(国鉄色番外編) 栄光の500系のぞみ最後の活躍

2009,12/29

 世界最速300km/hでの営業運転で華々しく登場した500系新幹線。高速運転に対応すべく空気を切り裂くためのスラントノーズや航空機を思わせる特徴的な外観に一般人を含めて多くの人が魅了されてきた。シロウト目にもカッコいい!時代遅れの列車を専門とするこのオレにとっても文句なくカッコいいと思える。しかし登場から10数年。ただ単に「速い」だけでは時代が許さなくなってきた。よりエコロジーで居住空間の快適性を追求した700系やN700系が登場すると、しだいに500系の本来の使命である最速新幹線の座から姿を減らし始め、ついに先月、東京乗り入れの1往復が減便され、とうとう栄光の東京〜博多のぞみではたったの1往復になってしまった。また2010年春のダイヤ改正では500系の東京乗り入れが廃止され、今後は山陽新幹線区間でこだまとして使用されるという。誉れ高きフラッグシップが社会の変化で10年ちょっとでローカル運用とはなんとも皮肉なものか。生まれる時代を間違えたとしか言いようがない。栄光ある500系「のぞみ」の最後の姿を取るべく牧の原に向かった。

 500系のぞみを狙うには別に早朝現地入りしなくてもいいのだが、当然深夜割を利かせるために真夜中の東名高速を行く。牧の原SAで仮眠しようと駐車場の一番隅に車を倒して寝ていると、突然、車のウインドーを激しく叩く音で目が覚めた。飛び起きると外には暗くてよく見えないが5,6名の男女が車を囲んでいるのが分かった。とっさにドアロックをして窓を数cm開けて会話をする。20歳くらいと思われる青年が話しかけてきた。「あの〜ボクたちヒッチハイクで旅しているんですけど、京都まで乗せていってくれませんか?」と笑顔でのたまわってきた。人の好意を頼りに旅をするヒッチハイク自体、私は嫌悪して止まない上に、このようなアプローチの仕方など常識を逸している。実はすぐ次のICで降りるのだが、あえてそれを言わずに、わざと冷たく断った。すると彼らはまた集団でゾロゾロと駐車場を移動しながら他の車にも同じように窓をドンドン叩いて陳情するのだった。「方法を考えれっつうに・・。ゆとりがぁ」と思い今度こそ熟睡モードに入った。

9時起床。空は雲ひとつない絶好調の快晴だ。SAから次の相良牧の原ICで高速を降りて撮影地を目指した。東海道新幹線有名撮影地である205キロポストだ。初めての訪問なのでアクセスに若干不安はあったが、その心配は無用だった。車で現場に差し掛かると裸の荒山に何本もの三脚が立っていたのだ。そして自分もその仲間に入る。なるほど、茶畑をバックにトンネル飛び出しを狙うことができる、いかにも静岡っぽい情景だ。500系充当の「のぞみ6号」まで30分。さすが天下の東海道新幹線だけあって通過列車は多く、いくらでもレリーズタイミングの練習ができる。3,4本やってみて感覚を掴んだところでいよいよ本番になると、いつものように気付くと青空は憎き雲に埋め尽くされていた。


300系。すいません図鑑のような写真で・・。



700系。この頃からだんだんとスタイルより環境配慮が優先されるようになり、不細工になってゆく。



N700系。ここまでくるともうなんだか・・・。



そして本命登場。500系最後ののぞみ運用に就くW8編成。幸い面には陽が当った。
2009,12/29  東海道新幹線  静岡〜掛川  EOS5D  24-105mm


 危うく陰ってしまいそうだったが、なんとかセーフ。この後は今通過した「のぞみ6号」が、東京で折り返してくる「のぞみ29号」を、新富士〜三島の富士山バックで撮影することに決めていたので、すぐに撤収して車に乗り込もうとした時ふと思った。本日は12月29日。年末の多客臨輸送で500系のぞみが定期の他に、さらに下り2本、上り1本が設定されている。下りのほうが1本多いのでペアにならない上りの送り込みは既設の臨時スジを回送扱いでやっていることは容易に想像つく。だとすれば回送500系通過は1時間後。これを抑えてから下り臨時を富士山バックで狙ったとしても間に合うことになる。もう一度裸山に戻った。三脚を広げていた一行はすでに撤収し、ポジションは選び放題。違ったアングルを、とその斜面の最上に登り俯瞰で線路に照準を合わせた。すると一緒に待っていた方からこんな話を聞いた。彼は以前、夏臨、春臨ともにこの送り込み回送を狙っていたそうである。時刻表には載っていない回送なので他のテツがいないので非常に撮りやすい列車なのだそうだが、毎回毎回この205kポストではカブられるという。200キロ以上で走る新幹線、数秒誤差があれば何100メートルもずれてしまうのに、そんなピッタリここで離合することなどあるかいな?と思っていると狙うべき回送500系の通過時間になると本当に背後と前方から列車の音が聞こえ始めてきた。



本当に700系がカブる勢いだった。なんて正確なんだろう日本の新幹線。
2009,12/29  東海道新幹線  静岡〜掛川  EOS5D  24-105mm




この205kポスト全景。収容人数は100人でも大丈夫そう。
2009,12/29  東海道新幹線  静岡〜掛川  EOS5D  24-105mm


 500系を撮影後、上記の記念撮影を済ませるとそそくさと車に乗り込み今度こそ東名のインターへ急いだ。カーナビの到着時刻は通過予定時刻の20分前。もしインターを降りて渋滞があったり迷ったりすれば一発でアウトだ。清水ICを過ぎてトンネルを抜けて駿河湾に飛び出す。真正面に現れた富士山は姿を半分ほど雲に隠れ、教科書のような富士山ドッカンでの新幹線サイドビューには到底及ばない様子。ちょうど眠気も限界であったので富士川SAで仮眠を取り、撮影はあきらめて一般道をのんびり東に向かって帰ることにした。




目が覚めると富士山は雲の中・・・。
2009,12/29  富士川SAにて