リベンジ。羽越線で「あけぼの」朝練。 


2010.8/4


 掲示板でも書きましたが・・・  先日、早朝の羽越線を下るブルトレ捕獲を夢見て、バイクで深夜の東北道を北へと突き進んでいたが、半分ほど行った福島県内で戦意喪失、睡魔来襲、体力限界に苛まれ、已む無く志半ばで勇気ある撤退をしたのだが、数日経ってもその喪失感はどうしても耐えがたく、リベンジ出来るチャンスを密かにうかがっていた。早めに行動に移さねば、日はどんどん短くなるばかり。7月末にチャンスは1度あったのだが、天候が思わしくなく、ついに8月になってしまった。そして8月に入って最初の連休。秋田県沿岸地方の予報は曇り時々晴れ。早朝なら大気が安定していると予測し、この微妙な予報を信じ出発を決めた。

 ところで前回の敗因は当地から秋田県の遠さであった。何度も経験しているが、熱帯夜の長距離走行を完全にナメていたことは事実だし、700kmを甘く見ていた。まさに距離に負けたも同然である。そこで今回は2連休を利用し計画的に撮ってみようと画策。初日は秋田入りするアプローチだけに使ってもいいのだが、それだけではもったいない。そこで最近にわかに注目を浴びる常磐線ED75貨物などを撮影しながら北上することに決めた。

 出発前、連続高速運転するためにタイヤ空気圧をちょっぴり高めにし、メッシュのグローブを用意。また自身のクールダウン用に1リットルのペットボトルに水道水を入れてトランクに。もちろん深夜の走行でもあるので熱帯夜とはいえ防寒着も欠かせない。そして午前2時。出発。いざ行かん、秋田へ!! っとその前に磐城へ!

 最初の目的地は「いわき」である。常磐貨物は3往復定期で運行されているのだが、撮影可能時間帯に走っているのは下り2本と上り1本の計3本。下り2本は早朝の設定であるのでそれに合わせてこの出発時間を選んだ。約250km。ラクショーな距離である。昼間の暑い大気が残ったままのような熱帯夜を切り裂いて、完全に明るくなったいわき四倉ICを降りたのは5時前だった。初めての撮影地でもあるので、いくらかポイントは調べてきた。インターを降りて国道6号を北上する。すでに太陽はギラギラの熱射を浴びせている。天気は快晴だ。途中インターから国道に続く県道のオーバークロスがなんとなく画になりそうな雰囲気。まだ時間もあるのでもう少し付近をロケハンする。と海バックのポイントに到着した。逆光で海面が光ってきれいだ。時間が経てばキラキラの逆光も弱まってしまうので1発目はここで、2発目は先ほどのオーバークロスで狙うことに決めた。
 セッティングを完了。通過まで20分ほどあったので1服していると、突然機関車のブロアーが聞こえてきた。ヤベ、通過時間の勘違いだったかもと慌ててファインダーに飛びつき連写を開始すると、やって来たのはED75ではなく、EF81だった。しかも単機!



この時間に単回が設定されているんだろうか? 不意に現れたEF81。
2010,8/4  常磐線  末続〜広野  EOS5D  100-400mm


 なんだったんだろうか?咄嗟だったんでビデオ撮影は失敗。間もなくやって来る97レを頂くため遠くの列車の音に集中した。そして寸分違わぬ定時、ED75が海バックの大舞台へと舞い踊った。



97レ。新更新色だったが、働く男はとてもカッコいい!
2010,8/4  常磐線  末続〜広野  EOS5D  100-400mm


 車がひっきりなしに通り過ぎる国道路肩の撮影地を撤収して、朝、目を付けておいたオーバークロスポイントへ急ぐ。到着すると、緩くカーブを描く線路を俯瞰でき、遠くの青々とした田んぼ、背後の青空などどれを取っても「夏」一色だった。期待していなかった分、かなりここは気に入った。撮影機材一式を担ぎ、ガードレールに近付くとすでに先客の方が1名、線路にレンズを向けていた。軽く挨拶して隣に入れてもらう。ところで現在時刻はまだ7時。しかし気温はゆうに30℃は越えており、今日も猛暑との戦いになりそうだ。炎天下の中、望遠で列車主体で狙ってみようか、それとも広角で真夏の情景を写し込もうか、列車通過直前まで悩みまくっていたが、隣人の装備を見ると広角で待ち構えているご様子。ならばと自分も24mmで風景を切り取ってみることにした。やがて踏切が鳴り赤い機関車を先頭にコンテナの列が近付いてくる。広角なので車番までは分からないが、赤い電気機関車は裾回りまで本当に真っ赤だった。原色の1034号機だった!




93レ 貴重な原色なら車両主体で行けば良かった。にしても美しい1034号機。
2010,8/4  常磐線  久之浜〜末続  EOS5D  24-105mm


 この光景が末永く続くものであって欲しい。5分ほど余韻に浸ったあと、機材を撤収。とりあえず走りだした。次のターゲットは午後の上り92レだが6時間以上時間がある。北上しながらも何箇所もロケハンしながら沿線を動き回る。しかし巡れば巡るほど画になる所が多すぎて、今日の残り一本だけでは到底ゲットすることはできないので、次回訪問時のためにと地図に次々と書き込みをしていった。常磐北線は侮れなかった。ライフワークが一つ増えそうな予感までした。何十箇所も訪れてみては立ち去り、それを繰り返しているうちいつの間にか完全に暑さにやられてしまった。寝ていないのも原因だろうが、このままいつものパターンで戦意喪失してしまったら、ここまで来ていて撤退とはご先祖様に顔向けできない。自制しよう。コンビニで朝飯とポカリを買って貪り、それが終わると日陰にバイクを移動し、またがったまま昼寝。無理な体勢で2時間ほど睡眠を取り、そしてまた移動開始。目指すは有名な原ノ町〜鹿島の直線。途中、誰もいない閑散とした磐城太田の駅に立ち寄りホームの水道で水浴び。そしてシャツを濡らしてそのまま着込み、若干涼を取ってからお立ち台へと急ぐ。

 やがて現地に着くも、撮影地までの入り方がよく分からず、ふと出くわした線路脇に立って後ろを振り返ると数百m向こうに三脚と人間がいくつかの点となって見えた。あそこが有名なお立ち台であるようだが、今立っているこの場所も捨てがたい。付近をよく観察すると背後の丘に上る一条の踏み跡が見て取れる。もしや?誘われるようにその踏み跡を辿ると、突如視界が開け線路を見下ろすことができた。やはりテツ道であったようだ。92レはここにしよう。しかしまだ通過まで1時間ほどあったので、麓に停めておいたバイクを発進させ、近くの木陰に移動しまた少し仮眠を取る態勢になった、その時! 電気機関車のブロアーが聞こえだし、原色のEF81がホキを連れて林から飛び出してきた。バラスト散布の工臨のようだ。寝る態勢だったので当然撮り逃したのだが、よくよく考えると朝イチで見送った単機のパーイチのようだ。朝のあれは工臨のための回送だったようだ。81を見送り、またしばしのバイク寝。でも木陰とはいえ暑さで熟睡することはできず、30分ほど時を過ごしていたがどうすることもできないので、先ほどのお立ち台に向かいセッティングをすることにした。麓にバイクを止めお立ち台に近付くと、いつも間にやら2名のテツ分多めな方が先取りしていた。もともと狭いキャパの場所なので自分が入る余地などなく、どうしようかと迷っていると、「登りますか?開けましょうか?」と声を掛けてくれた。先着至上主義の撮りテツの世界。こんな言葉を掛けてくれるなんて・・・と感動しながらお言葉に甘えることに。その方はセット済みの三脚までどかしてくれて自分に進路を作ってくれた。礼を言って急斜面をよじ登っていると、もう一人の方も「三脚持ちますよ!」と手を差し伸べてくれた。こんな人がいらっしゃるなんて・・・。ちょっとオレも見習わなきゃならないと思った。とても清々しい出来事だった。3人で待つこと30分。所定より3分ほど早めに92レは姿を現した。




決まった!
2010,8/4  常磐線  鹿島〜原ノ町  EOS5D  100-400mm


 この親切な方達のお陰でスッキリとSカーブを行く92レを気持ちよく頂戴することができた。再度お礼を言ってバイクへ戻った。ところでこの92レ、次の原ノ町でおよそ30分の停車がある。だとすれば当然追っかけだ。国道に戻り、午前のロケハンで目を付けておいた小高の陸橋へ。ここも西からの午後の光線がバッチリ決まる良さげなアングルだ。傾き始め黄色みが増してきた太陽光を浴びて列車はすぐにやって来た。




小高でも運転停車があるので場内の黄信号に従いゆっくり近づいてきた114号機。
2010,8/4  常磐線  磐城太田〜小高  EOS5D  100-400mm


 これにて本日の常磐貨物撮影は終了した。前菜を終えていよいよメインディッシュに移ろうではないか。とはいってもここから秋田まで300km以上の道程。昨夜もほぼ寝ていない上に太平洋側から日本海側に本州横断という辛い道中が予想される。まず先の陸橋から市街地を少し走り、見つけた公園で水浴び。クールダウンしてから国道114号線で阿武隈高原を縦断して福島市を目指した。緩い峠をいくつか越え福島手前の川俣町に差し掛かる頃、突如として睡魔に襲われた。一日中炎天下で活動していたため、かなり暑さでやられてしまっていた。濡らした服も乾いてきてしまったので道の駅にピットインし、休憩する。バイクも少し元気が無いようで、エンジンのトルクが薄くなり、振動も多くなってカラカラという音がするような気がする。1時間ほど休憩してから出発。久しぶりの大都会の福島市を貫き、町外れの幸楽苑でラーメンタイム。餃子+ライスセットに満足し、国見ICから東北道に入った。ここから秋田を目指すなら東北道〜秋田道の方が時間短縮に有効だが、先日の高速一部無料化により山形道全線が¥0になったので、その恩恵を受けようと迷わず山形経由で酒田を目指す。高速の終点である酒田から、目的地の秋田市街へは一般国道だ。完全に日没した頃、山形市を通過。途中のSAで、またバイク寝を数時間やって高速未開通の月山道路を経て酒田市へ。給油し一服してから秋田への最後のラストスパートをかけた。が、国道を走り始めてすぐの秋田まで100kmという看板に少々戸惑った。よく調べていなかったのだが、酒田〜秋田はこんだけ距離があったのだ。感覚で20km程度と思っていた自分がバカだった。時間も22時近くになっている。翌朝の日本海の通過は5時前。今日宿泊予定の秋田市の健康ランドでビールを呑んで熟睡・・・を計画していたが時間が無い。最悪駅寝も視野に入れながら国道を隊列組んで走るトラック船団を次々にブチ抜き、ハイペースをキープしながら県境を越える。半分ほど行った仁賀保で高速道路のインターの表示を発見。どうやら最近開通したばかりらしく、日本海東北道がここまで開通してきていた。これには助かった。幸いないことにここも秋田市街まで無料区間のようで、存分にその恩恵を受ける。予想より30分ほど早く秋田南IC到着。健康ランドに到着したのは23時過ぎだった。¥2200の宿泊料を支払い温泉に浸かり、休憩室でビールを呑みながらひと時の安楽を謳歌した。



2010.8/5


 朝の撮影地は早朝下りブルトレが順光で狙えるポイントとして名高い桂根〜新屋。最初は「日本海」「あけぼの」両方をここで頂戴する予定だった。「だった」というのは、寝坊したからである。前日の過労と寝不足も相まって、ビールなどを呑んでしまったなら当然か・・・。目覚めると起床予定を1時間ほど過ぎた5時10分。もう桂根〜新屋で1発目の「日本海」には間に合わない時間だ。「日本海」は諦めて「あけぼの」1本に絞ろうと思い、洗面所で歯を磨きながら思考を巡らせていると、「日本海」の秋田到着が5時35分であるので、桂根〜新屋でなくとも急げば近場で撮れるかもしれないと閃いてしまった。あと20分ほどしかない。速攻で荷物をまとめチェックアウト。バイクに飛び乗り秋田市街を脱出。そういえば市街手前に雄物川を渡る鉄橋があったはず。でも停まって地図を広げている余裕などない。県道を南下しているとすぐに雄物川を渡る橋が見えてきた。一旦停車して線路の橋梁を見るとスッキリしたガーター橋でどうにか行けそうな雰囲気だった。近づいて確認すると架線柱が東側にあり、午前中の順光側だとどうしても架線柱が手前に来てしまう。どうりでここのブルトレの作品を見たことが無かったわけだ。しかしもう場所を移動している間もない。トランクから撮影機材を抱え、朝露の草むらをかき分け、ズボンをグッチョリに濡らしながら堤防上に駆け上がると、そこはまだ早い時間の太陽光線が低い角度から鋭く桁全体を照らし、ライティングは申し分ない撮影地だった。あと2分。急いで画角を決め三脚に固定し、ビデオを早めのスタート。EOSにレリーズを取り付け何度か露出確認。準備が出来上がるとすぐに対岸の踏切が鳴り出していた。




間に合った! 5:31 「日本海」通過。
2010,8/5  羽越本線  羽後牛島〜新屋  EOS5D  24-105mm


 諦めずに急いだ甲斐があった。今度こそ彼の地で「あけぼの」を仕留めよう。初めての撮影地なのでいささか不安はあったが現地に到着すると場所はすぐに分かった。背後には低い丘陵で、さきほどの「日本海」はそれに遮られ陽が当らないように思えた。撮影地の登り口にバイクを止めると先客が線路方にレンズを向けている。気さくな方であれこれと話しをしながら自分はファインダーに入る像を何度も微調整。ここは有名なポイントの割にはキャパが非常に小さく、S字カーブ、海バックを一画面に収めるには、2名分のスペースしかないことを初めて知った。先人のすぐ脇に三脚を据え付け、ミリ単位でカメラを微調整しながらベストなアングルを探し出す。これしかない!と三脚の固定ネジを強く締め付け、来るべき「あけぼの」を待った。




2010,8/5  羽越本線  桂根〜新屋  EOS5D  100-400mm


 「あけぼの」ここに極まれり!!夢見た映像がついに自分の手に堕ちた。この一枚をゲットするために遥か長い道のりだった。この後も高速を使ってこの「あけぼの」を追っかけするつもりであったが、手にした画像を見て満足し帰ることにした。道中は長い。国道9号線をひたすら南下し新潟から関越道で帰還を果たして今回の旅は当初の目的を果たし終了した。ただ・・・帰りのどこかで10年以上愛用してきたツーリングマップルを失くしてしまい、過去の旅で書き込んだ行程の記録や、今回の常磐線撮影地のポイントも全て失ってしまったことが最大の汚点でもあった。


今回の総走行距離 1472km  終了。