帰って来た3本ストライプの185系

2011.7/28

 この7月は、休みの日は天気が悪かったり暑すぎたり、面倒臭かったりで、全く撮影目的の遠征には行けなかった。いや、むしろ行かなかった。なんか、こー無理してでも行くぞっていう熱くたぎる物が湧いてこない。中旬に首都圏をかすめた台風の後、35℃を超える猛暑日は影をひそめたが、どういう訳か休日に動くのが億劫になり、そんな日は扇風機に体がダルくなるまでガンガン当たりながら一日中youtubeを見たり、夕方原チャリに乗って近所に買い物行くだけの日が続いた。

鬱・・・

 いやいや、生きる希望は捨てていない。仕事はマジメにこなしているつもりだ。テツに関して鬱なだけだ。休日ニート・・。逆でなくて良かった、と思いながらある日、陰鬱な部屋でネットサーフィンをしていると、田町の185系の1本=A8編成が、登場時の緑ストライプにリバイバルされたということを知った。国鉄末期、財政難やら何やらの大人の事情で、まさに陰鬱としていた日本国有鉄道。その暗黒時代を払拭するかのようにデビューした鮮烈な緑の斜めストライプは、国鉄の常識を見事に覆し、爽やかな風となって東海道線沿線住民の目を楽しませた。子供の頃、なにかの雑誌で見た真っ青な相模灘をバックに鉄橋を駆け抜ける185系が急に瞼の裏によみがえった! 夏である! 空はこんなに晴れている!! 早速185の運用や撮影地を調べる。どうやらあの海バックは伊豆急線内の富戸〜川奈にあるらしく、第一候補地として地図に目印を付けておいたが、今はもう夕方だったので撮影は明日にすることにした。 運用はというとA8編成は今夜国府津でマルヨし、翌朝、一旦根府川まで引き上げて折り返し小田原から「湘南ライナー10号」となって品川へ。そして東京10時発の「踊り子107号」で伊豆急下田に向かい、そのまま翌朝まで滞泊といういささか軽目の運用の日になりそうだ。まずは朝の根府川引き上げで2発行けそうだ。

 翌朝。目が覚めるとすぐに雨の降る音に気付いた。昨日の予報では降水確率20%だったため全く天候のことは気にしていなかったので、早くも作戦変更か。でもまぁ本命の「踊り子」までは時間もあるし勢いで出発するのも大事だと思う。カッパを着こんで国道1号、西湘バイパスを経て1時間ほどで米神に到着。雨は上がっていたがモヤモヤっとした湿度の高い現場だった。ここは住宅地の線路際で、早朝から三脚を延ばしていても、やはり有名撮影地だけあって住民の方は馴れたもんで、犬を連れたご婦人方が「おはようございます」と声をかけてくれる。こちらは起きてすぐの出発だったので、髪ボサボサのオレはキモい感じを極力捨てて「あ、おはようございます」と努めて爽やかに挨拶を返す。そんな中さっきから本番前の普電が何本か通ってくれて編成長を確認することができるのだが、ここではどうやらSカーブに阻まれてケツは切れてしまうようだ。それならば編成は止めてどうせ雨上がりだし露出を大幅にアンダー、絞りは解放。被写界深度をF5.6なりに一番浅くして間もなくやって来る185系A8編成、回2229Mを待った。 



国府津で目覚めた185は小田原からの客扱いのため一旦根府川に引き上げる。
2011.7/28  東海道本線  早川〜根府川   EOS5D  100-400mm


 ツラはジャストで決まったが幕が「回送」で日常感に欠ける。でもまあ後ろもボケてくれたので意外とカッコいい。撮影が終わると相変わらずキモい感じは押し殺したまま心の中でニヤニヤし、すぐに折り返し帰って来る回3230Mを狙うため同じ地点から反対方向にレンズを向けた。こちらもさっきと同様ケツは切れる。ここは200mmで画角を決めるがこの焦点距離になると背景ボケが中途半端になるのが難点だった。こんな時のために70-200mmF2.8が最近本当に欲しい。減価償却する前に撮影対象が無くなってしまいそうだがそれでも欲しい。危ない。ふと衝動に駆られたら・・・と思うと手持ちの装備で完璧に決めて、その危険な物欲を滅却したい。そう思うと返しの撮影準備もいつになく力がこもった。




こちらもやはり「回送」幕。枯れてドス黒くなったアジサイも毒を添える。
2011.7/28  東海道本線  根府川〜早川   EOS5D  100-400mm


 さて米神はこれで終了である。上って行ったA8は東京10:00発の「踊り子107号」で下田に向かう。しかしこの空模様。紺碧ブルーバックはまたの機会にすることにして帰りがてらどこかでやってみようと思う。そういや次の107号は修善寺行き5両がぶら下がっていない単独下田行き10両だ。完璧なる編成美と「踊り子」マークでカッチリモノにしなければならない。滅多に撮らない下り東海道、しかも10両がバッツリ入るとこを数少ないポイントから脳内検索してみると、いままでやったことのない戸塚駅遠望歩道橋からのアウトにしてみようと思った。超地元であるが故、狙う機会の少なかった撮影地。写真は見たことあるがいかばかりだろうか? 時間もたっぷりとあるので西湘バイパスの通行料¥200をケチって国道1号線で東進。途中の吉牛で¥350の納豆朝定食を喰い、戸塚の歩道橋に到着したのは通過10分前だった。初めて来た歩道橋はというと、めちゃくちゃ狭い。幅1mくらいだと思われ三脚を広げると通行に支障をきたしてしまいそうだ。また左右の防音壁も高く複数のテツがいる場合には階段の上下で干渉しないように構える必要がありそうだ。時間も無いので急いでセッティング。カメラは手持ち、ビデオはクリップ三脚が咥えられそうな場所がなかったので、三脚の脚を極限に狭くしてセットし遠方に狙いを定めた。




2011.7/28  東海道本線  戸塚〜大船   EOS5D  100-400mm


 と、こんな感じで本日は終了した。アバンギャルドな塗色を纏い伊豆のギラギラした太陽光を浴びて走る185のイメージには程遠かった。当然再履修決定項目だ。やっぱり185系は強烈な夏の日差しと碧く広がる太平洋がよく似合うと思う。今回は練習練習。押さえるものは押さえたつもりなので、次回、新たなフィールドに飛び出す!!(予定)



2011.8/3


 前回のあまりパッとしない185撮影から数日経ち、世の中は8月になった。海に行く行楽特急、185系はやはり夏の強烈な太陽で映えるビビッドな色彩の情景を行くのがよく似合う。そんなわけで8月に入って最初の休日、A8の運用を追うと、正午に東京を出発する「踊り子115号」に入るという事が分かった。が、予報はやはり曇り。7月末に通り過ぎた台風の後から、今年の気候は全く夏らしくなくなっていた。だったら少し遠征するのは止めておいて、近場で1発やって、終わったら半日有効に使いたい。というわけで向かったのは横浜〜戸塚の間にある清水谷戸トンネルだ。東海道線横浜市内唯一の分水嶺をトンネルで越えるポイント。横浜市内にありながら緑の中を行く下り東海道線を捕らえることが出来る貴重な撮影地で、かなり古くから知られているスポットだ。並行する国道1号は「権太坂」でここを切通しで越えており、相模国と武蔵国を隔てた国境でもあった。

 ま、そんなことはどうでもよく、「踊り子115号」が東京駅を発車する同じ頃自宅を出発し、現地到着。平日のこの有名撮影地にはすでに先客2名様が準備されていた。線路端のフェンスが少し高く三脚を立てられないので望遠手持ち。ビデオをクリップ三脚に固定してトンネルから現われるであろうA8を待った。




こんなもんでしょう・・・。
2011.8/3  東海道本線  横浜〜戸塚   EOS5D  100-400mm