事業車国鉄祭り初登場。働く列車、クモヤ443を撮る。

2011.8/30

 暑い8月も終わろうとしていたそんなある日の夕方。早番の仕事を終え水シャワーを浴び部屋で扇風機を強にして当たりながらゴロゴロ寝っ転がっていた。「あぢ〜・・・」 西日がモロに射しこんでくるマイルーム。外は陽も沈み薄暗くはなってきたが、風の吹かない今日みたいな日は夜でも室温は30℃を大きく超えていた。明日は休みである。特に何か予定も無いし、買い物行っても暑いし、バイクをいじっても暑いし、そうだ!どうせ同じ暑いならお出かけしようと思い立ち、ウヤ情とルーティーンワークであるテツ的な目撃情報的な掲示板を見ながら用事を作ろうとすること1時間。何も無い・・・。関東地方の明日の予報は曇りであるので近場の烏山線、久留里線はパス。今からの遠征なので行けても500km圏内だ。仕方なく、いつもは飛ばし読みしてしまうウヤ情の検測車の項目を見ると、明日京都の電気検測車のクモヤ443が滋賀県界隈で動きがあるとのことだ。京都のクモヤと言えば全国で唯一現役のクモヤ443であり登場時の塗り分けを堅持している。485系特急電車を彷彿とさせるフォルムに交流区間の乗り入れに相応しくローズピンクとクリーム色で全身を武装、れっきとした国鉄色である。それが明日京都〜柘植、京都〜敦賀の往復でお仕事のようだ。それはそうと柘植ってどこだっけ?時刻表を取り出してパラパラめくると京都から南下し関西本線の柘植までを結ぶ草津線ということが分かった。草津線。遠い昔に18きっぷで乗ったことあるような、ないような。全くといっていいほど未知の路線だったので、ある程度撮影地を下調べしてから遠く近江路へ旅立つことになった。

 この季節、この距離ならバイクで行きたいところだが、我が愛車のリアタイヤはスリップサインがそろそろ限界値に近付いている状態で、経験上ここまですり減っていると持って500km、高速運転なら300kmほどしか持たない事は知っている。今からタイヤ交換をしている時間は無いし、仕方なくクルマで出発することに決めた。そして0時ころ旅立つ。いつものように深夜だというのにトラックの群れで一向にスピードが上げられない東名高速を西へ進む。明日のクモヤの草津線往復は11時台なので途中のどこかで充分仮眠を取れそうだ。表定速度80km/hくらいのまま豊田JCTから伊勢湾岸道へ。途中の長島PAで仮眠ののち、亀山ICから名阪国道、そしてようやく第一の目的地草津線貴生川に到着したのは9時前だった。コンビニで軽食を買い撮影地に向かいながらそれを喰らう。当初目指していたのは貴生川駅のすぐ北の大築堤で、どうやら有名な撮影スポットらしいが自分的にはあまり萌えず、時間もあることだし撮影お立ち台を探すことにした。件の築堤からさらに北上すると広々としていた田園風景から山間を行く山岳鉄道らしい赴きになってきた。クモヤは2両でやって来るので編成よりも顔面重視に行きたいと思い、たまたまクルマを停めた小さな警報機のない踏切でギラギラの太陽の下、1発目をヤッてヤることにした。




かなりの俊足で姿を現したクモヤ443。事業車って慎重に歩を進めながらやって来るものだと思い込んでいた。
2011.8/30  草津線  三雲〜貴生川  EOS5D  100-400mm

 やってやった。しかしあまりのスピードにあっけを取られて見送っていたが、初めて見たクモヤ443。思っていた以上に国鉄型プンプンの雰囲気でいいじゃないか! 天気も良いので上機嫌で折り返しの撮影地を探し始めた。出発前に調べておいた自分的にはあまり食指の動かなかった大築堤で上り試9753Mを迎え撃とうと思うが、この時間順光側では極太の通信ケーブルが線路と平行し、また架線柱もこちら側にあるので、多少逆光になっても押さえられそうなポイントを探し始めることにした。クルマで何度か行き来していると、なんとか行けそうな雰囲気の場所にはすでに先客がおり、何気にこの京都の国鉄色の検測車は注目度が高いという事をここに来て初めて知った。何箇所か先客のため諦めたポイントを捨て、何となく立ち寄った草深い小さな踏切に定点を決め、すぐに折り返してやって来る試9753Mを撃ち撮る準備を始めた。




また高速で突っ走って来た。ホントに検測しているのか!?ってスピード。
2011.8/30  草津線  貴生川〜三雲  EOS5D  100-400mm

 すぐに撮影機材を仕舞いこみ、出発する。今度は湖西線経由で敦賀までの往復の仕事が待っている。時間は少し余裕があるのだが先回りして撮影地を吟味したいと思う。県道を琵琶湖方面へ走り、竜王ICより名神高速〜北陸道を経て木之本ICで一般道に降りた。正午もとっくに過ぎてる時間ではあるが、昼飯を喰っていなかったのでインター近くの名物というタンメンの店で看板メニューのタンメンで腹ごしらえ。何度も通っている近江塩津駅前の国道8号線をさらに北上し、以前雷鳥撮影の時に訪れたことのある深坂トンネル入り口に到着した。あの時はどういう訳かここでの撮影をやめて新疋田付近で撮影しているので、ここでは今回は2年越しでの撮影である。後から来た同志一名と仲良く撮影。こちらでも草津線と同じ俊足で足元をかすめて行き、県境のトンネルへと消えて行った。




2011.8/30  北陸本線  近江塩津〜新疋田 EOS5D  24-105mm


 すぐに撤収して後を追った。気が付くとあれだけガンガンだった真夏の照射も、日本海側へと抜けると薄雲が空を覆いつくし、ただただ蒸し暑い不快な低温サウナのような陽気になっていた。出発時から超エコ運転を心掛け、加速、登坂時にはエアコンを切るという慎ましい努力をしてきたのだが、こればかりは耐えきれず、県境越えの長い坂道も冷房をMAXで効かせながら新疋田駅に到着した。新疋田といえば関西テツの聖地。関東地方でいえば、ん〜思い浮かばないが、自分は撮影したことはないが大宮駅撮りに匹敵するくらいなんだろう。案の定構内に入ると何人かのテツな方々が狭い対向ホームの壁にピタッと並んでいた。先ほど下っていった試9513Mは次の敦賀で数分の停車の後、折り返し、鳩原ループを駆け上がってここに戻ってくる。そしてここ新疋田で12分の運転停車があるので一同はここに集結した模様。自分は駅撮りよりも走行を収めたかったので、新疋田駅を後にして撮影地を探すことにした。時間はギリではあるが鉄塔からのループ俯瞰、中間地点の跨線橋アングル、そして禁断の××××などいくつか思い当たる場所が浮かんできたが、いずれも短編成のクモヤには向かないところだ。そういえば10年ほど前、お盆臨のボンネット雷鳥を撮影した新疋田駅進入のアウトカーブはどうなっているんだろうか?関西スジによると超有名ポイントになったため立ち入り禁止になったと聞くが、おそらくそれは上下線の間のインカーブのこと。微かな記憶でアウトカーブなら関係なかろうもんと思い、現場に急行。すると国道から線路に続く上り道は、昔と違って書いてはいないものの何となく私有地ぽさを醸し出している。さすがに気が引けて入り口付近にクルマを止め、歩いて登ること数百m。10年前と同じ広場に出た。あの時はこの広場に何十台のテツ車が並び、皆思い思いの場所へ不法侵入して三脚を立ててたと思うが、今となってはさすがに世間もJRも許す訳がなく、ひっそり閑散としていた。しかし往年の名撮影地とだけあって安全なアウトカーブの草むらに数人の動く影を発見した。と、その時。山の向こうから爆音が聞こえてきたと思う間もなく、どんどんこちらに近づいてくるではないか。電車の音ではない。どんなにボロいパーイチでもあんな音はしない。はて?何が来るんだろうか?あいにくカメラはクルマの中に置いてきている。次の瞬間、原色のDD51が爆煙を盛大に吹き上げながらカーブの向こうから顔を出した。ロンチキを牽いている。工臨だった。「おぁ〜こんなのがあったのねー」と少しショックを受けながらクルマへと戻り、なぜか今の場所での撮影を止めて新疋田駅で駅撮りに徹することにした。




側線に入る検測車。貨物列車退避もあるのか長い有効長の新疋田に到着。



新潟方クモヤ443−2。下枠交差パンタを備える。



接近メロディーの「エリーゼのために」をバックに時折貨物も通過。



意味深に降ろされたブラインド。な、何が入っているんだろう(;´Д`)??



で隙間から覗いてみた。よく拭かなきゃいけないらしい。



特別な列車と特別な日。この国鉄チックな書体が萌えてしまう。



12分停車でサンダーバードに道を譲り京都に帰る。京都方クモヤ442−2

 てな訳でクモヤが出発して新疋田展示会は解散となった。あまり期待していなかった分、なかなか面白いお出かけになった。JR西ではすでに稼働しているキヤ141に挟み込む型で電気検測する中間車を登場させる予定で、クモヤ443の活躍はそれまでと思われる。国鉄色をまとい、人知れず仕事をこなすクモヤ443の末永い活躍を祈ろうではないか。