春の上越線は国鉄色が百花繚乱。 D51試運転に遭遇、そして・・・!?

2010.4/14

 歴戦の漢、K1トップ氏と休みが重なり久しぶりに遠征することになった。前日、「明日、仕事休み?」 「うん、磐西で583?」との簡単なやり取りのみで磐越西線に向かうこととなった。仕事が終わって埼玉某所の彼の自宅に向かう。挨拶もそこそこに機材を車に積み込んでいざ出発。天候は思わしくないものの明日あの地に立てばゴッパーサンに逢えるというだけで勢い出撃を決めたのだが、この段階で考えると当たり前だが会津の地は遠い。加えて明日の会津地方の天候は曇りときたもんだ。終夜運転で飛ばしてもここから4時間コースだが、2人にその長距離運行に耐えるだけの気力と体力は、すでに出発時点で微塵もなかった。東北道のインターに向かいながら話合った。ゴッパーサン、撮りたい、しかし遠い、そして眠い、ムリ・・・。出発して30分も経たないうち作戦変更することになった。国道沿いのコンビニに一旦停車。本気で行き先を考えるのだが妙案が思い浮かばない。氏曰く、前日家族サービスで行った横川の桜が美しかったと言う。しかもそんな好機にD51の試運転が行われたのだが家族の手前、コンデジで一発流しただけで終わったそうで、そのリベンジを果たしたいのか微妙なご様子。明日も試運転があるかもわからないので、悪天候必至の583か、来るか来ないか分からない春爛漫のD51の2者択一を迫られることとなった。そんな時は民主的なジャンケンで決めよう。両者五分五分の判断なので私が勝ったら磐西583、K1トップ氏が勝ったら群馬ということで最初はグーで一発勝負。結果オレが勝ち583に決定したが、やはりお互いのテンションはいまいち上がらない。話合った挙句、結局高崎に向かうことに決定した。試運転が出るか出ないのかも分からない状態で、さらに横川か水上かも不明。なら高崎機関区に朝から張り込んで動きがあった時点で先回りしよう、ということになった。

 東北道をやめて国道17号を北上。かなり流れが速いので1時間ほどで群馬県内に到着。試運転があれば9時過ぎ高崎発なので、今からでも5時間ほど仮眠できる。徹夜になる583とは大違いだ。高崎にほど近い藤岡の道の駅で仮眠。朝を待つことにした。


 翌朝、よく晴れている。桜も北関東では満開のようだし、あとは試運転列車が走ってくれさえすれば言うことは無い。まずは高崎機関区に赴き、構内の踏切を渡り区内の状況確認。いきなりDD51が3両我々を迎えてくれた。



DD51勢揃い! そういえば842の姿がない。お出かけ中なのか?
2010,4/14   高崎線  高崎機関区   EOS5D  24-105mm


 構内を横断する踏切を渡り、2人怪しい感じで機関区周辺を探索する。するとよく耳を澄ますと、どのDD51だかのアイドリング音が聞こえる。DD51牽引で客車なら信越線で横川往復か、ごく稀に水上往復もあり得る。さぁどれが動き出すのか!?



朝イチでは閉まっていた機関庫のシャッターが開き842が顔を出した。でも今日は検査中のようだ。
2010,4/14   高崎線  高崎機関区   EOS5D  24-105mm


 しばらく機関区周辺で様子を窺っていたが、今日はどうも動きが無いようだ。諦めて車に戻ろうとし乗り込もうとした、その瞬間! 「ッポ!」と短笛が遠くに聞こえた。DDのではない。SLのそれに間違いない。すぐに構内踏切に戻るとD51498が12系1両を引いてゆっくり移動を開始しているではないか。これにエンジンをかけているDD51が連結されれば間違いなく信越線横川。そうでなければ上越線水上往復。どっちだろうか!? 駅構内はずれの客車溜りの他の12系をこれから繋げるのか、ゆっくりD51+12系は移動。しかしながらそのまま高崎駅に向かっているようだ。よし、本日は伴走車である12系1両を率いて水上往復だろう。時刻はまさに奥利根出発時間。そうと決まれば先回りをすべく、我々2人は市内を突っ切り関越道のインターに急ぐのであった。おそらく奥利根スジであるだろうから渋川の停車前後にいただけるはず。ならば渋川伊香保ICではなくて手前の駒寄PAのスマートICで降りて一発目を頂くことにしよう。線路沿いに桜の花はなかろうかと探索しながら北上を開始。しかしなかなか線路際に桜の木は無く、時間も押し迫ってきて焦りだした頃に、小さな川を渡るガーター脇の築堤に見事なソメイヨシノの群生を発見した。すでに何人かのテツが待機しており、今日の上越線試運転はほぼ確定であることが分かった。



まだまだ湘南色115系は健在。満開の桜を横目にモーター音が唸る。
2010,4/14   上越線  八木原〜群馬総社   EOS5D  100-400mm




ついに姿を現したD51498+オヤ12 1。
2010,4/14   上越線  八木原〜群馬総社   EOS5D  100-400mm


 自分自身、SLには全くと言っていいほど無関心で、どちらかというと国鉄色でもある12系のほうに目が行ってしまう。なので美しいブルーの12系も写し込めるよう少し引き気味でサイドを狙ってみた。プレビューで確認するとすぐに追従する。奥利根スジでは渋川停車はおよそ30分。先回りすれば渋敷カーブで確実に捕らえられそうな予感。国道17号に戻り大正橋を横目に利根川を渡り現着。付近には桜と菜の花が咲き乱れかなりアングルに迷ってしまう。おおよその構図を決めて通過時間を待つ。自分はSL相手だったので特にカッチリ構えるわけでもなく、列車が来たら適当に桜を入れて撮ろうと完全にナメていたのでヌクヌクと車の中で待機していたが、通過予定を10分経っても20分経っても列車はやって来ない。そういえば上りの普電もやって来ない。なんだかいつもの展開の予感・・・。すると遠目に見える鉄橋のたもとの特殊発光信号機の赤いランプがクルクル回り発報しているのが見えるではないか。携帯で運行情報を見ると、案の定「上越線高崎〜水上間は強風のため運転見合わせ中」。利根川を渡る鉄橋は特に渋川〜水上間に多数あるが、その中でも特に風の影響を受けそうなのは、ここ大正橋。目の前で発報している特殊信号機がまさにこの区間の運休を決定付けるものであろう。



怪しく回転する特殊発光信号機。風速計に連動しているようで発光したりしなかったりを繰り返していた。


 1時間ほど待っていたが抑止は解除されず、このままなら試運転列車の水上折り返しの時間も無くなることであろうから、列車はここ渋川で折り返すと思われる。すぐに渋川駅へ急行。到着するとまだ試運転列車は構内で待機していた。ここで高崎に帰るとすればD51はここで方転しなければならないので、おそらく高崎から何らかの機関車が救援にやって来るであろう。Pトップか、ロクマルか、それとも今朝整備を受けていたDD51842か。ともかくまだ動きはなさそうだったので国道に戻り、バイパス沿いの吉野家で牛丼弁当をテイクアウトし、再び渋川に戻って石炭の匂いをおかずにしながらそれを食した。



2010,4/14   上越線  渋川   EOS5D  24-105mm





 腹も満たされこの陽気。すぐに眠くなってきた。K1トップ氏がいるのをいいことに動きがあれば起してくれるだろうという甘えで、自分は車内で仮眠。車内に照らす太陽光線でいつの間にか汗だくになっており、不快で寝返りをうっているとK1トップ氏に「来たよ!」と起こされた。カメラを持って外に飛び出すと2つの前照灯が見える。どうやら救援はPトップことEF65501であった。







助けにやって来たEF65501。試運転打ち切り編成が組成された。
2010,4/14   上越線   渋川   EOS5D  24-105mm


 Pトップが連結されるとすぐに機関士が高崎方のエンドの運転席に乗り込み、すでに折り返しの出発態勢になっている。これはマズい。すぐに先行して撮影場所を決めなければならない。構内の編成写真を撮り終わると、2人車に乗り込み一目散で国道17号へ出て、カーナビを駆使し彷徨い始めた。ここから至近の撮影地と言えば、上越線、関越道のクロスポイント。午後にもなり西日が列車サイドをベッタリ照らしてくれるだろう。渋川を出発して10分。とにかく時間がないので道端に車を乗り捨て、線路際にダッシュすると遠く2つ目のライトが近付いているのが見える。望遠に付け替えているヒマなどない。夢中で目の前を通り過ぎる超重量級の編成にレンズを向けた。



慌てて撮ったもんだから原版は酷い有様だったので、シャープネス、露出を調整、トリミングした。RAWで撮っててよかった。
2010,4/14   上越線   渋川〜八木原   EOS5D  24-105mm


 そしてまた車に飛び乗り今度は高速のインターに直行。関越に乗って次の前橋インターで降り、有名な菜の花の群生ポイントへ。到着すると噂通り線路脇の荒れ地には一面の黄色い菜の花が狂おしく咲き乱れ、もうどこをどう撮ってもキマってしまいそう。目当ての返却列車はというと、おそらく上越線の運行が再開されたため、新前橋で普電でも退避しているのだろう。我々の他にも一人三脚を立てている方がいた。






2010,4/14   上越線   新前橋〜井野   EOS5D  24-105mm


 ひとまず撮影を終えて帰ることにする。2人ともついて出た言葉は「いや〜えがったえがった」 偶然試運転に遭遇したと思ったら、あらぬ展開になり、まさか501まで登場するとは思わなかった。そういやここ何年か上越線(群馬県側)にやって来ると必ずと言っていいほど、何かしらウマいネタにありつくことができている。ヤバい、楽しいぞ上越線!日本各地から国鉄色が墜ちている昨今、高崎は最後の砦を守って欲しいもんだ。と思いながらオレはついにダウン。K1トップ氏の操る車の助手席で、泡沫の浅い眠りで南下した。