今月のネタテツ。リバイバル急行「ちくま」169

2009,2/7

 長野新幹線「あさま507号」の乗客となって1時間。この列車は各駅に停車するので、終着まで速達の40分以上もかかり昼寝するにはもってこいの新幹線で、自分は上野に着く間もなく眠りこけてしまった。やがて「あさま」は関東平野を北上し続け、高崎停車のために減速を始めた。強い日差しと車内放送の声に起こされ寝ぼけ眼で車窓を見ると、一瞬にして夢から覚めた。見事なまでの澄んだ空気。見渡せば右手の車窓には赤城山、榛名山が威容を現し、列車がこれから進路を取る左前方には鉈で切り崩されたような奇岩、妙義山が望め、さらに妙義の向こうには先日噴火したばかりの浅間山が真っ白な山頂を覗かせている。また遥か左手後方にかすむのは南アルプスか?上州のビックネームの山々が競い合うようにその姿を見せ付けていた。天気は最高。今日の期待が高まる。
 本日はしなの鉄道169系を使用したリバイバル急行「ちくま」の撮影である。ちくまといえば関西、中京と長野を結ぶ急行であったが、リバイバルの今日はJR東海のしがらみもあるんだろうが長野〜松本の往復で事を済ます。また169の急行色は今年3月までだが、定期的にしなの鉄道で運用に入っているので、今日のように新幹線でわざわざ来なくてもいいのだがたまたま滅多にない土曜休みになった今日、169が篠ノ井線を走るとあって行かないわけにはいかなくなってしまった。平日テツのようにマッタリできるわけでもなくなるだろう。案の定、東京で列に並んでいる時も三脚を持ったオタが複数名いたし、こうして新幹線に乗ってる今でも、時折車内で一人奇声を上げてる怪しいテツがニヤニヤしていたりもする。同類に見られてはかなわないと、「オレは関係ないんだ、違うんだ」と周囲の乗客にオーラを送っているうちに長野到着。駅で立ち食いソバを喰って、篠ノ井線の115に乗り込むと、いるいる。テツ君たちが。最初の目的地は定番だけど、姨捨の展望台俯瞰に決めていたので早くも場所取りが心配される。あそこは広いお立ち台なので1時間前に行けばとよかろうと思っていたが、この状況では予断はできない。115出発。稲荷山を過ぎて列車は高度を稼ぐ。ところどころにカメラと三脚の雛段が形成されている。それを見た若いカップルの女子が「見て見て、キモ〜イ」と指差して笑っている。これだから週末テツってやりたくないんだよな、と思ってもネタは週末がメインなので、その「キモイ」テツに混じってみるのも一興。姨捨到着。この駅に来たのは何度目か忘れたが相変わらず絶景だった。しばらくするとスイッチバックの駅構内で退避していた貨物が動き出したので、記念撮影にとカメラを取り出した。



駅からの景色はこんな感じ。64はいなくなってブルサンが頑張っていた。
2009,2/7   篠ノ井線   姨捨   EOS5D  24-105mm


 駅を出て公園の展望台に着くとすでに30人以上。当然のことながらベストポジションは無く、仕方なくやや外れた林の隙間から望遠をニュルニュル繰り出して照準を調整した。



広角でガッと引き付けて、をやりたかったが、すでに場所は無く・・・。
2009,2/7   篠ノ井線   姨捨〜稲荷山   EOS5D  100-400mm



カボチャ色に輝く湘南色。
2009,2/7   篠ノ井線   姨捨   EOS5D  24-105mm

 この姨捨駅では10分の停車。退避もしながら観光停車も兼ねているんだろう。駅へと急ぐ。すでに169の周りには群がる人たち50名くらい。おやおや、前の人が写ってしまうとわめいているテツもいて、プチ罵声大会になりつつある。休日テツはイヤだなーと遠巻きに見物した後、駅出発を狙おうと構内外れのポイント付近で陣取った。ここでも記念撮影に来ていた地元ファミリーに罵声を浴びせるオヤジ一匹。もうやめてくれ・・・と思う反面若干ニヤニヤしながら出発を待った。



善光寺平が一望。嗚呼絶景かな。
2009,2/7   篠ノ井線   姨捨   EOS5D  24-105mm


 さて、姨捨出発を撮り終わると返しはどこで撮ろうかと初めて考え出した。イメージとしては篠ノ井線らしい高原の開けたカーブなんかを山バックで撮ってみたいと思うのだが、篠ノ井線で撮る経験はほぼ無いに等しいし、事前知識も仕入れていなかったので行き当たりバッタリに普通列車に乗りながら撮影地を探すことにした。ほどなくして下界から登ってきたのは東海の313だった。こんなとこにも来るようになったのかーと少々戸惑いながら真新しい313に乗り込む。サミットの長い冠着トンネルを抜けて高原地帯へ出るとすぐに撮影場所検索。車窓を左右に見比べながら、遠くに白く輝く北アルプスバックに撮れる場所はなかろうかとキョロキョロと挙動不審になりながらも撮影地を探すが、どうしも良さげなポイントは無く3つ目の駅の坂北に到着するアナウンスが流れると、左車窓の田んぼに10名ほどのテツの砲列が見えた。線路は緩やかにカーブしており、テツのいた反対方には北アルプスが遠望できる。しかしここは駅のほぼ中間地点である上に列車は駅進入直前に長いトンネルに入ったので徒歩で向かうならこの山を越えなければならない。坂北到着。ここにしようかと揺らぎ、降りちゃおうか、もう少し先まで探そうか考えたが意を決して下車してみた。駅前に出て周辺地図の看板を探したが見つからず、駅前に停まっていたタクシーでさっきの田んぼまで乗り付けてしまおうかと思っているうちに、到着した普通列車から乗り換える乗客を待っていたタクシーは、誰も客になり得ないだろうと諦めて回送で行ってしまった。歩くか・・。しかし今日に限って地図を持ち合わせていない。また携帯で表示できる地図は駅から500m四方まで。なんとなく勘に頼って、線路沿いの道を長野方に歩き出した。しかしすぐに線路から離れ、道はさらに細くなり山のほうへ九十九折で上り勾配に差し掛かっている。不安になりながらも小さい山を一つ越し、少し迷いながら40分ほど歩いて撮影地到着。丁度聖高原との中間地点であった。



陽は西に傾き始め、車両側面の影がちょっと怪しい感じになってきた。下りしなので練習。露出確認。
2009,2/7   篠ノ井線   坂北〜聖高原   EOS5D  100-400mm



奥は多分名峰、穂高山。編成全体を入れようとして引き過ぎた模様。山が目立たたんは、これじゃ。
2009,2/7   篠ノ井線   坂北〜聖高原   EOS5D 24-105mm

 山越えが面倒くさかったので、国道をまた40分歩き隣の聖高原に着いた。やって来た普通列車に乗り松本へ。ここから特急「スーパーあずさ」で帰ろうかとも思ったが、節約根性が出てしまい高速バスに乗ることにした。出発してすぐに缶ビールを開けてリクライニングを倒す。これこれ、車テツもいいけど、たまには列車移動でビールを呑みながらっていうのも、これまたオツかなって思った撮影紀行でした。