初の試雪撮影。大糸ラッセルDD16で楽しい休日。
2007,12/10

 本格的な雪シーズンを控えた11月下旬から12月上旬、各地の積雪地帯を走る路線では、ラッセルやロータリーの本番前の試運転が行われる。それが試雪。まだ積雪の無い時期に、機関車の排雪装置の作動確認や、線路施設の干渉などを確認する秋の風物詩である。各車両センターから冬季の常駐箇所に回送され、数日間に渡って運転されている。そんな今年の12月10日、大糸線で試雪が運転されると聞きやってきた。行程は早朝、松本を出て南小谷で折り返し、信濃大町まで2往復した後、夕方松本へ帰区するというもの。大糸線ならある程度土地勘はあるし、明るい時間に数往復してくれるなら、違ったポイントで数発狙えるかも知れない。とりあえず大まかな運転時間を頭に詰め込み、撮影の計画を立てないまま、早朝横浜を出発。
 前日はいつものように深夜3時まで仕事だったので、一睡もしないまま早朝5時過ぎに出発。すでに眠い。この時間では松本から南小谷への1本目の試雪は間に合わないので、大町に11時前に帰ってくる2本目を最初に狙うことにした。この時間、順光できれいに収められそうなのは、海ノ口~簗場の築堤。381しなのをいつかここで撮りたいと思っていた場所で、毎回、ここをバイクで通る時には、ヨソ見をしながらこの築堤を駆け下りてくる381を想像してしまう。試雪通過30分前に到着。前日雪が降ったようで築堤法面や山肌には残雪がまだある。どこで情報を仕入れたのか、カメラを携えたテツがほかに3名。やがて踏切が鳴った。

まだ秋の気配が色濃い信濃路を行くDD16。試雪9172レ。
2007.12/10    大糸線    海ノ口~簗場    EOS5D  24-105mm

 天気は良く晴れているし、大気も澄んでいる。折り返しはいつかやってみたかった木崎湖をバックに勾配を上る正面がちのアングル探しに挑戦。そんな構図、雑誌などでは見たことが無いが、木崎湖を真後ろに一直線で勾配を駆け上がる線路は数100m先で右にカーブするので、そのアウトカーブから超望遠で切り取れば、イメージに適った画が取れるはず。さっそく折り返しまでの1時間、上の写真のバックの丘をウロウロし、奥のカーブのアウト側に立ち一直線で木崎湖を背景に出来る位置は無いか、望遠を構えては移動、構えては移動を繰り返し、ようやくその1地点を見つけた。あとは列車が来るまでのんびりしようとタバコに火を点けると、4WDの車が爆走して近づいてきて、自分の前で停まった。「ちょっとヲタク入るんですけどぉ・・・」と彼の指押さすほうを見ると、谷を挟んだ対岸に三脚が立っている。うげぇっ。気付かなかった。テツヲタ憲法第一条「先着者優先」のルールに従い自分は丘を降りて再び撮影位置修正。やむなく小さな踏み切りへ移動。やや仰角なので南天の頂点に近づいた太陽をモロに正面に受ける、完全ド逆光な所になった。


木崎湖をバックに25‰を登る。雪も無いのにウイングをおっ広げて走るラッセルは、ちょっとマヌケ。雪と格闘する時はあんなにカッコいいのに・・・。
2007.12/10    大糸線    海ノ口~簗場    EOS5D  100-400mm

手元の試雪運転時間を見ると途中駅通過時間は載っていないものの、普通列車でちょうど1時間で走破するこの区間を、この南小谷行きは1時間15分かけて走るのだから、速度はあまり速くない。並行する国道148号も流れは良いので追っかけ可能と判断。すぐに望遠レンズをカメラバックにしまい、追撃開始。2kmほど進んだところで、羽を広げながらチンタラ走るDD16を追い越し、白馬市街へ突入。走りながら撮影できそうな画を想像して北上を続ける。そういえば南小谷直前に鉄橋をプチ俯瞰できるところがあったようなことを思い出し、先を急ぐ。


列車通過10分前に到着。追っかけ無事成功。あと2週間早かったら紅葉は見事だったであろうお立ち台。
2007.12/10    大糸線    千国~白馬大池    EOS5D  24-105mm 

 先客は4名。いずれもさっきの木崎湖で見かけた県外ナンバーの面々だった。DD16は目の前を悠々と自転車ほどのスピードで鉄橋を通過。次の折り返しは時間があまり無いので、この近辺で撮影することとし、ちょっと周辺探索。冬枯れた姫川沿いを日本海側へ走ること10分。この試雪の終着、南小谷に着いた。見ると場内信号は青になっており、いつの間にかラッセルを抜いたようで、駅進入も撮ろうかとカメラを取り出しているうちにDD16は到着。仕方なく先ほどの鉄橋周辺で待ち構えることにした。トラスがあったので渡る姿を流し撮りしようとサイドから構えていると、やがてホイッスル。シャッター速度1/30秒。ファインダーから目を離し来る獲物を横目で見ると、遅い。何をやってるんだか行きと同じくチャリンコのペースでノロノロと近づいてきた。1/30ではとても流せないので急いでEOSの電子ダイヤルをクリクリ回し、足を大の字に開き、肘はしっかり脇に閉めて息を止め、全神経を集中させて撮ったのが下図。


1/2秒!ナンバープレートだけに照準が合っており、流し半分成功!? それにしてもチビロクかわいい♥♥
2007.12/10    大糸線    南小谷~千国    EOS5D  24-105mm 

 かなりマイペースなチビロクに安心して、一服しながら余裕の追っかけ開始。この大町行き試雪9172レは往路の9173レより40分も所要時間をかけており、途中退避や交換で長時間停車するのだろう。するとなれば白馬しかなく、白馬に先行して待っているとやって来たDD16は中線に停車。到着してもしばらく出発信号は赤の現示だったので普通2本と、特急1本を退避するのだろう。昼時だというのにガラ空きの駅前のマックで飯でも食おうかと思ったが、行きの追っかけの際に気付いた、帰りの針葉樹バックの撮影地が気になり出発。市街外れの田んぼで三脚を立てた。到着したときは陽が当たっていたが、やがて背後の山に陰り、EOSのホワイトバランスを7000ケルビンにしてDD16を待った。


あと10分早ければ・・・。いよいよ佐野坂の25‰に挑む。
2007.12/10    大糸線    南神城~簗場    EOS5D  100-400mm 

 この後、信濃大町までは長時間退避できるような駅は無いので、チビロクなりに頑張って走るのだろうから、追っかけもペースを少し上げる。少しだけ。木崎湖のサイドから狙ってみようとバイクを路肩に駐め、法面を這い上がり、国道を手前に挟んで線路を狙う。どうか大型車よ来ないでくれと願いつつズームを調整しファインダーを覗いた。


手前のガードロープがうるさいが、車が来なくて良かった。目指す大町はもうチョイです。
2007.12/10    大糸線    海ノ口~稲尾    EOS5D  24-105mm

 この後、9172レは試雪としての仕事を終え、信濃大町から所属の松本までは列車番号を9175レと変え、完全な回送列車になる。おそらくウイングも開かないだろうが、この晴天を、あの撮影地で逃す手は無い。鹿島槍バック。数々の作品を残してきた名撮影地。午後完全順光になるこのポイントでDD16を捕獲できるチャンスはめったに無い。ならば先を急ごう。


国鉄色特急やPCじゃないと短編成は拍子抜け。でもカッコいい! この冬の活躍に期待したい。
2007.12/10    大糸線    信濃常盤~安曇沓掛    EOS5D  100-400mm