初秋の癒しツーリング。烏山線国鉄色キハ40

2011.9/15

 ある9月の日。2連休だったのでなんだかバイクで旅に出たい欲求に駆られました。たまには時間と移動に追われるテツ活動ではなくて、山間をのんびりゆったりペースで流し、ふらっと立ち寄った名も無き温泉を楽しみ、ちょっと高い飯を喰い、帰りは高速で走って遅くならない程度に家に着けばいい、といった感じのツーリングです。バイク雑誌なんかによく載っていたりする、あんな感じのヤツです。まさに大人のツーリング。日々のストレス社会から一歩踏み出せば、そこはもう自由の世界。マシンはそんな自由へといざなう良き相棒・・・。っていったイメージでした。何年か前の秋、飯田線にあるネタ列車が走る情報を掴み伊那谷に向かったものの、お目当ての列車はウヤになり、そのまま帰ってくるのもなんだったので酷道として名高い国道152号線を南下、夕暮れも迫ってきた頃、休憩しようと立ち寄った道の駅「遠山郷」に温泉が併設されているのを知り迷わず入場。風呂上がりに秋風に吹かれながら休憩したあと、同じく施設内にある食堂で地元産を使っているという山菜ソバセットを喰った記憶が甦りました。期待していなかった分、風呂、飯、環境が全てパーフェクトで本当に癒され心に残る旅になっていました。そんな旅がしたい。でも期待していてはダメです。ふとした思いつきの行動が大事なのです。でも少しは期待もして、と地図を広げました。どこにいこうかな・・・?

 21時過ぎ。真っ暗な東北道を北に向かって飛ばしていました。スロットルを少しも緩めることなく遅いトラックの群れをかわしていると、やがてマシンの限界性能だということを計器類が訴え始めています。自宅から2時間ちょっと。ここまでノンストップで走り切り宇都宮の手前、鹿沼ICで高速を降りました。昨日、あれだけ癒しを求めたツーリングを画策していましたが、どういうことかトランクには撮影機材フル装備と時刻表を積載、そしてそれ以外は何も持って来ていません。今日も結局テツ分の多いツーリングになりそうです。明日は烏山線の一般色の撮影予定です。でも少しはいつもと違った感じにしたいと思い、日帰り圏内であるにも関わらず一泊しようと、事前に調べておいた宇都宮市内の健康ランドで宿泊の予定です。正直ビールも呑んじゃいたいです。市内中心部に向かうバイパスを走り駅から近い健康ランドに到着しました。健康ランドにしては少し高めの¥3000だったので期待してもよさそうですな。中心部にも近いこともあって平日だというのにかなりの盛況っぷり。比較的新し目な施設で広い浴室の7つの風呂を堪能した後、お待ちかねのビール。しかしビールの自販機は0時から稼働との但し書きがあり、あと1時間以上あるじゃないか!どうしたもんかと途方に暮れていると施設内に居酒屋的なものがあったので迷わず入ってみることにしました。浴衣のままカウンター席に座り、閉店作業で忙しそうな女将さんを呼び止め中ジョッキと塩辛を注文。街の居酒屋並みの良心的な価格だったのですぐに2杯目、3杯目を注文。イカの塩辛をクチャクチャやりながら時刻表と地図で明日の計画を立てます。さて0時になりました。この時間で居酒屋は閉店ということなので店を出て、0時に目覚めるという先ほどのロビーの自販機で追い込み缶ビールを購入。酩酊状態になったところで仮眠室に潜り込みました。

 翌朝、掃除機をかける音で目が覚めました。チェックアウトも近い8時過ぎです。別に早起きするつもりはありませんでしたが酒の力もあって爆睡し、今は非常に爽快感に満ち溢れています。洗面を済ませ缶コーヒーで一服。ラッシュももう終わりに近い宇都宮市街を通り抜け、目的地烏山線沿線に到着しました。今日の国鉄色の動きは2両のうちの1両が朝の運用を終えると解結されてしまったようで、国鉄色を追うためには残ったキハ401003だけを追いかけることになりそうです。予報も日中は晴れの見通しなので楽しく撮影が出来そうです。1003は2両編成の宇都宮方に連結されているようで、それを念頭に大まかな計画をたてました。次にやってくるのは上り列車。大金駅付近で前から走行をカッチシいただきたく思い、撮影場所を探していると下り坂を遠望する踏切に到着しました。逆光になってしまいますがここで一発目は行きます。ビデオカメラをセッティングした後、三脚に望遠を据え付けピント合わせのためにファインダーをのぞくと、おや?どこかで見たことある景色。8年前、烏山線80周年を記念して塗色変更されたタラコを頂いた場所でした。当時どこで撮ったかは全然覚えていなかったので、軽いデジャブを覚えたような感覚のようでした。




草刈りのおっちゃんが入ってしまったが爽やかな秋風を受けて勾配を上るキハ401003。
2011.9/15  烏山線  小塙〜大金  EOS5D  100-400mm


8年前

2号車「想ひ出写真館」にも掲載した写真。当時タラコになったのはキハ401004。現在は烏山色に戻されている。
2003.10/30  烏山線  小塙〜大金  EOS10D 75-300mm

 上り勾配を逞しく煙を吐きながら登る国鉄色を撮影したあと、そそくさと撤収をして列車を追い掛けました。今行った列車は次の大金駅で交換の予定で数分の停車があり、急げば追っかけをもう一発出来そうな気配でした。烏山線随一の撮影地として名高い大金〜鴻野山間の田んぼに向かいます。ここなら順光なのでどこで撮ってもいい感じにサイドビューを収められそうです。すでにスタンバイを終えて一服している同業者の方もいます。自分は広角でアングルを定めるとすぐに、遠くの踏切が鳴り出しやがて列車はやって来るのでした。




2011.9/15  烏山線  大金〜鴻野山  EOS5D 24-105mm




折り返し烏山行きは後追いで。手前の農作物は大豆。枝豆天国でした。ビ、ビール呑みたい!!
2011.9/15  烏山線  仁井田〜鴻野山  EOS5D  24-105mm

 さて、その枝豆天国で撮影すると、ちょうど烏山線はお昼休みの閑散タイムに入り、今行った烏山行きの列車が戻ってくるのは1時間以上も経ってからです。折り返しの間、時間もあったのでカラッとした秋らしい過ごしやすい陽気によって眠気を催してきてしまい、近くの木陰の下にバイクを停め、いつものようにまたがりながらのうたた寝をします。時折吹く風が気持ちいい。眠るのか眠らないか、そんなまどろみのような1時間を過ごし、目覚ましに起されて大金駅の宝積寺方から望むことのできる踏切にやってきました。いままで烏山線では撮ったことのないタブレット交換風景を撮影するためです。正確には大金〜烏山間は続行運転も可能なタブレット閉塞ではなくスタフ閉塞です。通常のタブレット閉塞は駅間に対になった閉塞機から唯一の通票を取り出し列車に携行させることができるので、駅長間の連絡により続行運転も可能という非自動閉塞の最終進化系に属するものですが、この烏山線末端で使われるのは閉塞機を介せず、ただ1つだけ存在する通票が行ったり来たりを繰り返すというスタフ閉塞です。ただタブレット閉塞もスタフ閉塞も、或いはその中間に属する票券閉塞も、キャリアの形はどれも一緒なため一般的にはタブレット、またはタマ、または通票で通じてしまうところです。そんな細かいことはさておき一般色の気動車と丸い輪っかを頂くことにしました。




「乙でーす」 「ウィーッス!!」 そんな日常の他愛もないやり取りが聞こえてきそうな風景
2011.9/15  烏山線  大金  EOS5D  100-400mm

 のどかな輪っかのやり取りを撮影し終えると、先ほどと同じように先ほどの田んぼに先回りしました。今度は望遠でキッチリ押さえたい、感じです。2kmくらい走って到着すると、一本前にもこの場所で撮影されていた方がまだいらっしゃいました。バイクで飛ばして到着した自分を見て「大金の交換停車で追っかけとかできるんですか!?」と尋ねられ「ええ、バイクなら余裕ッスよ」と少しドヤ顔。気さくな方でもう少し世間話もしていたかったですが、何せ時間が無いもんでそそくさとセッティングに入りました。




2011.9/15  烏山線  大金〜鴻野山  EOS5D 100-400mm

 一通り満足な撮影が出来てしまい、15時前だというのに帰ることにしました。今去って行った1003がここに戻ってくるのは16時前で日没までにはまだまだ余裕がありますが帰ります。このくらいの余裕が今後のためにも必要なのかも知れません。ここからもっとも近いインターの宇都宮から東北道に乗って帰還しようと思いましたが、どういうわけか途中のガソリンスタンドでタイミングとか何やらで給油しそびれてしまい、結局鹿沼ICに近いスタンドでレギュラー10Lちょっと入れて高速に乗りました。やっぱバイクはリーズナボー!!この距離というお手軽さや前泊したという余裕さで結果的に結構「癒された」テツツーリングになりました。