間もまだまだ陽は昇らないし、さらにその次の富山からの844Dもまだ薄暗かろう。しばらく二人で話し合い、結論、「乗っちゃおうか」ということになった。ここまでの折り返しの時間までクルマの中で暖を取り、駅前のパークライド駐車場にぶっこみ、¥230の切符を買って折り返し841Dの乗客となった。車内は富山への通勤通学客でボックスが埋まるほど。原型エンジンの鼓動を楽しむこと20分で富山に到着した。




苦手な駅撮りも記念のうち。
2011.1/13  高山本線  富山  EOS5D 24-105mm


 折り返しまで50分ほど時間があるので、構内の立ち食いソバ屋で腹ごしらえをした後、K1トップ氏は駅撮りのためにすぐに入場。自分は富山地鉄の駅にいってみたりしてしばらく時間を潰した。7:07 富山発844D乗車。行きと同じく20分でクルマの置いてある千里駅に到着。2人して見送った後、いよいよどうしたものか、どこで撮ろうかを話し合った。雪は激しく降るばかり。こんなんではどこで撮っても同じだろうという結論になり、駅からすぐ近くのポイントへ向かうことにした。踏切付近から千里駅方は田園の中を緩くカーブしており、どうやら有名な撮影地であるらしく、我々と同じく県外ナンバーが複数付近を怪しくウロウロしていた。




うっすらボヤボヤ浮かび上がるキハ58が雪煙りを上げて接近してきた。
2011.1/13  高山本線  千里〜速星  EOS5D 100-400mm


 映し出された画像を見て、イマイチ・・・。せっかくRAWでも記録しているので帰宅してから現像してみることにした。
@ホワイトバランス。青い。実際はこんなに青くなかった。カメラのWBはオートで撮影していたので、しょうがないがちょいとマゼンダとイエローを足す。
A白飛びしているところもあるのでコンマ数段露出を落としたが、白飛びは直らず。
Bシャープネスもピントが合ってんだか合ってないんだか怪しいレベル。ただし上げ過ぎるとマスク前面の降雪も邪魔になるので、加減しながら調整。
C積雪はあまりなかったので線路わきの工作物が目立ってしまい、うるさい。また背後の電線も目障りだ。一旦ビットマップにして周辺の色に合わせながら塗りつぶしてゆき最後にJPEGで保存。

できた。で、コレだ↓




「インチキ写真」
2011.1/13  高山本線  千里〜速星  EOS5D 100-400mm


 まぁ修正も腕のうちだね。とは誰かの言葉。便利な世の中になったもんです。さて次は富山からの852D。K1トップ氏の希望もあって県道からの井田川俯瞰に行ってみることにした。しかし現場は幅の狭い陸橋の歩道。陸橋上は融雪の散水がビシャビシャと雪をシャーベット状に弄んでおり、またクルマの交通量も非常に多いので10分立っているだけでカメラも体もとんでもないことになりそう。そして移動したのはその陸橋の下。ここなら雪もしのげるし築堤を渡って来る線路をアオリで撮影出来る。お陰で快適にセッティングすることが出来てしまった。




やっぱりホロ付きの方が締まって凛々しく見える。852D
2011.1/13  高山本線  婦中鵜坂〜西富山  EOS5D 100-400mm



852Dの10分続行の速星貨物。
2011.1/13  高山本線  婦中鵜坂〜西富山  EOS5D 100-400mm


 貨物を撮り終わり、次の午前最後の857Dを撮るべく移動中の車内で、ふと見た485系の掲示板で国鉄色T18編成が北越運用に入ったとの情報が! すぐに持参の時刻表でダイヤを追って行くと、北越2号で富山10:53発だということが分かり、この近辺で857Dを撮影してからもすぐに移動すれば富山付近で撮影出来ることが分かった。速星周辺の直線で本日最後のキハ58を頂くことにし、撮影後すぐに動けるような位置にクルマを停めスタンバイを開始した。




2011.1/13  高山本線  千里〜速星  EOS5D 100-400mm


 通過後即移動。雪で濡れたカメラもそのままで富山市街を飛ばす。目星をつけていた呉羽山トンネル飛び出しに到着するも、そこは新幹線工事の真っ最中。加えてこの降雪で足場もままならない有様だ。通過予定時刻まであと15分。細い路地の住宅地をカーナビで検索しながら右へ左へ突き進む。妄想BGMは「西部警察」だ。しかしなかなかどうして線路に近づけて開けている場所も少なく、3、4回アタックしたもののもうタイムアウト寸前。もうこれで最後のチャンスとばかりに飛び出た農道は広々とした田園の中の一本道だった。すぐにクルマを飛び降り三脚を伸ばしていると踏切が鳴りだした。しかし踏切の方向表示は逆方向。おや?と不思議に思う間もなく、両方向の赤い矢印が点滅し始めた。ゲゲッ!裏カブリだ!




2011.1/13  高山本線  呉羽〜小杉  EOS5D 24-105mm


 勢いでここまでやって来たが、裏カブリだったのでリベンジしたいところ。一方K1トップ氏は家の事情から一刻も早く帰りたい様子だったが、何気にオレが「クリカラか・・・?」とつぶやくと一応賛同してくれた。いい人め、申し訳ない・・・。国道8号線をさらに西に進み倶梨伽羅峠を目指す。昨日から一睡もしていないので、このペースなら1時間ちょっとは仮眠できそうだ。しばらく行くと県境付近で雪は止み、晴れ間も見せるようになってきた。軽くロケハンして踏切に立つと、ちょうど普通列車がやって来るようだ。カメラは車内に置いてきてしまったが編成長確認にはちょうどいい。、するとやって来たのは唯一の国鉄色475だった。しくじった。もう間に合わないので貴重な国鉄色を見送りクルマに戻り、30時間以上ぶりの睡眠。トリプルにしてセットした目ざましに起こされると完全に雪は上がっていて充分なくらいに陽が照っている。4つ目先頭を絶対に捕捉してやる。そう意気込めば意気込むほどなぜか雲行きが怪しくなってきた。




直前で陰りやがった。
2011.1/13  北陸本線  津幡〜倶梨伽羅  EOS5D 100-400mm


 高山本線のキハ58で今日は撤収予定だったが、終了予定時刻を大幅に過ぎた挙句、石川県にまで足を踏み入れてしまった。早く帰らねば・・・。しかし時刻表を見ると先ほど行ってしまった国鉄色475系は富山行きで、もしそのまま折り返しでここに戻ってくるとすれば、あと10分後の普通列車に充当されるかもしれない。生憎今日は475の運用は持ち合わせていないのだが、あと10分なら少し待ってみようと思った。すぐに三脚を今と反対の方向にセット。倶梨伽羅駅を遠望して国鉄色の登場を期待した。




国鉄色A19編成。予想通りやって来てくれた
2011.1/13  北陸本線  津幡〜倶梨伽羅  EOS5D 100-400mm


 さて急いで帰ろう。「はくたか」+上越新幹線で帰るというK1トップ氏を高岡駅まで送り届けた。自分も明日は午前中から仕事なので無理してでも日付が変わる前には自宅に到着していたい。しかし昨日の朝からまともに寝ていなかったので心身ともに限界。富山市内を一般道で通過して来た時と同じ道をたどり安房峠を越えるのが億劫だったので、何を血迷ったか東海北陸道〜東名で帰ることに決め、南下し岐阜県へ突入。途中の「ひるがの高原SA」で少し1時間ほど寝て行くことにした。そして爆睡。4時間以上も寝てしまい、21時に目が覚めた。ヤバい! 目が覚めた時は一瞬何が何だか分からなかったが、冷静に考えるとまだ岐阜県北部であり、今日中に帰還する計画が大幅に狂った。しかしそれ以上に焦ったのは、日中の太陽で溶けた雪が見事に凍ってしまい、東海北陸道は長大なスケートリンクに化している。ビクビクしながら50km/hで時間を掛けて峠を降り、東名高速にようやく入った頃、再び睡魔にやられ、富士川SAで朝日を見るハメになってしまった。帰宅後そのまま仕事に直行。その日の仕事がこんなに長く感じられたことは今まで無かった。