国鉄色381系が北近畿に出現。当然追う、そして撮る!


2011.5/17

 いつもとは少し違って今日は正午頃自宅を出発しました。そしてこれまたいつもと少し違って高速のインターを目指すのではなく、自宅からほど近い国道1号線の交差点へと赴き、西進を始めました。本日は二輪です。今季初のテツツーリングは先月出かけた烏山線という日帰りだったので、連泊の必要な長距離ツーリングは今期今日が最初です。何かいつもと違う今回の目的地は、今年3月に新車287系が登場した北近畿地方。当然287系なぞを撮るのではなく、381「こうのとり」の撮影です。今までは485系の交流機器撤去改造を受けた183−700番台が運用されており、それらを駆逐するために287系が登場したのですが、どういう訳か全183系を置き換えるのに間に合わなかったようで、それを補うために日根野の381が転属。287系に混じって一部列車を国鉄色381系が代走しています。それも6月になると、これもどういう訳か新形式が全運用賄えるくらい出揃うようで、381の代走も2カ月の限定運用とのこと。だったら撮っておく必要アリと判断し、出撃を決めたのでした。新緑も美しい季節でしょう。昨年秋に訪問した篠山口から福知山の区間で愉しもうと思います。

 自分が原チャリの免許を取ったガキの頃から、未来永劫まで慢性的な渋滞に苛まれそうな国道1号線の横浜市内南部を抜け、通行料無料天国の新西湘バイパス、西湘バイパス、箱根新道を通り箱根峠を越えて三島へと下ります。明日の朝イチから現地で撮影出来ればいいだけなので、今回は白昼の東海道を下道でのんびり移動するつもりです。狭い神奈川県内の移動だけに2時間近く取られてようやく駿河の国に入ると、ぐずついていた空模様はとうとうポツポツと雨が降り出してきました。初っ端から雨という出だしにトホホになりながらも合羽を着こみ再び出発。流れの良いバイパス道を眠くなりそうな60`くらいの速度で車の流れに乗っていると、清水市内で突然の雷鳴とともに痛いほどの大粒の雨が叩きつけてきました。すぐに夕立は収まるだろうとバイパスを降りて陸橋下で雨宿りをすること30分。予想通り少し雨脚も収まって来たので出発です。4車線化工事の真っ只中、いつも大渋滞の静清バイパスを抜けて牧の原に差し掛かる頃には晴れ間ものぞき見事な夕陽が臨めました、蒸れる安物の合羽を脱ぎ掛川〜浜名湖〜豊橋を順調に西へ。走って来た国道1号線と東名高速最後の結節地点である音羽蒲郡IC付近で給油と、コンビニで酒を仕込みます。いや、ここでは飲んでません。仕込む必要があったのです。長く走って来た一般道から高速に乗り1時間ほど走り一挙に距離を稼ぎ、今日の目的地である滋賀県は多賀SAに到着しました。多賀SAといえば数少ない高速道路の宿泊施設、「レストイン」があるとこですね。ずっと永らくレストインは普通のビジネスホテルかと思ってましたが、出発前にネットで調べると雑魚寝の仮眠所があるそうで値段も一泊1600円程度とお手軽です。今日はここを第一の目的地として走ってきました。でもいくら風呂付きの宿泊施設とはいえ高速道路の施設でさすがに酒は売って無いでしょうから、先ほど高速に乗る前にビールを仕込んでおいたというわけです。長時間の移動ですっかり冷え切ってしまったバイクでの旅に風呂はまさに死ねるほどありがたいです。誰もいないガラ空きの浴場で体を解凍し、喫煙所で温くなったビールをコソコソとやり、雑魚寝の仮眠所で横たわると、それはそれはもう秒殺でした。

本日の走行距離483km


2011.5/18


 やってしまいました。朝イチの上り381に間に合うように4時にセットした目覚ましには当然気付かず、目覚めると8時でした。駅寝や野宿では寒かったり快適ではなかったりで熟睡できず早朝目覚めて活動できるのがいつものパターンですが、こうも快適では腑抜けてしまいます。もう間に合うものを撮るしかないので、ひとまずチェックアウト。すでに気温は20℃以上あると思われ、バイク乗りの一番元気の出る陽気です。順調に吹田JCTから中国道、そしていよいよ舞鶴若狭道に入り当初の目的地、丹南篠山ICで高速を降りました。天気も良く撮影日和。まずは挨拶程度にと編成写真でも撮っておかなければならんと、線路沿いを南へ移動開始。するとその沿線には昨年には全く見かけることのなかったテツの姿が所々にありました。さすが雑誌で煽っているだけあって盛況なようです。自分はキレイに直線を見通せる南矢代駅近くの農道で列車を待つことにしました。




2011.5/18   福知山線  古市〜南矢代  EOS5D 100-400mm


 いとも簡単にビカビカの編成写真を頂くことが出来て、本当にもう帰ろうかと思ったくらいの手応えでした。しかし天気は今日明日ともに快晴のようなので精一杯やってやろうという気持ちも無きにしもあらず。次の撮影のために移動します。まず向かったのは昨秋訪れた全長4kmほどのコンパクトな川代渓谷。着くとそこは今がまさに新緑の盛りでした。鮮やかな若葉が明るいグリーンにキラキラと萌えています。しかしながら午前中は逆光になってしまうため午後の上り用にとっておくことにし、先を急ぐと幡但線の接続駅、谷川に到着しました。この駅の周辺では田起こしが終わり、場所によっては作付の済んだばかりの田園風景がそこかしこに見られ、この際どこで撮っても美しく正しい日本の5月の情景が撮影出来そうです。さらに沿線の所々の民家に仕舞い遅れた鯉のぼりが泳いでたりするもんだから、それも一緒に国鉄色を・・・と煩悩を巡らせて、列車と遅れ鯉幟を一緒に撮れるところを探し沿線を徘徊しているうちに時間切れ。太陽を正面に仰ぐ、なんてことはないただの田んぼで9号を待ちます。




2011.5/18   福知山線  谷川〜柏原  EOS5D 24-105mm


 いやーやっちまった。いつもの悪いクセで欲張って失敗という何百回もやってきたパターンです。仕切り直してコンビニで買ったおにぎりと菓子パン、雪印のコーヒー牛乳という¥300昼食をバイクにまたがりながら摂取し、午後の作戦タイム。「さっき見ておいたアソコは次の列車の15時過ぎには時ころだと光線があーなって、で、そのまますぐに移動して次の列車を・・・」と考える最も楽しい時間です。やがていよいよ時間になったので移動開始。時刻は14時を回り太陽はMAXパワーで照りつけ、ジャケットも着ていられないくらいの日差しになってまいりました。柏原から小さな山を越えて戻ります。250ccの小さなエンジンを4000rpmくらいで回しながら線路沿いの路を坦々と走りながら、何の変哲もないただの田んぼに到着。ゆるく流れる気持ちのいい風を浴びながら構図を選びました。




2011.5/18   福知山線  谷川〜下滝  EOS5D 24-105mm


 ところで今日は381をメインに撮影するために乗り込んで来たのですが、実は去年追っかけまくった183国鉄色も健在だったのを思い出しました。新型287も混在しているものの、編成内容も違うため時刻表には丁寧に【新型車両で運転】と明記されている訳で、183で運用される「こうのとり」はすぐに判別できます。さきほど川代渓谷で見かけた薄紫色の枝垂れた花の木が良さげな感じで線路にカブリそうだったので、次の183「15号」はそこで撮影することに決定。帰ってからウィキペディアでその花は何だったかを調べました。木だったら桐の花のようですが、どうやら野生の藤の蔓が他の木に絡みついて寄生しただけだったようです。




2011.5/18   福知山線  丹波大山〜下滝  EOS5D 100-400mm


 その紛らわしい藤のところで撮影した後、急いで撤収。三脚は畳んで収納するのと時間がかかるのでそのまま草むらにデポし、カメラ類だけをトランクに入れ、前もって決めておいた300mほど離れた次の地点に急行します。というのも今撮影した「こうのとり15号」は次の下滝駅で「こうのとり18号」と交換しすぐにやって来るからです。セッティングを済ますとすぐに「18号」はやってきました。美しい特急色は新緑の中をまるで生き物のようにファインダーの中を滑って行きました。




2011.5/18   福知山線  丹波大山〜下滝  EOS5D 100-400mm


 この18号を見送るとしばし休憩です。昼過ぎに「こうのとり9号」として城崎温泉まで行った381がここに帰って来るのは1時間後。折しも天候はこのまま日没まで持ちそうな気配で、日ごろの行いが相当悪くなければ、サンセット前のギラリも行けてしまうように思われ、天に願いを込めてバイクにまたがりながら仰向けにアクロバティックな昼寝を取ることにしました。と、その前に先ほど草むらに隠し置いた三脚を回収。暖かく穏やかな5月の風に吹かれながら浅い眠りで時を過ごしていましたが、やはりバイク寝は無理な体勢で寝るので、寝違えたり腰に負担がかかったりで当然熟睡できません。しばらくして「イテテテ・・・」とバイクから起き上がると、いよいよ西日は傾き始め、最高のステージの出現が予感出来ました。


2011.5/18   福知山線  谷川〜下滝  EOS5D 100-400mm


 なかなか美しいです。すっきりとした屋根上と美しい国鉄色で統一された編成美。本当に優雅に丹波の里に舞うコウノトリのようです。確かな手応えを感じながら撤収作業をしていると、一緒に撮影していた方が、「次はどこで撮られますの?」と話しかけてきました。時間はすでに17時過ぎ。関東ならもうそろそろ撮影の限界時刻ですが、ここは関東地方の日没よりも20分近く遅く、そう言えばまだまだ太陽は背後の山の稜線には少し距離があります。もうちょっと行けそうです。時刻表をパラパラめくると、40分後に続行の22号がやって来ます。行けるのかな?行けないのかな? 気付かせてくれた同業者の方は少し場所を移動しただけで、まだ頑張るようです。ではオイラもご一緒しよう。今度はサイド気味に移動して流して見ることにしました。












2011.5/18   福知山線  谷川〜下滝  EOS5D 24-105mm









 22号が行ってしまうといよいよ本格的に山影は足元に忍び寄ってきました。今行った22号は篠山口以南の複線区間で下り17号と交換するようなのでもう一発場所を変えて行けてしまいそう。すぐにカメラをトランクに仕舞い次の撮影に急ごうとしていると、この田んぼの持ち主のおっちゃんが親しげに話しかけてきました。「どっから来はりましたのん?」「そのバイクでかぃ?アイヤー大変やねぇー」「あの色の電車がええのん?ワシなんてみんな同じに見えてまうけどなー!!」と親しげに話しかけてきました。時間があったらもう少しお相手できたのに、今は時間がないのです。おっちゃん。話しながらもメットを被り、「すんません、次があるので失礼しますわー」とこちらも関西風イントネーションで返し出発。場所は決めて無かったので適当にたどり着いた踏切でバタバタと慌ててセッティングを開始していると、また先ほどとは別のおっちゃんBが軽トラに乗ってやって来て、話しかけてきました。「どこから来たん?」「そのバイクで来たんかいなー」「なんか珍しいの来んの?」とさっきのおっちゃんAと同じようなことを聞かれました。ヤバい。あと1,2分という瀬戸際だったので、失礼にならない程度に急いで話しながらスタンバイ。その様子が伝わったのか、おっちゃんBは見学態勢に入りました。それにしても西日本の人は人懐っこいですね。そそくさと撮影準備を急ぐオレをつっけんどんな関東人という印象を与えてしまったかも知れません。望遠に付け替えて三脚を取り出すと、踏切が鳴り出してしまいました。




で、失敗したので小さく紹介。


 そんなこんなでおっちゃんBと別れを告げ、本日の寝場所に向かうとしましょう。駅寝も考えたのですが、装備を軽く済ませたかったので今回はパス。確か昨年「183北近畿」を撮影するため訪問した福知山市内の国道沿いに健康ランドがあったはずです。明日は早朝から上り2本を撮影し、翌日の仕事に影響しないよう白昼の東名を突っ走り帰還する予定なので、今夜もきちんと睡眠を取っておきたいです。バリバリと野宿して早朝から精力的に活動していた頃が懐かしくさえ思ってしまいます。そんなわけで福知山に向かう道すがら、柏原市内を走行中、いかにもコテコテ系のラーメン屋があったので迷わず入店すると、予想に反してあまり得意ではない九州とんこつラーメン屋。カウンターに座った時にそれに気付き「しまったー!」と思いまたが時すでに遅しでした。普通の白濁とんこつをイヤイヤしながら完食し、暗くなった国道を走り福知山へ。記憶通り健康ランドはありました。5階建てのビル全てが温泉付きのレジャー施設と言った感じですが、作りが中途半端に古く、10年後あたり廃墟になっていたら似合いそうな雰囲気です。でもこれはこれで市民に愛されているような賑わいで、全フロアー結構繁盛しているようでした。自分はカプセルホテルが思いのほか安かったのでチェックイン。入浴券をもらって最上階の展望風呂で疲れを癒し、ビールを2本飲んでから寝ることにしました。

本日の走行距離213km


2011.5/19


 朝になりました。昨夜のビールと風呂、快適な布団のせいもあって、起きると8時を過ぎていました。2日連続の寝坊です。宿に泊まるとこの有様。我ながら腑抜けてしまったもんです。朝、大阪に向かう2本目の381「こうのとり4号」にも間に合わない時間になってしまっているので、諦めて無料サービスのドリンクバーのコーヒーを飲みながら一服。作戦を練ります。あまり帰りが遅くなってもしんどいので、午前中に大阪から戻って来る5号を一本やってけてから撤収することにしました。無愛想なカウンターのバイト兄ちゃんにロッカーのカギを返してチェックアウト。今日も朝からよく晴れていますが、何気に湿度が高く、街全体がもやっていました。坦々と国道を走り途中のコンビニなんかでモナカアイスをバリバリとやり、撮影地へ。昨日、午後の9号がやって来る時間には、テツの集団がかたまって陣取っていた谷川駅近くの田園カーブに向かいました。到着すると午後の便は順光で当たりそうなポイントですが、午前中は半逆光状態。でも気持ちよくカーブが見通せる場所で、通過まで1時間ほどありましたがセッティングだけしてのんびり過ごすことにしました。しかし背後の畑では何やら野焼きの始まりそうな雰囲気。いつものようにイヤ〜な予感がしましたが、風向きはまだまだ大丈夫。とにかくこちらに煙がやって来ないことだけを祈りながら今回の旅、最後の381を待ちました。




ドキドキの点火の瞬間。こっちに流れてこないでくれ・・・。



結構、退色の進んできたマスク。今後の行く末が気になります。

2011.5/19   福知山線  下滝〜谷川  EOS5D 100-400mm


 思ったよりキツイカーブだったので6両最後尾まで写し込むのは失敗。でもピンもジャストで決まり国鉄色381撮影も無事終了しました。ついでにもういっちょ!




谷川で交換して来た183「こうのとり12号」。後追い。

2011.5/19   福知山線  下滝〜谷川  EOS5D 100-400mm


 今回の目的はある程度果たせました。2日連続の寝坊により逃した381は4本。しかし不思議なほどに充実感に満ちていました。その後何度も走った川代渓谷を伝い篠山口へ。インター近くのガススタで給油のあと高速で帰途に就きました。舞鶴若狭道〜中国道〜新名神を経て東名へ。途中休憩を随所に織り交ぜながら、かつてないほどのダラダラで東に進み、横浜に着いたのは21時前になってしまいました。


今回の旅の走行距離 1288km