2011年朝練。「あけぼの」北限に挑む。

2011.6/29

 2011年。早朝の高崎線を上る夜行列車は「北陸」が消えて「能登」も臨時列車に成り下がってしまった今、毎日来るものと言えば唯一青森からの「あけぼの」のみになってしまった。かつて鉄橋で有名な神保原新町、岡部本庄などで挑戦したことはあったが、そう言えば北限ではどこまで行って撮れるんだろうか?という疑問も出てきた。陽は当たらなくていい。昇るか否かのわずかな太陽光線でギリギリ走行写真を撮影できるには、どこまで遡ることが出来るんだろうと考えた。夏至の前橋の日の出時刻は4:26。出撃を決めていた6月29日の日の出時刻は夏至より2分遅く4:28。「あけぼの」はこの時刻なら上越線沼田を通過する頃だ。沼田付近では陽が昇る東方には赤城山、皇海山などの名峰がそびえ立ち、撮影が出来るほどの光量は望むべくもないだろう。空の白みを光源に頼ったとしても走行を止められるほどの露出は得られないと予測。もう少し南下して有名な大正橋で勝負を賭けることにした。サイド気味に狙う大正橋では流されないよう当然シャッター速度を上げたいのだが、微かな光を頼りにして撮る走行写真は幾分厳しいかに思えた。

 上記の理由から先日購入したEOSkissX3と主力機であるEOS5Dの2丁切りで保険を掛けるつもりでいたが、2台の一眼レフ、3本のレンズ、ビデオカメラ、そして三脚をバイクのトランクに入れることは不可能ということが出発直前に判明した。バイクで安全に輸送するにはカメラバックに入れる必要があるが、2つ所有しているカメラバックのうちバイク用の小さいほうでは2台の一眼は収められない。というわけでそれだけの理由で今回はクルマで上州の地に向かうことになった。

 前夜、1時前に出発。順調に走行して渋川手前の駒寄PAに到着した時にふと思った。大正橋なら後日、日を改めて日の出が少し遅くなった頃でもイケるんではないかい??ならば当初の目的通り走行写真の北限を目指してみよう、と思った。すぐに走り出し当初の目的地だった渋川伊香保ICを通過。次の赤城ICまで走った。目指すは津久田の鉄橋だ。すぐに到着。まだ周辺は闇に包まれている。すると駅前に停まっていた県外ナンバーのワゴンの車内に動く人影があった。やはりいた。ここで「あけぼの」を狙うテツだろう。場所取りも心配になったので、真っ暗闇の線路端の犬走りを歩き手探りで鉄橋のたもとに出た。まだ通過30分前。当然一番乗りだったが、空が少しずつ白んでいくにつれてどこからともなく自分と同様、北限の「あけぼの」撮影に挑む同志が次第に集結し、通過直前には6名ほどになった。露出はISO1600で解放にして1/15秒くらい。何`/hで走って来るかは知らないが、このくらいのシャッター速度だと真正面から迎え撃ってもブレてしまうのは必至だったので、さらに明るくなることを期待して5Dは望遠、迷った挙句もう一台のkissデジはいつも5Dの常用としている24-105mmで流すことにした。すると通過10分前。鉄橋の向こうの遠方から一条のヘッドライトが見えた。なんだか来るの早くね?と一同不安に思っていると、非常にゆっくりとしたスピードでその光はこちらに近付いてきた。何だろう。やがてその光の正体は実は下り線を逆走しているようで、鉄橋を渡り始めると軌陸車が架線の点検をしながら向かってくるのが見えた。しかし我々の今いる立ち位置は、公式には立ち入り禁止区域。やべ、怒られると三脚を撤収し始める人も出始めた。頼む、スルーしてくれ・・・と祈ると願いが通じたのか我々の横を何事も無かったかのように通過していった。






 軌陸車が通り過ぎ、再び現場は通過前の心地よい緊張感に包まれた。気付けばあれだけ暗かった露出も1/200秒で切り込める状態になっている。三脚の5Dに取り付けたレリーズを左手に握りながら手持ちのkissデジをそのまま流すために何度も何度も素振りを行う。やがてエアー流しも成熟の域に達した頃、ようやく遠方から2つのヘッドライトが見えた。轟音とともにロクヨンが鉄橋を渡って来る。うっ!結構飛ばしてやがる。さぁ、行くぜ!振るぜ!置きピンをしておいたところのだいぶ前からリモコンレリーズを押し込み固定機の連写開始。一方手持ちはファインダーに全神経を集中させ、同時に列車に合わせてカメラを水平方向に振った。




ISO1600  F5  1/200秒  WBオート  一応止まってくれたが1600で写真撮るものじゃないんね。ザラザラだった。
2011.6/29  上越線  岩本〜津久田   EOS5D  100-400mm


ISO400   F4.5  1/40秒。なんとか流し成功。
2011.6/29  上越線  岩本〜津久田   EOSkissX3  24-105mm