桜がキレイそうなので出かけてみた。中央線201系。
2009,4/10

 先月中旬の米坂線訪問から仕事が忙しく、ここ1ヶ月くらい全くテツできなかった。気がつけば首都圏の桜もエピローグを迎え、このまま近場での桜&列車撮影は行けずじまいかと思われた。しかし連日の勤務が一段落し、ようやく首都圏の桜に間に合いそうな4月10日、ついに完全なるOFFを手に入れた。しかし急に休みが出来てしまうと撮影対象に迷ってしまう。いろいろ思い悩んで中央本線の都心の桜と、終焉間近の201系を絡めてみることにした。これも立派な国鉄色。この季節になると、よく山手線内の中央線のどこかの区間にお濠と桜並木の写真が登場する頃。そんなあいまいな印象だけで前日に地図を軽く調べただけで出撃することにした。 滅多に行かない都心での撮影なので、駐車場所なども考えて散歩感覚で珍しく電車で行くことにした。しかし201の運用などは全然分かっていない。また何本の201系が残っているかも知らないので、どのくらいの頻度で201がやってくるかも謎のまま。こんな無鉄砲な計画で京急、都営三田線を乗り継ぎ水道橋に着いたのは午前9時半。地下駅から地上に出ると、ちょうどオレンジ色の中央線201系が目の前のガーター橋を渡って行った。「なーんだ」。あっさり201に出会うことができたので、まだ本数は残っているかもと少し安堵して車内から撮影地を探すため、とりあえず中央線緩行に乗ることにした。もう満開にはすでに遅いが、意外に結構ピンクの花びらは残っている。千駄ヶ谷で折り返し、もっとも画になりそうな市ヶ谷で下車した。するとすぐに東京行き201が通過。今日この短時間で2回も201を目撃したので、ショット数も稼げそうだし今回は楽しいハイキングになりそうだ。電車で来ているし、気ままにカメラ片手に街を歩く。たまには文化的な休日もいいもんだと思った。

 今東京行きが行ったので、201はあと20分後にはすぐに戻ってくるだろう。お濠に設けられた風情豊かな釣堀があったので、のんびり糸を垂れる釣り人と絡めて撮ろうかと構図を決めているうちに、意表をついて201が折り返してきた。不意打ちを喰らったせいでカメラを取り出す間もなく、敢え無く見るテツ。すぐにまたやって来るのだろうと交差点の片隅でお濠を手前に遠望する線路を望める構図でセッティングを開始した。しかし人通りが多い。ここが新潟とかなら躊躇なく道端で三脚を全開にし、レリーズ片手に一服しながら列車を待つといったところだが、何せここは東京のど真ん中。ちょっとうつむき加減で「桜がキレイなので撮りにきました〜」的な一般のアマチュア写真家を装いながら201を待つことにした。こんな状況を予測してキモヲタの影をなるべく消そうと今日は眼鏡ではなくコンタクトを入れて来た。こんな小心者の自分がちょっと好きかも・・と思いながら。

 しかしそれから時間は流れても一向に201のオレンジの車体は姿を見せない。あの2本立て続けは偶然だったのか?1時間ほど経った頃、いかにも昼休み中のサラリーマンらしき風貌の男性が話しかけてきた。「何時ごろからここにいますか?201は行っちゃいましたか?」と言いながら一眼レフを取り出した。「ほほぉ〜おヌシもお好きですな〜」と心の中で思いながら情報交換。1時間ほど待っているが、201は来ないと言うことを伝えると、オレの欲していた情報をくれた。今残っている201は2本のみでラッシュ時をのぞいて1本しか通常稼動しないこと。東中野の桜並木がキレイだということ。ということなら朝見た201の2本は今日運用に就いている全てだったということになる。朝の列車がどこ行きだったかは確認できないが、例えば高尾折り返しなら往復で2時間。そろそろやって来てもおかしくない時間である。

 そろそろ都心の交差点の一角に陣取ってから3時間が経とうとしている。昼休みサラリーマン氏も運用は把握していないので、一緒に待ちながら「アレ〜来ないっすねぇ〜」などと話し合っていると、にわかに我々の周辺にはそこら辺の通行人のそれとは全く違ったギラギラした目でうろつく男達が数名いることに気がついた。テツかな?と思っていると、うち一人が三脚と一眼レフをセット。他の怪しげな男達もそれぞれ配置に付き始めた。自分の隣で露出計を使って太陽の方角を何度も確認している男に聞いてみた。「えーっと今日は○○運用であと10分くらいでやってきますね」とのこと。知っている人は知っているんだなと関心しながら、自分も露出を確認するため何度かシャッターを切って待機した。やがて背後から待ちに待ったオレンジの201が姿を現す。キタッ! しかし手前の緩行線の電車が市ヶ谷駅を出発して加速し始めると、徐々に同方向の快速線の201が接近してきた。一同、イヤ〜な予感は的中した。



カブッた。3時間待ってやって来た201は仲良くE231系と並走を始めた。こんな事って有り得るのかと笑ってしまった一瞬。
2009,4/10   中央本線   市ヶ谷〜飯田橋   EOS5D  100-400mm


 一同爆笑。でもあと15分後には東京から折り返して来るので、それは絶対に外せない。しかしカブるのは運任せなので祈るのみ。やがて散りかけの桜の向こうから2つのヘッドライトが見えてきた。







一番奥の快速線下りを通るのでカブるリスクは3倍。幸いに大事に至らなくて良かった。
2009,4/10   中央本線   市ヶ谷〜飯田橋   EOS5D  100-400mm


 ひとまずホッとした。気が抜けたのと3時間も待ち続けて疲れきっていたので帰ろうと思った。5分後か1時間後に来るか分からない列車を待つだけならまだしも、撮影のためにカメラとビデオの二段構えで常にスタンバイもしていなければならないので、本当に気が抜けなかった。しかしここからが悪いところ。いつものようにコマ数を稼ぎたいと邪心が出てきてしまう。今撮影したプレビューを最大にして列車の方向幕を確認。なんだか「青梅」と見えるような見えないような・・。携帯で乗り換えナビを検索すると今の201は青梅特快のようだ。時刻を調べて順当に青梅で折り返してここに戻ってくるのはまた3時間後! まだ陽もあるだろうしもう一発行けちゃうじゃぁないか。とりあえず腹が減ったのとタバコが吸いたいので、駅前のマックに入り小一時間ヒマを持て余す。やがて店を出て違うポイントを探してみた。歩き始めて10分。飯田橋寄りのお濠に桜と菜の花がきれいな土手を見つけた。侵入。怒られやしないかとヒヤヒヤしながら、なるべく通行人から目立たないよう急な斜面に腰を下ろす。しかし急傾斜過ぎて常に足を踏ん張っていなければならず、こんなことならどこかで時間を潰してれば良かったと後悔しても、お濠からカメラを持った怪しい人間が突然登場すれば通報されかねない。仕方なく無理な体勢を取り続けること2時間。足の筋肉がプルプルしてきた頃、オレンジバーミリオンの車体が姿を現した。







ビルの谷間では日が翳るのが早い。手前の菜の花は翳ってしまったのでスピードライト同調。
2009,4/10   中央本線   市ヶ谷〜飯田橋   EOS5D  24-105mm


 通過後、斜面をよじ登り細心の注意を払い、街中に戻る。すぐにまた東京で折り返してやってくるので、近くの跨線橋の上で本日最後の201系を狙うことにした。



圧巻の対岸の桜のボリューム。201系にとっては最後の花見になってしまうのか!?。
2009,4/10   中央本線   市ヶ谷〜飯田橋   EOS5D  24-105mm


 1日で4発撮れた。期待していなかった分、かなり満足した。初めて訪れた都心の中央線だったが、カメラ片手にプラプラ歩くのにはもって来いの被写体だったと思う。運用も残り少ないんでガツガツしなくて済むし、何より都心の中のオアシスのような水場近くで生活する人や街の表情がとても豊かだったのが印象的だった。自分も今日は電車で来ているし、いつもとは違った「文化的な休日」を過ごせたような気がした。