助っ人銀釜。EF81303を初撮影

2011.10/13

 銀釜。言うまでも無いが関門トンネルの塩害対策のため、ステンレス製のボディを奢られたEF81の300番台である。通常は九州の門司機関区に配置され、本来の目的通り関門トンネルや九州内の貨物牽引に当たっているのだが、助っ人として遠く離れた富山機関区に短期貸しだされることがある。最近では件の東日本大震災の時、不通となった東北本線の貨物を日本海縦貫ルートで迂回したのは記憶に新しいが、その際、需要が旺盛となった電気機関車を補うべく遠く九州から駆け付けたのは銀釜ことEF81303であった。やがて4月中旬には東北本線は復旧し、本来のルートが再開したので303は故郷である九州に返却されたのだが、ここに来て再度救援指令がEF81302,303に下ったのである。今回の任務は収穫された北海道の農産物輸送。例年のことではあるが、今年は再び季節臨時貨物牽引機としてこの両機が本州の日本海縦貫ルート、特に羽越線系統に助っ人として充てられることになった。運用はというと夕方、南長岡を出発。翌日青森着。同日青森を出発して翌朝南長岡に到着するという2日ローテーションの言わばループ運用。302はステンレスにローズピンク塗色であるのに対して、303はオリジナルのステンレスボディ。つまり2日に1回は銀釜が長岡で見られるという運用であることが分かった。さらに調べると銀釜は奇数日に南長岡着。その日の夕方に青森に向けて出発だそうで、休みのタイミングと奇数日を狙って新潟に向かう事にした。しかし極短い季節限定の臨時貨物列車なので、列車番号から探しても運行時刻は貨物時刻表には掲載されておらず、見たまま情報など、ありとあらゆる手段を尽くしてようやく「南長岡 8:30頃着 16:30頃発」という事だけは分かった。

 最初は距離も手頃なのでバイクで行こうと思っていたが、先日購入したばかりのサブカメラの望遠ズームも試してみたく、そうすると自分のフル装備をバイクに搭載することは不可能なので、急遽クルマで向かう事にした。20時過ぎに出発。今日は環八の流れも良く計算通りの所要時間で関越を順調に北上する。翌朝は青森から帰ってくる9078レを撮影北限と思われる村上付近で撮影の後、高速で追っかけ、帯織〜見附の防雪林バック2発キメるという作戦だ。かつてないほどあり得ないくらいの巡航速度で新潟市内を通過したのは日付が変わる頃。眠くなってきたので日東道の豊栄SAで仮眠を取ることにした。

 翌朝、いつものように寝坊してしまい5時に目が覚めた。何日か前の目撃情報では村上通過は6時頃と記載されており、ここ豊栄から50km以上もある目的地、村上までの距離を考えると、間に合う確率は半々くらいだ。取り敢えず微妙なところだがひとまず先を急ぐ。ここからは日本海東北道は対面通行の一車線のため、チンタラ走る車に遭遇してしまう事を懸念していたが、早朝という事もあって独走状態。しかしギリギリであるという事は依然変わりなく、心配は尽きなかった。しかし運転しながら距離とスピードから到達時刻を計算すると、やはりかなり厳しい。陽が昇っているはずの東の空も雲に覆われており、まだ薄暗い。結論、村上はやめて次のインターで高速を降り、少しでも光線があるようになるべく遅い時間に撮影できるよう近場で場所を決めることにし、豊栄からわずか10km走った中条インターから一般道に降り、すぐ近くの跨線橋に向かって走った。クルマを橋上に停め下を見下ろすと、バックの街並みが少々煩く感じ場所移動。スッキリと線路を見通すことが出来る荒川の橋梁のたもとで一発目を迎えることにした。




薄暗い空模様。結構カッツいが満コキの編成美をゲット。
2011.10/13  羽越本線  平林〜坂町  EOS5D  100-400mm

 さて追撃だ。すぐに荒川胎内ICから高速に乗り、今来た道を引き返し新潟市内を通過。90km先の中之島見附ICまで一気に走った。なるべく距離を稼いで先行していけば余裕でスタンバイもできるだろう。ちょうど9078レ終着の南長岡直前のこの区間には背景もきれいな防雪林バックの撮影地がある。一般道を数km走り現場到着。するとそこには平日にも関わらず20名ほどの先客が一塊となって銀釜を今か遅しと待っていた。入れる余地はもうない。こんなにも銀釜が人気があるとは思っていなかった。自分はその一団から少し離れたところで望遠で架線柱抜きを狙いセッティング。正確な通過時刻は分からないが遅くとも30分以内にターゲットはやって来る。気が付けば少し明るさも回復してきて薄日も差しているので、ここはキッチリ押さえたいと思い、安全安心の2丁切りの態勢を取った。




いきなりやって来たのは今夏湘南色に戻った115系L6編成。思わぬサプライズだった。
2011.10/13  信越本線  帯織〜見附  EOS5D  100-400mm



8:24  9078レ通過。そう言えば銀釜は初めてお目にかかったかもしれない。
2011.10/13  信越本線  帯織〜見附  EOS5D  100-400mm

  うす曇りだったものの無事通過を収めることが出来て一安心。これから6時間以上午後の出発まで待たなければならないので、じっくりと撮影地を探すことができそうだ。その前にもうすぐ通過する「北越2号」も待ってみよう。昨日は同列車に国鉄色K編成が充てられているのでもしかして?っていう期待で撤収を一時中断してみた。




6両なので画角をちょい変えて・・・やって来たのは3000番台だった。
2011.10/13  信越本線  帯織〜見附  EOS5D  100-400mm

 本日は485−3000番台だったが、ついにこのリニューアル編成も廃車が始まっているようなので、いい記録にはなったと思う。ほこりっぽい撮影地を後にして長岡市内に向かう。次のターゲットである夕方の南長岡発9077レは日没間際の発車なのでなるべく始発に近いところで撮影したいと考え、南長岡〜長岡のどこかで撮影しようと出発前計画をしていたのだが、予想外に市街のど真ん中であるのに加え、線路北側に新幹線の高架橋がこれでもかっと威圧しており、満足いく作品は作れなさそうだ。夜行列車のバルブスポットとして有名な殿町踏切も確認してみたが、編成写真を撮るならまだしも、夕刻を北に急ぐ臨時貨物列車の緊迫感は全く持って期待できなさそうだ。市内を横切る信越本線。大小様々な踏切が存在し、しらみ潰しに全て立ち寄ってみるもやはりどうしても新幹線の高架が背後に圧迫する。もし夕方晴れてしまったら逆光になることは確実。まー仕方ないか・・と諦め、ひとまず腹が減って来たので先程見つけておいた国道のバイパス沿いのラーメン屋でスタミナラーメンを食した後、その店の駐車場で2時間ほど昼寝をした。
 やがて、一応目覚ましもかけておいたが、車内に差し込む太陽の熱気で目が覚めた。天気予報では夕方は曇りとのことだったが、西の空を見渡すと雲ひとつない秋晴れの陽気で太陽が燦々と輝きをオレンジ色に変化させてきた。もしや、これは・・・!? 日没にはきわどい時間になってしまうが、少し郊外に出て運良く西の空が曇らないとしたら、夕陽色に輝くトワイライトなEF81303が狙えるかもしれない。まして今日はギラギラに輝くステンボディの銀釜である。強烈なギラリを見せつけながら走る機関車の画を想像してしまった。こうなったらもう長岡市街で逆光を望遠でブチ抜いている場合じゃない。すぐに郊外に向かって走り始めた。9077レ出発は16時半頃。携帯サイトで今日の暦を調べると本日の新潟中越地方の日の入りは17:10。ここまで来てしまえば西側は海に向かって開けている平野なので、日の入りの時間直前まで太陽は姿を見せているはずだ。ラーメン屋から少し走り長岡市中心部から最も近く開けた場所に来た。ただただ広い田んぼの中の砂利道にある小さな踏切。その名も「学校踏切」。近くに学校はおろか建物すらない学校踏切。長岡駅からおよそ7kmほどの距離であるが、ここまで来るとかなり周囲は開けてきた。信越本線に並走していた新幹線の高架橋もここから数百mくらいに離れてはいるが、ほぼ水平の太陽光線で被写体を捉えなくてはいけない日没間際の限界のタイミングでは、その遠く離れた高架橋さえも日照をさえぎってしまいそうだ。16時40分。もう9077レは南長岡を出発したであろうか。夕陽は本日最高の彩色で踏切一帯を照らす。今来てくれたら・・・。そう願えば願うほど目当の銀釜はやって来ない。17時ちょうど。ついに太陽が新幹線の高架橋に隠れてしまった。頻繁に、セットしておいた2台のカメラの露出を変えてゆくが不安になって来た。日の入りの17時10分を過ぎると急激に気温が低下し、大気が夜のそれになってきた。あと20分待って来なかったら撤収しよう。焦るようにチェーンスモークを繰り返していたが、ついに広角でセットしておいたメイン機では列車を止め写すことが出来ないと判断し、三脚から取り外し流し撮りの練習素振りを開始。今来てくれたらかろうじて西の空に残っている宵の赤みをボディに反射させることができるかも知れない。あぁ〜でもあと3分で限界だろう。諦めかけたその時、ついに踏切が反応するより先に遥か遠くの線路の向こうから2灯の前照灯が近付いてきた。115か? 81か? どっちだ!?




17:25  サブの望遠固定機ではすでに限界だった。
2011.10/13  信越本線  北長岡〜押切  EOSkissX3  55-250mm



こちらはメイン機。ギラリとまではいかなかったけど茜色がボディに写り込んで美しかった。ステンレスならではだ。
2011.10/13  信越本線  北長岡〜押切  EOS5D  24-105mm