ロクサンが本線に登場!
 

2011.2/21


 EF63が再び本線に登場! そんな知らせを聞いた時、その内容がすぐには飲み込めなかった。10秒ほどして、事の重大性に気付いた。横軽廃止から13年。峠越えの補機という特殊性から路線廃止により形式消滅。横川機関区跡地に設けられた鉄道文化むらの体験運転用として数両が動態保存も兼ねて存在するのみ。当然車籍も抜かれてるので本線に出ることは出来ず、単に遊園地内の遊戯施設として閉じ込めらているのだが、その伝説の機関車が検査のため高崎に配給されるというのである。いい意味で世も末だ。恐らく鉄道文化むらが開設されてから1度も施設外へ出ていないはず。となれば10年以上の時を経てEF63が本線を走行することになる。一大事だ。出動せねば!!!

 偶然にもその日は仕事は休みだった。何か因縁めいたものを感じざるを得ない。横川出発時刻は昼過ぎだということだが、文化むらからの搬出作業も見てみたい。搬出は横川駅旧3番線、現在は駐車場になっている敷地に文化むら搬入出用の線路が残されている。多分あそこを使うのだろう。その搬出作業を見てみたいという一心で早朝現地入りすることにし、前日夜、自宅を出発する。順調に都内を流していると、今日同行の予定のK1トップ氏から緊急入電。内容はというと本日、急遽代走で入ったボンネット「はくたか」がそのまま運用を回り続け、最終「はくたか24号」に入ってしまったとのこと。昼間の「はくたか」代走は出発前にネットで知っていたが、「24号」は福井行き。通常なら今夜はそのまま福井で滞泊し、翌朝「5号」となって越後湯沢を目指す。つまりこのまま行けば明日再び「ボンたか」が登場する可能性が高いようだ。10年ぶりのEF63、と、今季で最後になりそうなボンネット「はくたか」。どちらも決して手放したくないネタだが、掛け持ちは無理な時間設定だ。神はなんて意地が悪いんだろう。散々悩みながら埼玉県内でK1トップ氏と合流。すぐに作戦会議した結果、今夜は上信越道と関越が分岐する最後のサービスエリア、上里SAで仮眠して翌朝、「はくたか5号」にボンネットが「入った」という情報、もしくは情報が無い場合、5号が石打付近にやって来る時間に間に合うように上里SA出発で関越方面へ。ボンネットが「入らなかった」という情報なら横川直行。もし前者でボンたか登場だったり、情報が無いままだった場合、石打付近で撮影後、すぐに関越〜上信越で戻ればEF63も一応撮影出来るが、文化むら搬出は見られない。また関越を北上中にボンネットでは「なかった」場合は次のインターですぐにUターン・・。 これが一番ベストだろう。1時間ほど走り上里SAへピットイン。夜食を喰ってから束の間の仮眠を取ることになった。

 翌朝、「ボンたか」ではないとの目撃情報が上がり、これで安心して横川に向かうことが出来る。9時頃横川駅裏手の文化むら駐車場に到着。やはり数十人のファンの皆さまがすでに集結している。気になる63の搬出作業は!? どうやら終了してしまったばかりのようで駅構内に引きだされたEF6311がポツンと佇んでいるのが見え、搬出時に貼られていた規制線も解除され始めているところで、まさに一瞬の差だったようだ。







ついに檻の中から外界にでたEF63電気機関車。64よりも精悍な顔立ちだ。
2011.2/21  信越本線  横川  EOS5D 100-400mm


 あぁーロクサンよ。久々じゃないか。こうして本線に出るロクサンを見るのは碓氷峠に通いまくって、クソ写真を大量生産していた1997年の夏以来ではないか。急勾配を重連で特急電車を押し上げて行くあの迫力、峠に響いた盛大なブロアー音。当時の姿とは比べるべくもないが、こうして檻の中からシャバに出てきたロクサンは、十余年経っても存在感は格別だ。感慨にふけるのはそのくらいにして、腹が減って来たのでおぎのやのドライブインで朝飯を喰うことにした。そういえば時間は63を牽引するDD51の単機がもうすぐやって来る時間だったが、今は目の前の山菜ソバの方が重要で夢中でかき込んでいると、背後の線路を赤いDD51が静かに通過して行くのが見えた。特に急ぐでもなく食べ終りすぐに駅へ。DD51はまだ連結されていないようで、向かい合わせになったEF63とDD51が何やら密談しているかのように見え、しばらく動きがあるまで様子を見守った。




10:41 連結!9780レが仕立てられた。


 DDが繋がれると係員の皆さまは昼食タイム。我々は飯も喰ったばかりなので昼寝タイムに入る。っと、その前に撮影場所を決めておかなければならない。今回はDDではなくて後ろにぶら下がったEF63がメインなので、同地点で前討ち、後討ちが両方出来る場所が必要だ。車を高崎方に走らせる。まだ出発まで1時間以上時間があるのに、沿線のそこかしこで多くの皆さまがすでに完全武装モードでスタンバイ中。高崎方の63を狙っているのは少数なようだ。西松井田、松井田、磯部と進み何箇所か頭に記憶する。結局決めたのは前討ちでは妙義山バック、後討ちでは編成も撮れる名もなき跨線橋だった。ここでは先客はゼロ名。早めに場所取りをしておかないと、通過直前にパニるだろうと予測してすぐに三脚を広げ待機した。




湘南色も通ります。まず練習。結構カッ飛ばしてくる区間だが、配給列車はいかに?
2011.2/21  信越本線  松井田〜磯部  EOS5D 24-105mm



9780レ。だんだん妙義山が霞んできてしまった。63が本線を走行しているという事実が信じられない!
2011.2/21  信越本線  松井田〜磯部  EOS5D 24-105mm



ケツ討ち。台検のついでに1500Vに昇圧して自走で12系でも牽いてみませんか?
2011.2/21  信越本線  松井田〜磯部  EOS5D 24-105mm



2011.3/10


 先日、横川駅での機関車引き出しは立ち会うことが出来なかったものの、EF63の貴重な本線走行を捉える事が出来た。あれから3週間。今度は前回入場したEF6311が整備を終えて横川に返却回送されるという情報が発表された。しかも同じ日、今度はもう一両のEF6312が高崎に入場回送されるというオマケ付きだ。それを知ったのはもうシフト調整出来ない時期だったので半分諦めかけていたが、偶然にも公休が重なったため迷わず出撃することを決めた。前回出来なかった鉄道文化むらからの引きだしも拝見したいので、前日出発し横川周辺で朝から張り込み開始の予定だ。3月も中盤にさしかかる頃なので、気温もそれなりに暖かいだろうと踏み、バイクでの遠征を決め、少しづつ来たるべき単車シーズンに向けて整備をしていたのが、前日、天気予報では典型的なまでの西高東低の冬型の気圧配置になることになっており、群馬の予想最低気温は氷点下1℃。また数日前から南関東では花粉の飛散も激しくなってきており、数キロ原チャリ通勤もシビれるほどに辛かったので、軟弱にクルマで行くことに決めた。

 前日20時頃出発。まだまだ時間的にも余裕があったので首都高を通り大宮から国道17号をひたすら北上。深夜のため無料高速道路と化した国道17号の流れは速く、関越経由+30分くらいの所要時間で横川に到着してしまった。途中の広域情報板では「関越道 下牧〜長岡JCTがチェーン規制」とのことで、上越国境を越えてすぐそこまで雪は迫って来ているようで、ほんの一瞬、このまま新潟に行って雪中走行を楽しみすぐに戻ってこようかとあらぬ考えが脳裏を過ぎったが、明日の早朝のことも考えてハンドルを左に切った。碓氷バイパス脇の駐車帯にクルマを停め寝支度をしていると、碓氷峠を下って来る大型車がどれもみんな尋常ではなく雪にまみれていることに気がついた。日本海側より格段に降雪の少ない軽井沢でこの感じ。再び心揺らいでしまったが、葛藤の末、明日のロクサン一本に絞ることにした。

 翌朝8時ころ起床して横川駅を目指す。高崎からの到着時刻は10:34とあるので、このくらいに行けば文化むらからの出場に出会えるかもしれない。いま現場はどうなっているだろうと高ぶりながら駐車場に。するとそこにはすでに50名以上のギャラリーが、文化むらの搬入線路のゲートに熱い視線を送っていたのだった。高崎方の側線をみるもロクサンはまだ出てきていないようで、前回のような場内の交通規制も行われていない。少し勇み足だったようだ。まだテツ密度もそれほど高くないので余裕でゲート前の最前列の位置に三脚をセット。動きがあるのを待った。しばらく経った9:30。文化むら職員が数名出てきていよいよ規制線を張り始める。と同時に普段は「峠の湯」へのトロッコ列車用のDB20シェルパ君のエンジンに火が入った。少しの間モクモクと煙を吐きながら暖気していたシェルパ君だが、気が済んだのか突然エンジンストップ。運転士も降りてしまった。またホームセンターの袋からロープを出して規制線を作っていた係員も中途半端に放っぽらかしてどこかに引っ込んでしまった。すでに10時ジャスト。到着まで30分ほどになってこの状態のなので、もしや到着した11号機を一旦文化むら内に取り入れて、その後に12号機を引きだすのだろう。だとすれば高崎からやって来る9781レを押さえとかなければならない。すぐにクルマに乗り込み国道へ走りだし、最初のオーバークロスポイントに到着。冷え込んでいるものの穏やかな空の下、間もなくやって来る9781レを迎え撃つ準備を始めた。先客は一人だけ。ここは横川方を望むポイントのため狙うは送り込みの63後追い。後追いは人気がないのか、途中待機していたファンの皆さまは高崎方を狙っていた。




何と!?EF64先頭の3重連でやって来た9781レ。
2011.3/10  信越本線  横川〜西松井田  EOS5D 24-105mm


 前回と同じくDD51先頭の2両でやって来るものと思っていたため、本務機の64が林に隠れてしまった。まぁそんなことはどうでもいいのですぐに追跡開始。横川の入庫、および出庫が見たいのだ。戻ってきた横川駅裏の駐車場は、さきほどに増して多くのギャラリー。人気の高さをうかがえた。すでに切り離し作業が始まっているようだが、それより迎えに出てくるシェルパ君が見たい。ギャラリーの間の少しの隙間を見つけて文化むら方を注視した。




11:12 徒歩以下の速度でロクサンを迎えに出てきたシェルパ君。




11:21 そして検査を終えたEF6311を施設内にエスコート。


その後の11:40。次に高崎に整備に向かうEF6312の引き出し作業は場所取りに失敗したため撮影出来ず。DD51への組成作業を見守った。




11:51 構外に引きだされてDD51へとバトンタッチ。12号機も美しい姿になって戻って来て欲しい。




12:02 出発待機のため本線に出て、駅構内へと転線される12号機。


 直接文化むらから本線へ出ることは保安の関係上出来ないため、一旦横川駅出発ホームに押し込まれ、構内外れに待機していたEF64が先頭に連結されて組成は完了した。発車まで1時間ほどあるので先回りして場所探しでもしようとクルマに戻るその時、はるか頭上のザンゲ岩に動く人影を発見した。いるだろうとは思っていたがやはりいた。ザンゲ岩と言えば横軽廃止の時、静かなブームになった超俯瞰ポイントだ。横川駅進入はもちろん、機関区全景、望めば丸山変電所当たりまで望てしまうというスーパー俯瞰である。自分は登山1時間に戦意を失い今まで一度も登ったことは無いのだがいつか制覇してやりたいお立ち台の一つでもある。


いるいる!サンゲ岩でザンゲしている大人たちが!!



ビデオをテレ側MAXにしてみると・・・。

 国道のコンビニで昼飯を買った後、返しの9780レの撮影地を探しに入る。前回の訪問時、梅の花がきれいだった上下分離ポイントを選び待機。暖かな日差しに照られながら贅沢な時間を満喫した。釣好きの人もそうだろう。来るべき至福の時を静かに待つという行為を楽しむこの贅沢。念入りにセッティングをしてその時を待った。




2011,3/10  信越本線  横川〜西松井田  EOS5D 24-105mm


 本日のタスクは終了した。しかし時間はまだ14時前である。なんだかまだ物足りない気分がして他に何かネタはなかろうかと持参してきたダイヤ情報を見ると、偶然にも本日、新津からの甲種輸送があるではないか!ちょうど1時間後に高崎を出発するようで、飛ばせば神保原新町の神流川鉄橋にどうにか間に合うようだ。すぐに出発。松井田妙義から高速に乗り藤岡ICで降りて、何回か来たことのある鉄橋たもとに余裕で到着。すでにこちらでも20名以上の怪しい面々が待機していた。人の事も言えないので自分も怪しい感じで線路際にセッティング。400mm限界に伸ばして絞りはF6.3。レリーズを付けて落ち着いた頃に周りを見回すと、さっきまで横川界隈で見かけたクルマが何台も路肩に止まっていた。皆さん好きねぇ〜。到着組がひと段落つく頃、配9772レが高速で川を渡って来た。先頭で風を切る機関車は!? おやっ、赤い!! 64で来るものとばかり思っていた新津甲種は、どうやら最近はEF81が担当するようであった。




京葉線用E233系の配給列車。落成! 目出度い! 幸多かれ!!
2011.3/10  高崎線  新町〜神保原  EOS5D 100-400mm


 こんな感じでユルユルし、充分楽しめた休日になった。天候にも恵まれ多くの人がそう思っていたであろう。しかしその翌日、東北地方を中心にマグニチュード9という前代未聞の大地震が発生。未曾有の惨事となった。東北沿岸の鉄道は壊滅。人々の生活、社会経済にも大打撃を与えた。この日、神流川橋梁にいた撮りテツ、横川に集結していたギャラリー、誰がそんなことを予測できたであろうか?