代車でGO! 日本海バックの信越線で国鉄特急色を食す。


2010.8/19


 つい先日、新潟上沼垂に所属する485-T編成の白眉、T18編成が秋田の土崎工場から全検を受けて出場したとの一報が入った。気になる塗色はもちろん国鉄特急色!噂に聞くと綺麗に塗り直され、夏の穏やかな日本海をバックに疾走するその姿たるや、もはや神の領域に達しているという・・・。そんな御姿を想像してみよう。・・・・ヤバい。ヨダレ垂れそう。もう仕事中も上の空で、夢にまで鯨波が出てきた。とは少し大げさだったが、近いうちT18をヤッてやろうと企んでいた。

 もちろん狙うは晴天の日本海バック。大気の安定する9月になってしまうのではないかと思っていたが、そのチャンスは唐突にやって来た。T18が「くびき野」ループ運用に入りだしたのである。休みの前日、新潟上越地方の天気は晴れ時々雲。これなら午前中なら海の映えるピーカンで少なくとも一発は撮れるかもしれない。そうと決まれば出発だ。今日はバイクはやめてクルマだ。家車のfitが全検に出てしまっているため、急遽代車のNISSANの軽、PINOが今回の相棒だ。これなら高速もバイクと同料金だし、日帰り中距離にはもってこいだ。

 仕事から帰り午前0時出発。第三京浜〜環八といういつものルートを使って関越に入り、藤岡から上信越道へ入ると、いつものように睡魔が襲って来た。来やがったな・・・。今日はこのまま現地入りして8時まで仮眠が作戦だったが、それも束の間、碓氷峠を越えるまでもなく横川SAでダウンしてしまった。

 いつものように1時間ほど仮眠を取るつもりが起きると6時前。天気はというと、車の屋根を激しく叩く雨音で目が覚めるほどの天候だった。前日の運用からすると今日は、普通1328Mで新井。折り返しで「くびき野3号」と予想されるのだが、その1328Mには間に合わない時間だ。雨であるし、ターゲットに間に合わないとあっては北に向かう理由は何もなかった。このSA近くの峠の湯にでも行ってのんびり帰ってこよう、と少しホッとした気もしたが、まだT18の未練は捨てられないので、携帯で上越地方の天気予報を確認すると、なんと「快晴」とのこと。予報を信じて「くびき野」一本を日本海バックで勝負に出るしかない。そう思い立つと軽の660ccの非力なエンジンを爆裂させて碓氷峠を越えたのだった。上田付近に差し掛かると本当に太陽が顔をのぞかせた。エアコンを動かすとガクンとパワーダウンしてしまうので、窓を全開のままタバコをふかしながらブラックの缶コーヒーを片手にアクセルベタ踏み。いつの間にか間に合わないと思っていた「くびき野3号」の送り込みとなる1328Mに間に合ってしまうようだ。新井SAに車を停め地図を確認すると本当に撮れそうな気配が濃厚だ。ふと気付くとここ新井SAはETC専用のスマートICがあるようで、ここで降りれば撮影地はとても近い。すぐさま駐車場脇の出口へ。国道に出て信越線を跨ぐ陸橋を渡り、順光側、片持ちポールの架線柱反対側のポイントを探し、列車を待った。




とにかく綺麗だったT18編成。1328M。毎朝こんな列車に乗って通勤する人が羨ましい。
2010,8/19  信越本線  北新井〜脇野田  EOS5D  100-400mm


 今日はいい日になりそうだ。天気も午前中いっぱいは持ってくれそうな予感。機材を撤収して海バックのポイントを目指した。急ぐほどでもなかったので一般道で直江津に出て、国道8号を東進。途中コンビニで朝飯を買って柿崎〜米山の直線にやって来た。正面にはかろうじて陽が当りそうなくらいだが、夏の穏やかな日本海はとても美しかった。到着すると少し離れたところに地元と思われるチャリ鉄が2名。三脚を立ててスタンバっていた。自分も同じようにセッティングを開始。陽炎揺らめく直線線路の向こうから4灯のライトが現れるのを待った。




10:27 「くびき野3号」通過。海の向こうは直江津市街。蜃気楼のように揺らめいていた。
2010,8/19  信越本線  柿崎〜米山  EOS5D  100-400mm


 夢がまた一つ叶った。急に安堵したせいか、寝不足もあってフラフラと力が抜けてきた。タイミング良く先ほど直江津市内でガソリンを満タンにしてきたので、エンジンを掛けたままエアコンフルパワーでお昼寝。バイクのメリットも山ほどあるが、車はこういう時本当に助かる。2時間ほど快適に寝て正午過ぎに起床。かつてこの地域を訪れたことは何度もあったが、時間的に余裕があるのは今日が初めてだったので、有名撮影地を見て回った。鯨波の海バック飛び出し。米山の公園大俯瞰・・などなど。さきほどの3号は新潟まで行って折り返し2号で帰って来るので、まだまだ時間がある。ちょうど腹も減って来たので米山駅近くの国道沿いのラーメン屋へ入場。冬の厳しい日本海性気候で洗われ乾ききっている町並みの外れのラーメン屋だった。店内に入ると客はゼロ人。昔からあるようで少々小汚い印象。無愛想な店のオヤジにネギラーメンを頼み、冷水機から出てきたぬるいグラスの水をチビリとやりながら、テレビで高校野球を見る。窓の外を見ると穏やかで真っ青な日本海。故障しているのか効きの悪い冷房の生温かい風に当たりながら待って出てきたネギラーメンは・・・。ゥプ、マズイ・・・。 その後地元の常連と思しき男性が2人入って来たが、二人ともレバニラや生姜焼きなどの定食を注文していた。そういうことだったのか・・・と悟った自分は一応完食し¥800を払い店外へ。先ほど下見していた国道の橋上からの大俯瞰に行ってみることにした。今日は国鉄色ではないが北越6号も撮ってみよう。俯瞰に向かう途中、チャリンコに大荷物を縛り付け真っ黒に日焼けした青年を追い越した。荷物には張り紙が貼られてて、「東京から日本一周中」の文字と日本地図が描かれているのを発見し、なんだか懐かしい気持ちになった。思い返せば10年以上前の夏、自分もバイクに寝袋などを積載して日本縦断の途中に、この国道8号線を北上して北海道の宗谷岬を目指して走っていた。今となっては快適なクルマで撮影目的で来ているが、あの当時はチャレンジの道程だった。

 そんなことはさておき、狭い国道の橋上の歩道を行くと、すぐに絶景が飛び込んできた。標準レンズのまま水平線を目標にレベル出しに注意を払い、ひとまず落ち着くと先ほどの青年が歯を食いしばりながら坂の下から上がって来たので、追い越されざまに軽く会釈すると向こうもはにかみながら通過していった。一瞬の出会いだったがとても印象に残った。さてそろそろ時間は狙うべき「くびき野2号」の先行である「北越6号」がやって来る時間だ。しかし、10分経っても20分経っても北越はやって来ない。携帯で運行情報を見ても信越線の遅れ情報は出ていないようだが、一転、485関連の掲示板で確認すると「北越6号」は直前の柏崎で車両故障中とのこと。なんということ!いつやって来るかも分からないホコリだらけの橋上を撤収してクルマの中でしばらく待機。やがて本命の「くびき野2号」の通過時間になったので再び国道の橋を真ん中ほど行ってセッティングをし待ちぼうけをしていたが、嫌な予感は的中した。通過予定時刻をいくら過ぎてもT18編成「くびき野2号」は姿を見せないのである。車両故障の北越の影響であると思うが、振替輸送をくびき野で行うのか、くびき野で柏崎まで来てしまったT18を北越の車両差し替えにするつもりなのか。海風の心地よい橋上でヤキモキしていると、通常くびき野が柏崎で追い越す1342Mが先に来てしまった。巻き添えを喰ってくびき野もウヤなのか?明日も早朝から仕事なので、あと30分待って来なかったら撤収しよう。ここから線路まで遠く離れているので列車接近を知ってからビデオを回すのは遅いため、ビデオは常に録画中。バッテリーの残量も30分なのでキリがいいと思ったその時。超鈍足で美しい国鉄色が西陽に照らされ輝きながら眼下を通過した。ちょうど30分の遅延であった。




2010,8/19  信越本線  米山〜笠島  EOS5D  24-105mm


 ようやくやって来てくれて一安心。これからは帰路を急がねばならない。撮影地からすぐ近くの北陸道米山ICから高速に乗り関越経由で練馬を目指すも、前々回の小砂川583の帰りと同様、関越は埼玉県内で通過に2時間かかるほどの大渋滞。仕方なく渋滞の始まりだした花園ICで降り、一般道を抜けて国道17号で帰途に就いた。