日本の秋。国鉄色の秋・・・
2008,10/7
 横浜を経って1時間半。13時40分、東名高速を降りて国道1号線に出てひたすら西進を開始する。今回は遅ればせながら10月になって5連休の夏休みが取れたので、なかなか行けない領域である西日本の国鉄色を巡る旅に出た。広い静岡県を一般道でかわし、すっかり暗くなった頃、愛知県に入った音羽蒲郡ICで東名に再び乗った。ETCの通勤割のギリギリの範囲である鈴鹿インターで高速を降り、無料高速で名高い名阪国道へ。西名阪、阪和道を経て、明日の一発目の目的である阪和線山中渓に程近い泉南ICを降りたのは22時近くになっていた。初め無人駅の山中渓で駅寝しようかと思ったが、意外にも周辺に人家が多かったことと、閉じめができる待合室がなかったことで駅寝はやめて、過去に2度ほどお世話になったことのある南海フェリーの和歌山港の待合室で寝ることにした。ここは四国徳島行きのフェリーが24時間運行で出航しているため、待合室が夜中でも開いている、まさにエスケープゾーンである。雨も降ってきたのでちょうどいい。港に到着するとすぐにベンチに横になり朝を待った。


いつもお世話になっています。和歌山港のフェリーターミナル  (携帯電話のカメラで撮影)

本日の走行距離 577km



2008,10/8
 
 朝5時半起床。狙うべき「はんわライナー」まであと1時間ほどであるが、予想外に暗い。真っ暗だ。関東に住む人間からすると、標準時に近い関西地方の日の出は遅く感じる。やや心配になりながらも小雨の降る中出発。ガソリンを入れて、目的地の山中渓に着いた。「はんわライナー」は現在、唯一の国鉄色を堅持する381の定期運用で、今回の旅には外せない対象だった。しかし雨は上がったが未だ露出を得られる明るさは無い。峠周辺の撮影地を探していたが、どうしてもいい場所は無く、敢え無く直線を臨む踏切で撮影することにした。



写真では判らないが車体はボロボロ。次回全般検査は通すんだろうか?
2008,10/8   阪和線   山中渓〜紀伊   EOS5D  100-400mm



関東ではすでに引退した低運転台の103原色がまだ主力。もちろんこれも国鉄色。
2008,10/8   阪和線   山中渓〜紀伊   EOS5D  100-400mm

 これにて阪和線の撮影は終了。次なるターゲットは明後日から運転される「あまるべマリン」キハ58の送り込み回送があるので、思い出深い因美線で撮影するため、阪和道、中国道を経由して津山に向かった。津山ICで降り、10数年前、幾度も訪れた因美線高野駅へ。かつては1日5往復の急行「砂丘」がタブレット通貨授受をしていたが、「砂丘」も廃止になり輸送密度も減ったことから、因美線の主要駅のほとんどが棒線化され、この高野も例外ではなかった。気持ちよく秋晴れになった高野に到着。駅前にコスモスが咲き乱れる穏やかな駅。しかし往時とは比べ物にならないくらいに列車密度は減り、気持ち駅前は閑散としているように思えた。事実、10年前によく食料を仕入れた駅近くの雑貨店は潰れており、ここだけではなく再訪したら無くなっていた個人商店や銭湯、食堂は多数目にしてきた。まだ時間もあったのでスナップ撮影。キハ58の回送の撮影場所を考えた。


かつては有人駅で活気のあった高野駅。一年草のコスモスはそれを知らない。
2008,10/8   因美線   高野   EOS5D  24-105mm


ホームには受器の跡が残っていた。兵どもが夢の跡・・。
2008,10/8   因美線   高野   EOS5D  24-105mm

 撮影場所は隣駅の美作滝尾に決めた。ここは古い木造駅舎と素朴な佇まいが気に入っていた場所だ。美作滝尾は通票扱いの駅ではなかったが、当時、委託のじいさん駅長が居て、列車通過の度にホームで監視の真似事をしていた。あのじいさんは居るのかな?それも確かめたくて美作滝尾に向かった。駅に到着するとテツはいなかったが、観光なのかマニなのか、カメラを持った3人のオッサン連中が駅周辺をウロウロしていた。オレは広角で撮りたいんだよー。どうかウロウロしないで大人しくしていてくれという願いも虚しく、通過直前にファインダー内に一人が現われてしまった。


開業当時の木造駅舎健在。じいさんは居なくなって無人駅になっていた。日の丸と松の木がいい味出してる。
2008,10/8   因美線   美作滝尾   EOS5D  24-105mm


線路っ端の家庭菜園。左からナス、大根、キャベツ、ニンジン、落花生、ネギ。なんでもアリ。見ててオモロイ。
2008,10/8   因美線   美作滝尾   EOS5D  24-105mm


木製のラッチが残る。ただ「男はつらいよ」のロケ地になったそうで、人工的に保存対象になっているのが残念。これが自然残存なら100点満点。
2008,10/8   因美線   美作滝尾   EOS5D  24-105mm


製作当時は技術がなかったため、歪んでいるガラス窓。戦前に作られたことを偲ばせる。
2008,10/8   因美線   美作滝尾   EOS5D  24-105mm


マニアには堪らない土壁の駅舎。自分も見たのは生涯5回目くらい。
2008,10/8   因美線   美作滝尾   EOS5D  24-105mm


昭和の駅舎と昭和の気動車。
2008,10/8   因美線   美作滝尾   EOS5D  24-105mm





おっさん。邪魔だよぅ(´・ω・)




おっさん消してみた(・∀・)


 1時間ほど美作滝尾で過ごし国鉄色58を見送った。因美線はこの先、県境の物見峠越えのため急カーブ、急勾配の連続する山岳路線になる。そのため列車のスピードは出る訳もなく、時刻表で距離と所要時間を計算すると表定時速30`前後なので、一瞬追っかけも可能かに思われるが、因美線と並行する県道は林道のような細く曲がりくねった隘路であるため、こちらもスピードは出せず追っかけは厳しい。そこで国道の那岐峠へ大迂回をして、鳥取県側でもう一発撮る追っかけを敢行した。美作滝尾で撮影後、拡幅されたバイパスのような国道で峠を越え、那岐駅手前のS字俯瞰に余裕で先回りして到着した。過去に一度訪れたことがあったので、S字を見下ろせる場所はすぐに分かった。トランクから撮影機材を出し勝利のセッティング。おもむろにガードレールの上に立ち、もうすぐやって来るキハ58を頂戴しようとファインダーを覗きズームを繰り出し遠望すると、線路のように見えたS字は実は農道であることが分かった。訪問歴もあったので油断しきっていてこの誤算。10年前の記憶はあいまいだった。すぐに撤収して本当の目的地であるS字俯瞰に到着すると同時に、順光の美しい築堤を国鉄色がゆっくり下ってくるところだった。最悪・・。もう間に合わないので那岐の5分停車を利用してさらに先行し、一つ先の土師駅に到着。しかたがないのでここで撮影することにした。



2008,10/8   因美線   土師   EOS5D  24-105mm


 さらに追っかけは続く。因美線から山陰線へ。鳥取の出発時間が分からなかったが、次なる撮影地に程近い居組の通過時間は分かっていた。おそらく鳥取に1時間以上停車するのだろうから、市内で給油し、いつも通り補給量と走行距離をなんとなく計算すると驚愕の燃費が出た。正確に計算すると37.9km/l。前愛車のMF08では、どんなに頑張っても33km/lが限界だったのに。乾燥重量200kg + 撮影機材満載 + 生活用具満載 + 地図、資料など + オレ・・・を運んでこの燃費。おそるべし4バルブ!! 一度この燃費を体感してしまったので鳥取を出発する頃にはすっかりエコラン運転していた。普段はしないアイドルストップなどもして。話は逸れたがしばらく走り東浜の日本海バックに到着。ここも昔、来たことがあったのですぐに場所は分かったが、ちょうどこの撮影ポイントは国道のバイパス新設工事をしていて、片側交互通行の規制中の真ん真ん中だった。片側交互通行は最後の車の特徴やナンバーを係員が伝え合って閉塞を確認するため、自分が最後になって規制の途中でいなくなって写真を撮っているとトラブリそうだったので、最後の車両にならないよう路肩で何台か後続の車を先行させて車列の中に紛れて、撮影ポイントでシラばっくれることにした。先客は2名。「こんちはー」とのん気な挨拶を交わして混ぜてもらう。乾いた秋の海風と、傾いてきた太陽光が山陰特有の黒瓦の家々をギラリと照らす。キモチイイ♪ 露出確認のため何度かシャッターを切って58を待った。



練習。更新車だが遠目には違和感無いタラコ色。
2008,10/8   山陰本線   東浜〜居組  EOS5D  24-105mm



ここを通る国鉄色は何年ぶり!? 初秋の日本海を往く国鉄色。
2008,10/8   山陰本線   東浜〜居組  EOS5D  24-105mm


 撮影後、また片側交互通行の閉塞に注意しながら出発し、浜坂市街の外れにある七釜温泉に向かった。3年前に開館したという新しい温泉の木の香漂う、贅沢な源泉掛け流しの湯。夕暮れの露天風呂で茜空を仰ぎ見ると、上空をトンビが飛んでいた。ぬるめの湯なのでじっくり堪能できる。これで500円とは大当たりな気がした。地方にはこのような公営の温泉施設があったりして、自治体が威信をかけて作ったものが多く、低料金で快適。いつも空いているとあって本当に心の洗濯ができる。特に山陰や中部地方に多く、高い料金で混雑している有名温泉地よりも是非こういったB級温泉の方をお勧めしたい。2時間ほど長居した後、今晩の駅寝駅を探すことにした。浜坂のコンビニで弁当を買い、行き当たりばったりで久谷駅に到着。明日の撮影を考えると、アプローチの面からこの駅がベストだった。駅周辺は人家はなく、山肌にひっそりと佇んでいる名の無き駅といった風情。駅舎は汚かったのでホーム待合室を覗くと、これがとても快適な寝床だった。


一日一本。鳥取へと向かう特急「はまかぜ」が最後の列車。久谷の夜はいつも通り更けていく。
2008,10/8   山陰本線   久谷  EOS5D  24-105mm


本日の走行距離 419km


2008,10/9


 
一番列車がやって来た。天気予報は「晴れ」だが、「日照りの朝曇り」の言葉を信じたい。
2008,10/9   山陰本線   久谷  EOS5D  24-105mm

 一番列車到着前に寝袋を片付けた。これが一般乗客に対するマナーってもんだろう。完全な曇天で気が重かったが、やがて「ようよう白くなりゆく山ぎは」。唄のようにまるで山に後光が差し、空と稜線のコントラストが時間を追うに連れて次第に際立ってきた。今日は昨日追っかけた「あまるべマリン」の本番撮影に充てる予定だが、全2往復の一番列車が11時前と遅いので、のんびり行動できるのがありがたい。久谷周辺には自販機がなかったので、目覚めの缶コーヒーを飲むため餘部へ。名だたる有名撮影地であるがゆえ、この界隈で撮影するつもりは無い。架け替えの進む余部橋梁は、橋台にでっかいクレーンと、橋脚に巨大な足場が2本出来ていたため、なおさら写欲に欠けるポイントになってしまった。鎧周辺の海沿いの撮影地を探して海岸線を行き来するが、狙っていた海バックを探し当てることが出来なく、仕方なく朝、目をつけておいた国道からかろうじて海が見える、チラリ撮影地でまず1発目をいただくことにした。


きびしいかなこのアングル。背後の山に登れば海バックの大俯瞰が狙えるらしいが、登山1時間に心折れた。
2008,10/9   山陰本線   柴山〜佐津  EOS5D  24-105mm



2発目。何度訪問してもこの駅は和ませてくれる。
2008,10/9   山陰本線   鎧  EOS5D  100-400mm


3発目。寝台特急「出雲」で名を馳せた有名撮影地。矢田川橋梁。
2008,10/9   山陰本線  香住〜鎧  EOS5D  24-105mm

 

 矢田川橋梁で撮影後、今朝徘徊している時に見つけた線路端のコスモスの咲く場所に向かった。チラッと見ただけでどういう風に写るんだろうか。調理次第で何とかなりそうな気がして、そのコスモスの竹野の直線へと向かった。現着しバイクを降りて可憐に咲くコスモスに近寄ってみたが、案外花の勢いは無く、一番ボリュームのある撮り方は無いだろうかと、数10cm単位でチョコチョコと立ち位置を変えながらファインダーを覗いた。自分と同時にバイクの女性も到着。バックから一眼レフを取り出してコスモスと線路の位置関係を、自分と同様ちょこまかと調整していた。まだまだ絶対数は少ないものの、女性鉄道ファン=テツ子がイベントに姿を現すようになってきたのはここ数年のこと。10年前では絶対考えられなかったことで、大変嬉しく思う。一般的にもマスコミの影響で「鉄っちゃん」「テツ」という言葉が台頭化しつつあり、鉄道ファン=オタク=キモイという図式は以前よりはるかに減ったとは思うものの、まだ堂々と「オレ鉄道写真撮るの好きなんだ」とは言い辛い世の中である。しかし一般人にはそういう偏見を持って欲しくないので、自分は行動にはかなり気を付けていると自負できるのだが、いかんせんそういう自覚のない人たちもいるのが現実ではある。駅ホームでカメラ片手に走り回る。ブツブツ独り言を言う。他人とコミュニケーションが取れない。空気を読めない・・・。こういう人種がいる限り、この世界は世間から完全に迎合されるわけはないし、疎んじられるのも仕方が無いと思う。と、まぁ頑張れよ!テツ子! と心の中でエールを送った。。




練習「はまかぜ」。早くこの181と583を国鉄色に戻さないかな? 期待してますよ!西日本!!
2008,10/9   山陰本線  竹野〜城崎温泉  EOS5D  100-400mm



本番「あまるべマリン」。あえて花ピンにしてみた。少しは芸術写真っぽくなったでしょうか?
2008,10/9   山陰本線  竹野〜城崎温泉  EOS5D  100-400mm

 まだ明るいが本日の撮影は終了。明日は北陸本線で475国鉄色と485「雷鳥」撮影のため、北陸に転戦する。北近畿タンゴ鉄道に沿って舞鶴へ、今度は小浜線沿いに東進した。途中小浜のすき屋で飯を食い、敦賀から北陸道で1区間乗り、明日のメイン撮影地、今庄ICで降りた。今日は今年4月に訪れた際、南今庄が駅寝出来る待合室を備えているのを確認していたので、ここで駅寝することにしていた。撮影地のアクセスも良さそうだし、街も遠く離れているので静かな駅寝ができると期待してのことだ。さすが幹線だけあって最終列車の時間は遅く、23時過ぎまであるので、まだ寝袋を敷いて横になれなかったので、駅前の休憩所のようなところで携帯とカメラのバッテリーを充電しながら、ビール片手に携帯で今日の運用をチェック。運がいいことに、明日の朝は敦賀で475国鉄色が熱い運用になりそうだ。しばらくして近所に住むというおばあさんが列車でやって来る孫を迎えに来たとかで、話しかけてきた。数年前の豪雪のこと。昔の旧線の話。よくカメラを持ったテツがこの辺で写真撮っているけど北陸本線は廃止になるのかと心配でならない、などしばし世間話をした。いやいや、ここを走っている昔の色の電車が懐かしくて皆んな遠くから写真を撮りに来るんですよ。と伝え、しばらく話していたかったが、さっき調べていると間もなくやって来る福井行き普通電車がA19編成国鉄色であったので、おばあさんに別れを告げホームに移動。バルブの準備を始めた。


デカ目と60Hzの識別帯。駅寝と国鉄色。時刻表とビール。こんな旨い酒はありませんね。最高!
2008,10/9   北陸本線  南今庄  EOS5D  23-105mm



間近を轟音を立てて通過する貨物列車を他所に、快適に熟睡。(南今庄  携帯カメラで撮影)


本日の走行距離 353km



2008,10/10


 朝起きて速攻移動開始。まだ陽は完全に昇っていないのでどうでもいいカーブから昨日の475を狙った。この最初の475を撮影後、今日の撮影の舞台となる、この今庄付近で撮影すべく、ロケハンを開始。次のターゲットである、「日本海」まで1時間ほどしかないが、2駅先の湯尾を過ぎると、順光の山バックのきれいなソバ畑が広がっていた。また今年春に485「雷鳥」撮影の際に訪問した、北陸トンネルの飛び出しも、是非おさえておきたい物件であったので、それもプランに入れながら、効率のいい撮影計画を立てた。光線状態、通過時間、移動時間などを考慮し、最大限に手中に収める行程を編み出した。こんな時だけは頭脳フル回転。仕事中や普段の生活ではこんなに頭を使うことはないかもしれない。



まずは記録のため編成写真。
2008,10/10   北陸本線  南今庄〜今庄  EOS5D  100-400mm



写真奥のソバ畑では軽トラが止まっていて農作業の準備をしているらしく、ちょっとバックして寝台特急「日本海」。
2008,10/10   北陸本線  湯尾〜南条  EOS5D  100-400mm



「雷鳥」通過前に軽トラが退いてくれた。30年来、毎秋展開されてきた特急街道、北陸本線の情景。
2008,10/10   北陸本線  湯尾〜南条  EOS5D  100-400mm



敦賀へ朝の通勤輸送を終えて戻ってきた475系A19編成。同じ国鉄色であるA16と6連を組んで走る勇姿を見てみたいもんだ。
2008,10/10   北陸本線  湯尾〜南条  EOS5D  100-400mm



メチャメチャ天気も良く露出も上がるため、ISO50にして1/20秒の世界。ソバの花の絨毯を快走する。
2008,10/10   北陸本線  湯尾〜南条  EOS5D  100-400mm

 このソバ畑はいたく気に入った。日本海、雷鳥、475もここで押さえることが出来たので、次なるポイント、ここに来る時気になった踏切脇のコスモスの群生に向かってみよう。今庄駅構内の北側の踏切周辺には、誰かが植えたのか、自然発生したのか、コスモスの花畑が風に揺れていた。コスモスを踏まないように注意しながらその群生の中に分け入り、あおってみたりレンズを付け替えてみたりしながら、なんとかこの美しいシチュエーションと国鉄色を同時に上手く画に出来ないかと試行錯誤を繰り返しているうちに踏切が鳴った。さっきのソバ畑の流し撮りの際にISO50のままだったので、今度は花ピン列車流し+スケベアングルで決めることにした。貴重な国鉄色。かっちり描写することも必要だとは思うが、こういう遊び心も大事じゃないかと最近よく思う。とても贅沢な大人の遊び・・・。



駅進入直前のため速度も遅く流れてくれるか心配だったが、成功。秋らしい雲と乾いた風がキモチイイ!
2008,10/10   北陸本線  今庄〜湯尾  EOS5D  24-105mm


 コスモスって「秋桜」と書く。春の桜とは似て非なるものだが、日本のそれぞれの季節を代表し人の心を打つ花という意味では同じだろう。古(いにしえ)の人は「オツ」な事言うな〜。これからお気に入りの撮影地にコスモスの種でも蒔いておこうか・・・と邪心が出てきた頃に、そろそろオネムの時間。午後の最初の475まで、南今庄の休憩小屋で1時間ほど昼寝。列車通過10分前に起きて、すぐ近くの北陸トンネル出口で撮影の準備をした。



延長10km以上に及ぶ長い北陸トンネルを抜けて「雷鳥」が飛び出す瞬間。若狭から越前の境界。
2008,10/10   北陸本線  敦賀〜南今庄  EOS5D 100-400mm



475も飛び出す。正面の埋められた方向幕は、冬、北国のトンネルポータルのツララで破壊されないように改造したもの。
2008,10/10   北陸本線  敦賀〜南今庄  EOS5D 100-400mm

 これにて本日の撮影はおしまい。明日はしなの鉄道で運転される急行色169のリバイバル「信州」の運転日。次なる目的地は長野県。14時頃、さんざん楽しんだ今庄を後にした。福井市から越美北線沿いに北上し、峠を越え長良川鉄道の終点北濃へ。また幾つもの峠を上り下りを繰り返しながら高山に着いた。雄大なスケールで続くワインディングロード。快適な高速コーナーが100km以上続き、走りを楽しんだ。バイクで来てよかった! 少々疲れた頃に道の駅で休憩していると暗くなり始めた。これから長野県へと山を越えるが、標高1400mを超す平湯峠ではだいぶ寒くなるだろうからと先を急ぐ。高山市内で給油後、平湯峠、安房峠を通過。松本に着いたのは20時近くになっていた。久々の都市の明かりを見てほっとした。とりあえず風呂入って飯かな?と松本市内を徘徊するが、風呂にはありつけず。諦めてラーメン屋を探した。いつもの悪い習慣で、旅に出てバイクに長時間乗りようやく都会に出ると、無性にコッテリ系のラーメンが喰いたくなる。今日も例外でない。松本市内にはそれなりにあるだろうが、移動中の国道沿いには目ぼしい店がなかったので、しばらく進んだ豊科市街でようやく家系ラーメン屋を発見した。好きな「カタメ」で注文したのに「コイメ」になって出てきたのはご愛嬌。久々のHighカロリーな食事を堪能した。ところで・・・今日の寝場所を決めていなかった。明日のリバ信州は是非浅間山を絡めて撮影したかったので、小諸近辺が明日の活動場所。しかし169は10時頃から動き出すとあってかなり余裕がある。篠ノ井線のどこかの駅で寝ることにし、今日何度目かの最後の峠越えに挑む。篠ノ井線の駅の中では、地図上最も周辺に人家の少なそうだった、冠着(かむりき)に到着。着いてみて、オレのこの駅寝的直感は本物だと再認識した。超快適。最終列車まで1時間ほどあったので、ビールを呑みながら明日の計画を練ったり、交換のため停車したEF64重連の貨物が触れる位の目の前に停まったりして萌え萌えしながら楽しい夜を過ごした。



山間の静かな駅で呑む酒はサイコー!! (冠着  携帯カメラで撮影)


本日の走行距離 371km



2008,10/11


 朝6時起床。空は今にも泣き出しそうな曇天だった。細い県道で上田に抜ける途中、ついに雨が降り出した。上田市街から国道のバイパス的役割の浅間サンロードを飛ばすが、雨足はさらに強くなり、本降りになってしまった。そういえば信越本線碓氷峠廃止の時、何度もこの地を訪れたが、いつも雨か濃霧だった気がする。小諸のコンビニで朝飯を食いながら、今日の撮影行程を考えた。本来の目的は澄み渡った秋空の下、この地の象徴でもある浅間山をバックに快走する国鉄急行色169系。しかし小諸という至近距離からも浅間山は全く姿を見せなかった。信濃追分駅で雨宿りがてら休憩。予想していたよりテツは駅に2,3名と少なかった。雨も小降りになってきたので移動。こんな天気ではどうでもいい直線で編成写真でも撮ってとっと帰るべきである。


こんな天気ではこんなもんでしょう。でも5年ぶりに見た国鉄急行色に感慨ひとしお。
2008,10/11   しなの鉄道  信濃追分〜御代田  EOS5D 100-400mm

 この何の変哲もない直線で撮影後、撤収してもう帰ろうかと思いながらトランクに機材をしまっているその時、頭上の厚い雲が割れ、光が差し始めてきた。西方の彼方には暗黒の雲の終端が見えて、くっきりとした青空であることが分かった。待っていればやがて晴れる!そう確信した30分後、本当に雲はぐんぐん東の空へ抜けて行き、軽井沢地方は完全なる「快晴」になった。気になる浅間山も、その雄大な稜線を露わにし始め、まさに撮ってくれと言わんばかり。ヤバイ、コレキタ・・・。一人心の中でほくそ笑み、バイクを浅間山バックの築堤下に走らせた。




意外にも下草が伸びて足回りが隠れてしまった。しかし名峰浅間山も姿を見せて往年の勇姿が蘇った!
2008,10/11   しなの鉄道  信濃追分〜御代田  EOS5D 24-105mm



午後になり薄曇。浅間山バックの築堤裏は、昔ながらの「はさがけ」が信州の秋に彩を添える。
2008,10/11   しなの鉄道  信濃追分〜御代田  EOS5D 100-400mm


 この後、閑散とした碓氷峠を降りて、4日ぶりに関東平野に降り立ち、松井田妙義ICから高速に乗った。長期休みをいただいたからには職場にみやげを買わなければならない。上里SAで、個数が多く一層かさばって見える、どこだかの饅頭とビスケットを2箱買う。バイクツーリングではトランクに生活道具と撮影機材が満載なので、タンデムシートに100均で買っておいたビニールテープで強制固定。一路練馬出口を目指して夕暮れの関越を走った。。

本日の走行距離 316km

今回の旅の総走行距離 2036km   終了。