秋の風物詩、ロータリー車の試運転。通称”試雪”。雪山と紅葉とDD14が美しかった・・・。
2009,11/27 信越本線 脇野田〜北新井 EOS5D 100-400mm
ちなみにこの撮影地を引きで撮るとこんな具合。来年には新幹線の高架も完成すると思われ、間もなく見納めになるだろう。
さて、来たしまったからには追っ掛けする他はない。DD14本来の仕事になる「特雪」では、降雪やダイヤの状況に合わせて作業区間はもとより停車駅なども違ってくるため、このような試雪では全ての状況に合わせて試験しておく必要があるという。というわけで二本木や関山のスイッチバックにも入線するので、これらも是非収めておきたいシーンだ。バイパスを飛ばし新井市街を通過。スイッチバックの二本木に到着すると、踏切が鳴り始めていた。
除雪作業が想定される区間ではちゃんとウィングを開いて動作確認。
2009,11/27 信越本線 新井〜二本木 EOS5D 100-400mm
この踏切を通過した列車は数百m先の本線上で停車し、後退して二本木駅構内に侵入する。駅構内での転線を撮影しようと駅に向かうとすでにバックを開始して入線を開始している。もう間に合わないので駅撮りはやめて、さらに先を目指すことにした。次なる撮影地は二本木〜関山の妙高山バック。麓での撮影は2008年の特雪でやったことはあるが、線路の向こう側の丘に登れば雄大なパノラマの向こうに妙高山がバックで写し込める。ここは今回絶対に外したくなかったポイントなので、二本木での駅撮りは諦めたのだった。カーナビに頼って現地到着。ん〜スゴイ。想像以上に雄大な風景だ。それより驚いたのがカメラを構えるテツの数。今日初めて出会ったテツは総勢20名以上と思われる。こんなところに皆さんいたのだと少々驚いた。20分ほど待っただろうか、少しずつディーゼルの排気音が大きくなり、ゆっくりとDD14が姿を見せた。
本来は下り用の撮影ポイント。というわけで後追い。冬には素晴らしいロケーションになるだろう。
2009,11/27 信越本線 二本木〜関山 EOS5D 24-105mm
よし、次は関山だ! 関山駅にはかつて使用されていたスイッチバック跡が今でも残り、通常では定期列車の入線はないものの保線車両が時折使用する程度であるが、本番の特雪ではダイヤの都合から関山スイッチバックに入ることもあるそうで、試運転を実施しておく必要があるのだろう、事実昨日の試運転でもスイッチバックに入った模様である。
関山に到着するとすでにDD14は本線ホーム上に停車していた。野太い音のアイドリングをしながら日差しを浴びて休んでいる。やがて追っかけをしてきたであろうテツが大挙して押し寄せ、にわか撮影会状態。下り普通列車と交換すると、いよいよ直江津方のDD14332のヘッドライトが点灯、バックを開始し本線から離れ、使われなくなった廃ホームに滑り込んだ。
まずは本線上に停車。普通電車と交換するとスイッチバック入線の準備が整う
2009,11/27 信越本線 関山 EOS5D 24-105mm
ソロリソロリと動き出した。秋ももうすぐ終わり、厳しい冬がやって来る。
2009,11/27 信越本線 関山 EOS5D 100-400mm
そして始まる大撮影会。この旧関山駅ホームは1985年に廃止になった。
2009,11/27 信越本線 関山 EOS5D 24-105mm
「具合はどうだんべ?」 近年では機関の調子が悪いDD14が続々と廃車になり、健康管理も試雪の大切な仕事。
「あ、あぶらのみぐちぃ〜!?」 なるほど給油口ですね? DD14は軽油が大好物。
(左)直江津方 DD14332 側方投雪型 (右)長野方 DD14327 前方投雪型
数十分間停車したのち、乗務員たちが機関車に乗り込み始めたのでそろそろ出発の時刻だろう。気が付くとあれだけいたギャラリーはほとんどいなくなり、先回りに走っている様子。正確なダイヤが分からないこのような事業列車は現場の雰囲気で動き、撮影のため追っかけすることがよくある。関山市街を抜け2008年2月に特雪を撮った築堤上のカーブで撮ろうと思ったいたが、現場に着くとこの季節では藪が多すぎて全く線路に近付くことができなかった。別の場所を探そうにももう時間がなく、右往左往しているうちに田んぼのはるか向こうからヘッドライトが近づいてきた。とっさに車を止め、カメラを抱えて線路際までダッシュ。構図もクソもないので勢い、スローシャッターに任せて流しを狙ってみた。
なんだかいい雰囲気になった。狙うと外れ、狙わないと当たる最近の自分。
2009,11/27 信越本線 関山〜妙高高原 EOS5D
100-400mm
再び車を急発進。追撃を試みたが、線路と国道が離れて並行しているこの区間のために完全にDD14を見失ってしまった。諦めて妙高高原駅に直行すると、すでに試雪は到着していて峠越えの前の態勢を整えているようだ。ここでも何分間停車するかもわからないため、出発信号が開路を作ったらすぐに出発して先回りをしよう、と出発信号を注視する。やがて現示が青に変わったことを確認して車を走らせた。ここからは峠に向かう登坂。これは線路も一緒で列車のスピードも上がらないだろう。そろそろ撮影できるところを探さねばと思い始めた時、DD14は猛烈なスピードで追い越して行った。やられた・・・。この先の道路はもう九十九折りだし、駅停車で追い越そうにも次が試雪の目的地の黒姫なのでそれも無理。往路の撮影は終了した。のんびりと黒姫駅へと向かいDD14に再会。ここで1時間ほどの停車ののち折り返すそうなので、駅前のスーパーで昼飯を買い、帰路の撮影の準備を開始。線路沿いに走り、気になったところで車を降りロケハン・・・。こんなことを繰り返しながらインパクトのある一本の紅葉の木を見つけて、ここで撮影することにした。
「ママ〜ン。あれなぁに?」「坊や、よく見ておきなさい。あれは冬神様よ・・・」 と言ったかどうだか。黒姫での折り返し待機中。
2009,11/27 信越本線 黒姫 EOS5D 100-400mm
側方投雪332号機。今年こそ地元の方の生活が困らない程度にDD14が活躍して欲しい。
2009,11/27 信越本線 黒姫〜妙高高原 EOS5D 100-400mm
ここで試雪を見送って今日は撤収することにした。さらに直江津まで深追いすることは出来たが、明朝早くから仕事なのでキリをつけたのと、何より今回の撮影行が満足したためだ。
ここで簡単ではあるが、近年の特雪について簡単に解説しておこう。数年前までJR東日本管内ではDD14、DD53、DD19のロータリー式除雪車が各線で活躍していた。DD53は記憶に新しい2005年の豪雪で出動したのを最後に実質休車状態。DD19は2008年に奥羽線(山形新幹線)での作業を最後に廃車。ついにDD14のみが残された形になった。しかし2008年に投入を開始した除雪機械であるENR1000が各地で配備を開始。2009年にはENRの配備が完了し多くのDD14が廃車となった。残されたDD14はたったの3両。今回の信越本線用DD14327とDD14332、あと津軽線用のDD14310のみになってしまった。ではなぜ信越本線と津軽線のみに残される形になったか? それは2年後に控えた並行する新幹線の開通に起因する。JR東日本では北陸新幹線開業後、並行する信越本線の一部区間を第三セクターに移管すると発表した。JRの経営を離れる路線に、1機数億円するENRを配備するのはたしかに勿体ないので、やむなくDD14を残しているものと思われる。しかし近年は暖冬が続き、特雪の活躍もあと2、3年の期間であろう。例年特雪の運転回数は多くても3,4回。また最近の暖冬の影響のため、今後の運転回数は片手で数えられるくらいだろう。それをあと一回でもいいから記録に残せたらとつくづく思う。頑張れ!DD14。