2009年初撮りは米坂線国鉄色祭りで決まり!
2009,1/15

 真夜中の関越を新潟へ進む。今日も目指すは越後の国である。やがて渋川伊香保から上り勾配に差し掛かる。1時間前、練馬から関越に乗った頃から、表示板に「下牧PAから先チェーン規制」とのお知らせがあったので、間もなく雪が降ってくる頃だろう。「チェーン規制」・・・。いい言葉だ。この表示を見ただけで心地よい緊張感に包まれ、山を越えた別世界の光景への期待感が一層高まる。もう一回言おう。「チェーン規制」・・。
 今回はこのシーズン最後とも言われる、新津運輸区の国鉄色気動車を頂く旅だ。まだ正式発表はされていないものの、昨年末よりキハE120なる新製気動車がついに運用に入り始め、恐らく厳冬期の試験を経て正式投入され、国鉄型を淘汰するのだろう。冬には深い雪に閉ざされる米坂線、春には長い冬の終わりを喜ぶかのように咲き誇る花々。夏は盆地特有の酷暑。秋には黄金の輝きを放つ紅葉。見事なまでに日本の四季に包まれる米坂線を往く国鉄型気動車たちは、そのシーズンがいつ最後となってもおかしくはない。そんなわけで先月、日本海側大雪との予報であったが、2連休を利用して米坂入りを試みるも、2008年最大の寒波が来襲してしまい全く撮影などできる状態ではなかった。今日は大雪ではなく雪。雪なら幾分撮影もできるだろう。しばらくして関越トンネルを抜けると、吹雪ではないが深々と降雪の続く新潟の日常の中にいた。ところで3日前から新津運輸区の8両の国鉄色気動車のうちタラコ47と一般色52が組む編成が2本誕生してしまい、また年始以降姿を見せなかった58+28の急行色も順当に運用をこなし始め、米坂線は総勢3本の国鉄色が行き交うという「にわか祭り」状態となっている。そんな明日朝は越後金丸で47+52の国鉄色同士が交換するので、まずはそれを目標にとアクセルを踏み続けた。今日は睡魔にも打ち勝って意外と距離を稼ぎ、新潟IC手前の黒崎PAまで到達し、すっかり安心してしまい1時間ほど仮眠を取ることにした。・・・そして寝坊する。すでに金丸には間に合わない時間であるが、慌ててはいけない。こういう時のために、もう一つネタを仕入れていたのだ。前日新潟車両センターの国鉄特急色である485、T18編成が酒田で滞泊しており、このままの流れでいけば特急「いなほ4号」でやって来る事を知っていた。当然先頭は4灯の1500番台で、コイツを狙うために米坂線撮影で利用する中郷ICの1つ手前の聖篭新発田ICで高速を降り、少し国道を走り線路端へ。特に有名な撮影地でもないが適当に見つけた低い築堤を登り、先日購入したスリックの4段三脚をセットする。フリー雲台、水準器付き、結構しっかりした造りであり、少々値段は張ったが我ながらいい買い物をしたもんだと思っており、そのデビュー戦が目出度くこのT18撮影になった。やがて通過時間。しかし通過時間を5分過ぎ、10分過ぎてもターゲットは現われない。連日強風やら吹雪やらで遅れる羽越本線である。今日もしっかりダイヤは乱れているようだ。しっかし寒い!温度計は-5℃を指しており指先が三脚の霜でくっつくほどだ。風も強いしこのヒョーテンカの中でいつ来るやもしれない列車を待つには限界がある。15分過ぎて諦めて撤収しようとした、その時、遠くから4つのライトが雪煙とともに近づいてきた。



15分遅れで姿を現したT18編成、特急「いなほ4号」。北海道で生き抜いた酷寒仕様の1500番台は、この程度の雪ではものともしない猛者。
2009,1/15   羽越本線   新発田〜加治   EOS5D  100-400mm


 舞い散る粉雪を率いて高速で去っていった485を見送り、国道を坂町方面へ。平野部では薄日も差すほどの穏やかな天候だったのが、米坂線沿いの国道113号に入ると急激に雲に覆われ始め、小国に着く頃には本格的な雪となってしまった。さらに山間へ進み伊佐領付近の踏み切りで、もうすぐやって来る快速「べにばな」を撮ってみることにしたが、とても外で三脚、カメラ、ビデオをセッティングできるような状態ではない。雪はその勢いをさらに増し、風が少しでも吹くと完全なホワイトアウトな状態。寒いのヤダなーと軟弱な事を思いつつ、車の後部座席に三脚を立てスタンバイ。やがて踏切が鳴り出し、窓をウィ〜ンと開けて車内から撮影。白い森の向こうから現われたのは、新潟色を纏ったキハ52とタラコの47だった。



べにばなが5分遅れで通過。新潟色先頭だが来年にはこの色も見納めになってしまうだろうから良しとする。
2009,1/15   米坂線  羽前松岡〜伊佐領   EOS5D  24-105mm


 新潟色が先頭だったので、この「べにばな」の追っ掛けはやめて、のんびり雪中ドライブを楽しみながら置賜盆地に向かうことにする。峠を越え成島や羽前椿周辺の撮影地を開拓しようと右往左往してみる。ヒマな時にはロケハンに限る! しかし外は完全な吹雪になってしまったためほとんど車から降りることはできず、結局ヒマをもてまして車の中でテレビを見ながらコンビニで買った駄菓子をつまみに茶をすすったりと車内ニートをしてひたすら時間を潰し、夕方になって風も雪も小康状態になってきたので外に出てみた。夕方の1135Dを撮れるかもしれない。何年も自宅警備の末についに働く気になった40才(無職)のように車外に這い出て伸びをし、ヒョーテンカの空気を吸う。生き返る。誰もいない中郡の踏み切りでA3運用に入った47+52を待ってみた。



一旦雪が止んだ。1135D。日没後なので当然流す。ISO1600。絞りは開け放つ! デジカメってすごいね。10年前にはこんなショット考えられなかった。
2009,1/15   米坂線  成島〜中郡   EOS5D  24-105mm

 この1135Dは羽前椿ですぐに折り返してくる。折り返しを羽前小松の停車を踏切から望遠でバルブしみようかと思いつき、すぐに移動。降雪は衰えるどころかさらに勢いを増し、グチョグチョになったカメラを構えるのがやっとのほど。この駅撮りは見事に惨敗したので、撤収して市街をウロついていると腹が減ったため、一番近い市街地である赤湯に向かった。いつものことだがラーメンが喰いたい・・。真っ暗闇の国道を走り、市街の明かりが見えてきたので道の両脇をラーメン屋を探しながら徐行する。それにしてもいつも思うのだが、雪国の人ってホント逞しいなと関心してしまう。退けても退けても容赦なく降り積もる雪は、関東人にしてみれば除雪だけでも大いにエネルギーを使ってしまうだろうに、豪雪地の人ときたら重労働の除雪をした上で、さらに普通の生活を普通の顔でしている。一晩で50cmも積もる雪、或いは吹雪の中でも市街に入れば普通にTSUTAYAが深夜まで営業しているし、ガソリンスタンドではバイトの姉ちゃんが接客をしている。その隣のガストでは家族団らんに花が咲き、街全体が活気に満ちている。そんな雪に埋もれる活気ある街の片隅の国道沿いにあったラーメン屋に入る。ネギ醤油ラーメン¥850也。ウマー! 帰り道ガソリンも入れ暖かい街を後にして今夜の寝床に帰るとする。いつものように道の駅「いいで」に車を止め、積雪で酸欠にならないよう後部のマフラー周辺の雪をどけてからビールをシコタマ呑んでおやすみなさい。


2009,1/16

 目が覚めると真っ暗だった。というより車が雪に埋もれていて外の明るさが分からなかった。外にでてみると幸いマフラー周辺には雪が積もって酸欠にならず、今日も生きている。昨夜から20cm以上積もったようだ。雪に埋もれた車の脱出にしばらく難儀して、ようやく撮影地に走り出した。まずは予ねてから見てみたかった有名な「キンチョールポイント」。初めてだったが道の駅から2kmほどの距離であっという間にその場所を発見できた。線路から少し看板まで離れているが、何とか上手くいく構図を探しているうちに列車がやってきてしまった。



1125D。思ったより線路から距離が離れてしまう。再挑戦の価値アリと判断。
2009,1/16   米坂線  羽前椿〜萩生   EOS5D  24-105mm



すぐに羽前椿で折り返してきた1124Dはダルマ状態。こんな雪でも定時でやってくる鉄道って頼もしい。
2009,1/16   米坂線  今泉〜萩生   EOS5D  100-400mm

 この1124Dは次の今泉で12分の停車があるため、大きく迂回する線路をショートカットして追っ掛け。犬川付近で撮ろうと思っていたが、あえなく時間切れになってしまった。



少しでも風が吹くと、視界ゼロのホワイトアウト。今泉停車を利用して追っ掛け成功したが・・。
2009,1/16   米坂線  今泉〜犬川   EOS5D  24-105mm


 このA4運用はまだ午前中であるがこのまま米沢で滞泊。翌日のA5となって動き出す。今日はこれからもう一本のタラコ+一般色コンビであるA1の快速「べにばな」を迎え撃ちに坂町方面へと急ぐ。宇津峠を越えて新潟県側へ。一向に雪は降り止む気配は無く、屋外でカメラを構えるのが躊躇されるくらいだ。仕方が無いので車の中から撮影できるポイントを探すという超軟弱なロケハンを開始してすぐに、ガーター橋を遠望する県道を発見した。昨日と同じように後部座席に三脚を立て、ウィンドーを開けて暖房の効いたヌクヌクの車内から国鉄色を待った。



雪に音を吸収されて姿を現した快速「べにばな」。
2009,1/16   米坂線  越後金丸〜越後片貝   EOS5D  24-105mm


 この後はというと追っかけをしてみたものの、伊佐領でどうかにか間に合ったが写真は失敗。まだ午前中だったがこれ以上の雪の中での撮影は困難と判断し米沢から板谷峠を経て福島へ。ダラダラ国道4号線を南下し、矢吹ICから東北道に乗って帰還した。




2009,1/20


 前回の米坂訪問から仕事を2シフトこなした後、またもや米坂行きの出発準備をしていた。明日の新潟下越地方、雪は止んで曇り時々晴れの予報であったので、一つ念願の撮影地を制覇してみようと思う。そのテーマとは米坂線有名俯瞰ポイントである「明沢俯瞰」に挑戦。以前から大体の場所、俯瞰ポイントへの登り口は分かっていたのだが、つい米坂線で国鉄色を撮ってしまうと予定外の追っかけをしてしまうという悪い虫が出てきてしまい、じっくり一地点で列車を待つということが少なくなってしまう。いつも国道に近い場所から手軽に撮影を済ませてしまう傾向があるので、今日は一つ腰を据えて撮影を楽しみたい。
 今日は東北道。夕方に出発して、米沢に23時ころ到着した。コンビニで夜食とビールを買い、いつものように道の駅「いいで」に車を止め仮眠。雪は前回よりさらに溶けてしまったようで、昨年、3年前と比べると格段に景色が違って見える。朝になり行動開始。前回初訪問であったため満足の行く結果にならなかったキンチョールポイントでリベンジを果たそうと先を急ぐ。今日もタラコ47+一般色52が2本と、急行色58+28が順当に運用に回ってくれている上に、天候も穏やかだったので楽しい一日になりそうだ。



1126D。この手の看板は他に「水原弘のハイアース」「由美かおるのボンカレー」「大村昆のオロナミンC」などが有名ですね。
2009,1/16   米坂線  羽前椿〜萩生   EOS5D  24-105mm


 撮影後すぐに移動する。1126Dの続行17分後でやって来る1128Dは今日はキハ58+28であるため、羽前椿の手ノ子側の直線踏切で対象を待った。



背後の山々を越えて峠を降りてきた1128D。
2009,1/16   米坂線  手ノ子〜羽前椿   EOS5D  100-400mm


 この1128Dは先行の1126Dの17分の続行なので、時間調整というか閉塞の関係だろうが羽前椿で8分、今泉で24分もの停車時間が取られている。すぐに羽前椿停車で追越し、先程のキンチョール看板の元でキハ58の後追いを狙いに車を走らせた。



雪に音を吸収されて通り過ぎる。しかしこの58のタイフォン、「プ〜ン」と面白い音がするのが洒落っ気たっぷり。
2009,1/16   米坂線  羽前椿〜萩生   EOS5D  24-105mm


今泉の停車で追い抜き駅を出た直線で。58が滑るように雪原を行く。小さすぎて見えなかった。
2009,1/16   米坂線  羽前椿〜萩生   EOS5D  24-105mm 


 無事1128Dを見送り、いよいよ今日の最大の課題、明沢俯瞰に挑む。徒歩30分くらいと聞いていたので、気軽に休憩をしに車に戻れないようなのでコンビニでジャムパンとカロリーメイト、飲料を購入し国道113号を坂町方面へ。羽前沼沢を500mほど過ぎ、国道の明沢トンネル手前の林の小道が入り口とは知っていたけど、いかんせん季節は真冬。雪に覆われた山道を探し出すのは困難だろう。初めてだし。ここで第2案。国道明沢トンネルの左の作業用と思われる歩道も明沢俯瞰に登頂できるルートらしく、こちらを当たってみると明らかな踏み跡が見て取れた。ちょっと下見。前日に積もったばかりの深雪の上を1歩、2歩と踏み出すと、3歩目にしてズッポリ腰まで埋まってしまった。当然、運動靴では歩けないことは分かっていた。列車通過まであと2時間ある。そういえばこの先の街、小国にコメリがあったことを思い出し、北国の必須アイテムであるカンジキを手に入れるため、20kmほど買出しに出かけることにした。コメリ到着。3種類くらいカンジキが売っていたが、一番安く、またオーソドックスな木製の物を調達。ウキウキでまた羽前沼沢に戻った。トンネルの第2ルートか、林の小道を選ぶか・・迷ってメインルートともいえる林の小道を選択。国道脇の除雪車によって積み上げられた1mほどの雪壁を登ると、なんとなく植生の切れ目が見て取れた。本当にここか?車の中で長さを調整しておいたカンジキのゴムバンドを靴に締め付け装着。しばらく歩くと米坂線の線路にぶつかった。線路を渡り積もったばかりの雪の斜面を進むと、2人分あるかと思われる足跡が山の頂上に向かって続いていた。よく観察すると足跡のほかに直径5cmほどの丸い穴が3つまとまったものが点々と続いている。あっなるほど!三脚だ。この足跡はテツのもので三脚を杖代わりにして俯瞰を目指した跡に違いない。不安は一気に解消され、後はこの足跡と三脚跡をたどるのみだ。¥2500で買ったシンプルなジャパニーズトラディショナルカンジキの威力は想像以上でサクサクと自分の体重を柔らかい雪に預けることができ、快適な事この上ない。やがて急な上り勾配になり、氷点下の気温でもシャツは汗びっしょりになる。そうして30分後、山の稜線の上に出た。そこから見た光景は雄大そのもの。線路をくねらせながら勾配を稼ぐ米坂線の路盤が眼下に見渡せた。足跡の主がいるかと思ったがその稜線上は誰もいなく、別に、そこかしこに残る4足歩行の動物のものが不気味に私を迎えていた。



静かな林間に続く怪しい足跡と三脚跡は尾根へと登っていった。



安物でも威力は絶大。この感覚クセになりそう。


 通過まであと30分。空は雲の薄い部分はあるものの日照の期待はほとんど出来ない状態で、時折下界を照らす晴れ間はどうせ通過時間にはどこかに行ってしまうんだろう。しかし立ち止まるとさっきまでかいていた汗が引き猛烈に寒くなってきた。いてもたってもいられなくなり、稜線上でウロウロしていると、下界から初老の男性が三脚を担いで上がってきた。挨拶をしてお互いに世間話。やがて遠くからエンジン音が近づいてきて1131Dがやって来た。



後追いの1131D。晴れそうで晴れない米坂線界隈。雪晴れの光景を重ねてついつい妄想してしまった。
2009,1/16   米坂線  伊佐領〜羽前沼沢   EOS5D  24-105mm



1130D。時折陽も差していたが、こういう時って絶対本番では曇るもの。期待していませんでしたけどねー。
2009,1/16   米坂線  伊佐領〜羽前沼沢   EOS5D  100-400mm



・・にしても絶景だ。雪晴れの日に絶対、リベンジを果たす。リミットはあと2ヶ月。
2009,1/16   米坂線  伊佐領〜羽前沼沢   EOS5D  100-400mm

 最後の1130D通過時には計3名ほどのテツが登頂してきて、一瞬無人の尾根が活気付く。もう今日は撮影可能時間に国鉄色は来ないので、彼らに別れの挨拶をして、早々に独り下山。車にたどり着き車内の暖房に救われる。今日これからは今泉方面へ。今日中には帰らなければならないので、夕方の椿往復の急行色58とタラコ47を撮影してから栗子峠を越えて、福島飯坂から東北道で帰還した。



日没後、峠へと急ぐ1123D。さっき明沢俯瞰で撮影した返しの編成だ。
2009,1/16   米坂線  手ノ子〜羽前沼沢   EOS5D  24-105mm




いずれも萩生跨線橋上から。羽前椿折り返しに国鉄色58が入った。高感度ムチャぶり流し。
2009,1/16   米坂線  萩生〜今泉   EOS5D  24-105mm