(連載) 「富士ぶさ!」

2009,1/27 (初日)

 3月で「富士はやぶさ」がついに廃止となる。これで伝統の東京口の夜行列車がとうとう姿を消すことになったのは周知の通り。いままで何度かその姿を撮ったことはあったが、新しくカメラやレンズを購入した時のテスト撮影ぐらいしかしたことがなかった。EF66はあまり好きな機関車でないので今まで積極的に撮らなかったが、地元を走る列車が姿を消すとあっては一応撮っておくべきだろう。そう思い立って先ず向かったのは神奈川県内で富士山バックで撮れる数少ない撮影地として名高い藤沢〜辻堂の「鵠沼道踏切」。以前から晴れた日には撮りテツの姿を見ることはあったが、今月のRM誌にオススメ撮影地として紹介されてしまったので、あの狭い踏切周辺はパニックになっていると予想される。場所ももうないだろう。近場ゆえの油断だろうが少々寝坊し現場には通過30分前に到着。平日だというのにすでに15人ほどがセッティングを終了しており、もう入れる余地はなかった。茅ヶ崎〜平塚の富士バックに移動しようかとも考えたが、時間はギリというところ。仕方無くここで頂くことにした。ベストポジションは入れなく、ケツ切れになってしまうが一応富士山が写りこめるように三脚を立て列車を待った。




今日は富士山が弱い。場所も場所だけに敗北感は少ない。すぐに撤収。
2009,1/27   東海道本線   辻堂〜藤沢  EOS5D  100-400mm




2009,2/12 (2日目) 


 実は自宅からすぐの高台から富士山が見える。毎日通勤途中、富士山の見え具合が嫌でも確認できるのだが、今年はどうも様子がおかしい。快晴の朝でも霞んでしまう日が多いのだ。気温が例年より高いからなんだろう。富士山がハッキリ見えるその日が仕事で撮影に行けないと悶絶しなくて済む確立が少なくなるのはいいのだが、これでは休みの日に富士山バックでキメられるチャンスも少なくなる。今日も朝目覚めると快晴。バイクに機材を積み込み自宅を出発してすぐに富士山を望める高台を通過。・・・・今日も富士山は朧げなるまま。自宅から30分の藤沢にも行く気がなくなり、急遽、東戸塚に移動。東海道本線は大船からこれまで東に向かっていた進路をほぼ真北に向かって変え、上り東海道線を午前中撮影するにはどうしても逆光になりやすく、ここ東戸塚でも同じこと。それは承知なのだが、まぁいい。通過1時間前は誰もいなかった。その後、2人加わり穏やかな雰囲気の中3名で「富士ぶさ」を待った。通過5分ほど前に駅の方から、制帽に赤線の入った助役らしき人が歩いて来て、「おはようございま〜す。撮る時は車にも気をつけてね」と我々に声を掛け、通過監視の体制に入る。こうして毎日安全確保のためやって来るのだろうか。やがて数分違わぬ定時で獲物はやって来た。



天下の東海道線。通過列車は多いので、いくらでも事前の練習し放題。カッツカツで画面にハマった。
2009,2/12   東海道本線   戸塚〜横浜  EOS5D  100-400mm




2009,3/2 (3日目)


 ここんところずっと南関東地方の天気は冴えない。雨が降らなくても曇りの日や薄日が差す程度の時も多く、いつものように通勤途中からの富士山も霞の向こうにぼんやり浮かんでいるのみ。むしろ日を追うごとに白みを増しているように見え、春が間近まで迫ってきていることを感じさせる。そんな3月に入ったその日、夕飯を食いながらニュースステーションの天気予報を見ていると、「明日、関東地方は久しぶりの晴れ間がのぞくでしょう」との予報。ホ、本当か市川さん! 実に8日ぶりの晴天に明日南関東地方が覆われるらしい。寝る前にデジカメのバッテリーチャァァァーッジ!!!・・・・そして翌朝。テンションが高い日、どうしても外せない日に限って寝坊するオレ。多分、冠婚葬祭に遅れてやってくるヤツっていうのはオレみたいな人種なんだろう。というわけで起きたら起床予定の4時をとっくに過ぎた7時起床。暗いうちに鵠沼踏切に1番で乗り込んでやろうと思っていたが、すでに激パ確定は必至。なにせ情報では深夜の置きゲバまでしているという強者までいるとのこと。こんな時間ではこのページ1枚目の場所すらもう無いだろう。でもまぁ折角晴れているんだし、こういう時にこそ滅多に無い東海道ネタ、滅多に使うことの無い地の利を活かそうと気を取り直し出発。茅ヶ崎に向かった。新湘南バイパスを飛ばし富士山ロックオン。YES、激見え! 年間でも類を見ないほど今日は空気が澄んでいる。しかし青々とした富士山にはいつもと違った様子が。なにやら麓の方から分厚い雲が3776mの高峰にまさに襲いかかろうとしている。今は山頂が見えてはいるが、それも時間の問題。あと40分弱。なにやらいつも通りイヤな悪寒がしてきた。う〜。。トイレ行きたい・・。十間坂踏切到着。ここは直線を行く上り列車を富士山バックで標準レンズで頂ける好きな撮影地の一つだが、午前中では側面が影になってしまうことと、キャパが狭いため、すでにさわやかな朝に似つかわしくないテツ数名が占拠していたので、すぐに第2候補へ方向転換。相模川を渡り富士山バックに弧を描いて勾配を降りてくる列車を撮影できる踏切に変更した。ここもキャパが狭いので場所が無かったら第3候補にしようと思っている。到着。案の定5名ほどが肩を寄せ合って狭い踏切脇で陣を構えていた。もう無理。第3へ向かおうとバイクに戻ろうとした時、線路沿いの柵(当然軌道外)の一角に人が立てるスペースがあるのを見逃さなかった。かなりの急傾斜だったが通過まであと10分を切っているのでさほど苦にならないだろうと、柵に腕を絡めて体重を預け、斜めになりながら「女王」を待った。

  
ふと横を見ると可憐な梅の花。春近し。




山頂危うし! しかし碧い車体に碧い空。そして碧い富士を拝まさせてもらいました。奇妙な体勢で撮ったため傾き調整済み。
2009,3/2   東海道本線   平塚〜茅ヶ崎  EOS5D  100-400mm